2022年3月

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interviewmark.png 活性汚泥の先端研究を語る―酸素消費速度と汚泥滞留時間

 東京理科大学理工学部土木工学科の出口浩(でぐちひろし)教授に、汚水の生物処理に関する興味深い話をお聞きした。合成洗剤の自然分解、活性汚泥のフロックに微細なガラスビーズで重しを付ける研究、酸素消費速度OURと汚泥滞留時間SRTの関係、さらに原水に最適なSRTを選択することでエアレーションに要する電力量を節約できることなど、どの話題も非常に興味深い内容であった。

【環境管理|2022年3月号|Vol.58 No.3 より】聞き手:本紙編集部

||| 目 次 |||

- 松阪高校化学部での研究
- 東京理科大学での研究
- ガラスビーズのフロック
- 実験や実測による研究の原点
- 酸素消費速度OURについて
- 生物膜による分解実験
- 活性汚泥の内生呼吸期への移行
- 流入原水とOURの関係
- 公害防止管理者の受験者へアドバイス

※太字部のみWEB掲載(全編は本ページ下部より、PDFファイルをダウンロードのうえご覧ください。)

松阪高校化学部での研究

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―先生の研究分野は環境工学とお聞きしますが、はじめに自己紹介をお願いします。

出口:実は現在の天皇陛下と同じ日に生まれました。1960 年のことです。生まれてまだ名前がない時に、風邪の治療をした小児科の先生が「名前はこれでいいじゃない」と浩宮さまの名前から「浩」と命名されました(笑)。出身は三重県松阪市で、地元の松阪高校を卒業しました。一浪して東京理科大学に入学し、大学院まで含めて 9 年在籍し博士号を取得しています。

―水質関連の研究は大学生になってからですか。

出口:高校時代からです。1 年生の終わり頃から2年生にかけて、合成洗剤ABS*1 が大きな問題になっていました。高校の化学部が学園祭で、「合成洗剤による水の汚染があり、魚の味蕾(みらい)が機能しにくくなり、餌以外のものを摂取した結果、その影響として魚の背骨が曲がるなどの奇形が生じている」と発表していました。ABSは自然界で分解しないという話も本当かな、と思いました。当時、松阪には下水道がなかったので、生活雑排水は河川経由で伊勢湾に流れ込んで、最後は湾全体が洗剤の泡で覆われるかも知れない、と考えて、化学部に入部しました。

―水質汚濁が大きな問題になった当時は、ABSの濃度はどの程度でしたか。

出口:部員として、川の河口近くから上流に向かって5、6カ所の採水点を設定して、ABSを測定しました。すると、河口付近で 5 ~ 6mg/LのABS濃度が検出されました。

―高校の化学部ではどのような研究をなさっていましたか。

出口:川の水が自然分解するかどうかの実験を工夫して設計しました。①川の水と想定したコイが棲息する池の水、ABSの親油基の影響を考慮して②蒸留水にミシン油を添加したもの、③蒸留水のみ、を比較対象としました。この①~③の 3 種類にABSの標準物質を添加して実験をしました。ABSは親油基と親水基があるので、油に吸着する性質があります。油にABSがくっついて水から消える現象も実験で検討しました。

―どのような結果でしたか。

出口:実験を1カ月継続したところ、①池の水からはABSが検出されなくなりました。②ミシン油添加の蒸留水と③蒸留水のみの実験では、ABSが水から除去されませんでした。この実験から、ABSは自然分解することが実証できたと考えています。部の顧問の先生が研究成果を発表しなさいと言うので、科学技術に関係する国の機関にレポートを提出したら表彰されました。このような研究や分析ばかりしていたので、受験勉強はほとんどせず、浪人することになりました。当時は、「二度とこんな研究はしない」と決意していました(笑)。

【環境管理|2022年3月号|Vol.58 No.3】

20220310103726-0001.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

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