環境管理バックナンバー カテゴリ:環境技術

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<特集>三機工業グループが提供する省エネルギー型散気装置
半田 大介(三機工業株式会社 プラント設備事業本部 企画開発部)
▼概要文表示2023年5月号
三機工業グループは、総合エンジニアリング企業として設備業界をけん引してきたリーディングカンパニーで、2025年に創立100周年を迎える。空調・給排水・電気・情報通信などの建築設備から搬送システム、環境関連事業などのプラント設備まで多岐にわたる事業で社会インフラを支えている。近年、上下水設備で脱炭素に貢献する技術として注目されているのが、下水処理場で用いられる省エネルギー型散気装置で、下水処理場の使用電力量の大幅削減に寄与する。本稿においては、省エネルギー型散気装置を製造している、三機工業のグループ会社であるアクアコンサルト社と、装置の適用事例を紹介する。
<特集>電気集じん装置の最新の開発成果について
加藤 雅也(三菱重工パワー環境ソリューション株式会社 集じん装置開発担当)
▼概要文表示2023年5月号
三菱重工パワー環境ソリューション(株)は、三菱重工業(株)の100%出資会社であり、各種産業向けに幅広く、多数の電気集じん装置(EP:Electrostatic Precipitator)を納入してきた。
EPについては、これまで国内で顕在化した課題に対し、その改良技術が1980年代に世界に先駆けて次々と実用化され、近年では改良の余地は少ないと考えられていた。しかし当社では、従来の集じん原理を見直すことで、
電極構造を一新した新型のEPの開発に今般成功し、大幅な性能向上を実現した。本稿では、世界に先駆けたこれまでの国内のEP開発の変遷を振り返るとともに、最新の当社開発成果である新型EPについて紹介する。
<特集1>電池入門
本誌編集部
▼概要文表示2021年4月号
 脱炭素社会に向け脚光を浴びる再生可能エネルギーがある。太陽光と風力の発電コストが年々大きく低下して本格普及するなか、電池のエネルギー貯蔵機能がより向上して注目されている。本稿では、最近まで年に約40億個も生産された電池について様々な視点からレポートする。電池に期待される役割や市場動向に加え、内外の興味深い歴史と初歩的な技術情報を解説する。
 
<特集1>NAS®電池の適用例と今後の脱炭素に向けた展開
日本ガイシ株式会社 エネルギーインフラ事業本部 エナジーストレージ事業部
▼概要文表示2021年4月号
 日本ガイシ(株)は、1984 年から東京電力(株)と共同でNAS®電池の開発を開始し、2002年に事業化した。これまでに世界で200か所以上に、総出力約00MW、総容量約4,200MWh(一般家庭約1.7万戸分の1か月の電力使用量に相当)のNAS®電池を納入している。その用途は大口需要家でのピークカットによる電気料金削減や非常用電源、瞬低対策のほか、近年では風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの出力変動対策への活用も進んでいる。
 本稿では長時間放電を基本とするNAS®電池の概要について述べるとともに、今後の脱炭素に向けた展開について述べる。
<特集1>循環社会のアウトプットとしての電池と展開について
熊谷 枝折(一般社団法人 マグネシウム循環社会推進協議会 代表理事/東北大学産学連携先端材料研究開発センター
▼概要文表示2021年4月号
 地球に暮らす人類が直面する最大の課題は、持続可能な方法でエネルギーを生産し、社会を維持するために消費するということである。その方法として、マグネシウムを新たなエネルギー・キャリアとして利用することを提案する。
 そのためには、マグネシウムの広範な利用技術と電池への展開の筋道をつける必要がある。さらに、材料循環ができるようにするために自然エネルギーや余剰エネルギーを巧妙に使うことが必要となる。マグネシウムをはじめ、真に循環できる材料をエネルギー・キャリアとし、持続可能なエネルギー循環システムとして構築することによって、日本国内はもとより世界のどこでも公平に使うことができる技術として啓蒙活動を推進し、将来にわたって地球環境の維持保全に貢献できる。
 最近、電池という言葉が頻繁に使われるようになったが、「電池とは、電気エネルギーを得るための変換装置の一つ」を意味する。広義には物理電池と化学電池に分けられ、熱エネルギー、原子力エネルギー、太陽エネルギー、化学エネルギーを電気エネルギーとしてアウトプットできるものが電池であると定義できる。
 2030 年頃から、リチウム電池に代わり金属空気電池が有望とみられている。金属空気電池としてマグネシウム空気電池があり、資源の豊富さと少ないエネルギーでリサイクルが可能なことから、エネルギー・キャリアとして、さらに環境配慮型の革新的な二次電池として、循環社会の中で最も有望な電池である。
<特集1>JBRCにおける小型充電式電池の回収・再資源化の実態と今後について
金澤 祐一(一般社団法人JBRC 専務理事)
▼概要文表示2021年4月号
 小型充電式電池は我々の生活において幅広い商品に使用され、欠かすことのできないものとなっている。その小型充電式電池に含まれる希少金属を回収して再資源化する必要性が高まってきた時代に、一般社団法人 JBRCが設立された。回収対象となる電池を搭載した機器は、様々な消費者ニーズに応じて用途がますます広がりつつある。本稿では、これまでJBRCが実施してきた活動概要や今後の推進課題について述べるとともに、再資源化の価値を認識していただく機会として捉えていただきたい。
<特集1>車載用リチウムイオン電池市場の現状と将来展望
田中 善章(株式会社 矢野経済研究所 モビリティ産業ユニット Enermobilityグループ)
▼概要文表示2021年4月号
 2020年のコロナ禍の中、xEV市場、並びに車載用リチウムイオン電池(LiB)市場は予想を上回る市場規模での着地となった。欧州を中心に規制強化の流れは加速する向きをみせており、「サスティナブル」というキーワードに対する関心度は、欧州以外の地域でも以前に比べ高まりをみせていると感じる。一方、xEV市場は依然、補助金依存の側面も有しており、コロナ禍のあと、一般消費者への市場拡大には経済環境の回復を含めて、時間を要する可能性があると考える。電動車が伸びる機運はコロナ禍で高まりをみせていると感じるが、その変化速度には様々な変数が絡むため、市場の成長度合いを見極めつつ、慎重な判断のもと、堅実な成長戦略を描くことが業界プレーヤーに求められていると考える。本稿ではxEV市場、車載用リチウムイオン電池市場に関して二つの成長シナリオに基づく展望を述べる。
<特集>大気主成分組成の高精度観測に基づくCO2循環と気候変動の評価――地球温暖化の実態解明を目指して
石戸谷 重之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境管理部門 大気環境動態評価研究グループ)
▼概要文表示2018年7月号
 2015年末にパリ協定が採択され、地球温暖化対策は国際的な喫緊の課題となっている。地球温暖化に対する適切な緩和・適応策の策定には、将来の大気中CO2 濃度予測のための大気・陸域・海洋間のCO2循環の定量化と、地球温暖化が実際にどの程度進行しているかの評価が基礎データとして重要である。
 これらの評価に向けた研究成果の一つとして、人間の産業活動によってCO2濃度が年々増加しているだけでなく、年に約4ppmの速度で、大気からO2 が失われていることも判明している。本稿では、大気主成分の濃度・同位体比の高精度観測を応用した手法について紹介する。
<特集>化学物質からの暴露とリスクを評価するためのソフトウェアの開発
東野 晴行(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 研究主幹)
▼概要文表示2018年7月号
 産業技術総合研究所では、リスク評価の対象や環境中の媒体に応じて、大気、水、海洋、室内製品などに含まれる化学物質からの人や生態系への暴露を推定するモデルや化審法対応可能な生態リスク評価ツールなど、リスク評価の対象に応じて様々なソフトウェアを開発してきた。本稿では、開発の背景と目的を述べ、各種ソフトウェアの中で特に、曝露・リスク評価大気拡散モデル(ADMER)と室内製品暴露評価ツール(ICET)を取り上げて機能の概要などを紹介する。
<特集>「戦略的都市鉱山」を支える物理選別技術の新たな自動化思想――リサイクル工場の省人化を目指して
大木 達也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境管理研究部門 総括研究主幹)
▼概要文表示2018年7月号
 筆者は、物理選別技術を高度化し、金属の水平リサイクルの促進する「戦略的都市鉱山」構想を推進している。しかし現状の技術では、一部の機械化を果たしても、前後のプロセスで新たな手作業が必要となるケースも少なくなく、高度化に伴って従事する作業者は増える傾向がある。我が国では、これらの労働者確保が次第に困難となってきており、低コスト化の観点からも、選別システムの自動化による工場の省人化が求められている。本稿では、これまでの筆者による研究開発の知見をベースとして、物理選別技術の新たな自動化思想についてまとめた。
<特集>自然由来重金属のリスクマネジメント―― 砒素を例に
門間 聖子(応用地質株式会社 技術本部 技師長室( 地球環境事業部駐在)技師長)
▼概要文表示2018年7月号
 世界有数の火山国である我が国は、地盤を構成する土壌や岩石中に豊富なミネラルを有している。それらの一部は、土壌汚染対策法の第二種特定有害物質にも指定されている。平成22 年の同法改正により、土壌に含まれる自然由来の重金属が法の対象となったことから、特に地盤を大量に掘削する建設事業においてそのリスクマネジメントの必要性が増大した。ここでは比較的事例の多い砒素を中心に、法改正も踏まえたリスクマネジメントの考え方について述べる。
<特集>鉄粉洗浄磁気分離装置「M・トロン」を用いたヒ素含有シールド泥水のオンサイト浄化
石神 大輔(鹿島建設株式会社 技術研究所 研究員)/伊藤 圭二郎(鹿島建設株式会社 技術研究所 上席研究員)
▼概要文表示2018年7月号
 ヒ素などの重金属を含む地盤を掘削する工事において、発生土の合理的な処理方法が求められており、近年はオンサイトで浄化処理する技術に注目が集まっている。筆者らは、一般的な分級のみでは洗浄しきれない細粒分の土壌に対し、細粒分を含む泥水に鉄粉を混合して洗浄することで鉄粉に重金属等イオンを吸着させ、超電導磁石を用いた大容量の磁気分離により鉄粉を回収して浄化する「M・トロン」を開発した。本技術を用いて、泥水シールド等の工事で発生する泥水や土砂に対して、含有するヒ素を浄化した事例を紹介する。
<総説>JEMAIのETVに係る活動の紹介
大野 香代(一般社団法人 産業環境管理協会 国際協力・技術センター 所長)
▼概要文表示2018年7月号
 一般社団法人 産業環境管理協会(JEMAI)は昨年度(平成29 年度)、環境省より環境技術実証(ETV)事業におけるISO 14034 への適合のための実証機関の能力向上を目的とした研修事業を受託し、本年度(平成30 年度)は、この事業の実証運営機関に選定され、国内外への事業広報・普及のための活動や環境省や実証機関に協力して事業を推進する業務を担うことになった。また、国際的には、ETVの国際標準化活動に積極的に参画してきた。本稿では、ETVとは何か、国内のETV事業の概要やETVの国際規格の策定について紹介する。
<技術紹介>レーダーによる樹木の非破壊診断
応用地質株式会社
▼概要文表示2018年3月号

