環境管理バックナンバー 2017年 12月号

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2017年12月号 特集:資源循環技術の未来2017

<コラム>

「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる天空のまち 東平
本誌編集部
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 瀬戸内海を望む標高750mの山中に、かつて日本の近代化を支えた別子銅山の東平地区がある。いまは遺構だけが残り「東洋のマチュピチュ」と称されている。産業遺産を囲む現在の緑豊かな周辺環境は、銅生産により荒廃した森林を再生するために大規模な植林を実施した企業努力の賜物である。巻頭特集では住友金属鉱山(株)を取り上げ、大規模な植林事業からその遺伝子を受け継いだといえる環境保全、環境経営について紹介する。

<巻頭特集>

住友金属鉱山の環境経営 400年の歴史を、持続可能な未来につなぐ――住友金属鉱山
本誌編集部
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 銅精錬業、鉱山経営により台頭した泉屋(住友の前身)が江戸幕府の許可を得て別子で銅採掘を始めたのは1691 年、元禄4 年のことであった。その銅は有力な輸出品として世界中に流通したという。それから320 年余、事業を継承した住友金属鉱山(株)は、資源開発から金属製錬および材料加工までを一貫して行い、現代社会に不可欠な機能性素材を提供している。
 本稿では、森林の荒廃から再生まで、住友が取り組んだ大規模な植林の歴史と、現代における同社の優れた環境経営を取り入れた国内外の事業について、同社安全環境部 山内誠CSR担当課長と中原悠貴CSR担当副主任にお聞きした。

<特集>

一般社団法人 産業環境管理協会「資源循環技術・システム表彰」「リサイクル技術開発本多賞」「3R 先進事例発表会」 実施報告
一般社団法人 産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター
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 一般社団法人産業環境管理協会は、資源の効率的な利用の促進、循環ビジネスの振興を目的として、廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルの先進的な取組を顕彰するために毎年、「資源循環技術・システム表彰」、「リサイクル技術開発本多賞」を広く募集、表彰するともに受賞内容の広報を目的として「3R先進事例発表会」を開催している。
 本年は、平成29年10月20日に機械振興会館ホール(東京、芝公園)において、経済産業省産業技術環境局長末松広行様にご臨席いただき「平成29年度資源循環技術・システム表彰(第43回)表彰式」、「平成29年度リサイクル技術開発本多賞(第22回)表彰式」および「平成29年度3R先進事例発表会」を開催し、160名の参加を得た。

光化学的手法による水中からのレニウムの効率的な回収
堀 久男(神奈川大学 理学部 化学科 教授)
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 レニウムは航空機用エンジン等に使用される耐熱性に優れたレアメタルである。鉱物や廃棄物からレニウムを製造するプロセスでは水中の過レニウム酸イオン(ReO4–)を分離回収する工程があり、従来は水溶液の加熱濃縮・冷却により行われているが、ReO4–は全pH領域で水に易溶であるため回収率が低かった。
 本研究ではReO4–の水溶液に2-プロパノールとアセトンを添加して紫外光を照射することでReO4–を水に不溶なReO2およびReO3に変換した。これにより反応前のReO4– 中のレニウム原子をほぼ完全に沈殿として回収(回収率94. 7%)することに成功した。

合金鉄溶解炉による資源循環システムの構築
加藤 勝彦(新日鐵住金株式会社)/府高 幹男(新日鐵住金株式会社)/浅原 紀史(新日鐵住金株式会社)
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 当社ではクロム系ステンレス鋼製造プロセスにおいて、クロム酸化ロス極小化、発生物利用による省資源化、発生物の系外排出量ミニマム化とフッ素レス化による環境負荷軽減を実現するために、高炉・転炉一貫プロセスに還元溶解電気炉(合金鉄溶解炉)を加えた資源循環型ステンレス鋼製鋼プロセスを開発、実用化した。本プロセスにより、レアメタルであるクロムや、シリコンなどの貴重な地球資源の省資源化が図れるとともに、環境負荷物質であるフッ素を使わずにクロム系外排出を極小化できる、環境に調和した生産体制を確立することができた。

