2017年

4月

interviewmark.png リコーの環境経営「再利用」から「再生」へ
                ―新ビジネスの創出を目指すリコーの環境戦略 (2017年4月)

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 株式会社リコーは2016年4月、環境関連事業を創出する拠点として静岡県御殿場市に「リコー環境事業開発センター」を開所した。同センターは従来のリユース・リサイクル製品など環境配慮製品の提供にとどまらない、さらに広い分野における「環境事業の創出」を目指すもので、「リユース・リサイクル機能」、「新規環境事業の実証実験の場」、「環境活動に関する情報発信基地」の三つの機能を併せ持つ。同社はグループ全体の環境事業において、2020 年度に1,000 億円規模の売上を目指している。
 今回、本センターを取材するとともに、同社が長年培ってきたOA機器の再生・再資源化技術の開発とこれからの環境経営のビジョンについて、当センターの出口 裕一所長、リコーインダストリー株式会社リユース・リサイクル事業部RR技術室の伊藤 明室長に聞いた。【環境管理|2017年4月号|Vol.53 No.4 より】

||| 目 次 |||
- 「環境保全」はビジネスチャンス──利益の創出を実現する環境事業
- リコーが成功させた新たな製造モデル「リマニュファクチャリング」
- 重要な回収機の初期選別にはIoT 情報をフル活用
- カラーコードによる選別情報で製品と部品の在庫を把握
- 画像識別により飛躍的に進んだ回収トナーボトルの処理
- 洗浄工程の環境負荷を解決するドライ洗浄技術
- 様々な創意工夫と熟練技能が技術の革新を進める
- コスト面はどうなのか── 利益を創出するビジネスモデルとは
- 需要と供給のバランスを常に維持管理するのが収益の要
- 再生部品の活用が新しい市場をつくる
※太字部のみWEB掲載(全編は本ページ下部より、PDFファイルをダウンロードのうえご覧ください。)

「環境保全」はビジネスチャンス──利益の創出を実現する環境事業

 201704_ricoh_04.png「リコーの目指す『環境経営』は、一般的な意味での環境経営と少し異なっています」─ 出口 裕一所長は語る。
「当社は『環境保全』と『利益の創出』を同時に実現することを目標としています。環境保全のためだからといって利益を犠牲にすると事業は長続きしない。環境保全活動は必ず利益に結びつくという信念が我々にはあります」
 「リコー環境事業開発センター」では、総勢800 人のスタッフによって環境事業が進められている。年間2万台の複合機や回収部品を再生する「リユース・リサイクル事業」、産学連携で環境技術のオープンイノベーションを目指す「実証実験の場」、さらにそれらの活動を一般にアピールしていく「情報発信基地」の3 事業である。
 これらの事業の舞台となるのが、生産体制の見直しのため2013 年3 月より閉鎖されていた御殿場工場(複写機のマザー工場)である。創立80 周年記念事業の一環として丸2 年間眠っていた旧工場を約30億円を投資して再生し、「リコー環境事業開発センター」として蘇らせたのである。全国12 か所に立地していたOA機器のリユース・リサイクル機能を3 拠点に統合し、本センターがその基幹拠点となる。分散していた再生技術や物流ノウハウを統合し、より効率化させて最適化を図っている。「新たな環境事業の創出に向けて各地に分散していた機能、技術を統合するとともに、各研究所、事業所で行っていた環境に関連する研究をすべて棚卸してセンターに持ってきました。どれも実験室レベルだったものを、当面10 テーマについて自治体、企業、大学と共同で研究・開発して新事業の創出を目指し、2020 年度に環境事業の年間売上1,000 億円を目標に掲げています。環境活動はあくまで『コスト』ではなくビジネスチャンスなのです)」(出口所長)。
 こうしてリコーの環境経営は新しいステージに入ったのである。

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リコーが成功させた新たな製造モデル「リマニュファクチャリング」

 リコーのビジネスモデルの背景には「日本の加工貿易の変貌」がある。日本の輸入品目のトップは原油やLNGなどのエネルギーだが、過去30 年で着実に増加しているのが、電子部品を含む電気機器や衣類など完成品である。輸入電気・電子機器は2015 年には輸出額とほぼ拮抗している。製品ブランドは日本でも、家電製品やその部品の大半は海外製である。これらの輸入品は使用後に大量の廃棄物となって日本国内で排出される。しかし製造プラントは海外所在なので、同種製品へのリサイクルは一般的に難しい。輸入製品の増加は大きな国内問題といえる。
 こういった課題を打開する一つの画期的ソリューションがリコーの持つ再生技術である。中国やタイなどリコー海外工場から日本に輸入された製品で使用済み製品となった機器や部品を、本センターでは再使用している。これは単なる廃棄物のリユース・リサイクルではなく、欧米で進んでいるいわば「リマニュファクチャリング」*1という新たな製造モデルであり、産業界でも大きく注目されている。

*1 リマニュファクチャリングとは、使用済み製品を新品同様に再生(manufacture into a new product)するプロセスで、元製品のパフォーマンス仕様を完全に満たす製品再生・再使用またはパーツ交換等により製品を再組立して機能と品質を元の製品並み、もしくは、それ以上に戻すことである。再生された製品やパーツは厳格な検査を受け独自のメーカー保証とアフターサービスも提供される。型式こそ旧モデルながら新製品と基本的に同じレベルの製品が市場へ再供給される。

 その製造モデルの基本となるのが、リコーが1994 年に提唱した「コメットサークルTM 」である(図1 )。持続可能な社会実現のコンセプトとして制定されたもので、製品メーカー・販売者としての領域だけでなく、その上流と下流を含めた製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らしていく考え方である。
 図のそれぞれのループ(球体)は製品のライフサイクルにかかわる各業者であり、右上の「原材料供給者」によって自然環境から取り出された「新規資源」が上のルートを右から左に流れるあいだに「製品」となってユーザーに届けられる。そして使用済みの製品は下のルートをたどって左から右へと流れる。
201704_ricoh_05.png ライフサイクル全体で環境負荷を減らすには、
 ①全ステージで環境負荷を把握し総量を削減すること
 ②使用済み製品を経済価値の高い状態に戻すため、内側のループ(製品・部品のリユース)を優先させること、
 ③リサイクルを可能な限り繰り返し「重層的」に行うことにより、新たな資源の投入や廃棄物の発生を抑制すること、
 ④リサイクル対応設計を高度化させ、繰り返し部品を使えるようにし、通常の生産・販売と同様に「お金が物と逆方向」に流れるようにし、経済合理性を確保することが重要となる。
 そしてそれを支えるのが、⑤すべてのステージとのパートナーシップと情報の共有である。
 このループにより、回収した複写機等は「製品リユース」、「部品リユース」、「マテリアルリサイクル」、「ケミカル/サーマルリサイクル」等、徹底的な再利用により、2014 年には単純焼却、埋立による最終処分量が0.28%、複写機本体で99.72%の再資源化率を達成した(図1 )。

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重要な回収機の初期選別にはIoT 情報をフル活用 へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)

【環境管理|2017年4月号|Vol.53 No.4】

book_20170411085900.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

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