 近年、台風接近時の強風などによる樹木の倒伏事故が後を絶たない。倒伏する樹木の多くは、樹体が被害の発生前に、損傷や衰退、腐朽等により障害を受けている樹木であることが多く、強風が引き金となって倒伏に至ると推察される。特に街路樹や公園木においては、高度経済成長期に植栽された樹木の老朽化に伴い、倒伏のリスクが天然木より顕在化している。
 人の立ち入りが多い場所や街路に不健全な樹木が生育していると、車両や通行人に被害が発生するリスクとなる。リスクに対処せず倒伏事故が発生した場合、裁判で
樹木管理に瑕疵があるとされ、行政の管理責任が問われた事例もある。
 倒伏による被害を未然に防ぐには、樹木も定期的な診断・管理が必要なインフラとして認識し、適切な対策を講じてゆく必要がある。
 このような背景を踏まえ、当社は地中探査技術を応用し、低コストかつスピーディーに樹木の健全性を非破壊で診断する技術を開発したのでその概要を紹介する。

<総説>流動床式ガス化溶融炉における運転ビッグデータを活用した操業自動化
青木 勇(株式会社 神鋼環境ソリューション 環境プラント技術本部 技術統括部)
▼概要文表示2017年11月号

 流動床式ガス化溶融炉は、多種多様な廃棄物の処理に適用可能で、燃焼効率が高く制御応答性が良好、廃熱ボイラは高温高圧の蒸気条件(6MPa×450 ℃)が可能であるため高い発電効率が得られるといった特長を有する。流動床式ガス化溶融炉の特長を活かし、操業自動化に向けた制御システムとして、運転ビッグデータを用いた各種自動運転制御システムを開発し、実機プラントに導入した。ここで、モデル予測制御を用いた廃棄物発電の安定制御技術、非定常時における排ガス規制値超過防止のための自動制御技術について紹介する。

<総説>梅加工場排水処理における汚泥減容化技術の開発
山際 秀誠(和歌山県工業技術センター 生活・環境産業部 繊維皮革グループ)
▼概要文表示2017年8月号

 和歌山県工業技術センターでは、和歌山県の地場産品であるパイル織物を排水処理用の資材に利用する技術について研究を行ってきた。これまでに、パイル担体を活性汚泥槽中に設置することによって余剰汚泥を削減できる排水処理技術を開発した。梅加工場の排水処理設備において実際の排水処理設備に担体を設置した実証試験を実施し、83%の汚泥減容化率を達成した。本稿では、梅加工場における排水処理試験について紹介するとともに、特許を取得した排水処理ユニットについても紹介する。

<総説>新型高効率ブロワによる消費電力の低減(排水処理)
河津 豪(新明和工業株式会社 流体事業部 小野工場 設計部 技師)
▼概要文表示2017年3月号

 産業分野において圧縮空気は必要不可欠である。空気供給減として、空気量や吐出圧力、またその構造によって多様な送風機・圧縮機があるが、10~150kPa程度の吐出圧力に対応する機種はブロワに分類される。様々な分野でブロワは使用されているが、一般的にブロワやコンプレッサ等の圧縮機は消費電力が大きく、その高効率化は省エネに大きく貢献する。本稿では空気軸受を使用した新型高効率ターボブロワの特長と11か月で消費電力が284万円低減できた実例について紹介する。

<総説>フロックフィルトレーション式高速凝集沈殿装置 スミシックナーZ
三井 昌文(住友重機械エンバイロメント株式会社 環境プラント統括部)
▼概要文表示2017年3月号