廃棄フッ素資源の再生利用
石井 豊(セントラル硝子株式会社)
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 当社宇部工場では、医薬品製造プラントから排出されるフッ酸を含む廃液(以下、フッ酸廃液)を、他のプラントの廃液と混合されたあとに中和・無害化処理しており、その際に多量の廃棄物が発生していた。
 循環型社会形成の重要性が高まる中、当社では医薬品製造プラントのフッ酸廃液を単独処理して、フッ素資源をフッ化カルシウムとして回収する設備を自社開発して設置した。
 回収したフッ化カルシウムは、当社の無水フッ酸製造プラントで原料として再利用することにより、フッ素資源の循環と廃棄物の排出抑制を図るシステムが構築され、循環型社会の形成に貢献している。

木材・プラスチック再生複合材(WPRC)・循環型木質建材の事業化
渡邉 厚(株式会社 エコウッド)
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 株式会社エコウッドでは、デッキなどの外構製品に使用される材料として、循環型木質建材「木材・プラスチック再生複合材(Wood-Plastic Recycled Composite)」(略称:WPRC、商品名:エコMウッド)の製造技術を開発し、創業以来15 年に渡り、多くの採用実績を積み重ねてきた。
 WPRCは、容器包装リサイクルによる廃プラスチックと建築解体や間伐などによる廃木材を微粉砕化、混錬・成型することで、不均質な廃材から均質・高品質な製品をつくるもので、JISをはじめ各種認定を受けている。現在、このリサイクル技術を応用し、地産地消の循環型まちづくりにも貢献している。

ロボットを使用した二軸剪断式破砕機の刃物の再生・リユース技術
高見 敬太(近畿工業株式会社 近畿メカノケミカル研究所)
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 二軸剪断式破砕機の使用済の刃物の肉盛補修による再生は従来熟練工が手作業で行っていたが、再生品の生産量アップ及び低コスト化を図るため、産業用ロボットメーカーや県立工業技術センター等と共同開発を行い、ロボットを使用した使用済み刃物の自動再生システムを開発した。本システムの開発により再生品の大量生産が可能となり、刃物廃棄量の削減に成功した。また、再生刃物は新品よりも低価格であり生産量のアップと低コスト化を同時に実現したことで、再生品の市場進出を果たし、資源循環システムを構築できた。

オートマチックトランスミッションのリマニュファクチャリング
有松 正夫(ジヤトコ株式会社)
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 当社では、1989 年からオートマチックトランスミッションのリマニュファクチャリング(再生生産)に取り組んでいる。従来、使用済み品として廃棄されていたオートマチックトランスミッションを回収するルートを整備し、再利用部品の点検基準や再利用基準を設定し、品質保証技術を開発することで、再生可能とした。
 このリマニュファクチャリングシステムの構築は、自動車販売店などの整備工場から回収したオートマチックトランスミッションを、分解洗浄・部品検査・部品交換・組立・性能テストを行うことで、新品と同等の品質で再生可能となり、資源の効率的な利用に大きく貢献している。

民間集約型の還元溶融炉を用いた焼却灰の再資源化
松岡 庄五(中部リサイクル株式会社)
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 当社は1999年の創業以来「Zero Emission Factory」の実現を企業理念に掲げ、廃棄物処理施設から発生した焼却灰を溶融処理することで無害化し、再資源化事業を行っている。前身の矢作製鉄が長年培ってきた銑鉄・フェロシリコンの製錬技術を生かしたサブマージドアーク式溶融技術(以下、還元溶融技術)と脱塩技術を組み合わせ、焼却灰から溶融メタル、溶融還元石、亜鉛・
鉛原料を製造し販売している。
 還元溶融技術は、電気エネルギーを主体とし焼却灰等から資源を回収する「都市鉱山」であり、天然鉱山と比較し総体エネルギー比は小さく地球環境負荷が小さいシステムといえる。
 焼却灰等は、従来、最終処分場への埋め立て処分が一般的であったが近年、最終処分場の逼迫および
資源循環・リサイクルの必要性が謳うたわれるようになり、焼却灰等の資源化が進んできている。

