2015年4月

interviewmark.png イオンの環境経営「地域貢献」で世界を拓く(2015年4月)

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(写真提供:イオン)「植樹を愉しむ子供たち(イオンモール幕張新都心/2013 年11月)」

201504_interviews_aeon_pic1.png イオングループの旗艦店としてオープンした「イオンモール幕張新都心」には植樹1,000万本の記念碑が立つ。世界13か国と日本の店舗に「ふるさとの木」を植える取り組みで、植樹活動の参加者は累計100万人に及ぶという。
 植樹に象徴されるように、イオンの基本理念の一つに「地域貢献」がある。東日本大震災時には、宮城県石巻市の店舗が巨大避難所になった経験から、「災害に強い店舗づくり」「復興拠点としての機能確保」を掲げ、地域にとって重要な「場」になるよう工夫を施している。
 そんな地域に根ざしたイオングループの環境経営について、イオンリテール株式会社 専務執行役員管理担当 石塚幸男氏(写真中央)と、イオン株式会社 グループ環境・社会貢献部長 金丸治子氏(写真左)に語っていただいた。〔聞き手:黒岩(当協会 専務理事)〕
【環境管理|2015年4月号|Vol.51 No.4 より】

||| コンテンツ |||
- 植樹活動のルーツと「持続可能な経営」のはじまり
- 累計1,000万本を超える植樹が43万人の従業員のシンボルに
- 経営と環境への取り組みが一体化した「イオンのecoプロジェクト」

- 東日本大震災の経験から災害に強い店舗づくりへ
- 震災で変わった人々の意識とそれに応える環境経営
- 仕入先メーカーとの協同による物流分野の改善が進む
- 世界でも通用する環境経営と「日本流」の企業理念
- 時代に先駆けて「自然冷媒宣言」業界をあげた協力が必要

植樹活動のルーツと「持続可能な経営」のはじまり

201504_interviews_aeon_pic3.png黒岩:グループ従業員約43万人で売上6兆円超というアジア最大の小売グループ・イオンは環境経営に関してどのような企業理念をお持ちになっていらっしゃるのでしょうか? 最初に、イオンの環境にかかわる歴史についてお聞かせ願います。
石塚:もともとイオンという会社は中部と近畿の三つの地方店が合併したのが始まりです。1969年に兵庫県姫路市と大阪府吹田市のローカル2店舗と三重県四日市市の岡田屋が合併し「ジャスコ株式会社」としてスタートしました。3店合併の中核であった岡田屋の社長岡田卓也(現名誉会長・相談役)が代表でした。
黒岩:名誉会長は三重県四日市のご出身ですね。植樹活動のきっかけは四日市と関係がありますか?
石塚:創業者の岡田は大気汚染がひどかった四日市の出身で、庭に南天を植えたけど花が咲かなかったといった経験をし、四日市ぜんそくの時代から環境について強い関心を持っていました。その後、県外への初出店として愛知県岡崎市に新しい店舗を建設したときに創業者は記念として何かを残したいと考え、岡崎市の川沿いに桜の木を700 本植えて市に寄贈しました。これが現在のイオン植樹活動のルーツになっています。
 創業者は環境保全をとても重視しており、20世紀末に「次の21世紀は環境の時代になる」と確信していました。経営と地球環境の両方を兼ね備えるべきといういわば創業者の嗅覚があったのです。すでに環境経営、いわゆる「持続可能な経営」という考えを確固たるものとしていました。それらを具現化した一つの例として世界的な植樹活動があります。