 凝集沈殿処理は、処理対象の流入水に凝集剤などを加え、微細粒子(SS)を凝集させ、フロック化したあと、固液分離することで清澄な処理水を得る最も広く用いられている水処理プロセスの一つである。
 近年敷地面積の制約などから、従来よりも高い水面積負荷での処理が可能な、小型の高速凝集沈殿方式が望まれている。
 当社は回転するディストリビュータ(流入水の分散装置)により流入水を槽内に分散供給することで、片流れがなく沈殿槽の全面積を有効利用できるようにし、従来の凝集沈殿槽と比較して1/2~1/3の小型化を達成したスミシックナー1)を保有しており、多くの実績を重ねてきた。
 本報では、スミシックナーの構造と技術を基礎とし、さらに約1/3の小型化と処理水の清澄化を図ったフロックフィルトレーション式凝集沈殿装置(スミシックナーZ-Zone Separator Model)について紹介する。

<特集>標準ユニット化による省スペース化と非定常廃水の処理例
本誌編集部
▼概要文表示2016年11月号
 昨今の製造基盤の海外移転や中国など低価格製品の増加で、国内製造事業所の規模縮小や少量多品目製造、さらに研究開発中心となる傾向も一部でみられる。既存事業所においても機械器具のメンテナンスや洗浄等で想定外の性状を持つ廃液が発生することもある。こういった比較的少量の非定常廃水を効率よく処理する手法が各地の事業所で導入されている。この分野のソリューションで活躍している中堅企業の一つを取材する機会があったので実例を交えてレポートする。特に省エネルギーや省スペースの工夫はもちろん、現場で培った浄化槽技術は目を見張るものがある。
<特集>傾斜板をらせん構造にして高速化を図った沈殿装置について
三菱化工機株式会社
▼概要文表示2016年11月号
 下水処理及び産業廃水処理での沈殿装置として、国内外に納入実績のある超高速沈殿装置(スパイラルセパレータ)の概要、特長及び応用例について紹介する。
 本装置は、上水処理に多く採用されている傾斜板式沈殿装置の傾斜板をらせん構造にして、回転させることで、安定かつ高速に凝集フロックや汚泥等の粒子の沈降分離を実現したものであり、従来の沈殿槽に比べ設置面積が1/10~1/15程度に縮小でき、省スペース化が図れる。また、装置の応用例として沈砂洗浄装置(スパイラルウォッシャー)がある。下水の沈砂等に含まれる有機物を洗浄しながら、砂の回収率の向上を実現している仕組みについて解説する。
<特集>現場担当者が持つ「ささやかなノウハウ」と「よく見かける下水道用語(凝集剤)」
本誌編集部
▼概要文表示2016年11月号
 地方共同法人 日本下水道事業団では、「JS技術開発情報メール」という情報提供用メールマガジンで「シリーズ――下水道関係者が持つ、ささやかなノウハウ」という記事を連載している。そこでは「論文発表するほどでもない、しかしこの知見を得るのにはちょっと苦労したよというような情報は、個人ノウハウに埋没するか、飲み会の席での肴になるかくらいになってしまいます。せっかくのノウハウなのにもったいない」というコンセプトの「現場で得た知見」について紹介している。
 このたび、日本下水道事業団のご厚意により凝集剤に関する記事を引用、転載させていただくことになった。排水処理において余剰汚泥の処理は、扱いが大変で処理コストも課題になっている。そのためご提供いただいた記事は有益な情報と思料される。非常に興味深い記事なので排水処理、特に汚泥脱水を担当する読者にはぜひお読みいただきたい。
<特集2>省資源と経済性を考慮した産業排水、廃棄物処理技術
大隅 省二郎(大阪ガス株式会社エネルギー事業部ビジネス開発部ESPチーム・グループ統括)
▼概要文表示2016年10月号
 民間工場では、排水処理において種々の課題を抱えている。しかし、下水処理と異なり、民間工場での課題は広範にわたり、一つの技術で幅広く解決することが難しい。大阪ガス株式会社では、世の中のきらりと光る技術を見出し、自ら評価した上で、お客さまのニーズに最も合った提案を行うというコンセプトで水処理提案を行っている。その際、省資源と経済性を考慮し、お客さまも気づかない付加価値を付けて提案を行うことを目指している。
 本稿では、大阪ガスが行っている排水・廃棄物処理の改善提案例について概説した。
<特集2>マイクロ・ナノバブル技術による排水処理の可能性
高橋 正好(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 研究主幹)
▼概要文表示2016年10月号
 泡(あわ)は大変になじみ深い存在でありながら、そのサイズを小さくすることで思わぬ効果が発現する。これは単なるサイズ効果を超えた現象であり、工学や医療、農水産など大変に幅広い分野での応用が期待されている。マイクロバブルは水質を浄化し、半導体などの電子部品を綺麗にする。ナノバブルは動・植物を強力に活性化する。内部に含まれる気体種を変えると、感染症の防止に寄与できる。クーラントの効果を高めて超微細加工を可能にする。小さな泡を使うことで広がりつつある新しい技術の可能性について紹介する。
<特集2>環境調和型技術に貢献するファインバブル技術
秦 隆志 (高知工業高等専門学校・ソーシャルデザイン工学科 准教授)/西内 悠祐(高知工業高等専門学校・ソーシャルデザイン工学科 准教授)
▼概要文表示2016年10月号
 ファインバブルとは約100μm以下の微細気泡を意味する。このファインバブルについては近年の研究から、通常のmmサイズの気泡とは明らかに異なる産業的に有用な特性を示すことがわかってきた。特に、内包気体の高い溶解効率性や巨大な気液界面反応の獲得といった特性はそれを含む水環境、例えば下水処理などの高機能化を可能とするなど、水環境の改質、言い換えれば水環境管理手法として期待できる。さらに空気と水からなるファインバブルは環境との親和性や高い安全性をも確保できるため、多くの環境分野への活用が見込まれる。
<特集>IoT活用による全窒素・全りん計での省メンテナンス化への取組み
光川 真由(島津製作所 分析計測事業部 環境ビジネスユニット 水質グループ)
▼概要文表示2016年5月号
 水中の全窒素および全りんは、第5 次水質総量規制において規制の対象項目となった。それらを測定する計測機器として、全窒素・全りん計がある。稼働時間が長期に及ぶため、定期的なメンテナンスが欠かせない機器であり、省メンテナンスが望まれる。
 一方で、あらゆるモノをインターネットに接続するIoT技術の台頭により、産業界にもさまざまな変化が訪れつつある。島津製作所ではこのIoT技術を用いた省メンテナンス化に取り組んでいる。その主な取り組みである、Webからの稼働監視と月次報告書自動作成について紹介する。
 
