通信教育QA:2大気概論

第1章 大気汚染防止法

Lesson2 定義

「排出」と「発生」の違いとは?
  • Q全文:「排出」と「発生」の違いを教えてください。どのように使い分けているのでしょうか?


A答え:大気汚染防止法は、原則として、事業場の煙突や排出口から「排出」「飛散」される物質を規制する法律です。
「発生」は化学反応や燃焼過程で大気汚染に係る物質が「新たに生成すること」を指しています。
「排出」は発生した汚染物質が煙突や排出口から「環境中に出て行く」という意味で使われています。

Lesson3 ばい煙規制における排出基準

≪総量規制≫新設の工場に対してより厳しい基準が適用される理由は?
  • Q全文:特別総量規制基準について。なぜ新設の工場に対しては、より厳しい基準が適用されるのでしょうか?

A答え:総量規制の制度は、すべての工場が通常の排出基準による規制値をクリアしていても、工場が密集している地域では環境基準が達成できない現状があるために作られた制度です。そもそもの目的が工場の密集を避けることを誘導する仕組みです。そのため、工場新設を抑制するためのより厳しい基準として特別総量規制基準が適用されています。
 
≪総量規制 規模要件≫算出方法は?
  • Q全文:総量規制の対象となる特定工場等には規模要件がありますが、その算出方法を知りたいです。

A答え:大気汚染防止法の総量規制制度について、規制の対象となる特定工場等の要件が決められています。基本となるのは1時間当たりの燃料の消費量です。算出するのではなく、実際に使用する燃料の量によって該当するかどうか決められます。
 その際、重油以外の燃料を使用する場合には、係数を乗じて重油の量に換算します。実際の係数はそれぞれの自治体(都道府県)により公表されています。
 

Lesson6 VOC規制

VOC規制に関しての事業者による自主的な排出抑制の取組と揮発性有機化合物排出施設(9施設)について
  • Q全文:VOC規制に関しての事業者による自主的な排出抑制の取組と揮発性有機化合物排出施設(9施設)についての重要ポイントを知りたい。

A答え:

 大気汚染防止法で古くから規制されているばい煙、ばいじん等は法規制のみによる施策であるのに対し、平成8年の大気汚染防止法改正に基づく有害大気汚染物質対策で初めて、法規制と事業者の自主管理(当時は「自主的取組」でなく「自主管理」という言葉を使っていました)による排出削減対策を組み合わせる施策手法が採られました。この「法規制と自主的取組を組み合わせる」という手法は、平成18年の大気汚染防止法改正に基づくVOC規制、平成30年の大気汚染防止法改正に基づく水銀規制でも同様です。これらの施策における法規制では、①排出基準はあるが、排出基準違反に対する直罰はないこと、②排出基準が適用される施設の種類・規模が限定されており、大部分の施設での排出削減は自主的取組に任されていることが特徴です。国家試験においてもその特徴のある施策手法が問われる可能性がありますので、「ココが重要」としています。
 VOC対策の⾃主的取組について簡単に解説されている経済産業省のホームページを参考にしてください。

  また、揮発性有機化合物排出施設については、過去に次のような出題がありました。

 


問3 大気汚染防止法に規定する揮発性有機化合物排出施設のうち,誤っているものはどれか。

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平成26年度 大気概論

 

⼤気汚染防⽌法で定める揮発性有機化合物排出施設は、6つの業種分野について9施設が定められています(大気汚染防止法施行令 別表第1の2)。施設の規定に関しては、施設の種類、施設の種類の注釈(~を除く、~に限る)、規模要件を押さえておきましょう。テキストにもあるとおり、光化学オキシダントの環境基準の達成率は依然として低く、その原因物質とされるVOCに関する出題の可能性は⾼いと思われます(テキストP59、P68参照)。

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Lesson7 粉じん規制

非特定建築材料製へ部品を変更する場合にも、届出が必要か?
  • Q全文:特定粉じん排出等作業に係る作業基準について。特定建築材料製の部品を非特定建築材料製の部品へ変更(改造)する場合にも、着手14日前までに知事への届出が必要でしょうか?

