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<シリーズ>【新・環境法シリーズ4】排出量取引にかかる総量削減義務―東京都環境確保条例を参考に
大杉麻美 明海大学不動産学部教授
▼概要文表示2012年1月号

 国内排出量取引制度はわが国においてはいまだ正式に導入されない中,東京都では2008年に環境確保条例が改正され,2011年4月から二酸化炭素(CO2)排出にかかる総量削減義務が開始された。総量削減義務は原則としてビルオーナーに課されるが,テナントにも協力が義務が課されることとなった。環境不動産の観点から見てもCO2削減義務は喫緊の課題である。環境不動産を流通させるためには情報整備も必要であるし,また,不動産取引の現場においても,正確なデータの収集・活用に裏打ちされた,的確な情報を適切な形で提供する義務が強化される必要があるだろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流87】(最終回)EU環境法上の予防原則研究の問題点―ドイツ環境法研究の視点から
松村弓彦 弁護士
▼概要文表示2011年6月号

 環境法の新潮流シリーズが始まって以降既に7年余を経過した。このシリーズではわが国で制定・改正された環境関連法と近い将来導入が予測ないし期待される法制度を取りあげてきたが,本年3月末で本務校を退くに際して,このシリーズの編集も交替することとした。折しも,原発事故に伴う諸問題が緊要の社会問題となっていることから,最後の務めとして,損害の発生抑制,リスクの最小化という環境法の基本を率直に見直す意味で,予防原則関連の論点を取りあげる。

<シリーズ>【環境法の新潮流85】生物多様性会議の成果
矢田尚子 白鴎大学法学部専任講師
▼概要文表示2011年4月号

 

 2010年10月,愛知県名古屋市で条約第10回締約国会議(CBD/COP10)が開催され,過去最多となる179の国や地域,国際機関,非政府組織(NGO)などから13,000人以上の人が参加した。会議では,47の決議が採択されたが,そのなかでも,大きな成果といえるのは,遺伝資源へのアクセス規制とその利用から生ずる利益配分(ABS)に関する「名古屋議定書」と,2011年以降の新戦略計画となる「愛知ターゲット」である。そこで,本稿では,これらニつの成果につき,解説を行うことにする。

<シリーズ>【環境法の新潮流84】自然再生推進法の背景と課題
磯田尚子 明海大学非常勤講師
▼概要文表示2011年3月号

 新・生物多様性国家戦略を受け,2002年12月,自然再生推進法が制定された。新戦略には自然保護政策の転換がみられる。この背景には,20世紀初頭の人間中心主義,1970年代以降の自然中心主義を経て,1990年代以降の自然と人間の関わりの重視へと至る環境倫理学の動向がある。以上の視点から,自然再生により再生するものについて,地域における自然と人間の関わりの再生,さらには地域の再生と考える。自然再生事業のあり方については,自然の復元力の手助けに留まる受動的再生を基本に,順応的管理にあたり,多様な主体の参加,伝統的自然利用法の再評価等の課題がある。

<シリーズ>【環境法の新潮流83】取引対象としての排出権(枠)の法的性格
大杉麻美 明海大学不動産学部教授
▼概要文表示2011年1月号

 国内排出量取引制度は,平成23年度からの実施が明記されているところ,取引の対象となる排出権(枠)の法的性質については,国の研究会において,「他人に対して譲渡できることを内容とする『特殊な財産権』」であるとされる一方,学説では,数値説,法律上の地位説,物権説,債権説,無体財産説などがある。さらには,権利実現の確保の観点から考えるべきとするものや,流通促進の観点から考えるべきとするもの等,種々の見解が提示されている。いずれの見解においても,国内排出量取引制度を円滑に運用するための基盤整備の一環として法的性質を捉える必要があるといえるだろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流82】ドイツにおける排出枠取引制度に関する裁判例の一側面
川合敏樹 國學院大學法学部専任講師
▼概要文表示2010年12月号