<総説>レーザー技術の環境分野への貢献
宇塚 達也(日本レーザー株式会社 専務取締役)
▼概要文表示2016年5月号
 レーザー技術は日々進化しており、環境分野でもPM2. 5やエアロゾルといった微粒子の
計測に応用されている。風速や風向を精密に測定する気象用装置も普及しており、これらは
主要空港に設置されている。
 レーザーは理科学分野だけでなく、産業界や医学・バイオの分野でも利用されている。そ
の応用範囲は幅広く、リサイクルの分別、近視の治療に用いているレーシック、歯科用レー
ザーやレーザーメス等の医療分野での応用、粒度分布測定や細胞やたんぱく質等試料の操
作・加工・分析等のバイオ・創薬・食品分野など応用範囲はかなり広くなっている。
<特集>簡易計測器の活用による排水管理
小川 清 東亜ディーケーケー株式会社 営業企画部
▼概要文表示2016年3月号
 工場など事業場からの排水を対象として水質汚濁防止法に基づく排水基準が定められている。その測定方法は法令で詳細に規定されているが、その手法は精度に重点が置かれ迅速性に欠ける。一方、排水管理の観点で、事業者は水質異常を迅速に検知して対処したい。もしこちらが目的であれば、法に基づいて定められた測定方法(公定法)にこだわる必要はなく、迅速性に重点を置いた手法を用いることが得策となる場合もある。そのような目的で使用されている簡易計測器も多い。これより簡易計測器をいくつか例示し、公定法との相違点などを概説し、その活用方法についても言及する。
<特集>排水処理における簡易分析法の 活用とそのポイント――表面処理業排水を例にして
上田 実 株式会社 共立理化学研究所 開発部
▼概要文表示2016年3月号
 簡易な水質分析法を活用することにより、工場等において効率的に排水管理を行なうことが可能である。しかし、簡易分析法でただ測定するのではなく、測定結果から何がわかるか、その結果、どのように排水処理を改善すればよいかを念頭に置きながら測定を行なう必要がある。また、簡易分析法で有効な結果を得るには、注意すべき点がある。本稿では、表面処理業(めっき)排水測定を例に簡易分析法活用のポイントを解説する。
<特集>検知管式気体測定器を用いた 簡易測定法の解説
大工 公敏 株式会社 ガステック 営業二部営業開発課 課長
▼概要文表示2016年3月号
 温暖化やオゾン層の破壊など地球規模の環境問題が叫ばれ、また身近なところではシックハウス症候群、排ガスによる大気汚染、さらに工場排水や化学物質による土壌・水質汚染などの問題が各地で発生している。これらの対策を講じるには、正確な測定が第一歩となる。当社は、製造業の労働安全や環境衛生を出発点とし、気体などの簡易測定の技術向上に取り組んでいる。本稿では最初に検知管の測定原理を解説し、作業環境や室内環境の測定、土壌・地下水汚染調査方法について触れる。いずれも複雑な機器などが不要であり、簡単・正確・スピーディーな簡易測定手法である。
<報告>浮遊固形物回収・分離の技術
本誌編集部
▼概要文表示2015年7月号
 湾岸戦争時のペルシャ湾原油流出や東日本大震災による仙台湾油流出の回収、フランスで海岸400kmにわたって油濁汚染をもたらしたエリカ号事件の油回収で大活躍した日本企業の技術がある。本誌は液体移送テクノロジーを得意とする(株)ワールドケミカルを訪ね、水面浮遊物・浮上油回収システムのデモ運転を見学した。概要を現地から報告する。
<総説>バイオカプセルを利用した環境浄化技術
田川大輔 森下仁丹株式会社カプセル開発部基礎開発グループグループリーダー/曽田匡洋 長瀬産業株式会社研究開発部基盤技術課・応用技術課統括
▼概要文表示2015年1月号
 近年、環境汚染が世界的な問題となっており、その対策が求められている。環境浄化方法の一つとして、微生物の機能を利用して汚染物質を分解させるバイオレメディエーションが知られているが、実用化には様々な問題がある。
 森下仁丹(株)と長瀬産業(株)は、「バイオカプセル」技術を応用することで、従来のバイオレメディエーションの問題点を解決し、簡単かつ効率的に環境浄化可能な技術を共同開発した。本稿では森下仁丹のカプセル技術及びバイオカプセル技術の概要とそれを利用した環境浄化技術について述べる。
<総説>1,4-ジオキサンの生物処理技術
山本哲史 大成建設株式会社技術センター建設技術研究所環境研究所/斎藤祐二 大成建設株式会社技術センター建設技術研究所環境研究所
▼概要文表示2015年1月号
 本研究では、1,4-ジオキサン分解・資化菌であるPseudonocardia sp. D17を用いた生物処理技術の確立を目的として、汚染地下水並びに産業排水に対する本技術の適用可能
性を評価した。その結果、D17株による効率的な1,4-ジオキサン分解が確認され、環境基準値(0. 05mg/L)もしくは一律排水基準値(0. 5mg/L)をクリアできることが明らかとなった。本技術は、標準活性汚泥法に準じたシステムにて処理が可能であることから、イニシャルコスト/ランニングコストを抑えた浄化・処理法となることが期待できる。
<総説>JIS Z 8852:2013 排ガス中のダスト濃度の 連続測定方法について
佐藤昌幸 横河電機株式会社科学機器部ガス分析課課長/田中敏文 株式会社田中電気研究所代表取締役社長
▼概要文表示2014年7月号
 ダスト自動計測器(ダスト濃度計)は大気汚染防止装置の性能維持や監視において重要であり、測定結果の信頼性向上を図るためにも標準化が求められていた。こうした状況の中、すでに制定されていたISO規格をベースにして排ガス中のダスト濃度を連続測定する方法に関するJIS規格(JIS Z 8852:2013 排ガス中のダスト濃度の連続測定方法について)が制定された。そのJIS規格の内容について紹介する。
<報告>排水管理におけるpH 測定の意義─ 日本環境技術協会「排水管理における計測器の基礎知識と維持管理技術」講習会報告
本誌編集部
▼概要文表示2013年11月号
 事業所の排水処理でpH測定は重要である。定期的なpH計の校正を怠ったため、pH調整で苛性ソーダを過剰に添加してしまい排水口で基準を超える高アルカリが検出され、「排水基準違反」で書類送検されるような事件もある。経費削減や法令遵守が叫ばれる中で測定の失敗は許されない。排水管理におけるpH 測定の意義は大きい。
 去る7月に開催された(公社)日本環境技術協会主催の講習会「排水管理における計測器の基礎知識と維持管理技術」は、実務的で非常に有意義であった。特に今回報告するpH計に関する測定原理、測定実務とpH計の使用上の留意、維持管理などはわかりやすい内容であった。
 本稿では最初の講義、pHに関する講習について、その概要・抜粋を報告する。なお同種講習会で産業環境管理協会が後援するものは、産環協会員も割引適用になるので、関連HPで是非ご確認いただきたい。
<特集>RITEにおける二酸化炭素分離回収技術開発と国際標準化への取り組み
東井 隆行 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 化学研究グループ 主任研究員
▼概要文表示2013年4月号
 二酸化炭素(CO2)の回収貯留(Carbon dioxide Capture and Storage, CCS)とは、大気中への二酸化炭素の排出量を削減するために、発電所や製鉄所などの固定排出源から発生するCO2を分離回収して貯留場所に輸送後、地中貯留(陸域もしくは海底下の地層貯留)の形で地下の貯留層に圧入・隔離する技術であり、主にCO2の回収、輸送、貯留の各技術領域からなる(図1)。
 RITEは、CCSを実用化していく上で大きな課題のひとつであるCO2回収時のコストの低減を目指して、世界をリードする革新的な回収技術の研究開発に取り組んできた。さらに、2012年度からCCSの国際標準化にも取り組んでいる。
<特集>東レの廃水再利用膜技術
伊藤 世人 東レ株式会社 水処理システム事業部プロセス課 主任部員間谷 聖子 東レ株式会社 水処理システム事業部プロセス課森川 博文 東レ株式会社 メンブレン事業第2部 主任部員馬場 淳一 東レ株式会社 メンブレン事業第2部 部員
▼概要文表示2013年4月号
 地球上には人類がそのままの状態で利用できる水は、わずか0.01%程度と極めて少ない。加えて、水源の枯渇や水質悪化により、局地的な水不足が益々深刻化しており、廃水再利用などの持続可能な水利用システムの構築が強く求められている。他方で、安全、安心な水への関心の高まりから、処理の高度化も求められている。このような中、膜を用いた廃水再利用技術は、様々な場面で高品位の水を安定して供給でき、「水量」と「水質」の問題を同時解決できる技術であるため、21世紀に必須の技術として、水システムのあらゆる場面に不可欠になってきている。本稿では、廃水再利用の観点から、膜技術がどのように貢献できるか述べる。
<特集>汚泥削減型生物処理装置―標準活性汚泥法に比べ、余剰汚泥発生量を最大で約70%削減する「バイオプラネット®SR」
小川 晋平 栗田工業株式会社 プラント事業本部 国内第一部門規格商品部 営業企画課
▼概要文表示2013年4月号
 有機排水処理において、標準活性汚泥法に代表される好気性生物処理は広く普及しているが、処理過程で発生する余剰汚泥量が多く、汚泥処分コストや、環境負荷が高いことが課題となっている。今回紹介する汚泥削減型生物処理装置「バイオプラネット®SR」は、自然界の食物連鎖を排水処理に応用することで、従来の標準活性汚泥法と比べ、汚泥発生量を最大約70%削減することが可能であり、有機排水処理の汚泥処分コスト削減と環境負荷低減を実現することができる技術である。また、「バイオプラネット®」シリーズは、加圧浮上装置などの前処理装置を設置することなく油分濃度の高い排水を処理することができる「バイオプラネット®FO」などのラインナップを取り揃えており、用途に合わせ様々な有機排水を処理することが可能である。
<部門歴史①>環境技術調査研究の歴史
森本 司 一般社団法人産業環境管理協会技術顧問 元・技術部騒音振動課課員/小野憲仁 元・一般社団法人産業環境管理協会 環境技術センター副所長/遠藤小太郎 一般社団法人産業環境管理協会公害防止管理者試験センター 試験室室長(前・技術室主幹)/大野香代 一般社団法人産業環境管理協会 環境技術・人材育成センター国際協力事業室室長
▼概要文表示2012年10月号
 フィールドワークの時代の調査から騒音振動調査と石炭技術調査を、また、近年の調査から有害大気汚染物質とVOC関連の調査、及びこれらの調査を通じて開発した測定法の国際標準化について紹介する。
 
