環境管理バックナンバー 2016年 6月号

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2016年 6月号 特集:洋上風力発電の可能性と今後の課題

<特集>

洋上風力発電の世界首位企業が上場
本誌編集部
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 洋上風力発電の世界最大手DONGエナジーが2016年夏に新規株式公開IPOすると発表した。今年の欧州株式市場での最大規模のIPOになる可能性もあるという。原油や資源価格の下落、世界的な電力需要の停滞にもかかわらず、新たな資金調達によるさらなる洋上風力の飛躍を期待しているようだ。
 洋上風力発電についての最新ニュース。
洋上風力発電市場の動向と展望
川原 武裕(ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス再生可能エネルギーシニアアナリスト)
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 2014年4月に日本で洋上風力発電向け固定買取価格が設定されて以降、丸紅、SBエナジー、大林組など、商社・再生可能エネルギー開発事業者、建設会社等によるプロジェクト開発計画の発表が相次いだ。現在国内で計画されている洋上風力発電プロジェクトの合計設備容量は約1. 4GWに達する。世界では、ドイツや英国を中心に、洋上風力発電市場は成長を続けており、2015年には過去最高となる4. 1GWの導入を記録した。今後も成長が続き、アジアでは中国の導入量が飛躍的に伸びる見込みだ。
 洋上風力発電の魅力は、陸上風力発電よりも風速が早く、大型の風車の利用が可能なため、より多くの発電量が期待できる点にある。しかし、気象・海象条件など厳しい環境制約のハードルをクリアしなければらず、その分コストが高い。現段階ではいずれの国においても補助施策がなければ経済的に成り立たない電源である。
 本レポートでは洋上風力と陸上風力の違い、洋上風力発電のコスト分析、世界市場の動向について解説する。最後に、日本の将来の洋上風力発電市場の課題や展望についても解説する。
最近の洋上風力発電
上田 悦紀(一般社団法人 日本風力発電協会)
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 欧州では風車の陸上立地が飽和してきたために、広大な海上に大型風車を何十台も設置する大規模な洋上風力開発が商業化されている。2015年末時点で北海とバルト海を中心に世界で約1,210万kW・1,100 台の洋上風車が運転中である。欧州以外でも中国、米国、台湾、韓国でも建設が進みつつある。日本も52,800kW・27 台(世界8位)の洋上風車が運転中である。関連法規と建設インフラ(建設用の専用船と港湾)の整備が進みつつあり、今後はエネルギー供給と地球環境保護の両面に貢献することが期待されている。

北九州市地域エネルギー拠点化推進事業における洋上風力発電誘致に向けた取組み
竹本 智子(北九州市 環境局地域エネルギー推進課・主任)
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 北九州市は市民生活や地域産業を支える観点から、「地域エネルギー拠点化推進事業」として再生可能エネルギーをはじめとするエネルギー産業の拠点化を図っているが、洋上風力発電は付随する産業の裾野が広く、地域経済の活性化も期待されており、本市は発電所立地促進と風力発電産業集積促進の両面で取り組みを進めている。本稿では、本市の地域エネルギー拠点化推進事業や、洋上風力発電事業誘致に向けて本市自らが主導的に進めている環境調査や市民向け啓発事業などの取組みについて紹介する。

北九州市響灘における洋上風力発電施設の設置・運営について
北九州市 港湾空港局 エネルギー産業拠点化推進課
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 北九州市若松区響灘地区で平成22年度より進められている「グリーンエネルギーポートひびき」事業は、国内で再生可能エネルギーの利活用の必要性が重視されるようになった平成23年の東日本大震災以前より、風力発電をはじめとする様々な再生可能エネルギー産業の集積を目指してきた。これまでの取組みと今後の展開を紹介し、響灘地区での風力発電関連産業の集積の可能性を述べる。