 排出枠取引の制度化および運用については,一方で温室効果ガスの排出による温暖化や気候変動に対する施策としての有用性が認められながらも,他方では,その内実ゆえに既存の法制度や事業活動の在り方との親和性を確保することが課題でもある。排出枠取引制度の対象となる施設や事業について,直接的規制的手法が多用され,また,基本権保護との均衡が問題となってきたドイツにおいては,この課題は特に重要である。本稿では,こうした課題が争点となった裁判例をいくつか取り上げ,その内容とそれに対する学説などを概観していく。

<シリーズ>【環境法の新潮流81】フランスにおける排出枠割当に関する訴訟例
大杉麻美 明海大学教授
▼概要文表示2010年11月号

 2009年にEU閣僚理事会で採択された「排出枠取引スキーム」を改正する指令は,2005年当時に比較して,航空産業が加えられる等,対象設備を増加したものであった。しかしながら,2005年に採択された指令では,対象施設が限定されたため,フランスでは,産業部門間で割当量が異なるのは,EC条約「一般平等原則」に反するのではないとして2008年に訴訟が提起された。立法目的からすれば産業部門間で割当量が異なることは,一般平等原則に反することはないとされたが,あくまでも気候変動の取組の中で必要に応じ,現状を考慮して産業部門が指定されることに注意する必要があるだろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流80】地球温暖化対策基本法案の概要と課題
矢田尚子 白鴎大学法学部専任講師
▼概要文表示2010年10月号

 温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減(1990年比)するという野心的目標を掲げる地球温暖化対策基本法案は第174回国会の閉会に伴い,審議未了で廃案となった。だが,本法案については,今秋開かれる臨時国会に再提出され,その成立を目指す構えとされる。本稿は,産業界等にも多大な影響を及ぼすことが予想され,懸念の声もあがっている地球温暖化対策基本法案において規定された内容を紹介した後,衆議院環境委員会での議論を参照しながら,本法案の実効性等の検証を行うとともに,25%削減の達成に向けての今後の課題を述べてみたい。

<シリーズ>【環境法の新潮流79】環境社会配慮のあり方と課題について―日本貿易保険(NEXI)の事例を参考に
作本直行 明治大学法学部非常勤講師
▼概要文表示2010年9月号

 途上国における開発事業や政府開発援助(ODA)事業において,当該国の地域社会や自然環境を破壊せず,環境と開発が調和できるような実施が望ましいことはいうまでもない。しかし,持続可能な開発の具体的実現において,環境と開発を巡る優先度には対立が伴いがちであり,環境保護を優先させることは必ずしも容易でない。本論では,かような環境社会配慮の必要性と課題を検討し,具体的な事例として,日系企業の対外的な経済活動に貿易保険を実施する日本貿易保険(NEXI)について,環境社会配慮のあり方を検討する。

<シリーズ>【環境法の新潮流78】廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律
奥田進一 拓殖大学政経学部准教授
▼概要文表示2010年8月号

 平成22年5月19日に公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下,廃掃法)の一部を改正する法律」は,事業者による適正処理の確保,廃棄物処理施設の維持管理対策の強化,不法投棄等に対する罰則の強化,廃棄物処理業の優良化の推進,適正な循環的利用の確保等を内容としている。本稿は,今回の改正の主な要点を紹介し,特に事業者による適正処理の確保を中心とした廃棄物処理の流れについて詳述する。

<シリーズ>【環境法の新潮流77】大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の改正と新しい課題
本間 勝 明海大学不動産学部講師
▼概要文表示2010年7月号

 今回の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律の背景には,近年の事業者による排出基準超過データの改ざん等の不適正事案や河川の水質事故が多く発生したこと,といった法遵守の問題がある。しかし,今回の着目すべき背景は,近年の環境問題の多様化がみられる中で,経験ある公害防止担当者の大量退職等により,事業者並びに地方自治体の公害防止業務が構造的に変化していること,といった制度制定以降初めて直面する深刻な課題などがある。本稿では,その具体的課題についても言及する。

<シリーズ>【環境法の新潮流76】EUにおける統合的汚染防止管理(IPPC)指令の見直し動向
奥 真美 首都大学東京・都市教養学部教授
▼概要文表示2010年6月号

