通信教育QA:8汚水処理特論

第2章 物理化学処理法

Lesson4 汚水処理方法の概要

「懸濁物質」と「浮遊物質」の違いと、処理方法について教えてください。
  • Q全文:「懸濁物質」と「浮遊物質」の違いとは何ですか?処理方法と共に教えてください。


A答え:「懸濁物質」と「浮遊物質」、どちらも水に溶けない固体物質が水中などの液体中に分散して分離できない状態にある固体物質のことです。ニュアンスとしては、浮遊物質はいつまでも漂っていて沈降してこないという意味合いが強く出ている用語かと思います。
「沈降分離法」と「沈殿法」:沈殿法も固体成分を沈降させて分離する方法のことです。
1.「沈殿法」は大別すると「普通沈殿」と「凝集沈殿」に分けられます。普通沈殿は凝集操作を施さずにそのまま沈降分離させる方法です。
2.「重力式分離法」は大別すると「沈降分離法」と「浮上分離法」があります。加圧浮上法は圧縮空気を使って細かな泡を発生させ、この泡を懸濁物質に付着させて浮力を上げて浮上分離する方法です。

Lesson5 沈降分離

ストークスの式について教えてください。
  • Q全文:ストークスの式について教えてください。

A答え:ストークスの式でQA8-5_1.png.png ρs-ρ >0 即ち ρs>ρのとき v >0 で沈降します。
 ρs-ρ =0    ρs=ρのとき v =0 なので固体粒子は動きません。
 ρs-ρ <0    ρs<ρのとき v <o なので上に浮いていきます。
このほか、式より
 v ∝ d2  ∝:比例
 v ∝ 1/μ 即ちμに反比例する
試験でストークスの式の計算は出たことがないと思いますが、でた場合は単位に気をつけて式に数字を入れて計算します。
  
沈降分離にて横流式沈殿池について教えてください。
  • Q全文:横流式沈殿池の方が効率が良いのはなぜですか?

A答え:上昇流式沈殿池に比べて、横流式沈殿池は、沈降速度が小さくて、図のL-Eのような経路をたどる粒子であっても、図のFより下の位置から流入した粒子は除去されるはずなので、横流式の方が効率がよいといえます。
  QA8-5_2.png.png
  ※沈殿地の分離効率 

Lesson8 砂ろ過機の支持砂利層について

砂ろ過機の支持砂利層の役割について
  • Q全文:砂ろ過機の支持砂利層の役割について教えてください。


A答え:支持砂利層はその名の通りろ材である砂の層を支持・保持するための層です。ろ材の砂を逃がさないように、下層に大きな砂利、上層に小さな砂利を層状に敷き並べ、その上にろ材である砂層を形成します。
砂ろ過では目詰まりが発生するため“逆流洗浄”を行う必要がありますが、逆流洗浄を繰り返すと小さな砂粒子が上に、大きな砂粒子が下になる傾向が強くなります。砂ろ過では上層の粒子が大きく下層の粒子径が小さいのが理想的とされます。
避けて通れない逆流洗浄を繰り返しても、常に上層の粒子が大きく下層の粒子が小さい状態を維持できるのが“多層ろ過”です。逆流洗浄しても小さな粒子が下になり、大きな粒子が上になるよう、ろ材の材質を変え、粒子径の大きな上層になる材質には比重の小さなアンスラサイトなどが使用されます。
付着させて浮力を上げて浮上分離する方法です。


Lesson10 酸化と還元

酸化剤・還元剤間での電子の授受について
  • Q全文:ある原子又は化合物から電子が失われることを酸化,原子又は化合物が電子を得る反応を還元としていますが表とは逆のことを言っているのではないでしょうか?

    反応の形態・定義 酸化 還元
    酸素との反応 酸素と結合 酸素を放出
    水素との反応 水素を放出 水素と結合
    電子の授受 電子を奪われる反応 電子を与えられる反応
    酸化数 酸化数の増加 酸化数の減少
    A答え:酸化剤とは“相手を酸化して、自分自身は還元される物質です。”したがって、酸化剤は相手を酸化するのですから「相手の物質から電子を奪う」のです。同様に、還元剤とは“相手を還元して、自分自身は酸化される物質です。”したがって、相手は“電子を与えられる”ことになります。その電子は還元剤から供給されるわけですから、「還元剤は電子を放出する」ことになります。


Lesson13 膜分離法

逆浸透膜について教えてください。
  • Q全文:逆浸透膜について教えてください。

A答え:逆浸透膜とはRO膜(Reverse Osmosis Membrane)のことで、逆浸透圧法で使用される膜のことです。逆浸透膜の特徴は、水は通すが、溶けているイオン等の水より大きい溶質は通さない性質を持っています。従って、本来の逆浸透膜の用途目的とは異なりますが、イオンよりはるかに大きな固形物(懸濁物質)は膜を通過出来ないので、分離できます。
精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透ろ過膜の違いとは?
  • Q全文:精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透ろ過膜のそれぞれの違いを教えてください。
     