洋上風力発電の海域占用・合意形成における法的課題とその克服に向けた取組み
鎌田 智(鎌田法律事務所 弁護士)高橋 大祐(真和総合法律事務所 弁護士)
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 本論稿では、洋上風力発電の海域占用・合意形成における法的課題として一般海域の法の空白域の問題を提示した上、課題克服のための二つのアプローチを取り上げる。一つ目は、港湾区域を一般海域に拡張した上で、港湾法改正法の法的枠組みの下での占用権原を確保する福岡県北九州市の取組みである。二つ目は、市が一般海域における洋上風力発電事業の推進や合意形成を主導し、事実上の占用権原を確保する新潟県村上市のアプローチである。二つのアプローチを比較分析した上で、なお残された課題とそれを克服するための施策の動向についても議論する。

洋上風力発電事業における作業船・洋上作業に対する規制に関する課題
森田 多恵子(西村あさひ法律事務所 弁護士)渡邊 典和(西村あさひ法律事務所 弁護士)
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 洋上風力発電事業において風力発電施設を建設するには外国船籍の特殊作業船を利用する必要性が高いとされているが、外国船籍の特殊作業船を使用するには様々な法的課題が指摘されているところである。
 本稿では、今後の洋上風力発電事業の事業化に向けて、深夜早朝作業の問題やカボタージュ規制に関する法規制を取り上げ、現状の課題を議論する。

洋上風力発電事業の終了時の施設撤去
古川 絵里(シティユーワ法律事務所 弁護士)
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 わが国の洋上風力発電施設の建設はまだ緒に就いたばかりであるが、プロジェクトの経済性の検討にはその開始から終了までの総コストの算定が不可欠である。プロジェクト終了時のコストとして洋上風力発電施設の撤去はどこまで行わなくてはならないかの問題が注目されつつある。海底面下に深く打ち込んだ基礎をすべて掘り上げて撤去するためには多大なコストがかかるとみられており、この基礎部分はそのまま残して捨て置くことがわが国の法令上許容される余地はあるかにつき検討する。また洋上風力先進国といわれる欧州諸国の事例も紹介する。

再エネ特措法の改正と洋上風力発電への実務影響
中山 和人(黄櫨綜合法律事務所 弁護士)
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 平成24年7月に電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下、再エネ法という)に基づいて再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が開始され、再生可能エネルギーの導入量は一定量増加した。一方で、現行の再エネ法に基づく認定制度では、特に太陽光発電の未稼働案件が増加しているという実情がある。また、FIT認定量のほとんどを事業用太陽光が占め、電源間でのバランスのとれた導入促進や、買取費用増大をふまえコスト効率的に再生可能エネルギーの導入促進をする必要等の課題が指摘されている。
 そこで、①発電事業者の事業認定の制度創設、②数年先の買取価格を決定できる価格の決定方法の見直し、③入札を実施して買取価格を決定する仕組みの導入、④買取義務の対象を小売電気事業者等から一般送配電事業者への変更、⑤買取を行った再生可能エネルギー電気を卸電力取引市場において売買すること等の義務付け、⑥賦課金の減免制度の減免要件及びその額の見直しを盛り込んだ再エネ法改正法案が国会に提出されている。この制度改正により、洋上風力発電の実務にも影響があるものと思われる。

<総説>

大規模災害時における化学物質による環境リスクの低減対策の促進について
大阪府 環境管理室 環境保全課
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 大阪府では、化学物質の使用が適正なものとなるよう、府生活環境保全条例に基づく「化学物質適正管理指針」(以下、単に「指針」とする)により、事業所からの化学物質の排出量の削減等の促進に努めている。
 大規模災害に備えた化学物質管理の強化を図るため、平成25年11月に指針を改正した。指針では、化学物質を扱う事業者は、南海トラフ巨大地震等の大規模災害時の化学物質による環境リスクを把握し、その低減対策を検討して、今後実施する内容を管理計画書に記載し、届け出ることとしている(事業所の規模に応じ、平成26年度から3年に分けて届出)。
 本稿では、本制度について概説するとともに、府が平成28年3月10日に進捗状況等をとりまとめて公表した内容について説明する。