 1996年にEUで導入された統合的汚染防止管理(IPPC:Integrated Pollution Prevention and Control)指令(IPPC指令)に基づくしくみは,産業施設からの大気・水・土壌という複数の環境媒体に対する汚染物質の排出,廃棄物の発生,エネルギー効率,事故の未然防止措置,サイト閉鎖後の措置といった当該施設の環境パフォーマンス全体に係る要素について,ひとつの許可のもとで考慮しコントロールしようとするものである。このしくみの最大の特徴は,「利用可能な最善のテクニック」(BAT:Best Available Technique)を基準として産業施設に遵守を求める排出限界値を設定するところにあるが,実際のBATの見極めと採用においては問題も生じている。そこで,現在,IPPC指令の見直しが進められており,本稿ではその動向について紹介する。

<シリーズ>【環境法の新潮流75】化審法改正の要点と国際的動向
大坂恵里 東洋大学法学部准教授
▼概要文表示2010年5月号

 昨年5月に化審法が改正された。本年4月1日に第一段階施行がなされ,来年4月1日には完全施行される。化学物質については,ライフサイクルの全般を通して適正管理を達成し,2020年までに人の健康と環境への有意な悪影響を最小限にするような方法で使用され製造されることが国際的な目標とされており,今般の改正によって,既存化学物質を含めた包括的な化学物質管理制度が導入され,また,サプライチェーン全体において適切な化学物質管理が実施されることが期待されている。さらに,残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)との整合性が図られた内容となっている。

<シリーズ>【環境法の新潮流74】自然公園法:2009年改正の概要と課題
堀畑まなみ 桜美林大学総合科学系准教授
▼概要文表示2010年4月号

 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律が2010年4月1日から施行される。自然公園法は,風景地の保護と開発,国民の保健・休養等を目的としていた国立公園法を前身としていたため,生物多様性保全がその目的に欠けていた。2002年の改正では国及び地方公共団体の責務に多様性の確保が追加され,2008年6月制定の生物多様性基本法が制定されたことを受けた2009年の改正では,その目的に生物多様性保全が加えられ,新しく生態系維持回復事業が創設された。しかし,自然公園法には運用上の問題があるため,今後,生物多様性保全をすすめるにあたって解決が必要である。

<シリーズ>【環境法の新潮流73】環境法の国際統一化の動向
野村摂雄 財団法人日本海事センター企画研究部特別研究員
▼概要文表示2010年3月号

  環境法は,環境問題の国際化に伴い,国際統一化の様相を呈してきている。環境法の国際統一化は,国際社会の合意として国際法・国際文書で規定された内容を各国が国内法に取り込み実施するというプロセスの結果,環境法の基本理念・原則・対象・措置などさまざまなレベルで実現される。本稿では,環境法の国際統一化の背景である環境問題の国際化,環境法の国際統一化の流れ,そして日本の環境法における具体例をみて,環境法の国際統一化の長所及び短所を指摘する。

<シリーズ>【環境法の新潮流72】 環境犯罪に関するEU犯罪指令の動向と実際的解決方法
森本陽美 明治大学法学部非常勤講師
▼概要文表示2010年2月号

 環境犯罪に対する欧州連合(EU)の取り組みは,欧州委員会も閣僚理事会も刑事罰の根拠付け,管轄,内容,量刑等に関して多少の違いはあるが,統一化・厳罰化の方向で進んでいる。しかし,2006年のプロボ・コアラ号事件のような産業廃棄物投棄による環境汚染・健康被害が生じた場合に,刑事罰の果たす役割は決して大きいとは言えない。特に原因者やその国に環境回復力がない場合は,環境汚染が致命的となる。そのような場合に,ドイツのような連帯拠出基金を用いて,公的資金に頼らず迅速な回復作業を行える経済的仕組みは重要であると思う。

