通信教育QA:1公害総論

第1章 環境基本法

Lesson8 環境基準

環境基準の「2以上の類型」とはどういう意味?
  • Q全文:環境基本法の第16条第2項の「2以上の類型」とはどういう意味なのでしょうか?

A答え:環境基本法第16条第2項では次のように定められています。

第16条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、2以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。

法第16条の規定による環境基準のひとつ「水質汚濁に係る環境基準について(環境庁告示)」を見てみると、生活環境の保全に関する環境基準(別表2)において、河川、湖沼、海域について、2つ以上の類型(AA、A、B等)ごとに基準値が定められていることが分かります。同告示によると、類型は利用目的(水道1級、工業用水3級等)等に配慮して指定されているものです。

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【参照】テキスト『公害総論』巻末資料/環境基本法体系/水質汚濁に係る環境基準について
 
なぜ類型を設定しているの?
  • Q全文:「水質汚濁に係る環境基準について」では、生活環境の保全に関する環境基準として各公共用水域(河川・湖沼・海域)の水域類型ごとに基準値が定められていますが、なぜ類型を設定しているのでしょうか?

A答え:たとえば河川においては、上流域と下流域で求められる水質が大きく異なっている項目があります。特にBODでは10倍も違います。これは、上流側の水の利用目的が自然環境保全水道1級となっているためで、それには極めて高い水質が必要とされます。

一方、下流域の水の利用目的は工業用水3級となっているため、さほど高い水質は要求されません。下流域において上流域並みの水質を要求することは、自然状態に近い河川であってもほとんど不可能で、そのレベルまで浄化するには相当規模の浄水設備が必要になり現実的ではありません。

このように、水質に類型を設定することによって、必要十分かつ実現可能な環境基準を設定することができます。
 
 
大気の汚染に係る環境基準で設定されている4物質とは?
  • Q全文:「大気の汚染に係る環境基準について」において、環境基準が設定されている4物質とは何ですか?

A答え:二酸化いおう、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダントの4物質です。テキスト『公害総論』の巻末資料「大気の汚染に係る環境基準について」(昭和48年環境庁告示第25号)の別表に、物質名とそれぞれの環境上の条件及び測定方法が記載されています。なお、そのほか大気関係では次の告示によって環境基準が設定されています。
  1. 二酸化窒素に係る環境基準について(昭和53年環境庁告示第38号)
  2. ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について(平成9年環境庁告示第4号)
  3. 微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について(平成21年環境庁告示第33号)
  4. ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境基準(平成11年環境庁告示第68号)
【参照】テキスト『公害総論』巻末資料/環境基本法体系/大気の汚染に係る環境基準について
 
 
騒音に係る環境基準の適応範囲は?
  • Q全文:「騒音に係る環境基準について航空機、新幹線はは適用除外とありますが別の基準があるのでしょうか?

A答え:騒音に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第64号)については、一般的な意味での「すべての騒音を網羅した上での環境基準」を定めているのではなくて、この告示は、いわゆる一般騒音の範囲について定めています。この告示の中に、「この環境基準は、航空機騒音、鉄道騒音及び建設作業騒音には適用しない」とあります。航空機騒音については、昭和48年環境庁告示第154号により、鉄道騒音については昭和50年環境庁告示第46号により新幹線鉄道騒音の定めが別途あります。航空機騒音や新幹線鉄道騒音は、それぞれ、一般の騒音とは測り方、評価方法、基準値が異なります。
 
1時間値、1日平均値とは?
  • Q全文:「大気の汚染に係る環境基準について」において、環境上の条件としてそれぞれの物質の「1時間値」「1日平均値」の値が設定されていますが、これはどのような値のことでしょうか?

A答え:「騒音に係る環境基準に1時間値とは、60分間連続的にガス吸引装置を稼働させ、そのガスを分析して得られた汚染物質の濃度値を指します。1日平均値とは、1日に得られた1時間値の測定値の平均値のことです。通常は24回の1時間値の算術平均値となります。

 

第2章 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律

Lesson13 組織の体系

公害防止主任管理者の資格要件は?
  • Q全文:公害防止主任管理者の資格要件について教えてください。

A答え:公害防止主任管理者(及び代理者)の資格要件は次のいずれかになります。
  1. 公害防止主任管理者の国家試験に合格する(又は資格認定講習の課程を修了する)
  2. 大気関係公害防止管理者第1種か第3種、かつ、水質関係公害防止管理者第1種か第3種の資格を有する
【参照】テキスト『公害総論』巻末資料/特定工場における公害防止組織の整備に関する法律体系/法第5条第2項、法第7条第1項第2号、施行令第11条第1号、施行令別表第2
 

Lesson14 選任・届出

公害防止統括者も解任されるの?
  • Q全文:公害防止管理者、公害防止主任管理者だけでなく公害防止統括者も解任されるのでしょうか?