本稿の構成と執筆者
1.協会の騒音振動調査活動50年(森本司)
2.石炭技術調査の歴史(小野憲仁)
3.平成年代の環境技術調査研究から─環境管理の現場に還元できる成果を目指して(遠藤小太郎)
4.環境測定関連の標準化事業(大野香代)
 
環境技術調査部門によせて【特別寄稿】
 ◉有害大気汚染物質と、化管法に係る業界対応を顧みて
  石崎直温 元・一般社団法人日本化学工業協会環境安全部部長
 ◉ISO/TC 146/SC 1 Meetingに参加して
  三笠 元 公益社団法人日本環境技術協会常務委員
 ◉ISO事始め
  指宿堯嗣 一般社団法人産業環境管理協会常務理事
<特集>ドイツにおける風力発電の現状―オンショアからオフショアへ
長谷川平和 在日ドイツ商工会議所シニアコンサルタント
▼概要文表示2012年9月号

 ドイツは2050年までに二酸化炭素排出量を1990年時点の1/5に削減し,電気供給における再生可能エネルギーの割合を80%にするという野心的な目標を掲げている。この目標達成にあたり風力発電の担う役割は大きく,オンショアだけでなく,オフショア風力発電の拡大が不可欠である。これまでドイツは,風力発電に付随する様々な問題に前向きに取り組み,試行錯誤しながら経験を積んできた。本稿では,ドイツがこれまで培ってきた風力発電市場での経験を紹介し,現在,国家を挙げて取り組んでいる洋上風力発電について紹介する。

<特集>わが国における洋上風力発電実証研究の現状と将来展望
石原 孟 東京大学大学院工学系研究科教授
▼概要文表示2012年9月号

 わが国における洋上風力の導入可能量は16億kWであり ,太陽光の10倍,地熱と中小水力の100倍となっており,圧倒的なポテンシャルを誇る。政府は2011年度3次補正予算で125億円を計上し,福島県沖合の海域に世界初の浮体式洋上ウィンドファームを建設する実証研究を開始させた。本稿では福島県沖合の実証研究の概要と研究課題を紹介すると共に,洋上風力発電の可能性とその拡大策について述べる。

<特集>風レンズ技術を用いた風力・水力の利用と洋上浮体式複合エネルギーファーム
大屋裕二 九州大学応用力学研究所・所長
▼概要文表示2012年9月号

 流体エネルギーを集中させて風力・水力発電の効率を飛躍的に高めた新しいタイプの風力・水力発電システムを開発した。レンズ風車と呼ぶ次世代風車は,従来の風車に比べ2-3倍の発電出力の増加を達成し,小型(1〜5kW機)・中型(100kW機)を開発した。レンズ水車も流水中で同様に高効率を示す。風力・水力エネルギーのより大きな獲得のため,海上展開を図った。福岡市博多湾に直径18mの六角形浮体を浮かべ,3kWレンズ風車2基と2kW太陽光パネルを搭載した世界で初めての浮体プラットホーム式のエネルギーファームを実現した。

<特集>地中熱利用の現状とこれから
笹田政克 NPO法人 地中熱利用促進協議会理事長
▼概要文表示2012年7月号

 エネルギー・環境面で地中熱利用の優れた点に、省エネ効果、節電効果、二酸化炭素(CO2)削減効果とヒートアイランド現象抑制効果がある。地中熱利用は最近普及が進みつつあるが、世界的に見ると欧米諸国に大きく後れをとっている。普及課題としては、初期コスト、認知度、政策、技術開発、地質情報の整備、環境影響評価等がある。2010年に地中熱は再生可能エネルギーとして国の認知が得られ、エネルギー・環境・地域政策等の中で地中熱の普及に向けての施策が出されている。これからの地中熱利用の展開として、まちづくりの中への地中熱設備の導入がある。

<特集>東京スカイツリー地区熱供給施設の地中熱利用
今野 真一郎 株式会社東武エネルギーマネジメント常務取締役、吉田直裕 株式会社日建設計設備設計部門技師長、岡垣 晃 株式会社日建設計総合研究所理事
▼概要文表示2012年7月号

 近年、場所や気象などの条件に左右されない再生可能な自然エネルギーの一つとして地中熱が注目されている。東京スカイツリータウンRを中心にその周辺を含む地域に熱供給を行う東京スカイツリー地区熱供給施設においても、省エネルギー、CO2排出量削減、ヒートアイランド現象の緩和効果を目的として、地域熱供給施設(DHC)としては日本で初めて地中熱の利用を図っている。本稿では、東京スカイツリー地区熱供給施設における、地中熱利用設備の概要、各削減効果等について紹介する。

<総説>科学技術基本計画によるナノテクノロジー・材料分野の研究開発の推進について --第3期(H18〜22)の総括的フォローアップより
只見康信 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構特任研究員(前内閣府企画官)
▼概要文表示2012年3月号

ナノテクノロジー・材料分野の科学技術は,環境・エネルギー問題などの解決に資するキーテクノロジー(基盤技術)として注目を集める。政府の総合科学技術会議は,第3期科学技術基本計画(H18~22)により, 1)ナノエレクトロニクス,2)ナノバイオテクノロジー・生体材料,3)材料,4)ナノテクノロジー・材料分野推進基盤,5)ナノサイエンス・物質科学の5領域を推進してきた。本稿では,環境管理関連を含む研究開発の成果を解説するものだが,こうした成果の社会還元が,将来のイノベーションへの貢献を通じて期待される。

