環境管理バックナンバー 2022年 8月号

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2022年8月号 特集1:VOC研究の近年の動向/特集2:持続性に資する水処理技術の新展開

<特集1>

VOCの排出削減によるオゾン低減を効率的に行うための諸条件
井上 和也(国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 主任研究員)
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 地上オゾン汚染の低減を目指しVOC排出抑制の自主的取組が現在も継続されているが、対策を行う企業への負担軽減にも留意し、可能な限り効率的に対策を実施する必要がある。本研究では、VOC排出削減によるオゾン汚染低減の効率性を表す指標として「オゾン存在量低減効率」を提案するとともに、実際に、様々な条件下にて、大気化学輸送モデルによるシミュレーションを行うことによりオゾン存在量低減効率の値を試算し、VOC排出削減によるオゾン低減を効率的に行うための諸条件を検討した。

VOC 排出源としての都市緑化樹木の影響
國分 優孝(公益財団法人 東京都環境公社 東京都環境科学研究所 主任)
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 都市の光化学オキシダントを効果的に削減するためには、光化学オキシダントを生成しやすい原因物質(反応性VOC)を対象とした排出量削減が有効である。樹木は極めて高い反応性を持ったVOC(植物起源VOC)を放出することから、近年、街路樹などの都市緑化樹木が反応性VOCの有力な排出源の一つとして着目されるようになっている。大気中での存在時間が極めて短い植物起源VOCは、従来の大気観測等では実態把握が困難であったこともあり、あまり研究が進んでこなかった。しかし、近年の衛星画像解析技術やシミュレーション技術の発展により、新たなアプローチを通じた実態把握の研究が盛んになりつつある。
東京都環境科学研究所では、首都圏全域を対象とする重点的な調査をもとに、都市緑化樹木が及ぼす影響の実態把握を進めている。具体的には、最新の観測手法や衛星画像解析技術、大気化学シミュレーションを活用し、①都市緑化樹木からの植物起源VOC放出量推定、②植物起源VOCによる光化学オキシダント生成量評価、③その生成過程のスモッグチャンバーによる検証、といった一連のアプローチを実施してきた。現在これらの結果をもとに、光化学オキシダント生成への都市緑化樹木の影響が明らかになりつつある。

<特集2>

水処理における窒素資源循環技術への取り組み
川本 徹(国立研究開発法人産業技術総合研究所 材料・化学領域 ナノ材料研究部門)
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 地球の許容度を示すプラネタリーバウンダリーでは、窒素化合物の環境排出は最も深刻な課題の一つであり、その削減が期待されている。現在の産業活動を阻害することなく、環境排出を実現するための方法として、窒素循環技術の開発が期待されている。本稿では、既存の窒素循環技術を紹介したうえで、現在開発の進む新技術として、窒素化合物をNH4 +に変換する技術を示す。また、変換し生産したNH4+を濃縮分離し、資源として利用可能な形態にする分離濃縮技術として、膜分離技術と吸着分離技術を紹介する。

水処理プロセスにおけるエネルギー生産技術の新展開
愛澤 秀信(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域環境創生研究部門 環境生理生態研究グループ 研究グループ長)
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 2020年10月のカーボンニュートラルの宣言に伴い、下水処理プロセスにおいてもCO2排出量削減に向けた省エネルギーや創エネルギーとともに資源回収の取り組みを開始した。下水処理施設におけるCO2排出量の約55%が電力消費によるものであることから、施設の省エネ化、ICT、AIを導入した処理プロセスの高度化が進められている。創エネルギーでは、嫌気消化プロセスで生成したメタンガスによる発電に加えて、水素創出や微細藻類培養などの新たな技術構築を行っている。輸入総量の約10%が下水の流入しているリン回収は、下水処理場の特性やリン資源化技術、ニーズ把握とマッチングを確認しながら回収技術の高度化を進める必要がある。