A答え:公害防止統括者も解任の対象となることがあります。特定工場における公害防止組織の整備に関する法律第7条第2項では次のように定められています。

2 第10条の規定による命令により解任され、その解任の日から2年を経過しない者は、公害防止統括者、公害防止管理者及び公害防止主任管理者並びにこれらの代理者になることができない。

 したがって、解任の対象となるのは次の者であり、解任された場合は2年が経過しないと選任はできません。
  1. 公害防止統括者(及びその代理者)
  2. 公害防止管理者(及びその代理者)
  3. 公害防止主任管理者(及びその代理者)
 
公害防止統括者、公害防止主任管理者、公害防止管理者は何日以内に選任するの?
  • Q全文:公害防止統括者、公害防止主任管理者、公害防止管理者の選任は、選任すべき事由が発生した日から何日以内に選任すればいいのでしょうか?

A答え:公害防止統括者は選任すべき事由が発生した日から30日以内公害防止主任管理者及び公害防止管理者60日以内に選任することとなっています。

なお、届出については、公害防止統括者、公害防止主任管理者、公害防止管理者を選任した日から30日以内に都道府県知事等に届け出ることになっています。
 
 

第3章 環境関連法

Lesson17 土壌汚染関連法

土地の形質の変更とは利用目的を変更することを指すの?
  • Q全文:土壌汚染対策法において、土地の形質の変更とは、工業用地から宅地へ、農業用地から工業用地へ変更するなど、利用目的を変更することを指すのでしょうか?

A答え:土壌汚染対策法において、土地の形質の変更とは一般的な意味で用いられています。すなわち、掘削、整地(平らにする)、盛土、切土等を含む土木工事に関する行為を指します(土壌汚染対策法第4条)。
 

Lesson20 環境影響評価法

第2種事業でも計画段階環境配慮書の提出は義務付けられるの?
  • Q全文:環境影響評価法において、規模が大きな第1種事業だけでなく、規模が小さな第2種でも計画段階環境配慮書の提出が義務付けられるのでしょうか?

A答え:計画段階環境配慮書は、第1種事業を実施しようとする場合に、複数の計画の環境への影響を比較するための資料として提出するものです。第2種事業の場合は義務付けられていません。なお、第2種事業では、環境影響評価を実施する必要がある事業を選び出す「スクリーニング」といわれる手続が実施されます。
 
 

第4章 最近の環境問題

Lesson22 地球環境問題

温室効果が最も大きいといわれる水蒸気は規制されないの?
  • Q全文:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)評価報告書では、大気中に存在するガスのうち温室効果が最も大きいものは水蒸気であると言及されていますが、規制はされていないのでしょうか?

A答え:温室効果全体のうち、水蒸気の寄与率は50%程度だといわれています。しかし、自然由来の温室効果ガスは、他の要因がなければほぼ一定で大きく増減することはありません。また、人為的に排出量を調整することも不可能なため規制に関する議論の対象にはなりません。

一方で、IPCCの議論の対象となっている人為由来の温室効果ガスは、人為的に増加していると考えられており、二酸化炭素そのものの寄与率は20%程度ですが、気温の上昇の結果として大気中の水蒸気を増加させることにより、さらに温室効果を促進する要因となります。
 
 

Lesson23 大気環境問題

窒素酸化物のうち、健康等への影響が大きい物質は何?
  • Q全文:窒素酸化物のうち、人の健康や植物への影響が大きい物質は何でしょうか?

A答え:窒素酸化物には、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、無水亜硝酸(N2O3)、一酸化二窒素(N2O)などの種類がありますが、大気汚染物質として重要なものは、「一酸化窒素」「二酸化窒素」です。

「二酸化窒素」の健康、植物等への影響は「一酸化窒素」よりも強いことが知られています。工場の煙や自動車排気ガスなどの窒素酸化物の大部分は「一酸化窒素」ですが、これが大気中で酸素と反応してすぐにより毒性の強い「二酸化窒素」になります。そのため、環境基準では「二酸化窒素」の基準値が定められています(「二酸化窒素に係る環境基準について」(告示))。

【参照】テキスト『公害総論』巻末資料/環境基本法体系/大気の汚染に係る環境基準について
 

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