環境管理バックナンバー 2008年 5月号

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2008年5月号 特集:排出量取引

<特集>

排出量取引の現状と課題
塩野谷毅 日本政策投資銀行企業金融第5部次長
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 今各国は、温室効果ガスの削減による地球温暖化防止という困難な課題克服に向けて種々の取り組みを進めている。その中で注目を集めているのが、排出量取引を活用した対策の実施である。欧州連合(EU)は既にEU-ETSという排出量取引を核とした仕組みを立ち上げており、また、議定書を離脱した米国でも州政府等を中心に排出量取引導入を進める動きをみせている。しかしながら、排出量取引制度については、依然多くの課題を抱えており、今後我が国が排出量取引の仕組みを整備していくとすれば、これらの課題を克服した健全な形での導入が望まれる。

中国での省エネCDM事業について
青野雅和 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部東京第一本部シニアコンサルタント
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 中国における省エネCDMが増加しつつある。これは、第11次五カ年計画で公表された「一万元(約15万円)GDPにおけるエネルギー消費率を2010年までに2005年をベースとして20%削減する」の目標に省エネを進める一連の政策と密接に関連する。現在の中国企業の省エネニーズは生産プロセスの改善を優先させているが、本来、古い方式での生産設備が設置されていることから、先進技術にリニューアルすることで、結果的に省エネ効率も生産効率同様にアップする。したがって国の省エネ政策もクリアできる形となるから、必然的に多様な省エネ方式の積み上げを行うのではなく、生産プロセスの改善を優先的に進める風潮が見受けられる。省エネCDMについてはセメント、鉄鋼、コークス業界で占められており、今まさに生産プロセスにおける省エネ効率の改善が政策として求められている業界である。またこれらの一部の企業においては、先に生産拡大を目的とした設備投資は自己投資で、省エネ化事業は余熱発電としてCDM化して外資を利用する戦略をとる傾向もある。一方で、プログラムCDMの事例が出てきたことや、コベネフィットCDMを推進する傾向もでてきており、投資を必要としない運用型の省エネ化や大気汚染、廃棄物処理など環境負荷と温暖化ガス削減の双方を解決できるモデルが中国でも進むであろう。

CDM促進に向けたODAの活用
須藤智徳 国際協力銀行開発業務部気候変動対策室兼業務課参事
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 クリーン開発メカニズム(CDM)は2005年2月の京都議定書発効以降急速に登録件数が増加し、ようやく市民権を得てきた感があるが、そのポテンシャルが十分に発揮されているとはいえない。これまでCDM事業に対するODA支援は「ODAの流用」として認められないとの認識があったが、すべてのCDM事業支援でODAの活用が認められないわけではない。CDM市場のさらなる拡大を図りCDMの地理的分布の偏在を解消しつつ、開発途上国の温室効果ガス(Greenhouse Gases:GHG)削減への積極的な参加を促進していくためには、民間企業等がCDM事業を実施しにくい国やセクターにおいて、ODAを活用したCDM事業の実施支援を図っていくことが必要である。

ポスト京都議定書、国内政策、排出量取引制度
長谷川雅巳 社団法人日本経済団体連合会産業第三本部環境グループ長
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 政府の各種懇談会・研究会で、洞爺湖サミットに向けて、排出量取引制度に関する議論が進められているが、ポスト京都議定書の国際枠組が議論される洞爺湖サミットに向けて、削減のための手段である国内政策を議論する意義は乏しい。むしろ、国別総量削減目標を前提とする議論だとすれば、米国、中国、インド等の主要排出国の参加を阻害するおそれがある。排出量取引制度を検討するにあたっては、地球温暖化防止に資するか((1)技術開発に資するか、②炭素リーケージが生じないか、③確実な排出削減は可能か)、(2)環境と経済の両立は可能か(①経済活動への規制となるか、②国際競争力との関係はどうか、③経済に対する統制とならないか、④不公平の招来や経済厚生の減少につながらないか)、わが国の温暖化問題の課題と合致しているかといった視点が重要である。他方で、「他の国が導入しているから、わが国も乗り遅れるべきではない」といった観点は、重要とは考えにくい。