<シリーズ>

【展望・日本のエネルギー問題を考える56】日本の原子力は復権するのか?(3)需給ひっ迫の背景要因についての考察と対策―原子力稼働との関係から
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授)
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 電力供給の安定性確保には、①発電設備の十分な確保(kW)、②燃料の十分な確保(kWh)、③送配電ネットワークの強靱性確保といった3つの側面からの取り組みが必要となる。設備投資がカギを握る①および③についてはこれまでわが国で課題とされることはほとんどなく、化石燃料資源を海外に依存するわが国にとって、電力安定供給とは長年燃料調達の安定性確保が重要であるとされてきた。コロナからの各国の経済復興と、それまでの化石燃料開発投資停滞によるエネルギー価格高騰に加え、ウクライナ危機により特にLNG(液化天然ガス)の国際的争奪戦が始まる中で、②の燃料の十分な確保は引き続きわが国の電力供給における最重要課題である。
しかし毎夏冬に需給ひっ迫が懸念される事態となり、発電設備の確保に課題があることが明らかになってきた。また、人口減少・過疎化が進む中で送配電ネットワークの強靱性を維持する投資が困難になりつつある。自然災害が増加・激甚化するなかで今後は送配電網への投資の費用対効果をどのように考えるかについても社会的議論の必要性があろう。
今回は、発電設備の十分な確保について考えたい。初となる電力需給ひっ迫警報が発令された本年3月22日は、結果的に計画停電および広域大停電に陥るような事態は回避できた。しかしこの日電気は「足りた」のかと言えば、「足らせた」と表現した方が正確だと考えられる綱渡りの供給であった。当日採られた施策の中には、顧客の需要抑制(デマンドレスポンス)や節電行動だけでなく、電圧調整、火力増出力運転、信頼度低下をともなう連系線マージン利用といったリスクをともなう対策も総動員されている。また、翌日には天候が回復して需要減少、太陽光発電の発電量増加を見たが、翌日も悪天候であれば停電に陥ることは避けがたかったと考えられる。
こうした課題認識は、戸田[2022]などに示されているが、発電設備の不足が需給ひっ迫の原因ではないとする論もある。原因を見誤れば対策は当然異なるのであり、今回はわが国の発電設備の十分な確保に関する課題について考察する。
【弁護士からみた環境問題の深層/第20回】地域における再生可能エネルギー事業に関する法律問題―改正地球温暖化対策推進法の意義と課題を中心に
高橋 大祐(真和総合法律事務所 弁護士/日本CSR 普及協会 環境法専門委員会委員)
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 気候変動対策の観点から再生可能エネルギーが注目されているところ、これを持続可能な形で推進するためには、地域環境に配慮しつつ地域社会の活性化にもつなげる必要がある。本稿は、地域において再生可能エネルギー事業を促進するにあたって生じ得る法律問題と、その対応を議論する。特に、地球温暖化対策推進法の2021年改正の柱の一つとして創設された「地域脱炭素化促進事業制度」について、その意義・内容・施行状況を説明するとともに、制度の実施上の課題や、課題を解決するための弁護士の役割に関しても議論する。
【産廃コンサルタントの法令判断/第77 回】新しい処理装置の導入「自ら処理」でも許可が必要? 不要?
佐藤健(イーバリュー株式会社 コンサルティング事業部コンサルタント/マネージャー)
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日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第77回)。

【環境担当者のための基礎知識/第54回】活性炭吸着の基本を学ぶ―ろ過機能も考慮した維持管理や処理前後の水質モニタリングなど
岡 ひろあき(環境コンサルタント)
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 米国のジャックダニエル醸造所において、大量の活性炭が利用されていたのを目撃した。さまざまな用途に利用される活性炭だが、排水処理分野においても染色排水の脱色や有機排水の三次処理に使用されている。今回は、優れものである活性炭について、基礎知識を中心に解説する。
【新・環境法シリーズ/第126回】アメリカにおけるCOVID-19をめぐる訴訟
辻 雄一郎(明治大学 法学部(環境法センター) 教授)
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本稿では、COVID-19をめぐる州の感染対策をめぐる合衆国裁判所の判断を検討する。

【先読み! 環境法/第122回】「 脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策のあり方検討会」 の位置づけ(2021年8月23日にとりまとめを公表)
小幡 雅男(元・大阪学院大学 教授)
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 脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策のあり方検討会の位置づけ(2021年8月23日にとりまとめを公表)、また、2022年5月25日から6月24日までパブリックコメントが実施された「東京都環境保全条例改正について(中間のまとめ)」について、6月7日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2022」におけるグリーントランスフォメーション(GX)への投資とエネルギー安全保障の内容について解説する。
 
1 「 脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策のあり方検討会」の位置づけ(2021年8月23日にとりまとめを公表)
2  2022年5月25日から6月24日までパブリックコメントが実施された「東京都環境保全条例改正について(中間のまとめ)」―住宅等の一定の中小新築建物を供給する事業者に対し太陽光発電設備等の設置義務、ZEV充電設備最低基準(義務基準)の新設―
3 6月7日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2022」におけるグリーントランスフォメーション(GX)への投資とエネルギー安全保障の内容について

 

環境法改正情報(2022年6月改正分)
宇佐美 亮(一般社団法人産業環境管理協会 人材育成・出版センター 技術参与)
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◆地球温暖化対策推進法
◆毒劇法
◆建築物省エネ法
◆高圧ガス保安法関係
◆労働安全衛生法
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