<特集>鉄鋼スラグを活用した海の再生
中川雅夫 新日本製鐵株式会社スラグ・セメント事業推進部部長
▼概要文表示2011年9月号

 製鉄工程で発生する鉄鋼スラグは,鉄分やシリカ分等のミネラル分を多く含むことや,水と反応として硬化する性質,硫化物やリン酸の発生を抑制することで富栄養化した底質を浄化する機能等,固有の特性を有している。そこで,これらの特性を活用して,磯焼けによって喪失された藻場の回復や,富栄養化海域の水質浄化による赤潮や青潮の発生抑制等,海域環境の再生に資する技術開発に取り組んでいる。本稿では,このような海の再生技術のうち,鉄鋼スラグ製品を用いた藻場・漁場再生の事例について紹介する。

<特集>海岸環境再生のための土砂管理プロジェクト―天竜川・遠州灘モデルの提案
青木伸一 豊橋技術科学大学建築・都市システム学系 教授
▼概要文表示2011年9月号

 土砂管理とは,山から川を下って海に流れ出る土砂を広域で管理し,国土や環境基盤の保全を達成することである。近年,環境面や防災面で土砂に関する種々の問題が顕在化し,流域スケールでの総合的な土砂管理の必要性が叫ばれている。土砂問題の多くは,ここ半世紀の間に人為的に生じたものであるが,水問題に比べてその影響がわかりにくいことから対応が遅れているケースが多い。本小論では,海岸侵食の面から土砂管理における問題点を整理するとともに,天竜川および遠州灘における土砂管理を目的に実施した研究プロジェクトの成果を紹介する。

<総説>固定発生源PM2.5の測定技術
小暮信之  独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門環境分子科学研究グループ主任研究員
▼概要文表示2011年6月号

 2009年9月に,これまで設定されていた粒径10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準に加えて,さらに小さい2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が告示された。これを受けて,大気汚染防止法が一部改正され,昨年度から3年を目途に大気中PM2.5監視測定網の国内整備が行われるなど,本格的にPM2.5施策が始動した。 一方,固定発生源においては,先ずはPM2.5排出実態の解明が不可欠である。しかしながら,我が国では発生源PM2.5測定の公定法が確立されておらず,現在急ピッチでJIS化が進められている段階である。ここでは,発生源PM2.5に関してこれまでに実施した研究や得られた知見を基に,発生源PM2.5の測定方法,JIS化の動向,関連研究などについて概説する。

<特集>固定発生源からのPM2.5/PM10の排出挙動評価法
神谷秀博 東京農工大学大学院工学研究院
▼概要文表示2011年3月号

 肺内胞など呼吸器深部まで浸入し肺がん,喘息などの疾患原因とされる粒子径2.5μm以下の粒子(PM2.5)の環境基準が2010年9月に確定し,基準値を超える濃度が都市部などで報告された。人為発生源のうち,車などの移動発生源は対策が進んでいるが,工場など固定発生源は,その排出量測定法もISO化が進んでいる段階で,測定データもあまり公表されていない。本稿では,PM2.5の健康影響や環境濃度に関する報告を紹介した上で,固定発生源からのPM2.5測定法の標準化動向と,その手法を用いた測定事例を報告する。

<技術報告>中小塗装現場におけるVOC排出実態(その2)―塗料ミスト・粉塵排出実態と新規VOC対策技術―
小暮信之 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門,小林 悟 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門
▼概要文表示2011年1月号

 大気汚染防止法の一部改正から揮発性有機化合物(VOC)の本格的な抑制政策が開始して以来,本年度までに目標とした平成12年度比の3割削減はほぼ達成される見通しとなった。しかし,工業塗装分野の約9割を占める法規制対象外の中小塗装業では,さらなるVOCの削減や作業者の安全と労働環境の改善が強く求められており,中小塗装業に最適なVOC排出抑制技術の開発が重要な課題になっている。本稿では,中小塗装規模のVOC削減を実施する上で大きな障害となっているVOCとともに発生する塗料ミストと粉塵の排出実態について調査し,これらの結果に基づき,中小塗装業向きに有効かつ効果的なVOC対策技術について検討したので報告する。

<特集>環境を支える地下の展望
小島圭二 地圏空間研究所代表東京大学名誉教授
▼概要文表示2010年8月号

 環境を支える地下の実績と展望を示し,地下の環境貢献の認識を深める。足元の地下では,透水性・保水性舗装がタイヤ騒音や温室効果の低減に貢献,共同溝インフラの環境貢献もみえてきた。水環境の保全・水再生では,下水道のほか,防災のための大規模な地下貯水池,地下河川が増え,水環境・水再生とのリンクが期待される。道路・物流系では,高速道路の地下化が実現し,港湾と内陸を地下で結ぶコンテナの物流も構想されている。エネルギー関連では,CO2の地下中貯留(CCS)や原子力による低炭素化社会へ向けて,廃棄物の放射線環境の安全(地層処分)を地下が支えようとしている。

<特集>環境に挑む都市高速道路の建設
土橋 浩 首都高速道路株式会社技術管理室設計技術グループ総括マネージャー
▼概要文表示2010年8月号

 大都市における社会資本整備では,環境保全や景観維持などに対する要請から,地下空間を有効活用した効率的な整備が求められている。こうした中,首都高速中央環状新宿線や品川線ではシールド工法を中心とした非開削工法による道路トンネルの建設を進めてきた。本稿では,首都高速中央環状線の概要および整備効果,また地下化に加えて建設時も含めた環境負荷の低減に向けた新たな技術開発およびさらなる環境保全対策や都市の景観維持の主な取り組みについて述べる。

<特集>地中熱利用による環境負荷軽減
田中雅人 ミサワ環境技術株式会社執行役員新規事業開発室室長
▼概要文表示2010年8月号

 地中熱とは,地下200mより浅い部分にある10~20℃程度の低温の熱エネルギーである。地下の地盤は,年間を通してほぼ一定の温度に保たれており,この安定した地盤の温度を温熱源や冷熱源として利用するのが地中熱利用である。その用途は,冷暖房をはじめ,給湯,道路融雪,工場の冷却工程など幅広い分野で活用されており,従来のシステムと比較して二酸化炭素排出量を50~90%程度削減する効果が確認されている。本稿では,この地中熱利用の概要を解説するとともに,地中熱利用による二酸化炭素排出削減効果について述べる。

<特集>首都圏大深度地下物流システムによる環境貢献
高橋洋二 日本大学総合科学研究所教授,横塚雅実 鹿島建設株式会社土木管理本部土木技術部プロジェクト推進グループ長,奥村忠彦 財団法人エンジニアリング振興協会地下開発利用研究センター研究理事
▼概要文表示2010年8月号

 我が国最大の海上コンテナ取扱個数を誇る東京湾とその後背圏を対象に,大深度地下物流システムを整備し,港湾の国際競争力強化や環境政策に応える一つの構想を提案した。本調査研究では,まず最新の港湾計画やコンテナ物流の動向を把握し,それを考慮したルート設定によりコンテナ流動量を推計した。また,輸送システム,施設レイアウト,整備工期・コストなどについて検討し,費用便益分析マニュアルに基づき効果を計測した。さらに,このシステムを活用して首都圏のコンテナ流動を抜本的に改善する施策とその環境貢献について検討した。