A答え:膜処理装置に使われる膜は、孔径の小さい順に逆浸透ろ過膜(膜(RO膜)、ナノろ過膜(NF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)に区分されます。逆浸透膜装置は、海水淡水化装置などの脱塩装置として使用されるもので、モジュール(単位装置)は浮遊物質により閉塞し易いため、通常、前処理に凝集処理と清澄ろ過、又はMF膜やUF膜によってできる限り浮遊物質を取り除いておく必要があります。
※UF膜及びMF膜は、膜分離活性汚泥法や凝集処理膜分離装置など、従来の沈殿やろ過装置に代わって使用されるようになりました。


Lesson14 汚泥の脱水,汚泥焼却,汚泥の処分,有効利用

汚泥焼却時の含水率について教えてください。
  • Q全文:21年度版テキストの本文では「含水率70%程度以下」,過去問(H29年度問9)の解説では「水分40%程度以下」と記載されていますが、どちらが正しいのですか。

A答え:数値としては「70%」とご理解いただければ大丈夫です。この箇所は、2020年までの教材では「40%」で、過去の国家試験でも「40%」で出題されておりました。2020年に新たに文献が見つかり、2021年度の教材から「70%」と改めることにしたものです。したがって、両方とも「間違い」ということではありません。

40%という数値は、含水率としては一般にはかなり低い値です。この値は、機械的な脱水機では今日なお実現するのが難しい値であり、おそらく機械による脱水後、天日干しなどによりカラカラにしてから焼却又は埋立てをしていた時代の実績値と思われます。一方で、脱水機の進歩や、汚泥の焼却技術などが進むにつれ、理論的な検討が進み、文献では、汚泥中の水分を蒸発させるための熱より、汚泥中の有機物からの発熱が上回れば自燃する、という値として、70%という数値が示されています。

以下のようにご理解ください。
 ①2020年度までの国家試験の過去問題等では、含水率40%程度以下を正解とする。
 ②2021年度以降の国家試験や模擬試験問題では、含水率70%程度以下を正解とする。

※上記の数値改定により、汚水処理特論(2021年度版)科目模試 問12 及び 総合模試 問12が一部訂正されています。詳細は正誤表をご確認ください。

https://www.e-jemai.jp/qualification/errata.html
汚泥の脱水処理におけるケーキ比抵抗とろ過時間の関係について
  • Q全文:汚泥の脱水処理におけるケーキ比抵抗とろ過時間の関係について詳しく知りたい。
     
A答え:

 一般に脱水ろ過の基礎式として、次のルースのろ過方程式(実験式)が用いられています。

  θ/V=V/K+2C/K ・・・①

 ここに、θ:ろ過時間(s)、V :ろ液量(m3)、K :ルースのろ過定数(m6 /s)、C:ルースのろ過定数(m3)です。
 なお、上式において、定数K、Cはそれぞれ、次のように表されます。
  
  K=2pA2k/αμ ・・・②
  C=AkKm/α  ・・・③
 
ここに、p:ろ過圧力(Pa)、A:ろ過面積(m2)、k:乾ケーキ単位質量当たりのろ液量(m3/kg)、α:ケーキ比抵抗(m/kg)、μ:ろ液粘度(kg・m-1・s-1)、
Km:ろ材のろ過抵抗(m-1

 さらに、乾ケーキ単位質量当たりのろ液量kは、

  k=(1-ms)・ρs ・・・④

 ここに、m:乾ケーキに対する湿ケーキの質量比、s:汚泥に対する湿ケーキの質量比、ρ:ろ液密度(kg/m3

 いま、ヌッチェ試験(図1)を行ってθとVとの関係を求め、θ/VとVの関係をプロットすれば、ルースのろ過方程式①から直線関係になるので、この直線の勾配から1/Kが、縦軸との交点から2C/Kが得られ、②と③式を合わせれば、ケーキ比抵抗α、ろ材のろ過抵抗Kmを求めることができます。
 さて、ルースのろ過方程式の第1項、第2項を展開すると、次のようになります。
  
    V/K=V/(2pA2k/αμ)=μ/2pA2k×αV=(一定値)×α×V
  2C/K=2・(AkKm/α)/(2pA2k/αμ)=Kmμ/pA=ろ過条件を揃えると一定

これらをルースの式に戻すと、
 

  θ/V=(一定値)×α×V+(一定値)