<シリーズ>【環境法の新潮流71】 ドイツ環境法典編纂事業と統合的事業認可構想
松村弓彦 明治大学法学部教授
▼概要文表示2010年1月号

 再度の挫折に至ったドイツ環境法典編纂事業を素材として,分散型の数多くの環境諸法を一体化することによって全体の整合性,機能性と,特に,市民,事業者に対する関係で,法制度の簡明性を図ることの必要性を指摘した。さらに2009年環境法典草案の中核に位置づけられる統合的事業認可構想を素材として,健康リスク・環境リスクについての実体法と手続法の管理基準の一体化が必要であり,特に,我が国では,環境基本法制定後10余年を経過する現在でも,施設起因リスク管理に際してエコシステムに対する配慮が欠けることを述べた。

<シリーズ>【環境法の新潮流70】アメリカにおける自動車CO2排出規制の動向
信澤久美子 青山学院女子短期大学准教授
▼概要文表示2009年12月号

 アメリカにおける自動車二酸化炭素(CO₂)排出規制に関しては,より厳しい基準を持つカリフォルニア州が連邦をリードする役割を担ってきた。これに対して,EPA(アメリカ環境保護省)はカリフォルニアの独自基準の実施を認めなかった。マサチューセッツ対EPA連邦最高裁判所判決において,EPAは自動車からの温室効果ガスを規制するように判示されたがブッシュ政権は消極的態度であった。オバマ政権になり,EPAはカリフォルニア州の厳しい基準の実施を認め,また,現在,オバマ政権による包括的な地球温暖化対策法案が議会を通過中である。

<シリーズ>【環境法の新潮流69】アメリカ合衆国の環境法戦略の新動向―オバマ政権における気候変動に対する国内外の政策と法的対応の動向
ジョージナ・スティーブンス 東京青山・青木・狛法律事務所 ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)外国資格アソシエイト
▼概要文表示2009年11月号

 2009年1月,政権交代でオバマ政権になってから,米国の気候変動に関する国内外の政策に大きな変化がみられる。ブッシュ政権の下での気候変動に対する国内外の政策は,人類の活動に由来する温室効果ガス(GHG)がもたらす影響を否定し,その削減義務・規制の創設を拒否する傾向にあった。これに対し,オバマ政権では連邦議会下院での地球温暖化及びエネルギー問題に関する法案(いわゆるワックスマン・マーキー法案)が議論され,可決された。この,ワックスマン・マーキー法案の内容については,気候変動対策に積極的な州政府の多く,及び連邦行政機関である米国環境保護庁が支援している。また上院では,その関連法案が9月30日にようやく提出された。同法律は,米国が前向きな姿勢を示している2009年12月の国連気候変動会議までに成立するかどうか不明であり,米国が国際的なGHG削減目標に関する合意にコミットできるかどうかもこの動向により影響される。いずれにせよ,これまでGHGを最も多く排出してきた米国が国内外において本格的に気候変動対策に取り組み始めていることは他国にとっても重要な動向である。よって,今後どのような形で法令として成立するか,注目を集めるところであろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流68】EUにおける大気質環境基準(PM2.5)について
大杉麻美 明海大学不動産学部教授
▼概要文表示2009年10月号

  EU新大気質指令(2008)において,PM2.5の限界値・目標値が新たに設定された。PM2.5の環境基準は,あくまでも人の健康を保護するための基準として機能しており,構成国には,当該国の自然環境,科学技術的レベルを踏まえたうえ,構成国間での連携を図りつつ,独自のPM2.5の基準を設けることの柔軟性が見られる。わが国においてもPM2.5の管理基準が模索されているが,管理基準はあくまでも行政上の基準であり,目標を達成するためには,継続的な測定と住民の健康調査等,あるいは,国の環境基準以外の管理基準として,条例,住民協定の活用が望まれるところである。

<シリーズ>【環境法の新潮流67】諸外国における再生可能エネルギーの導入拡大に係る制度設計の動向―RPS制度を中心として
村上友理 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社製品安全・環境事業部CSR・環境グループリーダー
▼概要文表示2009年9月号

