環境管理バックナンバー 2021年 5月号

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2021年5月号 特集:アスベスト問題の現在とその対策

<特集>

アスベスト「早わかり」Q&A
本誌編集部
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 絶世の美人であるかぐや姫は、求婚してきた中の一人、右大臣には「火を付けても全く燃えることのない火鼠の皮衣」を持参するよう要望した。大臣は唐まで皮衣を探したが見つからない。数年の月日をかけてやっと天竺からの渡来品らしきものを手に入れ竹取の翁の家に持参した。しかし、かぐや姫たちの面前で火の中にうちくべるとあっけなく燃えてしまい……。「火鼠の皮衣」が日本で初めて出てきた石綿(アスベスト製布)だったという説もある。
 石綿は燃えず、化学薬品に溶けない丈夫な鉱物なので、昔から大量に利用された。柔軟性や耐熱性のある強い繊維を持つため、消防士やレーシングドライバーの耐火服にも利用された。紀元前のエジプト王朝では、ミイラを永久保存する目的で石綿布を使ったケースもある。また、古代ローマや中国では石綿で織ったテーブルクロスが汚れると火で洗う、つまり汚れを布ごと燃やしたという逸話もある。
 規制前に利用された不燃性建材や石綿原材料が課題であるが、建材などの分析情報は特集記事で詳しく解説されているので、石綿全般の企業向けQ&Aを作成してみた。環境管理の一環として参考にしていただきたい。併せて「環境管理」2021年2月号の北島隆次弁護士の記事もご覧いただきたい。
建材等の石綿分析の概要と技能評価
伴丈 修(株式会社 アサヒテクノリサーチ 技術本部)
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 石綿含有建材を使用した建築物等の解体・改修が2030年頃にピークを迎える。石綿粉じんの飛散リスクを低減するため、石綿障害予防規則と大気汚染防止法が規制強化され、今年2021年4月から施行された。今後、解体工事を開始する前の石綿含有建材の事前調査が増加するが、石綿含有の判定には分析が必要となる。建材に含まれる石綿の分析では、分析者が石綿の有害性の原因となる繊維形態を顕微鏡で判定することが不可欠である。法改正により分析者の要件が定められたが、それとともに顕微鏡の分析では、長期間のトレーニング及び技能評価がより重要となる。

石綿対策の新たな展開
外山 尚紀(一般社団法人 建築物石綿含有建材調査者協会 副代表理事)貴田 晶子(一般社団法人 建築物石綿含有建材調査者協会 代表理事)
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 2020年、大気汚染防止法と石綿障害予防規則が大きく改正された。この改正で、今年4月から大防法では、レベル3建材も規制対象になり、解体など届出対象特定工事(レベル1、2)について直接罰が創設された。元請業者は除去等作業が適切に行われているか確認し、その結果を発注者へ報告する義務も設けられた。従来のような請負業者まかせでなく発注者の責任が重くなり、石綿材を含む建物や製造機械を所有する企業にとっては軽視できない状況になっている。2005年以降何度か法改定されたが、建築物解体における石綿飛散事故はなくならず、建築物解体前の事前調査の見落としや石綿除去作業の不適切さが指摘され、さらなる規制強化を目的として法規制改定(2020年)となった。本稿では石綿のリスクの再確認、規制の歴史、今回の改正の内容、改正内容を担保するために必要な事項、残された課題を述べる。

建材中のアスベスト迅速判定キットの紹介
永井 孝(株式会社 共立理化学研究所 開発部 主任)
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 石綿は、過去に多くの工業製品に使用され、その80%以上が建材に用いられた。しかし、肺がんや中皮腫など重大な健康障害の原因となることが発覚し、現在は輸入・製造・使用などが禁止されている。石綿含有建材を使用した可能性のある民間建築物は約280万棟と推計され、今後、老朽化などで解体件数は増加する。解体件数は2028年頃にピークを迎える。
 建築物の解体時には石綿含有の事前調査を行う必要があり、現場で活用できる石綿の迅速判定キットが求められていた。弊社では、広島県立総合技術研究所保健環境センターの石綿の迅速判定技術をもとに、現場においてわずか10分で石綿の含有を判定できるキットを共同開発したので本稿にて紹介する。

<レポート>

最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
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⦿土壌汚染対策法違反:熊本県発注工事8割届出怠る
⦿水質事故:西宮市で魚大量死
⦿栃木の山火事はタバコが原因
⦿石綿情報:アスベスト携帯測定器を導入
⦿天然ガスの火力発電所建設中止
⦿金融機関などが石炭火力に融資せず
⦿温暖化問題:米証券取引委員会グリーンウォッシングに対処
⦿気候変動リスクの開示
⦿二酸化炭素過去最大の減少幅
⦿二酸化炭素濃度最高を更新
⦿地球温暖化対策推進法改正案を閣議決定、環境アセスの緩和策
⦿瀬戸内海環境保全特別措置法改正案の閣議決定
⦿世界有数の災害国は日本
⦿台風19号の被害住民が2億6,900万円の損害賠償

