特別対談・インタビュー 2018年4月環境最新情報

interviewmark.png 住友化学 にきく ―マラリア撲滅とSDGsの達成に向けてー
      社会課題を解決する住友化学の環境ソリューション

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 「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて優れた取り組みを行っている企業・団体などを政府が表彰する第1回「ジャパンSDGsアワード」において、住友化学(株)が副本部長(外務大臣)賞を受賞した。
 住友化学はミレニアム開発目標(MDGs)から継続して感染症対策に取り組んでおり、マラリア対策用の蚊帳「オリセット®ネット」事業を通じて感染症対策のみならず、雇用、教育、ジェンダーなど幅広い分野において、経済・社会・環境の統合的向上に貢献している。SDGsで掲げられている2030年までのマラリア制圧の実現、セクターを超えたパートナーシップの実現・強化を目指す住友化学の環境経営について、同社 新沼 宏専務執行役員と河本 光明レスポンシブルケア部気候変動対応担当部長に話を聞いた。
【環境管理|2018年4月号|Vol.54 No.4 より】
(聞き手:産業環境管理協会 専務理事 黒岩 進氏/写真・図:住友化学株式会社)

||| 目 次 |||
- 女優シャロン・ストーンがマラリア撲滅を呼びかける

- 異分野の部門の協力の下培った技術を融合させる
- マーケットの開拓、現地生産、社会貢献── サステナブルな事業サイクルが重要
- 住友の二つのDNAがSDGs活動につながる
- 事業の強みを活かした農業経営のサポートサービス
- SDGs活動の基本となる三つの柱
- 民間主体の活動が社会や地球環境への貢献につながるという意識が大事
※太字部のみWEB掲載(全編は本ページ下部より、PDFファイルをダウンロードのうえご覧ください。)

女優シャロン・ストーンがマラリア撲滅を呼びかける

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黒岩:まずは第1回「ジャパンSDGsアワード」(日本政府主催)外務大臣賞受賞おめでとうございます。マラリア予防の防虫蚊帳、それに環境白書でも取り上げられているサステナブルツリーなどについてもお話を伺わせていただければと思います。最初に今回の受賞理由の一つであるマラリア予防の防虫蚊帳ですが、どのようなきっかけで取り組まれることになったのでしょうか?

新沼:蚊が媒介する原虫によって感染するマラリアは先進国ではほぼ撲滅されていますが、アフリカでは貧困や財政難のために十分な対策がとれない、人類が最優先に取り組むべき感染症といわれています。マラリアの予防には蚊を防除することが有効であり、住友化学では以前から殺虫剤「スミチオン®」の提供を通じてマラリア撲滅に取り組んできましたが、1992年に工場の虫除け網戸として使われていた技術を転用して開発したのが、防虫蚊帳「オリセット®ネット」です。
201804_03.png 当初、「オリセット®ネット」は注目されませんでしたが、殺虫効果が長期にわたり持続する防虫蚊帳を積極的に使用するよう世界保健機関(WHO)が方針を出し、2001年に推薦を受けたことによって広く普及しました。さらに2005年のダボス会議で、社長の米倉(当時)がオリセットネットの供給を拡大し、マラリア撲滅を会社として全面的に支援することを表明したときのことです。会場で話を聞いていた女優のシャロン・ストーンさんが突然立ち上がり、「マラリアを運ぶ蚊からアフリカの子どもを守るため1万ドル寄付します。これでアフリカの人に蚊帳を届けてください。私に賛同する人は今すぐに立ち上がってください!」と呼びかけたのです。その呼びかけに対し、会場にいたビジネスリーダーが次々に賛同し、その場で100万ドルの寄付が集まりました。
 それがメディアで報じられ、WHOからも有効性を評価されたことにより爆発的に普及し、現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、80以上の国々に供給されています。マラリアによる死者は2000年から半減し、推計で累積620万人の命が救われたといわれています。

異分野の部門の協力の下培った技術を融合させる

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黒岩:オリセットネット開発の経緯を教えてください。

新沼:当社社員で昆虫学の博士号を持つ研究者が、当時年間100万人を超える犠牲者が出るといわれたマラリアの撲滅を決心しました。アフリカでは殺虫剤浸漬蚊帳が使われていましたが、表面に塗られた殺虫剤は洗濯すると薬剤が流れ出してしまい、蚊帳を薬剤に漬けて再度染み込ませる再処理の作業が必要になります。そこで研究者は、住友化学が工場向けに開発した防虫網戸の技術に着目しました。この網戸は、糸の内部に含まれた殺虫剤が持続的に染み出すので、洗濯しても効果が薄れないものです。
 そこには、殺虫剤の技術はもちろん、樹脂に薬剤を練り込む技術、樹脂をネット状に加工する技術、樹脂の配合や加工の条件と殺虫効果の関係、殺虫成分が樹脂の中で拡散する速度など、様々な技術やノウハウの積み重ねが必要でした。住友化学は総合化学メーカーとして5つの事業部門に分かれていますが、その中の樹脂部門と殺虫剤部門が協力して、2つの異分野の技術をハイブリッドすることで防虫蚊帳の開発が進んだのです。
 さらに、暑いアフリカでも使えるよう、糸を細くして網目を2倍以上に広げて通気性を高めました。実は最初、日本の蚊帳のような細かい網目で開発が進んでいたのですが、中が暑くてたまらない。そこで調べたところ、蚊は羽を広げて穴を通る特性があるということが判明しました。小さな穴にしなくても、羽を広げた状態までの大きさなら蚊は入ってこれないのです。そんな昆虫学の知識も駆使して、通気性が良く防虫効果が5年以上続く蚊帳が誕生しました。

『マーケットの開拓、現地生産、社会貢献ーーサステナブルな事業サイクルが重要 へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)

【環境管理|2018年4月号|Vol.54 No.4】

20180309163325-0001.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

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