 低炭素社会の実現に向けて,太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入拡大が必要不可欠である今,その技術開発や普及促進に向けた取組が注目されている。特に太陽光発電については,日本の技術力の強みを生かし,将来の産業の中核を担うものとして期待も高く,新たな買取制度の導入に向け,7月末現在,詳細な制度設計が行われている。本稿では,再生可能エネルギーの導入促進施策としてのRPS制度と固定価格買取制度をめぐる議論を振り返りつつ,我が国でも導入されているRPS制度を中心に,各国で行われている制度の見直し動向を紹介する。

<シリーズ>【環境法の新潮流66】食品リサイクル法改正の問題
矢田尚子 白鴎大学法学部専任講師
▼概要文表示2009年8月号

 食品リサイクルは,すべての食品関連事業者が取り組むべき課題である。その際,食品リサイクル制度全体の基本的枠組みの理解が欠かせない。そこで,本稿では,2007年の食品リサイクル法改正により,制度の内容がどのように変わり,実効性を高めるためにいかなる取り組みがなされているのかをみていくことにする。具体的には,食品リサイクル法の基本的な知識を確認した後,改正法の特徴やポイント,改正後の現状などについて解説を行う。

<シリーズ>【環境法の新潮流65】改正土壌汚染対策法の概要と課題
大坂恵里 東洋大学法学部准教授
▼概要文表示2009年7月号

 市街地土壌汚染の状況調査と対策を規定した土壌汚染対策法がこの4月に改正された。今般の改正は,1)土壌汚染の状況を把握するための制度の拡充,2)規制対象区域の分類等による講ずべき措置の内容の明確化等,3)搬出土壌の適正処理の確保,4)指定調査機関の信頼性の向上を主な目的としたものであり,これらにより土壌汚染情報の収集・公開が促進されることも期待される。もっとも,複数の重要課題が今なお残されている。とりわけ,ブラウンフィールド問題については,早急に法的な対応を実施していくことが求められよう。

<シリーズ>【環境法の新潮流64】自動車NOx・PM法改正の問題点
浜島裕美 明海大学不動産学部准教授
▼概要文表示2009年6月号

 自動車NOx・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)は,自動車から排出される窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)による大気汚染が著しい特定の地域を対策地域に指定し,排出総量の削減を図る目的で制定された法律である。しかし,車種規制の及ばない対策地域外からの流入車による影響で局地的汚染が継続していたため,平成20年1月1日に法律の改正が行われた。局地汚染対策地区を新設し,流入車対策を設けたのがおもな特徴だが、交通インフラ上の要因もあり,今後取り組むべき課題も多い。

<シリーズ>【環境法の新潮流63】MOX工場事件―環境汚染の防止と国際裁判
南 諭子 津田塾大学国際関係学科准教授
▼概要文表示2009年5月号

 MOX工場事件は、海洋環境の保護という観点からイギリスにおけるMOX工場の操業が問題とされた事件である。アイルランドは、工場の操業停止等を求めて、仲裁裁判所に訴訟を提起するとともに海洋法裁判所に対して暫定措置を要請した。原告の要求がいずれの裁判所においても認められないまま、欧州司法裁判所が有する管轄権との関係で訴訟は終了したが、環境汚染が発生していない場合でも汚染防止義務違反を根拠として行為の停止を求めるという訴えは、環境保護に関して国際裁判が果たしうる機能の一つを示している。このような訴えがいかなる条件の下で認められうるのかという検討が重要となるであろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流 62】生物多様性基本法の意義と問題点
井上秀典 明星大学経済学部教授
▼概要文表示2009年4月号

 生物多様性条約に規定される生物多様性の保全の状況は日本では楽観視できない状況にある。生物多様性基本法はこのような状況を改善すべく議員立法によって平成20年に成立した法律である。予防的取り組み方法の採用、政策形成への民意の反映や計画段階における環境影響評価の実施など特色ある内容を有している。2010年に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議に向けて議長国としてアピールできる内容である。

