特別対談・インタビュー 2016年5月環境最新情報

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                ―コカコーラ システムの水資源戦略 (2016年5月)

 ザ コカ·コーラ カンパニーは世界200以上の国でビジネスを展開しているグローバル企業だが、もっとも大切にしているのは実は「ローカル性」である。水という重要な資源を使い続けるためには、「地域環境」や「地域社会」を徹底的に守り抜かなければならないということは世界共通の認識であり、それが「2020年までに持続可能な水資源管理のグローバルリーダーになる」という目標につながっている。 「水使用量の削減(Reduce)」、「 使 っ た 水 を 自 然 に 還 す(Recycle)」、「 水源を守り水資源を補充する(Replenish)」の三つの要素からなる「ウォーター・ニュートラリティー」のコンセプトと活動について、日本コカ·コーラ(株)と北海道コカ·コーラボトリング(株)を取材し話を聞いた【環境管理|2016年5月号|Vol.52 No.5 より】

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||| 目 次 |||
- 200か国以上で1日19億杯以上も飲まれているコカ·コーラ社製品
- 水を重要視している世界の「コカ·コーラ システム」
- 日本の製品ラインアップと製造時の水使用状況

- 工場の水源を綿密に調査水資源保護活動を展開する
- 北海道コカ·コーラボトリングの取り組み
- 水源は白旗山           - 電子ビーム(EB)による滅菌
- ラグーン方式(低負荷活性汚泥法)          - 工場排水の浄化目標
- 水の再利用の工夫         - ゼロエミッション工場の維持
- 水源涵養と環境啓発活動          - 全社における環境モチベーション
※太字部のみWEB掲載(全編は本ページ下部より、PDFファイルをダウンロードのうえご覧ください。)

200か国以上で1日19億杯以上も飲まれているコカ·コーラ社製品

201605_cocacola2.png 米国ジョージア州アトランタに本社を構えるザ コカ·コーラ カンパニー。名画「風と共に去りぬ」の舞台を彷彿させる南部の街で「コカ·コーラ」は誕生した。この130年前の話をアトランタで聞いた。薬剤師のペンバートン博士はカラメル色のシロップを調合し、それをジェイコブス・ファーマシー(薬局)に持ち込んだ(図1)。このシロップを炭酸水に混ぜたところ、試飲した人は皆「特別な味だ」と絶賛。これが1886 年の「コカ·コーラ」の誕生だった。当時「おいしく、爽やか」というキャッチフレーズや独特な筆記体ロゴも生まれた。
 「コカ·コーラ」の登場以来、清涼飲料ビジネスを世界に広げてきたザ コカ·コーラ カンパニーにとって、水は製品づくりに欠かせない最も重要な原料である。事業を展開する各国で環境取り組みの最優先事項として水資源保護に取り組んでいる。2020 年の全世界ビジョンでは、カーボンニュートラルと同じような発想でウォーターニュートラルというコンセプトを掲げている。「2020 年までに製品製造に使用した量と同等量の水を自然に還元する」という目標「ウォーター・ニュートラリティー(WaterNeutrality)」に各国で取り組んでいる。
 そこで日本のコカ·コーラ システムの水資源の取り組みについて取材した。水資源管理と工場の工程水管理に関して現場の情報を依頼すると、北海道コカ·コーラボトリング株式会社の取材が可能になった。さっそくザコカ·コーラ カンパニーの現地法人である日本コカ·コーラ株式会社で取材をし、翌日には札幌へ飛んだ。