鉄スクラップのグループ内循環再生利用拡大
松浦 清(日立オートモティブシステムズハイキャスト株式会社)
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 鋳物製品は産業用機器、電気機器、輸送機器、自動車、街の中、家の中にいたるまで多種多様に使用されている。その中でも自動車用は全体生産量の6割以上を占めており、年間の生産量も200万t以上を継続して推移している状況である。
 しかしながら、年々持続的な発展を達成する上で、資源制約・環境制約は最重要の課題として対応が必要となっており、3Rを推進し、環境と経済が両立した経済システムを構築することが急務となっている。すなわち「産業の環境化と環境の産業化」により、循環型経済システム・循環型社会を形成していくことが、持続的な発展のために必要不可欠なものとして求められている。

アウターブランク材の歩留り向上技術による副産物削減
安藝 隆裕(ホンダエンジニアリング株式会社)
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 Hondaは、将来的に目指す理想社会を「環境負荷ゼロ社会」とし、その実現に向けて再生可能エネルギーによるCO2 排出ゼロ化、エネルギーリスクゼロ化、資源と廃棄におけるリスクゼロ化の三つのゼロから成る「Triple Zero(トリプルゼロ)」コンセプトを掲げ、経営トップから現場実務者まで一丸となった努力を重ねている。特に「生産領域」における環境負荷低減は、Hondaにとって最も重要かつ恒常的な課題の一つであり、Hondaの生産領域ではトリプルゼロのコンセプトとも連鎖した「グリーンファクトリー」の取り組みを通して、積極的な環境負荷低減活動を進めている。
 この度Hondaは、自動車生産のプレス工程において画期的な生産技術を開発した。これは自動車の外装パネルを製造するブランキング工程(板状の材料から形状を打ち抜く工程)において一つの金型内でカットラインの異なる2種類のカット刃を交互に切り替える技術で、これにより従来は不可能であったレイアウトのブランキングが可能になり、材料の歩留まりが大幅に向上し、プレススクラップ(廃棄物)発生量、CO2 排出量、原材料の使用量をいずれも大きく低減することに成功した。本稿では、この「カット刃交互切り替え金型」(以下、交互切り金型という)の技術概要および実施事例について紹介する。

ホース製造用・樹脂モールド材の産廃量削減(リデュース)の取り組み
浜地 容佑(横浜ゴム株式会社 茨城工場)
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 当社は、高圧ホースの製造においてモールド材として使用する熱可塑性特殊樹脂材(以下、樹脂材という)を、再使用のため粉砕する際に発生する廃棄物の削減技術を実用化した。
 高圧ホースの製造では、熱処理工程でのモールド材に特殊な樹脂材が使用されている。その樹脂材は使用後に再度粉砕され再利用される。樹脂材の成形工程から再利用までのフローを図1に示す。樹脂材は①と②の工程間で高圧ホースを加熱処理する加硫という工程を通過する。その際に高圧ホースの外観を保護するために被覆されるが、熱処理工程での熱劣化の影響で使用回数には限度があり、定期的に材料の入れ替えを実施している。また、この樹脂材は工程間を空送される際に、その一部が集塵機に取り込まれるため、リサイクルを繰り返す内にその総量が低下してしまう。
 活動前の調査では、新しく装置へ投入した樹脂材(kg)に対する、最終的に装置内に残った樹脂材(kg)の割合は、約70%であった。つまり、約30%の材料が、段取り時の廃棄や集塵機へ取り込まれるために、モールドとしての利用がされないまま失われていることになる。今回の取り組みで実施した内容は、以下の2 点である。
 ① 集塵機へ取り込まれる樹脂材を極力減らす
 ② 粉砕により発生した樹脂材の微粉を使用する
 今回の取り組みで実施した内容を以下に説明する。