両辺にVを掛ければ

  θ=(一定値)×α×V2+(一定値)×V

 ろ過時間は、同じろ液を得るのにかかる時間を比べるので、ケーキの比抵抗αが大きくなるとろ過時間θが大きく(長く)なります。
QA35.png
     図1 ヌッチェ試験

 

第3章 生物処理法

Lesson16 活性汚泥法

汚泥返送率について教えてください。
  • Q全文:汚泥返送率について教えてください。
     
A答え:S=Sr×R/(1+R)にて、
S:MLSS濃度(mg/L)、Sr:返送汚泥のSS濃度(mg/L)、R:返送汚泥率(返送汚泥量/流入排水量)です。この式は次のように導かれます。

 SS 0 mg/Lとする
QA8-16-2.png汚泥バランスをとると
Q×0(mg/L)+QR×Sr=(1+R)Q×S
         QR×Sr=(1+R)Q×S
             S=Sr×R/(1+R)
式の丸暗記ではなく、上のように図を書いて計算した方が分かり易いと思います。

Lesson19 生物的硝化脱窒素法原因物質と水質指標

硝化細菌の生育条件について教えてください。
  • Q全文:硝化細菌の生育条件について詳しく教えてください。
     
A答え:排水中の窒素分を除去する方法として硝化脱窒素法があります。排水中のアンモニア体(性)窒素を好気条件下で微生物処理し、亜硝酸体窒素(NO2-)あるいは硝酸体窒素(NO3-)まで酸化する硝化工程と、その処理水を嫌気条件に導き亜硝酸・硝酸体窒素を窒素(N2)として還元除去する脱窒素工程からなります。
 硝化工程に関与する微生物は、アンモニア体窒素や亜硝酸体窒素の酸化によってエネルギーを得て、無機炭素化合物を利用して増殖する独立栄養細菌


第4章 汚水処理装置の維持管理

Lesson22 物理化学処理装置の維持管理

COD,BODの違いについて
  • Q全文:COD,BODの違い、使い分けについて詳しく知りたい。
     
A答え:COD、BODはいずれも有機物による汚濁程度を示す指標です。
 BOD は河川、CODは湖沼、海域の汚濁評価に使用されます。その測定法や数値には差があるのが通常です。しかし、排水処理対象としてBOD, CODを見ると、いずれも有機性の汚濁物質であり、大きな差があるわけではありません。そのため、生物処理での処理対象はBODに限定して記述していますが、生物処理以外の物理化学装置に関しては基本的にCODを使用しています。そのため、活性炭吸着装置ではCODを使用していますが、その意味は有機性汚濁を指しておりBODも含んでいます。

Lesson23 生物処理装置の維持管理

種汚泥について
  • Q全文:種汚泥とは何か?詳しく知りたい。
     
A答え:生物膜処理装置などの生物処理法では微生物による有機性汚濁の分解処理が基本となります。これらの処理法での最初期や何らかの原因により装置の洗浄等を行った場合などでは汚泥と呼ばれる微生物が存在しない場合や、不足している場合には生物処理が十分に行えないことがあります。このような場合に、微生物を含む汚泥を装置内に入れて生物処理を活性化することがあります。このとき装置内に導入する汚泥を“種汚泥”と呼びます。

第5章 水質汚濁物質の測定技術

Lesson26 分析の基礎

「重水素放電管」と「重水素ランプ」の違いとは?
  • Q全文:「重水素放電管」と「重水素ランプ」の違いはありますか?
     
A答え:「重水素放電管」の英語名はdeuterium discharge lampです。同じものを意味しています。

Lesson27 測定各論

CODの分析にて、添加した過マンガン酸カリウムの残量をしゅう酸で滴定する理由とは?
  • Q全文:CODの分析にて、添加した過マンガン酸カリウムの残量をしゅう酸で滴定する理由を教えてください。
     
A答え:過マンガン酸カリウム溶液の酸化反応は、MnO4-+8H++5e → Mn2++H2Oです。
 MnO4-は濃い赤紫色で、Mn2+は淡桃色とも言われていますがほとんど無色です。酸化還元反応では、酸塩基反応と違い指示薬というものがありません。過マンガン酸カリウムの場合は、上記の色の変化で反応の終点を判断します。
 余剰の過マンガン酸カリウムをしゅう酸で滴定(このような方法を逆滴定といいます)する場合、色の変化は濃い赤紫色が消えた時ですが、色がだんだん消えていくので、無色になったという判断にぶれが出てきやすくなります。
 そこで、濃度と量が正確にわかった過剰のしゅう酸を加えて、過剰な過マンガン酸カリウムを還元して無色の溶液とし、これに過マンガン酸カリウムの還元に使われなかったしゅう酸を再度過マンガン酸カリウムを赤紫の色がつく点を終点として滴定すると、着色の判断なので誤差が少なくなります。人の手による操作なので、誤差を少なくするために行っています。

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