水を重要視している世界の「コカ·コーラ システム」

201605_cocacola3.png ザ コカ·コーラ カンパニーというとアメリカの大企業で世界トップクラスのグローバル企業というイメージがある。一方でコカ·コーラ事業はフランチャイズ契約がベースにあり、国内ビジネスは国内企業によって実施されている。中国、タイ、インドネシアなど各国にもそれぞれ別法人の会社がある。
 柴田充技術・サプライチェーン本部部長によると、日本コカ·コーラ(株)は主にコアビジネスに特化しており、「原液の製造、製品の企画や宣伝、ブランド活動、そして環境に関するガバナンスなどに取り組んでいる」(柴田部長)という。滋賀県の原液工場以外に、北海道から沖縄まで各地で事業を展開するボトリング会社の製造部門として21 のボトリング工場がある。製品開発から製造、販売までを日本コカ·コーラと全国のボトリング会社で行うことから、「総称して『コカ·コーラ システム』と呼んでいる」。つまり、日本コカ·コーラと国内6のボトリング会社などで構成される企業体の総称がコカ·コーラシステムなのである。
 世界200以上の国で事業展開するコカ·コーラ システムの製品製造では、水を非常に重要視している。飲料という形態で水を全世界で提供するとともに、製造プロセスにおける水使用もある。2014 年の世界実績では、製品1L製造につき2.03L(製品としての1L分を含む。以下同様)の水を製造段階で消費し1,267 億Lもの工場廃水を浄化して河川など自然環境に戻している。10年前の2004年には1L製造につき2.7Lの水を消費していたのでかなりの改善が達成されている。
 コカ·コーラシステムによる廃水の水処理技術は、法令や協定などで要請されない場合であっても、水生生物に影響が生じないレベルの浄化を徹底している。つまり使用した水は自然環境や地域社会にきれいに浄化してきちんとお返しするという態度である。

日本の製品ラインアップと製造時の水使用状況

 コカ·コーラ システムの国内水使用量は、2009年の6.24Lから2014年の4.15Lと改善している。しかし全世界総計では2004 年には1Lの飲料製造につき2.7Lの水を消費し、2014 年には2.03Lまで削減している。世界と日本の違いは製品ラインアップにあるという。そもそも炭酸には殺菌機能があり滅菌は比較的容易である。炭酸の効果で菌が発生しにくく、菌の制御も比較的簡単である。
 海外では製品のほとんどが炭酸飲料のビジネスであり、製造ラインは単一製品専属で製品ごとに洗浄する必要はない。日本は同一ラインで複数の製品を製造するので、その都度、殺菌と洗浄をする必要がある。また、牛乳などアレルゲン物質は完全に除去する必要があることから、日本では多品種にわたる製品ラインアップのため、製造工程においてより多くの水を必要とする。

工場の水源を綿密に調査水資源保護活動を展開する

 また、各ボトリング工場の水源は綿密に調査され、水質、水量、土地利用状況等を把握している。例えば西日本をカバーしている鳥取県の大山工場では、利用する水がどこからきているか、大山の地質構造、井戸の位置、水質状況、上流で汚染がないか、下流で井戸枯れが起きないかなどを調査し、それらの情報をもとに水源涵養を行っている。
 コカ·コーラ システムの水源涵養活動は、①工場の水源域を科学的に特定、②地域と協働して取り組む(地域に必ずパートナーがいる)、③地域のニーズに即した活動を展開する、という三つの特徴があり、全国のほぼすべての工場の水源域を中心に植林や間伐作業などの保全活動を展開している。
 「日本の場合は水田も重要な地下水涵養の役割を果たしています。熊本市では1990 年代に阿蘇方面からの地下水量が減ったことがありましたが、それは水田から水が地下に落ちないことが原因でした。そこで熊本県は休耕田に水を張り、また農閑期の冬にも水を張ったのですが、コカ·コーラウエスト株式会社がそのサポートを行いました」(柴田部長)
 このような各地の保全活動によりコカ·コーラ システムは、使用量に対し約80%の水源涵養率を現在までに達成している。今後もライフサイクル的発想で、原料である農産物、特に砂糖やミルクなどにも注目していく。

北海道コカ·コーラボトリングの取り組み

 札幌ドーム近くに北海道コカ·コーラボトリング(株)の巨大な工場がある(写真1)。少量の受託製造(パッカー)を除くと、北海道で清涼飲料水の自社工場を運用しているのは北海道コカ·コーラだけである。札幌市清田区清田という地名からしてとても清いイメージがあるとおり、豊富な地下水を利用して製品が製造されている。揚水井戸は全部で8本あり、井戸の深さは約200mから400mほどの深さがある。北海道で製造するコカ·コーラブランドの清涼飲料水はすべて清田の地下水を利用して製造されている。(下写真は、北海道コカ・コーラボトリング(株)での取材時の様子)

201605_cocacola9.png水源は白旗山 へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)

【環境管理|2016年5月号|Vol.52 No.5】

20160510162818-0001.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

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