<シリーズ>【環境法の新潮流61】社会的許容リスクの考え方
奥 真美 首都大学東京都市教養学部都市政策コース教授
▼概要文表示2009年3月号

 社会的許容リスクの考え方が成り立つためには,許容され得る環境リスクのレベルと管理方法を決定し,実行していくプロセスにおいて,参加する主体の多様性,意思決定に必要かつ十分な情報の開示・交流・共有,透明かつ公正な意思決定,選択肢の多様性といった要素が担保される必要がある。そのうえで,最終的に社会的許容リスクのレベルならびにそれへの対応策について判断するのは政策決定者もしくは行政である。当該判断は,予防的な観点に立って果敢になされるべきであるが,一方において,違法性の疑いを排除するためにも,柔軟かつ順応的な措置の見直し,三面関係もしくは多体問題的関係性の考慮が必要である。

<シリーズ>【環境法の新潮流60】環境配慮義務―公法の見地から
荏原明則 関西学院大学大学院司法研究科教授
▼概要文表示2009年2月号

 本稿は,前号の小賀野昌一教授の「環境配慮義務論」に続くものであり,環境配慮義務について公法的側面から検討するものである。従って,小賀野論文との重複を避け,環境配慮義務についての一般的な説明等は本稿の検討に必要最小限に絞った。また環境配慮義務を実現する最も重要な手法である環境影響評価についても検討の範囲から外してある。本稿では,個別法による環境配慮義務に注目し,紹介することとした。

<シリーズ>【環境法の新潮流59】環境配慮義務論
小賀野晶一 千葉大学大学院専門法務研究科教授
▼概要文表示2009年1月号

 環境配慮は今日、訴訟、立法、契約など、様々な段階において要請され、人々の思 考や行動に浸透しつつある。本稿では、環境法の展開を規範論として整理し、環境訴訟、環境立法、契約等における環境配慮義務の存在を確認したい。このようにして環 境配慮義務を追求することは、環境法における体系化に寄与するとともに、都市生活、企業法務等における現代的課題に応えるであろう。環境配慮義務論は、とりわけ 企業活動や都市生活における規範とは何かについて一つの方向を示してくれるであろう。

<シリーズ>【環境法の新潮流58】花粉起因の健康リスク管理のための法政策のあり方
勢一智子 西南学院大学法学部教授
▼概要文表示2008年12月号

 10月半ば日本気象協会から2009年春の全国スギ・ヒノキ花粉の飛散予測が発表された。北日本では例年より少なく,南関東以西では例年より多く花粉の総飛散量が予測されるとのことである。花粉症は,これまで約40年以上,多くの国民を悩ませてきた問題であるが,花粉という自然現象が原因であるため,花粉症患者はリスクを甘受してきた。このような花粉症を社会的リスクと捉え,リスク管理することは可能であるのか。政府や自治体による取り組みを中心として法政策の検討を試みる。

<シリーズ>【環境法の新潮流57】受動喫煙リスク管理のための法制度のあり方について
小幡雅男 大阪学院大学法学部教授
▼概要文表示2008年11月号

 受動喫煙の健康リスク管理について,これまでは,健康増進法第25条により,多数の者が利用する施設の管理者等の判断に委ねる努力義務とし,禁煙・分煙が進められてきた。一方,安全配慮義務違反による賠償責任を認める判例も2004年7月12日に東京地裁から出され,国際的にも,受動喫煙保護のため国に規制を求める動きが高まっており,神奈川県が公共的施設における受動喫煙防止条例の制定を進めている。こうした動きを踏まえ,まず,自治体が地域の実情に即して柔軟に規制できるよう上乗せ・横出し可能な条例委任の根拠を健康増進法に置き,国は,たばこ税を引き上げ,たばこの消費量と喫煙人口を減少させることによって受動喫煙リスクの縮減を進めることを検討してはどうだろうか。

<シリーズ>【環境法の新潮流56】ウルグアイ川パルプ工場事件―国際司法裁判所仮保全措置命令
一之瀬高博 獨協大学法学部教授
▼概要文表示2008年10月号

 ウルグアイが国境を形成する国際河川の沿岸にパルプ工場の設置を進めたところ、隣国のアルゼンチンは、環境への影響を理由に設置計画に反対し、その停止等を求めて国際司法裁判所に提訴するとともに、仮保全措置の指示を要請した。アルゼンチンがさらに両国間の橋梁を封鎖したことから、ウルグアイはその解除等を求め、国際司法裁判所に仮保全措置の指示を要請した。いずれについても、裁判所は仮保全措置を指示する必要を認めず、要請を退けている。本事例は、環境保全をめぐる越境紛争が国家間の国際法上の問題として扱われ、環境への影響や紛争悪化の防止に仮保全措置がどのような機能を果たしうるかが示された例である。

