環境管理バックナンバー 2019年 11月号

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2019年11月号 特集:環境アセスメント最新動向

<巻頭レポート>

変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書の概要
本誌編集部
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 9月20日(金)から24日(火)にかけてモナコ公国において「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第51回総会」が開催され、IPCC海洋・雪氷圏特別報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、報告書本編が受諾された。この特別報告書から、いくつかのトピックについて報告する。

<特集>

環境影響評価法の概要
柳 憲一郎(明治大学 法学部 教授)
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 1997年に制定された環境影響評価法は、1999年に全面施行され、その後、2015年の法改正を経て、現在に至っている。本年は法の全面施行後20 年の節目を迎えている。そこで、環境影響評価制度の現状と課題について、諸外国の現状も踏まえて、各論者からの報告を特集することにした。ここでは、法の概要の現状について一瞥することにしたい。
太陽光発電や風力発電など民間アセスの現状
尾上 健治(環境アセスメント学会 事務局長/明治大学 環境法センター 特任研究員)
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 太陽光発電や風力発電が各地で環境上の課題となっており、環境省や主務官庁の経済産業省では、種々の取り組みがなされている。ここでは、これらの動向を整理するとともに、課題についても検討した。
国内における近年の発電所建設の環境アセスメント――千葉県事例から
本間 勝(明海大学 不動産学部 准教授)
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 東日本大震災(2011年)以降、電源構成の見直しと再生可能エネルギーの有用性認識が加速度的に進んだ。しかし、原子力が減った分の約20%程度を火力への依存に頼っている状況である。温室効果ガスを多量に排出する石炭火力発電は、世界で進める地球温暖化防止策と逆行することから、日本は従来の電源構成からの転換を積極的に図る時期を既に迎えており、その過渡期の真っ只中にある。
 一方で、再生可能エネルギーの発電所設置計画がFIT(固定価格買取制度)の開始以降、多くなっている。特に太陽光発電所の設置は著しく、今後の展開が注目される。また、風力発電所の設置も増加しており、陸域のみならず海域における洋上風力発電の実用化に向けた動きも活発化している。
 本稿では、千葉県の事例を交えながら、電源構成の過渡期に突入した日本の発電所建設における環境アセスメント動向を概観する。
川崎市における廃棄物処理施設建設とアセスメント
加藤 之房(川崎市 環境局 環境評価室 担当課長)/岡村 毅(川崎市 環境局 施設部 施設建設課 担当係長)
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 全国に先駆けてアセス条例の運用を開始した当市は、長年にわたりアセス手続きのノウハウを蓄積してきた。また、住宅地に隣接して廃棄物処理施設を設置しなければならない地域特性の中で廃棄物処理施設設置を行ってきた施設建設部局では、円滑な施設設置に向けてノウハウを蓄積してきた。当市の橘処理センター整備事業において、それぞれのノウハウを最大限に活かし、住民の理解を得ながら行ってきた施設設置の取組の紹介と内容の考察をした。その結果、丁寧な説明と住民意見を聴く姿勢、そして住民に配慮された総合的な事業計画の立案が重要との結論が得られた。
EUにおける環境アセスメントの動向
朝賀 広伸(創価大学 法学部 教授)
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 欧州の環境アセスメント制度の基本となった1985 年EIA指令(85/337/EEC)は、これまで1997 年EIA指令(97/11/EC)、2003 年EIA指令(2003/35/EC)、2009 年EIA指令(2009/31/EC)、2011 年EIA指令(2011/92/EU)と改正が加えられてきたが、直近の改正である2014年EIA指令について、2017年1月19日の欧州委員会コミュニケーション「EU法:より良い適用によるより良い結果」において、欧州委員会による完全かつタイムリーな導入が求められている状況にある。また、もう一つの動きとして、戦略的環境アセスメントを定める2001年SEA指令についても2017年7 月から外部調査機関によるREFIT評価が始まっており、有効性、効率性、一貫性、関連性、EU付加価値に関する評価基準に基づく評価がなされ、SEA指令はEUに多大な利益をもたらし、環境問題を適切な計画とプログラムに統合することで持続可能な開発と環境保護に関する広範な目標に貢献すると評価している。これを受けて、2019年12月末に、欧州委員会スタッフ作業文書が発行される運びとなっている。
大気汚染のリスク評価に関するカリフォルニア州の動向
辻 雄一郎(明治大学 法学部 准教授)
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 2017 年に就任して以来、トランプ政権は、オバマ政権の様々な政策を撤回するために様々な手立てを講じてきた。本稿はトランプ政権下の大気汚染規制を法律学の立場から分析する。トランプ政権はまずオバマ政権時代の気候変動対策を撤回するためパリ協定から離脱し、次に、大気汚染対策の規制を緩和しようとしている。連邦議会は大気汚染を規律する大気汚染法を改正していないため、大統領は大統領命令を通じて、行政機関の制定、改廃する行政規則を通じて政権の意向を反映させようとしている。政権の試みは、現在、最終局面にはいっている。

