2014年8月

【中環審/大気・騒音振動部会水銀大気排出対策小委員会(第5回)報告
(2014/8/20更新)

水銀大気排出対策:早くも検討結果の“取りまとめ(答申(骨子案)作成)”が始まる

 平成26年8月18日に行われた中央環境審議会大気・騒音振動部会水銀大気排出対策小委員会(第5回)を傍聴したので審議内容について速報として報告する。
 第5回目の今回の委員会では、「答申」の骨子案について議論が行われた。環境省案では、本年中に水銀大気排出対策の枠組み(法律部分)を整え、翌年度には政省令改正の議論に入りたいとの考えだが、この枠組みの部分を定める骨子案に対しも、委員から多くの意見が寄せられ、調整の難航が予想される。

審議事項
 1.前回までの委員会における指摘事項について
 2.水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について(答申)骨子案について
 3.その他(報告割愛)
 

1.前回までの委員会における指摘事項について

 環境省より、海外(米・英)の水銀大気排出規制について報告があった。(資料5-2)
 

2.水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について(答申)骨子案について

 今年の5月末より審議が始まったが、早くも答申の骨子案が提示された。答申案の第3章「水銀の大気排出対策の在り方について」において、実際の大気への排出対策について記載されているが、前回の委員会までに結論が出ていない項目も多く、本委員会でも継続審議事項となり規制の枠組みについて、方向性は未だ定まっていない。

審議のポイント
 今回の委員会では、答申骨子案の審議が始まったが、水銀排出対策を考えるにあたって、2点大きなポイントがある。まず1点目は、“国内の現状判断で、環境対策の進んでいる日本産業の現状をどう評価するか”、続いて2点目として、“排出規制を導入する場合、条約規定の対象施設のみを規制対象とするか”の2項目が争点で、この方向性が決まると規制の枠組みも固まる。

(1.国内の現状判断)
環境対策が進んでいる日本産業の現状を、水俣条約の求める水準に達していると判断できるか。
日本の水銀排出量は、全体の1%に過ぎず、排出源の排ガス対策も進んでいる。日本産業の国際競争力維持の観点から過度の規制については、産業界より消極的な意見がある。

(2.条約規定の対象施設のみを規制対象とするか)
条約規定の対象施設のみを規制対象とする場合、国内で比較的排出量の多い鉄鋼製造施設が対象外となり、国内規制において不公平が生じる。

答申骨子案 (環境省案:3章抜粋要約)

3 水銀の大気排出対策の在り方について
「1.水銀排出規制制度の必要性」
 (報告割愛)

「2.水銀排出規制制度の枠組み」
(1)新規施設に係る規制
 a.規制手法(排出規制と施設の構造等規制)
  ⇒排出限度値(濃度)による規制を導入
   ※瞬時値の規制ではなく、ある程度の期間の平均値規制となる模様
  ⇒廃棄物処理施設については、処理対象物の成分管理が難しいことから構造規制・管理基準等を設置

 b.具体的な規制水準を設定するに当たっての基本的考え方(排水基準値について)
    ⇒排出源ごとに分類し、排出規制値を設定。具体的な数値の検討については、来年度以降に実施。

 c.規制の実効性を確保するための措置(排出事業者の義務)
  ⇒排出規制の導入に伴い、事業者に対し測定を義務化する。
  ⇒具体的な測定方法について、来年度以降に審議
  ⇒水銀排出施設の設置の届出制、排出基準順守義務や改善命令の導入、これらの違反への罰則の整備
    
 d.「環境のための最良の慣行」の利用について(排出基準に加えて、排出削減のための取組)
  ⇒廃棄物焼却施設等への対策として、受入前の水銀分別回収の促進
  ⇒マニフェストに水銀含有物である旨を明記する(義務化)

(2)既存施設に係る規制手法
 ⇒既存施設には、暫定排出基準の導入
 ⇒既存施設で集塵・脱硫・脱硝装置を導入している場合、同施設を条約担保済みとして考えることができるか検討する
 ※水俣条約では、複数の汚染物質の規制に関するもので、相互的に利益として水銀排出抑制に貢献できるものを排出抑制の措置として認めている(既存発生源に対して、)。

(3)排出規制の対象施設の規模
 ⇒一定規模以上のものとして裾切りを行う

(4)排出規制の対象施設の選定の基本的考え方
 ⇒条約に規定の5分類(石炭火力発電所)への規制は必要
 ⇒その他排出源で国内で排出量の多いものの取扱いについては引き続き検討

(5)国民による自主的な排出抑制取組の責務
(報告割愛)

「3.目標、インベントリー等について」
(1)大気排出対策の目標の設定
 ⇒国として目標値を設定する。

(2)インベントリー
 ⇒上述の規制において、測定を義務化した場合においても、一部事業者のみのデータとなり、国内を網羅的に把握することは困難であり、インベントリーの精度を確保が課題となる。

(3)国及び地方公共団体の責務
(報告割愛)
 

※本取りまとめは本編集部独自によるものです。 ↓委員会資料は『改正内容はこちら』をクリック↓

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