累計1,000万本を超える植樹が43万人の従業員のシンボルに

黒岩:イオン環境財団と「イオン ふるさとの森づくり」が植樹活動の中心になっていますね。
石塚:日本に限らず東南アジアも対象に植樹などの環境活動を支援する公益財団法人イオン環境財団を設立しました(1991年1月財団認可)。創業者から財団に寄付された当社株式をファンドにしてその配当を活動資金としています。植樹活動を世界的に拡げて環境団体への活動資金を支援するという社会的な役割を果たしています。また生物多様性の重要性を啓発する一助として表彰制度で国内賞の「生物多様性日本アワード」、国際賞の「生物多様性みどり賞」を創設しました。
黒岩:植樹活動のスタートはどこだったのでしょうか。
石塚:1991年にマレーシアのマラッカ店がオープンするとき、地域に自生する樹木を店舗の敷地内に植えたのが始まりです。店舗の顧客のみならず地域の人々と一緒に木を植えるというのがコンセプトで、子供や家族が楽しめる森、憩の森、そして防災の森になることを目指しました。翌年には国内店舗でも「イオン ふるさとの森づくり」が本格的にスタートしました。
 そして一昨年、「イオンモール幕張新都心」の開店で、植樹は累計1,000万本を超えました。我々の名刺には「木を植えています」というコピーと緑色のロゴを印刷して、世界のグループ従業員46万人の共通シンボルにしています。

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経営と環境への取り組みが一体化した「イオンのecoプロジェクト」

黒岩:もともとイオンは「平和の追及」「人間尊重」「地域に貢献」を基本理念にして、特に地域との共生をとても大切に考えていらしたと思います。巨大なショッピングモールやショッピングセンターは一つの街のようですが、店舗建設に際して、環境と防災、地域への貢献などはどのような考えに基づいているのでしょうか。
石塚:2000年前後に「環境マネジメントシステムを本格導入して環境経営を基幹として事業をしていく」という決定がありました。当時はジャスコ(株)の時代でしたが、ISO 14001のマルチ認証を取得して「経営にPDCAの考え方を導入し事業活動を行っていこう」という意思決定をしたのです。
 環境経営を意識して、「商品としての環境配慮をどうするか」、「ショッピングセンターなど構造物に対する環境配慮や店づくりはどうするべきか」、そして「植樹や社会貢献などの地域社会貢献」というジャンルでの対応が具現化しました。事業活動において環境面での具体的な目標を設定して着実に進めることになったのです。201504_interviews_aeon_pic4.png
黒岩:イメージとしての「環境への取り組み」から実質的な環境経営に発展しているのですね。
石塚:最初は「地球にやさしい」という名称の委員会を設置して、できることからスタートしました。環境経営を意識はしていましたが、その頃は店頭の牛乳パックの回収などに活動が限られていたのです。しかしその後、2000年からは経営マターとして環境を本格的に考えるようになりました。
金丸:1991年から毎月1回実施している「クリーン&グリーン活動」という店舗の周囲を清掃する活動も、2001年からは店舗はもとより本社・事務所でも実施するようになりました。クリーン活動とは自ら進んで行う社会奉仕活動、グリーン活動は植樹活動を含め、自然環境の保全といった幅広いとらえ方をしていて、2014年度からはそれまで個々に実施していたものを統一し、クリーン&グリーン活動の一環として「イオン ふるさとの森づくり」で植えた木々の植栽帯内の雑草の除去や清掃も始めています。
黒岩:イメージ先行から実質的な活動になってどのような経営上の成果がでたのでしょうか。
石塚:経営と環境への取り組みが一緒になって持続可能な経営「イオンのecoプロジェクト」のへらそう作戦、つくろう作戦、まもろう作戦に繋がってきました。「へらそう」では2020年度のエネルギー使用の達成目標が2010年度比で50%削減(原単位)を目標にし、「つくろう」では再生可能エネルギーを2020年度に20万kW創出、「まもろう」では2020年度までに全国100か所の店舗を防災拠点にするといった定量目標を設定しています。いまのところ目標に向かって計画的に進行しています。

『東日本大震災の経験から災害に強い店舗づくりへ』 へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)

【環境管理|2015年4月号|Vol.51 No.4 】

20150410110858-0001.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

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