通信教育QA:4ばいじん・粉じん特論

第1章 処理計画

Lesson1 ダストの特性

粒子径とふるい上Rとの関係は?
  • Q全文:粒子径とふるい上Rの関係について詳しく知りたい。


A答え:ふるいの網目の大きさを”目開き”といいます。ふるい上または残留率の測定において粒子径dpと言うのは”粒子径”そのものではなく、その粒⼦径サイズの⽬開きを表しています。目開きdpの網でダストをふるい、ふるい上に残ったものが”ふるい上”で、ふるい目を通過したものを”ふるい下”といいます。ふるい上は残留率Rとも言い、質量または個数基準で、単位は%で表します。ふるい上グラフにおいて粒⼦径(dp)=0とは目開き0のふるいすなわち金属板のような穴のない網(網とは⾔えませんが)でダストをふるった場合で、ふるい上は100%(すべてふるい上に残る)となります。逆に粒子径(dp)=dpmaxでは、すべてのダストがふるいの網目を通過するときの最小限の目開きの場合(dpmax以上の目開きではすべてのダストがふるい下に通過する)を表し、ふるい上は0%となります。

0418A.PNG

第2章 集じん装置の原理,構造,特性及び維持・管理

Lesson4 流通形式集じん装置

サイクロンが小型になっても圧力損失が変わらない理由は?
  • Q全文:サイクロンが小型になると集じん率は大きくなるが圧力損失が増加しないのはなぜですか?


A答え:一般に、サイクロンなど装置を小型化すると、圧力損失が増加するような感じがあろうかと思いますが、サイクロンの圧力損失は、実験式として

  148式➀.JPG------------------  ①
 

で表されます。
ここで、ρg :ガスの密度、F:圧力損失係数、ui:接線方向の入口速度 です。

 圧力損失係数 F は実験式で与えられており、その結果、圧力損失に関してはサイクロン入口管路の断面積と内筒の断面積が最も大きく影響し、外筒径や円筒部、円錐部の高さの影響は小さいことが知られています。また、サイクロンを相似形で縮小した場合、圧力損失係数 F は変化しませんから、入口速度 ui が同一であれば、圧力損失は同じ(増加しない)ということになります。 

 後半部分の理解の助けのために、圧力損失係数Fの実験式を以下に示します。
     148式②.jpg----------伊地谷による実験式       

  148式③.jpg----------Firstによる実験式       

      148図.jpg
ここで、
b:入口管路の幅、h:入口管路の高さ、D1:外筒の内径、
D2:内筒の内径、H1:円筒部の高さ、H2:円錐部の高さ  です。
 

 サイクロンが相似形であれば、これら寸法がすべて等倍になったとしても、実験式の分子分母で打ち消し合うのでFの値は変わらず、従って、圧力損失も変わらない、ということが分かります。サイクロンの胴部、筒部の大小だけではなく、「相似」が重要なポイントです。

 上記3つの式を暗記する必要はありません。「サイクロンが小型になると、集じん率は大きくなるが、圧力損失は増加しない」という結論のみ覚えておけば良いでしょう。

粒子径が小さくなると拡散荷電が支配的になる理由は?
  • Q全文:dpが小さくなると拡散荷電が支配的になるのはなぜですか?

A答え:コロナ放電のイオンの輸送機構には、
1) 電気力による電気力線に沿った輸送、2) 熱拡散運動によるランダムな輸送の2つがあります。
そして、1)による微粒子の荷電を電界荷電、2)による荷電を拡散荷電と言います。
 イオンは、基本的には、電気力線に沿って流れる訳ですが、この方向への動きの他に、ブラウン運動のように、ちいさな揺らぎの動き(電気力線の方向と違う方向への動き)をしています。
 図(a)のように、粉じんなどの被荷電粒子が十分に大きい場合には、電気力線に沿ってやってくるイオンは、小さく揺らいでいても関係なく、粒子にぶつかって付着し、荷電に寄与します(電界荷電)。しかし、図(b)のように、被荷電粒子がゆらぎの範囲(平均自由工程0.1μm)と同程度に小さくなって来ると、それでもイオンは粒子よりは小さいのですが、粒子をイオンがよけてしまう確率が増えます。逆に、イオンと粒子がぶつかるのは、イオンの揺らぎにより、電気力線の方向に対して「側面衝突」のような形となり、これによりイオンが付着して荷電されるのが拡散荷電、という訳です。149図.JPG
微粒子とイオンとが接触する支配的なメカニズムが、粒子径により変わる、とお考え下さい。
 

Lesson5 障害物形式集じん装置

液ガス比の定義と集じん率の関係に付いて
  • Q全文:液ガス比の定義と集じん率の関係について詳しく知りたい。

A答え:“液ガス比”とは、サイクロンスクラバー、ジェットスクラバー、ベンチュリスクラバーなどの洗浄集じん装置、吸収装置などの“気液接触装置”で、装置の内部を流れる液とガスの流量比を言います。

 

装置内を流れる液体の流量:LM

装置内を流れる気体の流量:GM

とすると液ガス比は

              液ガス比 = LMGM   ( L/m3です。

すなわち、流量1m3 のガス中のダストを除去するのに何L の液体を要するかを表します。

 通常、洗浄集じん装置では液ガス比を大きくとれば集じん率は上昇しますが、液ガス比を大きくすることにより使用液量、排水処理すべき水量が増加するなど経済的に不利な問題も生じてきます。したがって、通常は集じんに最も適した液ガス比が存在し、その値は装置の種類によっても異なります。

Lesson6 隔壁形式集じん装置

マノメーターの装置詳細、バグフィルターとの関係は?
  • Q全文:マノメーターとはどのような装置か、構造・形式、機能、性能、用途などを教えてください。また、バグフィルターとはどのような関係なのでしょうか?