<シリーズ>

【弁護士からみた環境問題の深層/第5回】弁護士の視点からみた持続可能な洋上風力発電事業の推進──再エネ海域利用法に係わる法的課題とその対応を中心に
高橋 大祐(真和総合法律事務所 弁護士/日本CSR普及協会・環境法専門委員会)
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 SDGs(持続可能な開発目標)や「2050年カーボンニュートラル」という気候変動目標に貢献するビジネスとして洋上風力発電が着目されている。洋上風力発電に関しては、2019年に再エネ海域利用法が施行され、各地で促進区域が指定され、公募手続も開始されるなど法整備も進んできたが、その事業化・ファイナンスにあたっては課題も存在する。
 本稿は、「再生可能エネルギー法務」に取り組む弁護士の視点から、海域の占用、漁業者等ステークホルダーとの権利調整、公募手続、系統接続、資金調達という洋上風力事業の各局面における法的課題を分析の上で、環境・地域社会と共生しながら持続可能な方法で事業を推進する方策について論述する。ESG投資、サステナブルファイナンスの活用上の留意点も解説する。
【産廃コンサルタントの法令判断/第62回】排出事業者責任を負うのはどの会社か?──複数社が絡む製造プロセスから発生する廃棄物
佐藤 健(イーバリュー株式会社 環境情報ソリューショングループ マネージャー)
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 日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第62回)。

【新・環境法シリーズ/第111回】イギリスにおける気候変動への適応法制
朝賀 広伸(創価大学 法学部 教授)柳 憲一郎(明治大学 名誉教授/研究・知財戦略機構研究推進員)
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 イギリス気候変動適応計画は、気候変動リスクアセスメントによって特定した最も緊急性の高いリスクに対処するために、2018年から2023年までの5年間に実施する適応行動とその適応の結果に対する評価とモニタリングなどを求めている。地方自治体にあっては、将来リスクに対して回復力を有し気候変動に備えるために、地域を導き支援する中心的役割を果たすことを目標とし、立法及び政策を通じて、多岐にわたる地域の適応行動に取り組んでいる。また、洪水及び海岸侵食管理の適応に係るケーススタディについて紹介する。
【環境倫理の基礎講座/第5回】超芸術トマソンが養う環境への目線と気づき
佐藤 建吉(一般社団法人 洸楓座 代表理事)
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 旧建築物の一部と新建築物が共存する都市や街の中に、その両者が「妙味ある違和感」が見出されたとき、それを芸術とみなし「超芸術」とリスペクトし「トマソン」と呼ぶ活動がなされている。トマソンは、新旧の共存、とくに旧の中に「無用の用」の価値を見出す。私たち人間が「主体者」として暮らし日々多様化する「環境」、それが織りなす「状況」。超芸術トマソンの発見という活動は考現学の一つであり、私たちが暮らす「環境」を、持続可能な「状況」とするため、「主体者」に観察者と批判者としての目を養う。それは、新たな環境倫理の基(もとい)を教えてくれるだろう。
【環境担当者のための基礎知識/第41回】工業用水に利用される印旛沼の水──湖沼ワーストワンと全国の水質測定結果
岡 ひろあき(環境コンサルタント)
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 大手メーカーが操業する京葉工業地帯に工業用水を大量に供給している印旛沼が千葉県内陸部に立地している。最近まで6年間連続して全国ワースト1の汚れた湖沼である。その水の約6割は工業用水や農業用水、水道水などに利用されている。
 陸域から印旛沼へ流入する汚濁負荷量はかなり多い。中でもCODの約55%は市街地などのノンポイント汚染に起因している。現在も湖沼など閉鎖性水域の水質は改善されず、異常気象による洪水リスクなどを含む多くの課題が残されている。 本稿では印旛沼を例にして富栄養化などの実態や汚染原因、湖沼の持つ問題点を解説する。後半では「令和元年度公共用水域水質測定結果」および「令和元年度地下水質測定結果」について要約を記載する。
【先読み! 環境法/第107回】2月26日閣議決定の瀬戸内特措法改正案(参議院先議)
小幡 雅男(元・大阪学院大学 教授)
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 瀬戸内海における生物多様性・水産資源の確保につなげるための瀬戸内海環境保全特別措置法の改正が2月26日に閣議決定された。当改正案について法律案要綱、新旧対象条文を参考に、同法がどのような仕組みになるのかを紹介する。自然公園法の改正についても解説する。
 
 ❶2月26日閣議決定の瀬戸内特措法改正案(参議院先議)
 ❷自然公園法一部改正案が3月2日に閣議決定され、衆議院に提出
環境法改正情報(2021年3月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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 ◉小型家電リサイクル法
 ◉廃棄物処理法
 ◉グリーン購入法
 ◉資源有効利用促進法
 ◉地球温暖化対策推進法
 ◉水質汚濁防止法等
 ◉土壌汚染対策法
 ◉高圧ガス保安法
 ◉省エネルギー法
 ◉容器包装リサイクル法
 ◉化審法
 ◉再生可能エネルギー電気特措法
 ◉労働安全衛生法
 ◉(その他)立入検査等に係る身分証明書の様式の統合について

<書評>

辻 雄一郎、牛嶋 仁、黒川 哲志、久保 はるか編著『アメリカ気候変動法と政策 カリフォルニア州を中心に』
平沼 光(東京財団政策研究所 研究員)
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 二酸化炭素排出大国であるアメリカは、気候変動問題に対してこれまでどのように取り組み、そして今後はどのような方向に向かうのか。これは世界各国が注目している点であり、とりわけ経済、安全保障面でアメリカとの結びつきが強い日本にとっては、アメリカの政策を読み解くことが日本の政策を構築するうえで極めて重要となっている。
 本書は、気候変動政策に消極的なトランプ大統領が率いる連邦政府下においても、積極的な取組みを続けてきたカリフォルニア州に注目し、気候変動政策における連邦政府の動きが停滞する中、なぜカリフォルニア州では積極的な取り組みが行えたのか、その法制度・各種政策を考察することで、日本の気候変動政策に有益な示唆を与えるものである。
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