A答え:特定建築材料を使用した施設を改造する場合に当たりますので、14日前までに都道府県知事に届け出なくてはなりません。作業基準の内容は作業の種類によって異なり、細かく指定されています。

【参照】[届出]テキスト『大気関係法令』大気汚染防止法体系/法第18条の15、施行規則第10条の4、
[作業基準]テキスト『大気関係法令』大気汚染防止法体系/法第18条の14、施行規則第16条の4、施行規則別表第7
 
特定粉じんの環境基準「10本/ L」とは?
  • Q全文:特定粉じん施設と隣地との境界における濃度の基準値について、10本/ Lとは何ですか?

A答え:特定粉じんとは、石綿(アスベスト)のことであり、敷地境界基準の10本/ Lとは、1リットルの吸引空気中に含まれる石綿の本数が10本、という意味です。濃度の測定ではなく、粉じんの個数を数える方法によって判定します。

 大気概論の範囲では、規制基準値だけが出ており、測定方法はばいじん・粉じん特論の範囲ですが、理解の為、簡単に説明します。

 大気中の石綿濃度の測定方法は、平成元年環境庁告示第93号に定められており、概略は以下の通りです。
1) 試料空気のサンプリングは、高さ1.5~2mの範囲で、有効ろ紙直径35mmのメンブランフィルタ(ろ紙)を用い、吸引流量10L /分で4時間空気を捕集します。
2) ろ紙を位相差顕微鏡のスライドガラスにセットし、フタル酸ジメチルかアセトン等の試薬を用いて透明化し、石綿以外の粒子や繊維が透明化して見えにくくなるよう処理します。
3) 長さ5μm以上、アスペクト比(長さと幅の比)が3対1以上の細長い繊維をカウントし、繊維数200本以上、または視野数50視野以上になるまでカウントします。
4) ろ紙の有効面積A(cm²)、カウントした繊維数N(本)、顕微鏡視野面積a(cm²)、視野の数n、採気量V(L)から、石綿濃度F(本/ L)を計算します。
   F=(AN)/(anV)
 

第2章 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(大気関係)

Lesson10 大気関係の公害防止管理者

≪ばい煙発生施設≫対象となる施設が法律によって変わる理由は?
  • Q全文:廃棄物焼却炉は、「大気汚染防止法」ではばい煙発生施設の対象ですが、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」では対象外です。なぜでしょうか?
     
A答え:「大気汚染防止法」第2条第2項において、「ばい煙発生施設」が定義されています。この定義に基づいて、硫黄酸化物、ばいじん、有害5物質を排出する25の施設が届け出の対象となり規制を受けることになります。
 一方、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」第2条では、「特定工場」のうち次に掲げるものとして「ばい煙発生施設」が指定されています。「特定工場」は政令第1条において4つの対象業種が特定されています。この対象業種に該当しない施設は公害防止管理者を置く必要がありません。
 従って、このふたつの法律で対象となる施設が異なっている理由は、法律の定義が異なっているから、ということになります。そもそも後者は、法律の目的が「“特定工場における”公害防止組織の整備」であるため、それに該当しない施設は初めから法律の対象外となっています。
 しかし、廃棄物焼却炉は、製造業と異なり燃焼に用いる原料の質と量が一定ではなく、定常的な業務としての公害防止がむしろ困難となる可能性があるため、「大気汚染防止法」によって適正に管理されています。
 

第4章 大気汚染の現状

Lesson15 光化学オキシダント

「環境基準達成率」と「昼間の濃度レベル別の割合」の違いとは?
  • Q全文:環境基準「1時間値が0.06ppm以下」の一般局における達成率が0.1%前後なのに対して、「一般局の昼間の濃度レベル別の割合」で「1時間値が0.06ppm以下」が90%以上となっていますが、こういう状況はあり得るのでしょうか?「環境基準達成率」と「昼間の濃度レベル別の割合」の違いを教えてください。
     