浸出水からの再生次亜塩素酸塩製造とその利用
若菜 正宏(水ing株式会社)
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 一般家庭や事業者から排出される一般廃棄物は、3Rの取組により減少を続けている。一方、3Rで再資源化できない一般廃棄物は、ゴミ焼却施設(中間処理施設)を介して焼却灰として、あるいは不燃物残渣として一般廃棄物最終処分場へ持ち込まれる。一般廃棄物最終処分場へ持ち込まれた一般廃棄物は管理された埋立地に埋め立てられ、ここに降る雨や雪は埋立物を通過して汚濁物や塩類を含んだ浸出水として集水され、適切な処理が必要となる。この埋立と浸出水処理を行っている松山市の施設が「松山市横谷埋立センター」である。
 ここでは、浸出水処理の浄化処理工程で発生する高塩類濃度の濃縮水から、排水処理施設で放流水の
消毒剤として広く利用されている次亜塩素酸塩を製造し、利用する技術を世界で初めて導入した。松山市横谷埋立センターで2016年4月に稼働を始めたこの浸出水からの再生次亜塩素酸塩(エコ次亜)製造とその利用は、濃縮塩水を乾燥固化し処分していた従来法に比べ、CO2発生量および維持管理費の大幅削減という大きな成果を果たした。なお、再生次亜塩素酸塩(エコ次亜)利用先の下水処理施設「松山市西部浄化センター」では、消毒効果の有効性を確保し維持管理費の削減を達成している。

市販再生材を使った再生プラスチック開発と複合機への搭載
薮田 裕太(株式会社 リコー)/秋葉 康(リコーテクノロジーズ株式会社)/上津原 優(新日鉄住金化学株式会社)
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 気候変動対策や資源生産性の向上などの地球環境保全は、リコーグループが事業活動を通じて大きな貢献ができる分野である。リコーグループは、環境保全と事業成長を同時実現する「環境経営」の考え方を1998年に確立し、2009年に「長期環境ビジョン」に基づいて、「省エネ・温暖化防止」「省資源・リサイクル」「汚染予防」の三つの領域ごとに中長期環境目標を設定した。
「省資源・リサイクル」分野においては2020年までに2007年度比で新規投入資源量を25%削減することを掲げて活動を進めてきた。さらに2017年4月には「脱炭素社会の実現」、「循環型社会の実現」を目指した2030年・2050年の環境目標を新たに設定した。「省資源」分野では、2030年に製品の省資源化率*1 50%、2050年に93%を目標に掲げている。
 省資源分野の目標達成に向けた主な取り組みとして「再生技術と再生材活用の技術開発による、製品/部品/材料の再生率向上」を掲げており、再生材の活用は環境目標達成、循環型社会の実現に向けて非常に重要な施策として取り組みを進めている。
 新日鉄住金化学の主力事業である製鉄化学は、製鉄プロセスから生み出される原料をいかに有効にムダなく活用するかという点に注力し事業活動を行ってきた。環境問題が社会的な課題として認識されている現在、企業の立場から環境問題を積極的にサポートするために、社内で培ってきた技術を生かした新たなリサイクル事業に取り組んでおり、工場内での精製溶剤の回収、廃油・ピッチの熱源利用から、廃油、廃溶剤類の再生・資源化事業など、数多くのリサイクル・再資源化を実践してきている。
 2016年、リコーグループと新日鉄住金化学(株)の協業により、再生プラスチック材(以後再生材と表記)を共同開発した。
 食品トレイや魚箱といった使用済みのプラスチック製容器と、家電リサイクル法によって回収された家電製品のプラスチックから、新日鉄住金化学(株)の改質技術とリコーグループの保有するリサイクル材料評価技術によって「繰り返し使える」高品位な再生材である。
 本稿では再生材の開発にあたっての課題、開発プロセスや再生材の特徴、従来からの改善効果、今後の展望について紹介する。