<特集>放射性廃棄物の地層処分―天然バリアを活用した長期にわたる安全確保
土 宏之 原子力発電環境整備機構(NUMO)技術部長 
▼概要文表示2010年8月号

 地下深部の岩盤は,人間の生活環境からの隔離性や物質の閉じ込め性などの特性を有している。放射性廃棄物の地層処分は,地下深部の岩盤の持つこのような特性を生かして長期的な安全性を確保する事業である。本稿では,安定なエネルギー供給と二酸化炭素の排出量削減に寄与する核燃料サイクルの実用化が進む中,核燃料サイクルの最後の要である地層処分を安全に実施するために,原子力発電環境整備機構が示した安全確保構想について概略を述べるとともに,地層処分において地下深部の岩盤に期待される特性を紹介する。

<特集>CO₂地中貯留技術の現状と可能性
中川加明一郎 財団法人電力中央研究所
▼概要文表示2010年8月号

 二酸化炭素回収・貯留(CCS :Carbon dioxide Capture and Storage)の一方策として,地中に二酸化炭素(CO₂)を隔離しようとする,CO₂地中貯留技術の適用が近年着目されている。ここでは,地下深部(およそ800m以深)の堆積(たいせき)岩中の帯水層に圧入するCO₂地中貯留技術の概要を示す。石油生産技術の適用により実現度の高い技術ともされるCO₂地中貯留技術の特徴と,実態を明らかにする。同時に,CO₂地中貯留技術の適用上の課題を示す。

<特集>動きだした日本のスマートグリッド―集中/分散のエネルギーマネジメント
荻本和彦 東京大学生産技術研究所人間・社会系部門エネルギー工学連携研究センター特任教授
▼概要文表示2010年7月号

 スマートグリッドの電力技術としての革新的要素である集中/分散のエネルギーマネジメントの協調の,エネルギー技術戦略の位置付け, および再生可能エネルギー導入などの電力システムへの影響による課題の解決の考え方について述べる。また, スマートグリッドの実証試験などの取り組み状況を概観し, 「スマート」なエネルギー・社会システムの発展までを視野に入れ, 価値観の変化から新しいニーズが生まれ, 新しい技術の開発・導入と制度の改変が並行して進むことによる産業への影響, ビジネスチャンスについて解説する。

<特集>低炭素化に向けた電力会社の取り組みとスマートグリッド
八巻 康一郎 東京電力株式会社技術部スマートグリッド戦略グループ主任,岡本 浩 東京電力株式会社技術部スマートグリッド戦略グループマネージャー
▼概要文表示2010年7月号

 電力会社は発電側,需要側,電力系統の一体的な整備・運用を担っていることから,発電側における低炭素化,需要側における高効率電気機器の開発・普及による低炭素化(省エネ)といった需給両面からの取組みに加え,それらをつなぐ電力系統のスマート化により(スマートグリッド),社会の低炭素化を推進している。本稿では,これらの取り組みについて概説する。

<特集>スマートグリッドでIT企業が提供する解決策
川井秀之 日本アイ・ビー・エム株式会社未来価値創造事業クラウド&スマータープラネット事業推進 スマートグリッドソリューション部長
▼概要文表示2010年7月号

 本稿は,まずIBMが海外で実施している約50件のスマートグリッドのプロジェクト事例の一部を示し,地域のエネルギー課題の明確化の必要性について論ずる。次にIBMが実施したエネルギーに関しての消費者調査にて予測される今後10年のスマートグリッドのビジョンとスマートグリッドのバリューチェーンを説明する。最後にスマートグリッドのプロジェクトにて実際にIT企業が提供している解決策(ソリューション)を論じ,海外でのスマートグリッド・プロジェクトでビジネス展開を検討している企業への提言を行う。

<特集>既存住宅向けスマートハウス実証実験の概要
飯島雅人 株式会社ミサワホーム総合研究所主任研究員
▼概要文表示2010年7月号

 住宅の省エネには建物の性能向上が必須であり、建築技術と制御技術を組み合わせることで一層省エネなスマートハウスを実現できる。さらに、スマートハウスの本格的普及には既存建物へのシステム導入が容易であることが不可欠である。また、近年導入が進む太陽光発電や蓄電池等を効率良く使いこなす仕組みが必要となりつつある。スマートハウス実証プロジェクトでは、こうした状況を想定してシステム設計を行い、既存住宅において幾つかのアプリケーションの実証実験を行い、ほぼ目論み通りの良好な結果が得られたので、その概要についてご紹介する

<技術報告>中小印刷業におけるVOCの排出実態と対策―その1:グラビア印刷における排出実態の概観
小林 悟 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門、浦田昭雄 環境コンサルタント・浦田事務所、竹内浩士 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門
▼概要文表示2009年9月号

 大気汚染防止法の一部改正に伴い,揮発性有機化合物(VOC)排出抑制制度が制定され,法規制と事業者の自主的取組とのベストミックスの手法により,効率的にVOC排出抑制を目指すことになった。筆者らは,特にVOC排出量の多い工業塗装分野,印刷分野に注目し,中小・零細企業等の自主的取組が円滑に推進されるように,VOC排出抑制対策技術を検討する際に最も重要なVOC排出源の実態調査,並びにこの実態調査に基づいて,中小排出源にも導入可能な対策技術の検討を行っている。本稿では,既報(本年3月)の工業塗装分野での調査結果に引き続いて,印刷分野,特にグラビア印刷工場での排出ガス中の全炭化水素濃度,成分構成,排風量の測定等を実施した結果を報告する。

<総説>阻集効率99.5%の流し台型油阻集器の効用
佐藤秀雄 株式会社大都技研代表取締役
▼概要文表示2009年6月号

 一般に飲食店では,油が混じった水をそのまま排水として流し,下水処理場で生物浄化処理を行っている。流された油は排水管や下水道管の目詰まり,悪臭の発生の原因となり,排水処理費用の上昇を招くことになる。また,排水に油が多く含まれていると浄化槽がうまく働かず,流れ出た油は河川・湖沼・海の水質悪化を引き起こす。これら混油排水処理の問題を解決するには,従来の排水処理の発想を変えなければならない。本稿では,油脂分を含む排水を厨房排水の最上流部である流し台で油と水に分離する新しい技術の事例を紹介する。これにより,規制のかからない小規模事業者の排水問題の解決や,大規模事業者の排水処理のコスト削減,省エネ等が可能となる。

<特集>太陽光発電産業の発展を目指して
中山英子 経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課
▼概要文表示2009年5月号

 太陽光発電は我が国が得意とする技術であり,エネルギー自給率が低い日本では大きな期待が寄せられている。また,太陽光発電システムに関連する産業は裾野が広く,普及拡大による産業振興や地域振興も期待される。そこで政府としては,従来からの補助金や税制等の施策に加え,「太陽光発電の新たな買取制度」「太陽光発電の導入拡大のためのアクションプラン」「ソーラー・システム産業戦略研究会」などの追加措置を講じて,太陽光発電の導入拡大をさらに加速させるべく取り組んでいる。