<総説>

フェーズⅠ環境サイトアセスメントの基礎と工場における活用
広瀬 彰一(株式会社 イー・アール・エス エンジニアリング部 チーフエンジニア)
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 フェーズⅠ環境サイトアセスメント(以下、「フェーズⅠ評価」という)は、既存の資料や関係者へのヒアリング、現地調査などから得られた情報に基づいて、土壌汚染のおそれを評価するものである。もともとは米国スーパーファンド法が広範囲に求めている浄化責任への回避策としてできたものであり、1993年に米国試験材料協会(ASTM)によって規格化されている。
 日本でも2000年頃から不動産証券化その他の不動産取引時を中心に行われるようになり、今日ではすっかり一般化している。一方、土壌汚染対策法や地方自治体の条例では土壌試料の採取・分析に先立って地歴調査を行う。地歴調査も収集した情報に基づいて評価をしている点でフェーズⅠ評価と類似しているが、収集する情報の網羅性や評価基準が異なっている。
 本稿では、フェーズⅠ評価の調査方法及び評価方法を紹介し、フェーズⅠ評価と地歴調査の相違点について整理した。また、2019年4月に全面施行された改正土壌汚染対策法では、操業中の工場では従来よりも小規模な土地改変が法の対象となったことを受け、操業中の工場におけるフェーズⅠ評価・地歴調査の効率的な進め方や活用方法についても述べる。