気候変動適応策に関する国際動向と日本の取組について
竹本 明生(環境省 地球環境局 総務課 気候変動適応室長)
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 2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議で採択されたパリ協定に基づき、世界各国は気候変動緩和策と適応策の両者を実施していくこととなった。政府による適応に関する戦略や計画は、日本を含めすでに多くの国で策定している。我が国では、環境基本計画や中央環境審議会が行った気候変動影響評価等の取組みなどを経て、2015 年11月に政府の適応計画が閣議決定され、現在、関係府省庁において適応への取組が進められている。適応計画策定が先行している英国、フランス、アメリカなどでは、ウェブサイトを活用した適応に係る情報の地方自治体や事業者などへの提供や地方自治体に対する支援が進められている。

ISO 14001:2015の改訂内容について(後編)
吉田 敬史(合同会社グリーンフューチャーズ 社長)
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 昨年9 月15 日にISO 14001 の2015 年版が発行された。改訂のポイントとして「組織トップのリーダーシップを求める」、「環境改善と事業戦略の一体化」、「事務局任せでは許されない」、「トップマネジメントの説明責任」の四つが挙げられる。本稿は2015 年改訂の経緯、変更点、要求事項等改訂内容の全般について、ISO/TC207/SC1(ISO14001)日本代表委員である吉田敬史氏にご講演いただいた内容をまとめたものである。
(一般社団法人 産業環境管理協会発行「CEAR」誌掲載「CEAR 講演会講演録」より内容を一部変更の上、転載)

<報告>

石綿含有スレート片が売却済み工場跡地にあれば隠れた欠陥で賠償?(東京地裁2016 年4月28日判決)/某化学工場の日常汚泥処理
本誌編集部
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「石綿含有スレート片が売却済み工場跡地にあれば隠れた欠陥で賠償?」
 ゴールデンウィークの始めに東京地裁で非常に興味深い判決が下された。それは購入した物流施設建設用の土地からアスベスト(石綿)を含む大量の廃棄物が見つかったとして、買主が売主に対し約85億円の損害賠償を求めた裁判であった。土地購入時に石綿混入を知らされていなかったとして損害賠償を請求したものである。
 売買契約が終了したあとで土地から過去の建材に使われていたスレート片が見つかり、その中から石綿が検出された。土地売買契約書で「土地に隠れた欠陥(瑕疵)があれば賠償請求できる」と定めており、建材の石綿スレート片が瑕疵に当たるかどうかが争点となった。
 2016年4月28日、東京地裁は工場跡地を所有していた売主に約56億円の支払いを命じる判決をくだした。判決では、石綿を含む建材は隠れた欠陥(瑕疵)にあたる、と認定した。それを前提に、石綿スレート片を含む土壌の撤去・処分費用、物流ターミナル建設の遅れに伴う費用なども、全額ではないが売主は支払う義務があると判断した。専門家によると「工場跡地を所有していた企業にとって厳しい判決」であり、売買契約における債務不履行や瑕疵の問題に加え、廃棄物処理法や土壌汚染対策法など環境関連法が複雑に絡む裁判である。
 
「某化学工場の日常汚泥処理」
 郊外に立地する中規模の化学工場がある。製造拠点の海外移転や合理化の一環で本体から工場は分社化され社員の給料は一律カットされた。この会社で元環境担当者であったAさんから様々な出来事を本音でお伺いした。
 排水処理で発生する大量の有機汚泥について、かつては外部の処理業者に委託して焼却処分してもらっていた。しかし
生産量の減少に加え原材料及び製造工程の改善もあった。そして廃液濃度が低くなり、結果として汚泥発生量が相当減量で
きた。しかし性状が変化した汚泥に対し、自社脱水機の能力に限界が露呈した。「焼却業者から含水量が多いので引き取
りできないと突然断られた」と元担当者のAさんは回想する。汚泥は以前より細粒化し粘性も高くなって、物理的に脱水しに
くい性状になった可能性もある。

