2019年7月
【中環審/水環境部会】排水規制等専門委員会(第29回)及び【中環審/環境保健部会】(第42回)
報告2本(2019/7/17)及び2019/7/22)
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【中環審/水環境部会】排水規制等専門委員会(第29回)
7月17日に、中央環境審議会(環境省)水環境部会の会議が開催され、「カドミウム及びその化合物に係る暫定排水基準の見直しについて」等の審議が行われた。
議事概要 |
日時:令和元年年7月17日(水) / 於:環境省 第2,3会議室(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)
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(概要)
議題「カドミウム及びその化合物に係る暫定排水基準の見直しについて」
水質汚濁防止法に基づく有害物質のうち、カドミウム及びその化合物(以下「カドミウム」)については、平成26(2014)年12月に一般排水基準が強化(0.03mg/L)されたが、その際に直ちに一般排水基準を達成することが難しい4業種について、2年又は3年の期限を設けて暫定排水基準を設定した。その後、順次暫定排水基準の見直しが行われ、現在は1業種(金属鉱業:1事業所)について令和元(2019)年11月末を期限に暫定排水基準(0.08mg/L)が適用されている。この事業所における取組の状況等を踏まえ、現行の暫定排水基準(0.08mg/L)を維持することが提案、承認された。尚、暫定排水基準の適用の期間は、2年間とされた。また、水環境課で実施されている施策として、①水環境分野における国際協力、海外展開の施策、②気候変動を踏まえた全国湖沼における適応策の検討、③環境技術実証事業が紹介された。
(1) カドミウムの暫定排水基準の見直しについて
金属鉱業において、カドミウムの一般排水基準を達成していないのは1事業所だけであるが、この事業所においては、山奥で電気が無く手動で排水処理を行なっている。降雪時には、事業所(鉱山)に入所することができず、台風や融雪期の水量増に対応が困難な状態にある。現在、当該事業所については、電化推進及び水処理設備の設置を検討しており、令和2年度中に、設備建設、試運転、安定運転、効果確認を行う予定である。そのため、現行の暫定排水基準(0.08mg/L)を2年間延長することが妥当とされた。
業種 |
カドミウム(一般排水基準:0.03mg/L) |
現行
(H28.12.1~R1.11.30)
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見直し案
(R1.12.1~R3.11.30)
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金属鉱業 |
0.08mg/L |
0.08mg/L |
尚、一部修文の上、水環境部会に報告後、8月にパブリックコメントを実施、12月1日の施行を予定している。
(2)水環境課の施策について
①水環境分野における国際協力、海外展開の施策として、「アジア水環境パートナシップ(WEPA)」と「アジア水環境改善モデル事業」が紹介された。
②気候変動を踏まえた全国湖沼における適応策については、気候変動適応計画に基づく取組を紹介。気候変動による湖沼の水質や生態系への将来影響予測や評価を行い、湖沼の水環境悪化に対する効果的な適応策を検討している。現在、モデル湖沼において評価を実施、2020年末までに適応策の選定と評価の予測を行う予定である。
③環境技術実証事業(ETV)は、既に実用化された先進的環境技術の普及のために、信頼できる第三者機関(実証機関)が客観的立場で、環境保全効果等について現場で実証を行い、環境省がその結果をウェブサイト等で公表するものである。平成17年から現在まで27件の技術の実証を行っている。
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【中環審/環境保健部会】(第42回)
7月22日に、中央環境審議会(環境省)環境保健部会の会議が開催され、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)新規対象物質の化審法第一種特定化学物質への指定について」等の審議が行われた。
議事概要 |
日時:令和元年年7月22日(月) / 於:航空会館 7階ホール(東京都港区新橋1-18-1) |
(概要)
議題「(1)残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)新規対象物質の化審法第一種特定化学物質への指定について、(2)PRTR等対象物質の見直しについて(諮問)及びPRTR対象物質等専門委員会の設置について、(3)環境基本計画の点検について 等」
(1) 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)新規対象物質の化審法第一種特定化学物質への指定について
令和元(2019)年4月~5月に開催されたPOPs条約第9回締約国会議(COP9)において、ジコホルとペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質が附属書A(原則製造・使用禁止)に追加されたことを受け、国内担保措置として、同物質を化審法第一種特定化学物質に指定するために必要な検討を行うこととした。具体的には、令和元(2019)年7月から環境保健部会化学物質審査小委員会(厚生労働省、経済産業省と合同会議)にて審議を開始し、本年秋を目処に輸入禁止製品。エッセンシャルユース及び技術上の基準について具体的に検討を行った後、令和2(2020)年にTBT通告、パブリックコメントを経て、化審法施行令を改正・施行する予定である。
(2) PRTR等対象物質の見直しについて(諮問)及びPRTR対象物質等専門委員会の設置について