精密濾過による超硬スラッジ回収・リサイクルサービス
沖野 浩章(有限会社 サンメンテナンス工機)
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 本リサイクルシステムは、超硬工具製造工程において、研削により発生する微細な超硬スラッジを加工液(水溶性、油性)の精密濾過することによりフィルター内に捕集し、使用後のフィルター内からスラッジを取出しタングステンのリサイクルを行うシステムである。特徴としては、
 ① 1~3μmのスラッジを1パスで濾過ができる濾過精度の高さ。
 ② フィルター内に20~30kgのスラッジを捕集できる寿命の長さ。
 ③ 濾過には珪藻土などの濾過助剤を使用しない為リサイクルが容易である。
 ④ 取り出したスラッジは、❶返却、❷焙焼後返却、❸焙焼後再生メーカーへ売却する方法があり顧客の要望に対応する。
 超硬研削でのスラッジの精密濾過により、加工液や砥石の長寿命化、加工機の故障の低減、清掃などの作業性向上も実現している。
 

タングステン含有スクラップのリサイクル技術開発
安井 昇(日本新金属株式会社)
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 本事業は自動車部品や機械・電子材料等の加工に使用された超硬工具等のタングステン含有スクラップ(以下、スクラップ)について、以下の4 件のリサイクル技術を確立した。
(1)大物固形スクラップの効率的な破砕技術の開発加熱及び急冷による脆化処理を連続的に行う装置と機械破砕を組み合わせることにより大物スクラップを1cm
以下の小塊にする。よる脆化処理を連続的に行う装置と
機械破砕を組み合わせることにより大物スクラップを1cm
以下の小塊にする。
(2) 焼き嵌め、ロウ付けスクラップの鉄材との分離技術の開発
 熱膨張率の差、ロウ材の融点を利用し、局所加熱や全体加熱等の加熱処理と高温へ加熱したワークへ衝撃を付加することで超硬と鉄材を分離する。
(3)含水・含油研削スラッジの直接酸化焙焼炉の開発
 含水含油のスラッジを連続処理炉で直接酸化する条件を確立し、水分油分を含まないタングステン酸化粉を得る。油分が燃焼した排ガス中の煤塵は規制値以下までガス洗浄する。
(4)酸化焙焼工程での処理コストの低減
 薬剤で超硬合金中のコバルトを溶解し鱗片状の炭化タングステンを獲得する条件を確立し、さらに使用した薬剤自体をリサイクルする。また鱗片状の炭化タングステンは超硬合金と比較して容易に酸化できる。
 試験機による実証試験により、多様な品種のスクラップの処理技術を構築した。その技術をもとに2017年10月より新規設備を導入し、当社のリサイクル能力を50%引き上げた。

<シリーズ>

【エネルギーからみた地球温暖化問題/第19回】原発の電気は安いのか?(後編)
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/主席研究員)
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 前回は、仮想の原子力発電所新設プロジェクトの資金計画を様々なケースに応じて確認することで、原子力発電に安価な電力を供給させるのであれば、相応の条件整備が必要であることについて整理した。
 制度設計次第でコストが変わることは原子力発電に限ったことではなく、OECD/NEA・IEAの報告書の言葉を借りれば、“ There is no single technology that can be said to be the cheapest under all circumstances.”(どんな状況下においても最も安いといえるような単独の技術はない)のであるが、資本集約率が高く莫大な資金調達を必要とする原子力発電においては政策的支援の必要性が特に顕著である。そのため、電力自由化を実施して発電事業に対する投資回収の可能性が低下してしまった状況においてなお原子力発電を維持しようとする米国や英国においては、リスク平準化や一部のリスクを遮断する政策が講じられている。むしろ米国や英国では、自由化と食い合わせの悪い原子力事業をどう維持するかは、システム改革の初期段階で議論されるべき難題であると認識されていたのである。
 日本ではこれまでなぜ54 基もの商業用原子力発電所建設が可能だったのか、及び、自由化した米国、英国で採られている原子力政策を整理し、今後のわが国への今後の示唆を読み解いてみたい。

【産廃コンサルタントの法令判断/第21回】委託契約書における印紙額の疑問――廃掃法だけでは見つからない答え
佐藤 健(株式会社 ミズノ 環境コンサルティング事業部 環境情報ソリューショングループ マネージャー)
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日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第21回)。