<シリーズ>

【エネルギーからみた地球温暖化問題/第40回】EUの気候変動金融ベンチマークに関する議論の進展──欧州委員会TEGの最終レポートを読む
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/主席研究員)
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 本連載で毎月関連記事を書いている通り、欧州委員会は着々とサステナブル・ファイナンスについて検討を進めている。2016年末に組織したハイレベルの専門家グループ(HLEG:EU High-Level Expert Group on Sustainable Finance)から出された最終報告をもとにアクションプランを策定、2018年5月には規則案(「持続可能な投資を促進するための枠組みの構築に関する規制案」)、改正指令案(「持続可能な投資及び持続可能性のリスクに関する開示の規制についての提案及び指令(EU)2016/2341の改正案」) を公表している。その後、さらなる議論の場として技術専門家グループ(TEG:Technical Expert Group in Sustainable Finance)を設立して、そのTEGがタクソノミー等の検討を進めていることは、既に本誌8 月号の「EUタクソノミーに関する議論の進展── 欧州委員会TEGのテクニカル・レポートを読む」等でもご報告した通りだ。
 欧州委員会は、①分類システムの確立(タクソノミー)、②機関投資家がESG要素をリスク・プロセスに組み込む方法に関する開示要件の改善、③投資家が自らの投資によるCO2排出量を比較するのに役立つベンチマーク作成、という三つの提案をパッケージで提示しており、TEGはテーマに応じてサブグループを設立して検討を進めている。それらの検討は相互に関連しあうものであり、全体を俯瞰する必要がある。
 このうちの「ベンチマーク」について、TEGは2019年6月に中間報告を、9月には最終報告を公表している。この「Report on Benchmarks」(以下、最終レポート)を概観することで、欧州で進むサステナブル・ファイナンスの議論のフォローを続けたい。
【産廃コンサルタントの法令判断/第44回】誌上コンプライアンスチェック⑦――廃棄物の保管
佐藤 健(イーバリュー株式会社 環境情報ソリューショングループ マネージャー)
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 日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第44回)。
【新・環境法シリーズ/第93回】スウェーデンの議会オンブズマンの環境分野における活動
進藤 眞人(早稲田大学 比較法研究所)
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 近年、議会オンブズマンを頂点とする公的オンブズマンが環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保するために果たす役割への注目が高まっている。とはいえ、公的オンブズマンの多数を占める総合オンブズマンが果たす役割に対する学術的知見の蓄積は、いまだに極めて不十分である。そこで本研究は、議会オンブズマンの母国であるスウェーデンを対象に、この課題の解明に取り組む。具体的にはまず、多層構造からなるアカウンタビリティ確保のための審査機関の構成の中での総合オンブズマンの位置付けを明らかにする。次に、オーフス条約の枠組の内外で、総合オンブズマンが果たしている役割を同定する。最後に、他の審査機関との関係性を軸に総合オンブズマンが果たす役割の意義を考察する。
【いつできた?この制度 成り立ちからみる廃棄物処理法入門/第14回】産業廃棄物処理施設の巻
神田 善弘/長岡 文明(廃棄物処理法愛好会)
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 みなさんこんにちは。このシリーズでは、廃棄物処理法を愛して止まない「廃棄物処理法愛好会」のメンバーが、難解な廃棄物処理法や関連法の様々な制度の生い立ちを説明していくものです。
 第14回目は、「産業廃棄物処理施設」を取り上げます。お相手は都道府県で廃棄物処理施設の許認可を担当している、熱血系中堅職員Kさんです。
【環境担当者のための基礎知識/第23回】甘くない自然災害と治水の弱点──多摩川下流における台風19号被害でわかったこと
岡 ひろあき(環境コンサルタント)
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 津波や高潮、さらに異常ともいえる台風や豪雨による洪水や浸水などで日本列島は想定を超える深い傷を負うようになった。洪水を防止する河川堤防に関しても安全性に対する不安が一層高まっている。今回の台風19号では堤防だけでなく、支流と本流の合流地点や樋門、内水氾濫を防止するマンホールなど排水システムの「構造上の不連続部分」が河川管理の弱点となった。
 今回は多摩川下流沿いの浸水被害について、中小工場の被害概要を簡単に触れてから、浸水の原因について現段階の情報を提供し、河川システムの基本知識について解説したい。今年7月に製造業向けに河川災害に関する講演をさせていただいたが、そこで説明したマンホール経由の逆流浸水等が東京と川崎の間を流れる多摩川で現実に発生した。
【先読み! 環境法/第89回】プラスチック製買物袋の有料化義務化に向けた制度見直しの骨子(案)提示――9月26日に中央環境審議会のレジ袋有料化検討小委員会、産業構造審議会のレジ袋有料化検討ワーキンググループ合同会議(第1回)が開催
小幡 雅男(前・神奈川大学大学院 法務研究科 講師)
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 輸出処理に依存していた廃プラスチックの国内処理体制の整備という課題のもとに策定された「プラスチック資源循環戦略」の重点取組の一つとして位置づけられたレジ袋有料化義務化の検討過程について解説する。国民運動によって食品ロスを削減する「食品ロスの削減の推進に関する法律」の制定についても取り上げる。
 
 ❶プラスチック製買物袋の有料化義務化に向けた制度見直しの骨子(案)提示――9月26日に中央環境審議会のレジ袋有料化検討小委員会、産業構造審議会のレジ袋有料化検討ワーキンググループ合同会議(第1回)が開催案
 ❷食品ロスの削減――食品リサイクル法の基本方針及び判断基準事項の省令の改正と議員立法による食品ロス法の成立
 ❸国民運動により食品ロス削減を推進する――衆議院消費者問題に関する特別委員長提案の食品ロス法
環境法改正情報(2019年9月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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◉廃棄物処理法
◉浄化槽法
◉農薬取締法
◉オゾン層保護法
◉下水道法

<トピックス>

エコプロ2019維持可能な社会の実現に向けて 開催概要
乾 大樹(一般社団法人 サステイナブル経営推進機構 プロジェクト推進センター 事業推進室 研究員)
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 今年度も2019年12月5日(木)~ 7日(土)にかけて、エコプロ2019が東京ビックサイトを会場に開催される。今年度のテーマは「維持可能な社会の実現に向けて」。
 今年で21 年目を迎えるエコプロ展は、一般消費者、企業、行政、NPO、学生など環境を取り巻く幅広いステークホルダーが一同に集う国内最大級の展示会として、成長と発展し続けてきた。
 本稿では本年度の開催内容や産業環境管理協会及びサステイナブル経営推進機構(旧産業環境管理協会地域・産業支援部門)の取組について紹介する。
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