通信教育QA:7水質概論

第1章 水質汚濁防止法

Lesson2 定義

規制の対象となる生活排水について

Lesson3 特定施設

法規制対象となる施設(特定施設)の要件とは?
  • Q全文:水質汚濁防止法において特定施設となる具体的な要件とは何ですか?


A答え:端的に解説すると、水質汚濁防止法施行令別表第1に掲げる施設=特定施設となるのですが、順を追って説明していきます。水質汚濁防止法第2条第2項に、「この法律において「特定施設」とは、次の各号のいずれかの要件を備える汚水又は廃液を排出する施設で政令※1で定めるものをいう。」とあり、ふたつの要件が示されています。
 1.カドミウムその他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令※2で定める物質(以下「有害物質」という。)を含むこと。
 2.化学的酸素要求量その他の水の汚染状態(熱によるものを含み、前号に規定する物質によるものを除く。)を示す項目として政令※3で定める項目に関し、生活環境に係る被害を生ずるおそれがある程度のものであること。

 3つの政令が出てきましたので、次に政令(水質汚濁防止法施行令を指します)を見ていくと、政令※2は施行令第2条、政令※3は施行令第3条となり、ここに具体的な物質名と汚染状態が列挙されています。この要件に該当する施設を明示しているのが、政令※1(施行令第1条)を受けた施行令別表1になるということです。
 法律を学ぶには、実際の条文を常に参照しながら見ることが効果的です。最初は面倒に思えるかもしれませんが、慣れるとより理解が深まると思います。

【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/水質汚濁防止法第2条第2項、施行令第2条、第3条、別表1

Lesson4 排水基準

「水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物」と「アルキル水銀化合物」の違いは何?
  • Q全文:「水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物」と「アルキル水銀化合物」の一律排水基準の違いは何ですか?

A答え:「水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物」は、環境基準項目の「総水銀」に対応する項目です。これはアルキル水銀を含んだ複数の水銀化合物を対象としたものです。水俣病の原因ともなり、人体に吸収されやすく有害性の高い「アルキル水銀」については、“検出されないこと”とされており、「水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物」よりも厳しい基準値設定となっています。

【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/排水基準を定める省令
 
排水基準の日間平均とは?
  • Q全文:生活環境項目における排水基準の日間平均とは、24時間連続計測した値の平均値ですか?

A答え:水質汚濁防止法の排水基準では、日間平均値による規制は、BOD、COD、SSなどの項目で用いられています。1日の操業時間内において排出水を3回以上測定した結果の平均値を「1日の排出水の平均的な汚染状態=日間平均値」として取り扱っています。
 ※日間平均値のある項目は、日間平均値と最大値の両建ての規制となっており、排水水質の日間変動を考慮し、最大値は日間平均値より高い値(約30%~増)となっています。

 【参照】通信教育テキスト『水質概論』/Lesson3 知識強化のための補足
       水質概論資料集『水質関係法令』/排水基準を定める省令
一律排水基準の健康項目の表と水質汚濁に係る環境基準の表(人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)の違いについて
  • Q全文:一律排水基準の健康項目の表と水質汚濁に係る環境基準の表(人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)はそれぞれどこが違うのでしょうか?

A答え:前者は「排水基準」の値です。つまり、水質汚濁防止法で定める特定事業場から公共用水域に排出される水(排出水)に対する基準値です。 後者は「環境基準」の値です。つまり、環境基本法で定める水質関係の環境基準の値です。これは公共用水域(河川、湖沼、海域)に適用されるものです。 まず行政上の目標となる「環境基準」が定められ、それを達成するために水質汚濁防止法で排水基準が定められています。  それぞれの表の値をご覧いただくと、例えばカドミウムであれば、環境基準は0.003mg/L、排水基準は0.03mg/Lと、排水基準は環境基準の10倍の値が設定されていることがわかります。これは特定事業場から排出される水のカドミウム濃度が0.03mg/Lより低ければ、河川等で希釈されて環境基準の0.003mg/L以下を達成できるだろうと見込んで設定されたものです。定められている物質ごとに毒性や健康影響が異なるため、一律に10倍の値が設定されているわけではありませんが、環境基準と排水基準は以上のような考え方により設定されています。そのためにほぼ同じ物質が挙げられています。 出典となる法令は以下の別冊の資料編でご確認ください。
 ※日間平均値のある項目は、日間平均値と最大値の両建ての規制となっており、排水水質の日間変動を考慮し、最大値は日間平均値より高い値(約30%~増)となっています。

 【参照】資料編『水質関係法令』排出基準を定める省令/別表第1
       資料編『水質関係法令』水質汚濁に係る環境基準について/別表第1
有害物質28項目について
  • Q全文:有害物質28項目は一律排水基準の健康項目の表と水質汚濁に係る環境基準の表(人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)のどちらに依るものでしょうか?