【新・環境法シリーズ/第70回】CCS(炭素貯留)の法・規制の枠組みの構築―CCSに関する海洋汚染防止法の問題点を中心として
大塚 直(早稲田大学 法学部 教授)
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 わが国は、2050年までに80%のGHG排出削減を目指しており、一昨年採択されたパリ協定を踏まえ2020 年までに26%の削減を公約した。この実現のためには、二酸化炭素回収・貯留(以下、CCSという)の社会実装が必要であり、今まで環境行政ではほとんど事例のない超長期管理を含めたCCSの包括的な法規制や政策の整備が喫緊の課題となっている。
 本稿では、欧米のCCSの法規制、CCS Ready等制度・政策について、IEA(国際エネルギー機関)等で示された検討課題項目を中心に欧米法の比較研究を行う。その結果に基づき、現状のCCSの技術水準や適用可能性などの観点から我が国での法の適格性や立法可能性を研究する。

【環境刑法入門/第10回(最終回)】グローバルな民主政治の危機でも地球環境を保全できるか?
長井 圓(中央大学法科大学院 元教授)
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 いよいよ最終回を迎えた「環境刑法入門」では、グローバルな観点から環境保全の方策を考える。もし核戦争または原発事故が勃発すれば、法による環境保護の全努力が一瞬のうちに無駄になってしまう。人命のみならず歴史的遺産さらに生物等の自然環境をも破壊し尽す*1。それゆえ、環境保護に最重要なのが世界の「平和」と「核の安全管理」である。その構築は国際協調を支える各国の民主政治による交渉と自制に依拠する。それにもかかわらず、今や民主主義が劣化して危機を迎えている(ポピュリズム・衆愚政治)。PCやスマホの偏狭な知識に依存した「思考の停止」と「歴史の忘却」が増えているためかもしれない。その結果、宗教的対立・民族主義が復活し、自国第一主義のエゴイズムがはびこりかけている。以前から環境保護を巡り先進国と後発国との利害対立があったが、戦争で最も環境破壊に貢献してきた米国のトランプ政権はパリ協定から離脱した。独仏は原発廃止を決断したが、中露は原発・武器を売りさばいている。このような排外主義(エゴイズム)は、刑法での重罰主義と同根の問題なのである。

【まるごとわかる環境法/第28回(最終回)】労働安全衛生法(第4回)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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 環境担当者のための環境法入門。環境部門の新任担当者向けに重要な法律をセレクトしてわかりやすく解説。
 第28回は「労働安全衛生法」(第4回)
 
 12.特定化学物質障害予防規則(特化則)
 13.有機溶剤中毒予防規則(有機則)
【先読み! 環境法/第66回】カドミウム及びその化合物に係る暫定排水基準の解消と一部存続、平成28年の見直しでは亜鉛含有量に係る現行暫定排水基準の継続――重金属類に暫定排水基準の設定、条約をバックに製品規制に踏み込んだ水銀規制
小幡 雅男(神奈川大学大学院 法務研究科 講師)
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 カドミウム及びその化合物と亜鉛含有量に係る暫定排水基準の見直しの動きを解説し、暫定排水基準の性格について考察するとともに、製品規制まで踏み込んだ水銀規制の意義を論ずる。食品関連事業者の排出責任を明確にし、リサイクルへの取り組みを促進させる食品リサイクル法の判断基準省令の改正についても解説する。
 
 ❶カドミウム及びその化合物に係る暫定排水基準の解消と一部存続、平成28年の見直しでは亜鉛含有量に係る現行暫定排水基準の継続――重金属類にも暫定排水基準を設定、条約をバックに製品規制に踏み込んだ水銀規制
 ❷食品廃棄物の不適正転売再発防止の一環として食品リサイクル法の判断基準省令の改正及び食品関連事業者向けガイドラインの公表――食品関連事業者の排出事業者としての責任の自覚による再生利用等を促進させる狙い
環境法改正情報(2017年10月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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⦿水銀汚染防止法
⦿省エネルギー法
⦿土壌汚染対策法

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