2015年12月

interviewmark.png マツダの環境経営 環境技術で世界に挑む(2015年12月)

201512_mazda_top.png
(写真提供:マツダ)「ソウルレッドプレミアムメタリック」をイメージした特別色を採用した広島東洋カープのヘルメット(広島東洋カープ・堂林翔太選手)

 マツダは「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」のナイター照明に必要な電力を発電するために排出されるCO2を、地元広島県が県営林の森林整備により創出したクレジットでオフセットしている。その球場で広島東洋カープの選手は、マツダ車に採用されている「ソウルレッドプレミアムメタリック」という色をイメージした特別色のヘルメットをかぶり、日本一を目指し情熱や闘志を燃やし戦っている。
 戦後、壊滅的な打撃から驚異的な復興を成し遂げた広島の人々の屈強な精神力、チャレンジしていく姿勢は、広島の企業であるマツダにも受け継がれてる。
 終戦後4か月で3輪トラックの生産を再開し、1967年に世界で唯一2ローター・ロータリーエンジンの量産化に成功した。その先人たちのDNAを確実に継承し、マツダはいま、「『走る歓び』と『優れた環境・安全性能』を高次元で両立させたクルマを世界中のお客さまに届ける」との意気込みで「モノづくり」に挑んでいる。
 そんなマツダのグローバルな「モノづくり」と環境経営について、CSR・環境部の渡部伸子部長(写真中央)、角 和宏主幹(写真左)、藤井芳之主幹(写真右)に話を聞いた。【環境管理|2015年12月号|Vol.51 No.12 より】

201512_mazda_2.png

||| コンテンツ |||
- 夢のロータリーエンジン ── 技術開発のDNAを継承する
-「真っ黒なすす」とディーゼルエンジン
- 世界一の低圧縮比を実現した「クリーンディーゼル」の技術

-「燃費性能」と「力強い走り」を両立させる
-「エコ」のための「我慢」は「サステイナブル」につながらない
- グローバルに向けた真の商品開発 ── 新興国にも「走る歓び」を
- クルマづくりのプロセスをゼロから見直す「モノ造り革新」
- 部門間の壁を超えたからこそできたマツダの「赤」
- ISO14001 を実質的なものにしていく理由
-「全社」での実現を目指す環境経営へのアプローチ

夢のロータリーエンジン ── 技術開発のDNAを継承する

201512_mazda_1.png 2015 年10 月28日、マツダ株式会社( 以下、マツダ)は「第44 回東京モーターショー」で次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R(スカイアクティブアール)」を搭載したスポーツカーのコンセプトモデル「Mazda RXVISION」を世界初公開した。
 1960 年代から70 年代にかけ、欧米技術の模倣時代から脱し、独自の「モノづくり」へと模索を始めた日本の製造業の中にあって、マツダのロータリーエンジンの開発はまさにその先鞭を切ったものであった。1961 年に西ドイツ(当時)のNSU、バンケルの両社と技術提携し開発に着手、67 年に「コスモスポーツ」で量産化に成功し、91 年にはル・マン24 時間耐久レースでロータリーエンジンを搭載した「マツダ787B 」が総合優勝。マツダの技術力を世界に知らしめた瞬間だった。
 そんなロータリーエンジンも近年のスポーツカー需要の減退に加え、燃費性能などの課題があり販売が低迷、2012 年6 月に生産終了となったが、技術開発は引き続き進めていた。今回の公開は、世界の自動車メーカーが挑戦し、マツダしか成し得なかった夢のロータリーエンジン開発技術、そのDNAの継承を改めて宣言するとともに、「常識を打破する志と最新技術で課題解決に取り組む」マツダの意思を示したものといえる。