A答え:有害物質28項目は、水質汚濁防止法施行令第2条第1~28号に掲げられる物質です。環境基準と排水基準ではほぼ同じ物質が挙げられているため、一般にどちらも有害物質と呼ばれることがありますが、水質汚濁防止法で定められる「有害物質」に定める排水基準の値(許容限度)が一律排水基準の健康項目の表になります。環境基準では有害物質という言葉は使っておらず、「健康の保護に関する環境基準」(一般には健康項目といいます)という言葉を使っています。 ただし、有害物質とその基準値を定める排水基準には若干の相違があります。 水質汚濁防止法施行令第2条で有害物質として28物質が定められています。第27号に塩化ビニルモノマーが掲げられています。しかし、その排出基準の値が定められている「排水基準を定める省令」の別表第1では、塩化ビニルモノマーの値は定められていません。これは、塩化ビニルモノマーの地下水への影響が主に問題になっていることから、公共用水域への排水規制である「排水基準」として基準値が設定されていないためです(現在のところ)。ちなみに、塩化ビニルモノマーは地下水の水質汚濁に係る環境基準には基準値が設定されています。

 【参照】資料編 『水質関係法令』水質汚濁防止法施行令第2条
     資料編 『水質関係法令』水質汚濁に係る環境基準について
     資料編 『水質関係法令』排出基準を定める省令/別表第1
       資料編 『水質関係法令』地下水の水質汚濁に係る環境基準/別表1
塩化ビニルモノマーについて
  • Q全文:一律排水基準の健康項目の表と水質汚濁に係る環境基準の表(人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)ともに塩化ビニルモノマーが入っていないのはなぜでしょうか?

A答え:塩化ビニルモノマーは地下水への影響が主に問題になっています。したがって水質汚濁防止法では、「特定地下浸透水を浸透させてはならない」と規定されています(資料編『水質関係法令』水質汚濁防止法第12の3)。この「特定地下浸透水」とは、「有害物質」の製造等をする特定施設を設置する特定事業場から地下に浸透する水を指しますので、塩化ビニルモノマーも対象になることになります。 また、地下への浸透があり、人の健康被害が生じるおそれが認められる場合、地下水浄化のための措置命令を都道府県知事が出すことができますが、目標値として浄化基準値が設定されています。これにも塩化ビニルモノマーの地下水浄化のための基準値が設定されています。  また、塩化ビニルモノマーはクロロエチレンの別名であり、直近の改正により「クロロエチレン(別名塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)」という名称になりましたので、今後は改正の際にそれぞれの法令でこの表記に統一されていくものと思われます。

 【参照】資料編 『水質関係法令』水質汚濁防止法第12の3
     資料編 『水質関係法令』水質汚濁防止法施工規則/別表2
     資料編 『水質関係法令』地下水の水質汚濁に係る環境基準/別表1
      

Lesson5 総量規制

「指定地域」とは何か?
  • Q全文:水質総量規制「指定地域」とは、具体的にどこの地域を指していますか?

A答え:まず、水質総量規制制度では、排水基準のみでは環境基準の達成が困難な地域として、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海(大阪湾含む)を指定水域として定めています(具体的には水質汚濁防止法施行令第4条の2の表に掲げられた水域を指します)。
指定地域とは、その指定水域に流入する河川等の流域を指し、水質汚濁防止法施行令別表第2において、埼玉県川越市(東京湾に流入する河川をかかえる)や大分県大分市(瀬戸内海に流入する河川をかかえる)等が指定されています。

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  ※総量規制対象地域=指定地域
【参照】水質汚濁防止法施行令(別表第2)

Lesson7 特定地下浸透水/構造基準等

「浄化基準」とは?
  • Q全文:浄化基準とは何に係る規制でしょうか?基準値を超過した場合の罰則はありますか?

A答え:「浄化基準」は地下水の水質浄化に係る措置命令に係る判定基準として使われます。特定事業場、有害物質貯蔵指定事業場において、有害物質に該当する物質を含む水の地下への浸透があったことにより、人への健康被害が生じる又は生じるおそれがある場合、都道府県知事等は事業場の設置者等に対して、この「浄化基準」を(飲用井戸の取水口等において)満たすように、地下水の水質の浄化のための措置を取るように命ずることができるとされており、基準値超過自体に罰則はありませんが、浄化措置命令に従わなかった場合は罰則の対象となります。

【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/水質汚濁防止法第14条の3、施行規則第9条の3(別表第2)、水質汚濁防止法第30条(罰則)
 