平成31(2019)年4月の「今後の化学物質環境対策の在り方について」の諮問を受け、環境保健部会化学物質対策小委員会(経済産業省と合同会議)にて、化管法の今日的な在り方について検討を行い、令和元(2019)年6月「今後の化学物質環境対策の在り方について」の答申が行われた。これを受け、令和元(2019)年7月に環境大臣より中央環境審議会に対して「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の指定の見直しについて」が諮問された。「今後の化学物質環境対策の在り方について」における「対象化学物質の見直しの考え方」踏まえた審議を行うために、環境保健部会に新たに「PRTR対象物質等専門委員会」を設置し、厚生労働省、経済産業省と合同会議にて審議を行うこととした。本年秋に審議を開始し、本年度内に意見を取りまとめる予定である。
(3) 環境基本計画の点検について
第5次環境基本計画の全体的な点検の進め方について報告が行われた。2019、2020年度に第1回点検、2021、2020年度に第2回点検を行う。第1回点検では、各部会で重点戦略を中心とした施策についてに進捗確認等を行う。2019年度は、環境保健部会においては「地域循環共生圏を支える基盤となる生活環境(水、土壌、化学物質)づくりに係る取組のうち、化学物質管理に係る取組の進捗状況の点検を実施する。また、重要な国際的な動向も踏まえた我が国の進捗状況の報告も適宜行う。
(4) その他
① 熱中症の状況と対策
令和元(2019)年度の環境省における熱中症対策について報告した。本年度新規事業として熱中症予防対策ガイダンス策定のための実証事業を実施する。地方公共団体や民間事業者における取組内容の効果や課題を分析し結果を「熱中症予防対策ガイダンス」に纏める予定である。公募により9事業を採択し、実証事業を推進中である。
② 化学物質管理に係る国際動向
SAICM、POPs条約、OECD、水俣条約について状況を報告した。SAICMについては、2020年以降の化学物質と廃棄物管理の枠組み(ポストSAICM)について議論を開始している。2020年10月の国際化学物質管理会議第5回会合(ICCM5)にて、SAICMの総括、次期枠組みの採択が行われる予定である。
③ 石綿健康被害対策について
石綿健康被害判定小委員会の開催状況及び石綿健康被害の救済に関する取組について報告した。
④ 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線に係る住民の健康管理・健康不安対策
放射線に係る住民の健康管理として甲状腺調査の結果の評価等について報告した。また住民の健康不安対策として、相談員支援センターへの支援活動の状況、情報発信等について報告した。甲状腺調査の結果の評価として、先行調査、本格検査の結果からは、原発事故による放射線被ばくと甲状腺がんの発生には関連性は認められない(環境省専門家会議中間取りまとめ、国連科学委員会福島原発事故報告書、福島県県民健康調査検討委員会など)。外国人にも正しい情報を発信していくため、「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」の英文版を作成し、平成31(2019)年2月に公表した。
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【環境省】中央環境審議会水環境部会排水規制等専門委員会(第29回)の開催について
【環境省】中央環境審議会環境保健部会(第42回)の開催について
※取りまとめは本編集部独自によるものです。
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【NO.85】ゲノム編集利用生物・食品のカルタヘナ法・食品衛生法上の取扱い検討の経緯
他3本
『機関誌:環境管理2019年7月号 シリーズ連載|先読み!環境法』より |
2019年7月号の『環境管理(機関誌)』では、下記の4テーマについて、最新動向を解説している。各テーマの概要について紹介する。
1.ゲノム編集利用生物・食品のカルタヘナ法・食品衛生法上の取扱い検討の経緯
2018年6月に公表した内閣府のバイオ戦略検討WGによる「バイオ戦略策定に向けた中間取りまとめ」において、「近年、新たに登場したゲノム編集技術を利用した作物等について、カルタヘナ法、食品衛生法における取扱いが不明確である」と指摘され、同月に閣議決定された「総合イノベーション戦略」において、平成30年中を目途に明確化することが求められた。2019年夏を目指して新たなバイオ戦略が策定される。【全編内 ヘ続く】
2.「ゲノム編集技術の利用により得られた生物であってカルタヘナ法の『遺伝子組 み換え生物等』に
該当しない生物の取扱い」(2月8日)―― 情報提供の依頼
2019年2月8日付環自野発第1902081号で、環境省自然局長から、財務省国税庁長官官房審議官、文部科学省研究振興局長、厚生労働省カルタヘナ法規制当局の長、農林水産省消費・安全局長及び経済産業省大臣官房商務・サービス審議官宛てに「ゲノム編集技術の利用により得られた生物であってカルタヘナ法に規定された『遺伝子組み換え生物等』に該当しない生物の取扱いについて」が出された。その一部を抜粋して紹介する。【全編内 ヘ続く】
3.任意の届出により情報提供を求める 「ゲノム編集技術を利用して得られた食品 等の食品衛生上の
取扱い(案)」―― 説明会とパブコメを実施
ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて
1.検討に至るまでの経緯
2.検討の内容
まず、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会遺伝子組換え食品等調査会(以下「調査会」という。)において、喫緊の課題となっているゲノム編集技術応用食品について、消費者団体を含む関係団体の意見を聴きながら、食品衛生上の取扱いについて技術的な観点から検討が行われ、調査会報告書がとりまとめられた。【全編内 ヘ続く】
4.ゲノム編集利用の安全確保に向けた法的措置が必要
政府がバイオ戦略を進める上で明確化を求めたのは、ゲノム編集利用生物がカルタヘナ法上、ゲノム編集利用食品が食品衛生法上、どのような扱いになるかで、平成30年度中の結論を求められた。これを受けて、環境省・厚生労働省は、それぞれ審議会等で慌ただしく検討を行ない、ゲノム編集利用生物は、核酸が宿主に残っているものはカルタヘナ法の審査の対象になること、ゲノム編集利用食品は、食品衛生法の規制対象外と整理した。【全編内 ヘ続く】
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