省エネルギー促進に向けたCDMの課題
伊藤葉子 財団法人日本エネルギー経済研究所地球環境ユニット地球温暖化政策グループ研究員
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 本稿では、省エネルギープロジェクトの促進を念頭にCDM(Clean Development Mechanism(クリーン開発メカニズム))の課題について整理した。省エネのCDMプロジェクトを拡大するには多くの課題が存在するが、CDMの制度運営に係る問題が重要である。まず、省エネの方法論に関する承認の割合が低く、CDMとして実施するため汎用性が限られることが挙げられる。さらに、プロジェクトの登録に際しての審査基準は省エネプロジェクトに相対的に不利な条件を作り出している。また、CDMの方法論やプロジェクトの承認、及びクレジット発行の審査にあたるCDM理事会の運営については、その効率性、独立性についての限界が観察され、改善が求められる。それら問題点等を踏まえ、「プログラムCDM」を含む省エネプロジェクトが本流となるような制度構築に向け、国内外に働きかけを行うことが重要である。

コベネフィッツ型CDMによる排出権の獲得
佐野真一郎 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部シニアコンサルタント、弓場雄一 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部シニアコンサルタント
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 地球温暖化の深刻化に対する社会の認識が高まるなか、国際的な取組が進められてきた。京都議定書に基づく京都メカニズムは、地球温暖化の直接的な原因である温室効果ガスの削減と、将来的に課題となりうる途上国の持続可能な発展を目的として導入された経済的手法だが、必ずしも途上国の持続可能な発展に寄与しないケースもあることが課題としてあげられてきた。コベネフィッツ型アプローチは、途上国の持続可能な発展と地球温暖化対策の両立を達成する手法として期待されている。

信託機能を活用した排出量取引
平 康一 三菱UFJ信託銀行株式会社フロンティア戦略企画部環境室
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 日本でも4月から京都議定書第1約束期間に入ったものの、排出権の取得を通じて温室効果ガス削減にかかわるためには、さまざまな困難が存在する。かかる状況下、国内法の整備も進み、信託機能を活用することを通じて、排出権の取得・管理に関する課題を軽減することが可能となった。排出権の取引を概観し、信託機能を活用した仕組みについて解説するとともに、その活用事例を紹介しながら、今後の課題や展望について考えを述べる。

<シリーズ>

【エコイノベーション 2】環境ベンチャー企業の現状と今後の展望
中村吉明 経済産業省環境指導室長
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 エコイノベーションを促進し、環境ビジネスを振興させるためには、大学、大企業中心の研究開発だけではなく、ベンチャー企業の役割が重要であることが認識されるようになってきた。そこで、本稿では、アンケート結果に基づき、環境系大学発ベンチャー企業の現状と課題を明らかにする。また、環境系大学発ベンチャー企業のSTACとソフィア、及び環境系理化学研究所発ベンチャー企業のワイコフ科学の現状及び今後の展開を探った。その結果、環境系大学発ベンチャー企業は、他の大学発ベンチャー企業とは異なり、研究開発は大学に任せ、大学の研究成果を製品化し、その製品の普及を中心に事業を実施していることが明らかになった。また、環境系大学発ベンチャー企業の成功の鍵は、公共調達の活用にあり、公共調達を活用して如何に販売実績を示すかが重要である。

【環境法の新潮流 51】EUの環境政策と刑事罰の動向
森本陽美 明治大学法学部兼任講師
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 環境犯罪は、通常の犯罪と比較して侵しやすく、被害の特定も困難である。EUの刑法による環境保護は1998年に始まるが、2001年以降は、EC条約175条(第1の柱)をその根拠とする欧州委員会とEU条約29, 31, 34条(第3の柱)をそうする閣僚理事会の主導権争いが続いている。欧州司法裁判所は、今のところ委員会に軍配を上げ、刑事罰強化と刑法のハーモナイゼーションが一層進む流れにある。市場の公正さの確保や政策追求、刑事訴追の確実性を考えるとハーモナイゼーションは確かに必要に思えるが、行政罰が専門的で効果的であるとの見解も根強い。

【実践マテリアルフローコスト会計 32】田辺製薬吉城工場㈱におけるマテリアルフローコスト会計の導入
船坂孝浩 田辺製薬吉城工場株式会社総務課長、河野裕司 東和薬品株式会社生産本部生産管理部次長
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 企業経営において環境対応が重要な経営課題となっている現在、田辺製薬吉城工場㈱では持続的な環境保全と経済活動の両立をめざし環境経営に取り組んでいる。環境経営を実践していくためには、環境保全のコストを正確に把握するとともに、その成果もまた正しく評価する必要がある。そのため、当社ではいち早く環境会計を取り入れ、環境負荷の低減に努めている。その中でも重要なのが、製品の製造過程における資源やエネルギーの損失に着目して物量と金額の両面からロス分析を行う「マテリアルフローコスト会計(MFCA)」である。本稿では、当社におけるMFCAの導入過程を振返るとともに、その成果を明らかにすることにより、MFCAの有用性を考察したい。

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