<シリーズ>【環境法の新潮流 55】REACH規則施行後の動向―欧州の化学物質法と日本
増沢陽子 名古屋大学大学院環境学研究科准教授
▼概要文表示2008年9月号

 2008年6月より、欧州新化学物質法・REACH規則の主要部分が施行されている。本稿は、REACH規則のうち旧制度から大きく変わった「既存化学物質の登録」「成形品中の化学物質管理」について、欧州化学物質庁(ECHA:European Chemicals Agency)が公表しているガイダンス文書に基づき、運用の方向性と課題を検討した。登録時のデータ共有に関しては、関係事業者の責任と自主性の強調とともに、費用分担の公平性への配慮が注目される。成形品中の化学物質情報の取り扱いについてはまだ解釈・運用が明らかでない部分がある。日本においても化学物質審査規制法(化審法)の見直しが進められており、公平・効率的な情報収集に向けた議論が必要である

<シリーズ>【環境法の新潮流54】自動車からのNOx・PM及びCO2規制―日米欧における最近の動向
及川敬貴 横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
▼概要文表示2008年8月号

 本稿は、日米欧における自動車由来の窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)及び二酸化炭素(CO₂)規制の最近の動向を俯瞰しようとしたものである。具体的には、自動車排出ガス、燃費、燃料の順に三極の規制動向を整理し、ごく簡単な説明を加えた。日米欧ではそれぞれ規制の強化が進んでいるが、規制の対象や強度の設定、経済的措置の導入具合、罰則の程度などはバラエティに富んでいる。なお、強化された規制システムを総合的に評価するためには、いわゆる「環境正義」の観点が今後益々重要になると考えられる

<シリーズ>【環境法の新潮流53】海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部改正
水田周平 明治大学法学部専任講師
▼概要文表示2008年7月号

 我が国は、海洋投棄を規制する「ロンドン条約1996年議定書」締結にあたり、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)を改正し、関連法令とあわせて同議定書を国内実施することとなった。もっとも今回の法改正は議定書の内容をそのまま実施するわけではなく、一部については条約の定める基準よりも厳格化されている。条約規定と国内法に相違が生ずる場合には、国連海洋法条約との整合性が問題となる。国連海洋法条約は、各汚染源に関する規制についていかなるなる内容の基準を定めるべきかを規制しているからである。海洋投棄の場合には、条約を上回る基準を定めることに問題はない。むしろ我が国の国内法の場合、罰則規定が条約の趣旨目的の実現において十分かどうかが問題となりうる。他方、外国船舶の通航利益とのバランスの上で規制をするべき船舶起因汚染規制の場合には、条約を上回る基準を定めることが国連海洋法条約に抵触する可能性があり、十分な検討が必要となる。近年欧州連合(EU)などを中心に刑事罰による環境規制の強化が議論されているが、海洋環境保護規制の場合はこの点に留意すべきである。

<シリーズ>【環境法の新潮流 52】食品循環資源再利用の現状と2007年改正法
堀畑まなみ 桜美林大学リベラルアーツ学群准教授
▼概要文表示2008年6月号

 2007年に改正食品リサイクル法が施行された。旧法では、再生利用等実施率の達成目標を食品関連事業者に対し一律に課していたが、食品小売業や外食産業では積極的な取り組みがみられなかった。本改正では、5年間の運用で発生した課題を受け、業種別の達成目標値設定、各事業者への達成目標値設定、多量発生事業者への罰則規定創設、熱回収の再生利用等の手法への追加等を行った。本改正は事業者にとって厳しいものとなったが、再生利用事業計画の認定制度や熱回収など、リサイクルに取り組みやすい仕組みも導入されている。