A答え: ”マノメーター“とは”圧力計“です。工学分野では特に断らない限りガラス管をU字形に曲げ中に水や水銀などの液体を入れた装置(器具)です。U字管の液体の高さの差が圧力差を示します。
 図にU字管マノメーターを示しました。U字管の両端にかかる圧力が等しければ、U字管中の液体の高さは等しくなり、
    ΔP = 0
となります。また、 P1 > P2   の場合は、図のように P1 側の液の高さが低くなり、P2 側の液の高さが高くなります。このため、液柱の高さの差 ΔP を読み取ることによって、圧力差を知ることができます。
           151図.JPG
 U字管中の液体を例えば水銀にすることによって、高い圧力差を検出することが可能ですが、工場内の除じん装置等での圧力損失は大きくありませんので、通常水が使用されます。
 マノメーターにはU字マノメーター以外にも真空、減圧状態を測定するためのものもあります。しかし、テキスト中のマノメーターは全てU字マノメーターと考えて間違いありません。

 マノメーターはバグフィルターとだけ関係しているわけではありません。Lesson3「知識強化のための補足」図-①にもありますように、ピトー管での動圧又は静圧を測定する目的で使用されたり、オリフィス前後の圧力損失を測定したりするのに使用されます。
図-①
  151図➀.jpg
 バグフィルターの場合、隔壁形式の除じん装置であるため、新品のバグや粉じん払い落とし直後のバグでは通気抵抗が比較的低く(圧力損失が小)、運転時間の経過とともに一次付着層の形成、隔壁の形成に伴って、通気抵抗は高く(圧力損失が大)なっていきます。したがって、バグフィルターに接続したマノメーターの読み(液柱差)は最初小さく、段々と大きくなっていきます。
 もし、マノメーターの読みが急激に小さくなった場合には、粉じんの払い落としが行われたか、バグの破損等が考えられます。払い落としは定期的に行われ、払い落とし後のマノメーターの値も経験的に分かっているのが普通ですから、これより低い数値になった場合にはバグの破損を考えるのが普通です。また、極端に圧力損失が大きくなった場合は、粉じんの払い落とし不良や、水分等によるバグ表面の固着などが考えられます。すなわち、マノメーターの読みは通気量の大小、圧力損失の大小と関係しており、運転状況をモニターする上で最も重要かつ簡単な方法といえます。

粉体の比表面積とは?
  • Q全文:粉体の比表面積径の定義求め方について教えてください。
     

A答え:今、何らかの方法で粉体の比表面積を測定する(比表面積の測定法には、吸着法、透過法などがありますが、ここでは割愛します)ことが出来たとき、この粉体を構成する粒子が、すべて均一な、同じ直径の球形であると仮定した場合の粒子の直径を「比表面積径」と言います。

直径D(=半径D/2)、密度ρ(g/cm³)、n個の球形粒子があるとき、
その体積は、V=n・4/3π(D/2)³=n・πD³/6 ⇒その質量はρ・n・πD³/6 ・・・①
その表面積は、S=n・4π(D/2)²=n・πD² ・・・②
比表面積Swは、1g辺りの表面積ですから、②÷①で求められます。
 Sw=n・πD² ÷(ρ・n・πD³/6)=6/ρD ・・・③
これをDについて整理すれば、
 D=6/(ρ・Sw) ・・・④

粉体の密度ρと、比表面積Swが分かれば、均一な直径の球形粒子と仮定することにより、④式で比表面積径Dを計算することができます。

第4章 ばいじん・粉じんの測定

Lesson10 ばいじん・粉じんの測定

特殊ピトー管の「背圧」とは?
  • Q全文:図10-6特殊ピトー管の「背圧」とは「静圧」と同じでしょうか?

    A答え:特殊ピトー管の使用方法は下図のようになります。排ガスの流れに対する特殊ピトー管の設置方法がピトー管と異なります。したがって、流れの中の物体下流における圧力となるため「背圧」と表記しておりますが、静圧と同じです。

153図.jpg
 
 
高速で吸引するとダスト濃度を過小評価してしまう理由は?
  • Q全文:吸引速度が排ガスの流速より大きくなると、なぜダスト濃度が過小評価されるのでしょうか?
     
A答え:図を読み取る場合次の点に留意してください。
  ① 流速の大小 → 図では「流線の密度」の大小  で表現されています
  ② 流速が小 → 流線密度が小 → 図では「流線と流線の間隔が広い」
  ③ 流速が大 → 流線密度が大 → 図では「流線と流線の間隔が狭い」
 図の左端の場合:排ガスの流速 < 吸引速度
図では  排ガスの流線密度(間隔広) < 吸引速度の流線密度(間隔狭)

  排ガス流速度に比べてサンプリング用の吸引速度が大きい場合、図にあるように吸引されるガス(排ガス)は、吸引口の断面よりも広い範囲から吸引されることになります。図では、吸引口断面よりも広い範囲の流線が曲がって吸引口に入っていくことになり、吸引ガス量は大きくなります。一方、排ガス中に含まれる粒子状物質は運動量が大きいため、ガスのように流線が曲がることはなく、ガス中の粒子は吸引口断面の幅の部分のみが吸引されます。このため、ダスト濃度を等速吸引に比べて過小評価することになります。

 ダスト濃度 (%) =吸引ダスト量/吸引排ガス量  ×100
  ダスト:等速吸引の場合のダスト量と同一
    排ガス:等速吸引の場合よりも多い量

158図.JPG
 
 

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