「真っ黒なすす」とディーゼルエンジン

 1999 年に石原慎太郎・東京都知事(当時)が真っ黒なすす入りのペットボトルを示してディーゼル規制を訴えたことにより、ディーゼル車は「環境に悪い」というイメージが国民に拡大した。「黒いすす」といわれる粒子状物質( PM)と光化学スモッグの原因になるといわれる窒素酸化物( NOx )の規制が厳しくなり、都市部での旧式ディーゼル車の登録、走行が規制された。2005 年の排出ガス規制( 新長期規制)の大幅な強化に伴いディーゼル乗用車が姿を消し、2009 年にはさらなる規制強化(ポスト新長期規制)が図られた。
 だがその後、ディーゼル車は様々な技術革新により排出ガスの大幅なクリーン化が図られ、また、ガソリン車に比べて燃費性能がよく走行時のCO2 排出量が少ないことから「エコカー」として見直され、その市場規模は5年間で17 倍、約8万台(2014 年)に達している。
 その躍進の源となったのが、厳しい排ガス規制をクリアするための「クリーンディーゼルエンジン」であり、マツダはクリーンディーゼル技術開発のトップランナーとして業界を牽引している。
 「クリーンディーゼルでマツダが打ち出している価値は三つあります。『クリーン』であること、『低燃費』であること、そして『力強い走り』であることです。以前は『黒いすすが出るのがディーゼル』というイメージでしたが、最近ではそのイメージも変わりつつあると感じています。年々、規制は厳しくなりつつありますが、マツダは各国の規制に対して真摯に対応しています」(角主幹)

201512_mazda_3.png

世界一の低圧縮比を実現した「クリーンディーゼル」の技術

 「低燃費」といえば「ハイブリッド車」と思いがちだが、1.5リットルのクリーンディーゼルエンジンを搭載している「マツダ デミオ」は30km/L( JC08 モード・2WD・MT車)という驚異的な燃費を実現している。では、マツダのクリーンディーゼル技術とはどのようなものか。
 ディーゼルエンジンは、シリンダー内に空気を吸い込み、ピストンで圧縮して高温にしたところに燃料(軽油)を噴射、自然着火させて動くしくみであり、「高圧縮比」であることが特徴である。しかし、圧縮比が高いことが不均一な燃焼につながり、「すす」や「NOx 」の発生原因となっていた。そして「すす」や「NOx」を排気前に浄化する後処理装置を設置することが不可欠になるため、車両価格は高価になった。さらに高圧縮比エンジンはエンジン自体を頑丈につくる必要があるので重量が増大し、騒音や振動の原因ともなっていた。
 そんな「汚い」「うるさい」しかも「高価」で「重い」というデメリットを解決するのが、マツダのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」である。
201512_mazda_4.png 「従来のディーゼルエンジンに比べてSKYACTIV-Dではシリンダー内の圧縮比を低めにしています。圧縮比を低くするとふつうトルクが低くなるんじゃないかといわれますが、点火時期を最適化して燃料と空気が十分に混ざってから一気に燃やすことによって、すすやNOxの発生を抑えつつ高いトルクが得られるようになりました。燃焼のタイミングをいかにコントロールするかというのも、マツダのクリーンディーゼル技術の一つです」(角主幹)
 圧縮比を低くする── 一口にいうのは簡単だが、そこには大変な技術が使われている。2010 年10 月に発表された「世界一の低圧縮比14. 0」というのは、業界では「信じられない」数字だった。
 「圧縮比を数字的にどこまで下げるとどうなるかという理論があって、その数字は『あり得ない』数字だったということです。開発当初も、低圧縮比にしていいことが起こるかどうかも不明で、それでもやらないとわからないからやってみようと実証を続けていたら『これはいける』ということになって実現したのです。2010 年10 月にモデル製品で技術のみを発表したときは、皆さん『信じられない』と半信半疑でしたが、実際にエンジンを搭載した車両がリリースされたときは『マツダの言っていることは本当だった』と信用していただきました」(渡部部長)
 低圧縮比で爆発圧力が低くなることを利用してピストンやクランクシャフトなどの回転系部品を軽量化することにも成功し、機械抵抗が減って燃費が向上するとともにエンジンの吹け上がりも軽やかになり、騒音や振動の問題も解決した。高価なNOx後処理装置の必要もなくなった。

「燃費性能」と「力強い走り」を両立させる へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)

【環境管理|2015年12月号|Vol.51 No.12】

20151209164229-0001.gif下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)

btn_download.gif〔PDFファイル〕
 

機関誌『環境管理』購読・バックナンバーのお申込みはこちら↓↓

btn_kikanshi_purchase.gif

 

ページの先頭へ

ページの先頭へ戻る