<シリーズ>【環境法の新潮流 51】EUの環境政策と刑事罰の動向
森本陽美 明治大学法学部兼任講師
▼概要文表示2008年5月号

 環境犯罪は、通常の犯罪と比較して侵しやすく、被害の特定も困難である。EUの刑法による環境保護は1998年に始まるが、2001年以降は、EC条約175条(第1の柱)をその根拠とする欧州委員会とEU条約29, 31, 34条(第3の柱)をそうする閣僚理事会の主導権争いが続いている。欧州司法裁判所は、今のところ委員会に軍配を上げ、刑事罰強化と刑法のハーモナイゼーションが一層進む流れにある。市場の公正さの確保や政策追求、刑事訴追の確実性を考えるとハーモナイゼーションは確かに必要に思えるが、行政罰が専門的で効果的であるとの見解も根強い。

<シリーズ>【環境法の新潮流 50】製品規制・各論―日本におけるLCAの現状と課題
浜島裕美 明海大学不動産学部准教授
▼概要文表示2008年4月号

ライフサイクルアセスメントLCAは、製品規制手法の一つと位置付けられるが、既存手法に一部取り入れられていたり、手法自体に未整備部分があると指摘されている。消費者の環境行動に対する有益な手段であると思われるのだが、新たな枠組みとして機能するためには、LCAの採用が企業の経済的評価に直結することが重要であり、そのための施策の検討が重要である。

<シリーズ>【環境法の新潮流49】製品規制・総論―欧州の統合的製品政策
柳憲一郎 明治大学法科大学院教授
▼概要文表示2008年3月号

 欧州における製品規制の政策には,廃電気・電子機器指令(WEEE指令)(2002/96/EC),電気・電子機器の特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)(2002/95/EC・2005/95/EC)や新化学品(REACH規則)(1907/2006)のように,ある特定製品または原料に対する禁止や制限といった「伝統的な」製品規制があるが,その中心にあるのが,第6次環境行動計画で謳われた統合的製品政策(IPP:Integrated Product Policy)である。その狙いは,ライフサイクルの概念的な枠組みを与えることで既存の製品関連の政策を補完し,IPP政策によって,現在及び将来の環境に係る製品政策手段の調整や統一性を強化することにある。その政策の履行状況は,必ずしも順調とはいえないが,ステークホルダーとの協働とライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発や自主的手法を組み込んだ統合的な製品管理として意欲的な試みであり,今後の発展が期待される。

<シリーズ>【環境法の新潮流48】環境法におけるリスク管理水準決定の現状と課題
増沢陽子 鳥取環境大学環境情報学部准教授
▼概要文表示2008年2月号

 リスク管理水準の決定は,リスクアセスメントと管理との接点にあって管理の方向を定める重要な意義をもつ。環境法においては,基準設定,又はそれ以外の管理手段の選択・発動に際し,明示的黙示的にリスク管理水準の決定が行われてきた。多くの場合は,ADIや一定の超過リスクの程度による,実質的に安全とみなせる程度をリスク管理基準とする場合が多いが,部分的に技術的・経済的可能性から管理水準を定めている場合もあり,リスクと便益との比較も不可能とはいえない。立法論的には,管理水準に関する実体要件は法律上明確にすることが望ましく,実際の水準決定の手続についても今後検討する必要がある。

<シリーズ>【環境法の新潮流47】環境リスク概念
黒坂則子 神戸学院大学法学部専任講師
▼概要文表示2008年1月号

 近年,「環境リスク」問題は,特定の化学物質の使用や廃棄物処理施設の立地などの場面で取り上げられることが多いが,リスク概念は極めて不確定であり,行政,事業者,市民間の認識に大きな隔たりがみられるところである。本稿は,この「環境リスク」を取り上げ,不確実性,不可逆性といった特徴を持つ環境リスクの管理のあり方を様々な視点から考察することを目的としたものである。具体的には,予防的アプローチ,リスクコミュニケーション,環境リスク保険といった視点である。その上で,土壌汚染リスクを例に取り上げ,その現状および将来の課題について若干の考察を行うことにしたい。

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