<シリーズ>

【エネルギーからみた地球温暖化問題/第3回】 排出量取引の"理想と現実"──EU-ETSの評価
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/主席研究員)
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 排出量取引はCO2 排出という外部不経済を内部化するための手段の一つである。炭素排出に対する価格付け(カーボンプライシング)には複数の手法があるが、炭素税や再エネ導入促進がどれだけの排出削減量を確保できるか明確ではないのに対して、排出量を一定に制限できる排出量取引は環境経済学者や温暖化対策に熱心な方の支持が高い。しかしIPCC第5 次評価報告書においてEU-ETS(EU域内排出量取引制度)が「環境的な効果は限定的だった」と評価されるなど、その理想と現実にギャップがあることも明らかになってきている。 本稿では、カーボンプライシングの潮流を概観したあと、導入から既に10 年以上の経験を積んできたEU-ETSを例に同制度の課題を整理する。

【新・環境法シリーズ/第52回】  災害廃棄物の迅速な処理に向けた取り組みについて
藤原 崇(丸山国際法律事務所 弁護士)
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 東日本大震災における膨大な災害廃棄物の処理経験を契機として、廃棄物処理法・災害
対策基本法が改正された。またそれと同時に、我が国の災害廃棄物処理への取り組みが、広域連携と事前の備えを重視した形へと変化をしてきた。これらの取り組みはまだスタートし
たばかりである。しかしそのような中でも、平成27年9月に発生した関東東北豪雨災害では、新たな取り組みや法改正が効果を発揮した場面がみられた。東日本大震災以降の災害廃棄物の迅速な処理に向けた取り組みについて述べる。

【産廃コンサルタントの法令判断/第3回】"法律を守っているつもり"が実は危ない!?──環境リスクのメカニズム
佐藤 健(株式会社 ミズノ 環境コンサルティング事業部 環境情報ソリューショングループマネージャー)
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日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第3回)。

【環境刑法入門/第1回】 刑法は環境保護に役立つか?
長井 圓(中央大学法科大学院 教授)
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 IT社会では、部分知はPCなどからいつでも入手できるが、その原理を知らないと正しい応用ができない。テクニカルな法規に欠陥があっても、それに気づかず環境の保護を実現できなくなる。そこでシリーズ「環境刑法入門」の第1回では、個別法規をシステム化する「法の体系と原理」について考える。環境法にも憲法・行政法・民事法があり、その遵守を最終的に強制・担保するのが環境刑法である。生物は、進化・淘汰の長い過程で互恵的利他行動を身につけた。他から利益を得ながらお返しをしない個体を排斥するのが社会倫理規範としての制裁である。しかし、それだけでは処罰は正当化しえない。

【まるごとわかる環境法/第10回】 省エネルギー法(前編)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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 環境担当者のための環境法入門。環境部門の新任担当者向けに重要な法律をセレクトしてわかりやすく解説。
 第9回は「省エネ法」(前編)
 
 1.地球温暖化問題とは何ですか?
 2.省エネルギー法の目的は何でしょうか?
 3.省エネルギー法におけるエネルギーとは何でしょうか?
 4.事業者はどのようにしてエネルギーの使用量を把握するのですか?
【先読み! 環境法/第48回】バーゼル法と廃棄物処理法の「すきま」の解消を求めた廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書
小幡 雅男(神奈川大学大学院法務研究科 講師)
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 第三次循環型社会形成推進基本計画で掲げられた適正な資源循環の実現に向けた取組を推進するための「廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会」の報告書(案)がとりまとめられた。その骨子案と検討会での議論について紹介する。

 ❶ バーゼル法と廃棄物処理法の「すきま」の解消を求めた廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書
 ❷ 廃棄部処理制度専門委員会の設置
 ❸ 土壌制度小委員会の開催
 ❹ 4月20日に第1 回環境保健部会石綿健康被害救済小委員会が開催
【環境法改正情報】(2016年4月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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◉ 化審法
◉ 労働安全衛生法
◉ 地球温暖化対策推進法
◉ 放射性物質汚染対処特措法
◉ 大気汚染防止法
◉ 建築物省エネルギー法(「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の略称とする)
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