A答え:光化学オキシダントの環境基準達成の評価方法は、“1時間値の年間最高値が環境基準である0.06ppmを超えていない場合”に“達成”とされています。従って、1日の間での1時間値の最高値が1回でもこれを超えた場合、超えていない1時間値の比率が高くても、つまり測定回数のうちの大半の回で濃度レベルが0.06ppm未満であったとしても、達成とはみなされません。他の物質では、1時間値の1日(24時間)平均値や8時間平均値が用いられていますが、光化学オキシダントは長時間の蓄積によって毒性が現れる物質ではなく、その瞬間の濃度が人体に影響するため、平均値は用いません。
 光化学オキシダントは太陽光との反応によって発生する物質ですので、測定回数は夜間を除いた15回(15時間)/1日となっています。そのうちの93%(15回のうち14回)の1時間値が環境基準を達成していても、残りの時間(この場合は1回)が未達成であれば、環境基準は未達成となります。この93%が「濃度レベル別の割合(この場合は“1時間値が0.06ppm以下”の割合)」です。実際は年間の測定時間(15×365日)で計算します。
 濃度レベル別の割合は、達成率とは関係のない数値ですが、1日のうち高い濃度レベルが継続することの影響は大きいため、算出して保全施策に活用されています。
 

第5章 大気汚染の発生機構

Lesson22 地球温暖化

地球温暖化への影響を示す「放射強制力」と「温暖化係数」とは?
  • Q全文:地球温暖化への影響を示す「放射強制力」と「温暖化係数」について詳しく教えてください。

A答え:

 放射強制力とは、平衡状態にある大気と地表とのエネルギーのバランスが、さまざまな要因により変化したとき、その変化量を圏界面(対流圏と成層圏の境界面)における単位面積あたりの放射量の変化であらわす指標。温室効果ガスの濃度変化は、この「要因」の1つです。放射強制力が正の値であれば、地表を暖める効果、放射強制力が負の値であれば、地表を冷却する効果があります。放射強制力は、温暖化係数を算出するときに使用する数値の1つです。
 温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)とは、個々の温室効果ガスが単位質量放出された時の地球温暖化に対する効果を、その持続時間も加味した上で、CO2の効果を「1」として相対的に表す指標。温室効果を見積もる期間の長さによって変わります。京都議定書では、IPCCの知見に従って100年間のGWPで比較しています。なお、GWPの計算方法は世界的に統一されたものはなく、IPCCの報告書でも毎回変わっています。

(参考)

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メタンの温暖化への影響は?
  • Q全文:「メタンは排出量が少ないため二酸化炭素ほど問題になっていない」との記述がありますが、大気中濃度は二酸化炭素の4倍以上、温暖化係数は25倍であり、影響は大きいように思えます。どうして問題にならないのでしょうか?
     
A答え:大気中で最も温室効果の寄与率の高い気体は水蒸気です。大気中での含有率もかなりの割合にのぼります(湿度による)。しかし、水蒸気は人為的な排出によらない割合が高く、自然現象により大規模な循環をしています。それゆえ法律などによって規制することができません。気候変動の議論に乗せられていないのはそれが理由です。また、地球の生態系の保全のためには、一定の温室効果は必要です。
 メタンは温室効果を持っていますが、自然界にも一定量のメタンが存在するため、水蒸気と同様に規制できるものではありません。しかしながら近年は、自然由来のメタンに加え、農業の近代化など人為由来のメタンの排出量の増加が問題となっています。そのため、排出の抑制に関する議論が進められつつあります。
 一方、二酸化炭素は、濃度は低いのですが、近代になってからの増加分のほとんどは石炭・石油の燃焼が原因で、それが温室効果を過剰に進めています。人為的な排出は規制によって削減することが可能です。そのため、地球温暖化問題では、二酸化炭素の排出削減が主要な課題になっています。
 

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