Lesson10 汚濁状況の監視/雑則

「排出水を排出する者を除く」の意味は?
  • Q全文:水質汚濁防止法第22条第2項において、環境大臣又は都道府県知事が報告を求める対象について、カッコ書きで“(排出水を排出する者を除く。)”とあるが、なぜ除外されるのでしょうか?《過去問題にチャレンジより》
A答え:第22条は、環境大臣又は都道府県知事が、事業場の設置者等に対し汚染状況等の報告を求めることが出来ること等が定められた条項です。第1項をまず見てみると、「特定事業場」と「有害物質貯蔵施設」の設置者等を対象として、報告を求めるとともに立入検査ができる旨が定められています。ここですでに「特定事業場(排出水を排出する者)」に言及されており、第2項では、総量規制に関し特定事業場にあたらない(排出水を排出しない)事業場に対し報告を求めることができるとしている規定であるため、第1項と第2項での重複をさけるためのカッコ書きです。排出水を排出する者が報告を求める対象から外れているわけではありません。

【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/水質汚濁防止法第22条
 

 

第3章 環境基準

Lesson13 水質関係の環境基準

全シアンの環境基準はなぜ最高値?
  • Q全文:「人の健康の保護に関する環境基準」のうち、全シアンのみ最高値とするとなっている。他の項目が年間平均値のところ、全シアンのみ最高値としている理由は何ですか?
A答え:年間平均値で評価される物質は、長期間の蓄積によって慢性的な影響が現れる物質です。対象となっている多くの項目がこのような慢性毒性を示す物質です。反対に、シアン化合物は急性毒性をもつ物質のため、瞬間的な濃度が問題となります。そのため毒性の評価は最高値で行われます。

 【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/水質汚濁に係る環境基準について
 
同じ類型なのに基準値・指針値が異なるのはなぜ?
  • Q全文:水生生物の保全に関する要監視項目の指針値が河川と湖沼及び海域で違うのはなぜですか?
A答え:生活環境項目(「水生生物の生息状況の適応性」を含む)の基準値を設定する場合、類型、つまりその水資源を何の目的に使用するのかを区分した上で基準値を設定するため、値が違ってきます。同じ類型で表記されているのに、なぜ、「河川及び湖沼」と「海域」で基準値(指針値)が異なるのかというと、これは「河川及び湖沼」の生物Aと「海域」の生物Aは違う類型だと考えると分かりやすいと思います。淡水域と海域では生息する生物種が全く異なります。食物連鎖の組み合わせも異なりますので、それらを総合的に評価して適正な値が設定されているためです。

 【参照】水質概論資料集『水質関係法令』/水質汚濁に係る環境基準について
 

 

第4章 水質汚濁の現状

Lesson14 環境基準の達成状況

環境基準の達成状況の考え方について
  • Q全文:全窒素と全りんの環境基準の達成状況の考え方について詳しく知りたい。

    A答え:下表注3)をみると、全窒素と全りんの環境基準が適用される水域は両方が環境基準を満足してはじめて達成水域となり、全りんのみが適用される水域は全りんが環境基準を満足するだけで達成水域となることがわかります。
     つまり、すべての水域が全窒素と全りんの両方が対象となるわけではなく、また、全りんだけが環境基準を達成していても達成率にカウントされる水域もあるということです。
     ややこしいですが、表の値からはこれらの内訳が単純に割り出せません。表の赤囲みのように、全窒素・全りんの達成率としては、60÷121×100≒49.6%となります。また、全窒素だけでみると5÷40×100=12.5%となります。
    個々の水域(琵琶湖、諏訪湖など121の水域)ごとに達成か否かを判定した詳細な調査結果も以下の環境省のホームページに公開されていますので、ご興味があれば確認ください。
    https://www.env.go.jp/water/suiiki/
      QA0201.PNG
    注:・・・
    3)「全窒素・全燐」の環境基準の達成について
     ① 全窒素及び全燐の環境基準が適用される水域については、全窒素・全燐ともに環境基準を満足している場合に達成水域としている。
     ② 全燐のみ環境基準が適用される水域については、全燐が環境基準を満足している場合に達成水域としている。
      ・・・

第5章 水質汚濁と発生源

Lesson16 原因物質と水質指標

DOとBODの関係性について
  • Q全文:DO(溶存酸素)とは何か?BODとはどのような関係でしょうか?
     
A答え:溶存酸素とは水中に溶けている酸素のことです。BODとは、水中の好気性微生物によって消費される溶存酸素の量を言います。水中の有機物(=栄養分)が多いほど微生物が活発に活動するため、溶存酸素はたくさん使われます。BODは、有機(物)汚濁の指標として使われるものですが、直接有機物量を測定するのではなく、微生物により消費され失われる溶存酸素量によって、水中にどれだけ有機物があるか推し量るものです。
 

 

第6章 水質汚濁機構

Lesson22 海域

感潮河川とは何か?
  • Q全文:「感潮河川」とは、どんな河川のことを指しているのですか?
     
A答え:感潮河川とは、海の潮位変化により影響を受ける構造の河川を指します。
※河口部の水深が浅い場合には河口部に広い干潟が形成される場合もあります。河口部自体がエスチャリーとなって海に開けている構造です。

【参照】河川用語集(国土交通省 国土技術政策総合研究所)
 

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