<特集>日本の太陽光発電の現状と将来展望
長藤佳夫 有限責任中間法人太陽光発電協会統計部会
▼概要文表示2009年5月号

 世界同時不況からの脱出に向けて、その切り札として太陽光発電産業への期待が高まっている。産業界としてもその期待に応えるためにも、緊急経済対策に組み込まれた補助金の円滑な運用に協力するとともに、将来に向けたコストダウンに対する努力、将来のリサイクルに向けた調査等についても取り組んでいる。ただ世界的な環境問題を考える時に、今まで欧州を中心に進められて来た導入普及策が、発展途上国も含めた世界レベルで展開されることが期待される。そのためにも日本は、これまで培った高い技術で世界の太陽光発電普及に貢献することが必要である。

<特集>太陽電池技術開発動向
増田 淳 独立行政法人産業技術総合研究所太陽光発電研究センター
▼概要文表示2009年5月号

 近年急成長を遂げる太陽電池の技術開発が盛んである。結晶シリコン系では原料供給の課題を解決すべく、原料の新しい製法やウエハの薄型化に関する技術開発が盛んである。薄膜シリコン系では多接合化による高効率化、大面積・高速堆積による生産性の向上が課題となっている。化合物薄膜系ではCIGS太陽電池の効率が20%に達するとともに、フレキシブル化や溶液プロセスも注目されている。また、テルル化カドミウム太陽電池は飛躍的に生産量を伸ばし、注目を集めている。色素増感太陽電池ならびに有機薄膜太陽電池では、実用化を視野に高効率化と長寿命化に取り組んでいる。さらに、長期的展望のもとに、量子ドット等の新しい原理を用いた太陽電池の研究開発も盛んになっている。

<特集>カネカの薄膜シリコン太陽電池への取り組み
新田佳照 株式会社カネカソーラーエネルギー事業部技術グループ幹部職
▼概要文表示2009年5月号

 薄膜シリコン太陽電池は,化学気相成長法により,真空容器内でガラス基板上にシランガスを分解し直接形成でき,膜厚も非常に薄く,しかも膜形成時におけるエネルギー投入量も少ない省資源・省エネルギー型の太陽電池といえる。その特徴を生かした製品群として,平板瓦一体型太陽電池,低角度設置陸屋根対応システム,及びシースルー太陽電池があり,意匠性を考慮したものや,建築物の熱負荷を低減する効果を有しているものがある。さらに高性能化への新しい構造として,透明中間層を導入した薄膜シリコンハイブリッド太陽電池がある。

<特集>太陽電池ビジネスを巡る情勢と今後の動向
山家公雄 日本政策投資銀行調査部審議役
▼概要文表示2009年5月号

 太陽光発電市場は、2004年のドイツの長期固定価格買取制度(FIT)導入を皮切りに、EU諸国が相次いでFITを導入しており、需要が爆発している。金融危機の影響も見られるが、グリーン・ニューディール政策を掲げる米国の市場拡大が期待されている。供給面では、ベンチャーによる参入が相次ぎ、日本勢はそのシェアを大きく落としている。補助金復活や固定価格買取制度の導入等の内需拡大策や、メーカーのコスト削減および積極投資により、日本勢の巻き返しが期待される。いずれにしても、国際競争激化により、価格低下は急速に進んでいくことになる。

<特集>電気事業者による太陽光発電への取り組み
中井康貴 東京電力環境部環境企画グループマネージャー
▼概要文表示2009年5月号

 地球温暖化対策技術の開発・普及に対する関心が高まる中,太陽光発電は,市民の受容性が高く,かつすぐに利用できる技術として大きな期待を集めている。政府・自治体による各種普及促進策も打ち出されている。電気事業者はこれまでも余剰電力の購入やグリーン電力基金への拠出など通じて普及に貢献してきた。さらに10社合計で14万kWのメガソーラー導入を予定している。しかし,太陽光発電については,パネル価格や二酸化炭素(CO₂)削減効果の面のほか,大量導入時の系統安定化策とそのコスト負担のあり方など,課題があることへの認識も重要である。

<総説>中小塗装現場におけるVOCの排出実態
小林 悟 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門主任研究員、浦田昭雄 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門研究員、竹内浩士 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門主幹研究員
▼概要文表示2009年3月号

 大気汚染防止法の一部改正に伴い、揮発性有機化合物(VOC)排出抑制制度が制定され、法規制と事業者の自主的取組とのベストミックスの手法により、効率的にVOC排出抑制を目指すことになった。筆者らは、特にVOC排出量の多い工業塗装分野、印刷分野に注目し、零細企業・中小企業等の自主的取組が円滑に推進されるように、特にVOC排出抑制対策技術を検討する際の最も重要と考えられるVOC排出源の実態調査、並びにこの実態調査に基づいて、中小排出源にも導入可能な対策技術の検討を行っている。本稿では、平成19年度に行われた工業塗装分野での塗装ブース、乾燥装置の排出ガス中の全炭素連続濃度変化、成分構成、排風量の測定等を実施した結果を報告する。

<特集>革新的環境・エネルギー技術開発を支える材料
長井 寿 独立行政法人物質・材料研究機構環境・エネルギー材料領域コーディネータ
▼概要文表示2008年11月号

 世界の大人口が思い思いに豊かな生活と経済を求め始めたグローバル時代においては、地球限界を前提の制約条件に考えなくてはならない。その上で、資源とエネルギーを安定的に確保し、かつ地球環境の保全に貢献できるイノベーションを達成できれば持続可能性社会もみえてくる。資源・エネルギーともに自然賦与量の乏しい我が国では、この技術分野は国際競争力保持のためにも重要になる。イノベーションに繋がる材料のブレークスルーを実現するためには、技術と科学の密接な関係が求められる。材料課題は多様であるが、分類して概観する。

<特集>耐熱・高温材料
阿部冨士雄 独立行政法人物質・材料研究機構 新構造材料センターグループリーダー
▼概要文表示2008年11月号

 火力発電によって我が国のエネルギーを長期的に安定に確保し,しかも二酸化炭素(CO2)問題を解決するには,高温高圧化による高効率化,CO2排出削減が必要である。発電部門と並んで重要な自動車部門でも,燃費改善と排ガスのクリーン化のため,高効率化,CO2排出削減が必要である。低炭素社会の実現のためには,より高温で長時間安全に使用できる耐熱・高温材料の開発が不可欠である。我が国の耐熱鋼,耐熱材料の研究開発レベルは欧米を凌いで世界トップレベルにあり,これまで材料高温化によって高効率化に多大の寄与をしてきたが,現在も世界最先端の研究開発が進められている。

<特集>適用拡大に向けた固体酸化物形燃料電池材料開発
森 昌史 財団法人電力中央研究所上席研究員
▼概要文表示2008年11月号

 燃料電池は地球温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)の大幅な削減が可能であり、国内外で活発に開発が進められている。中でも、白金等貴金属を用いない固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、資源的制約が少なく使用可能な燃料も多いため、早期普及が期待されている。本稿では現在開発されているSOFCのセル材料及び改良点等を紹介する。

<特集>超伝導材料―エネルギー・環境のための将来技術へ向けて
北口 仁 独立行政法人物質・材料研究機構
▼概要文表示2008年11月号

 電気抵抗がゼロである超伝導を応用する技術は「究極の省エネルギー技術」ともいわれている。電気材料として広範に用いられている銅やアルミ等の常伝導金属では不可避の通電電力損失を,超伝導線材を使うことで著しく小さくし,電力機器等の大幅な効率向上(電気エネルギーのより有効な利用)を通じて省エネルギーに貢献できるからである。本稿は,超伝導材料とその応用について極力平易に述べ,エネルギー関連として高温超伝導電力ケーブル,環境関連として超伝導磁気分離といった実例を紹介する。

<特集>炭素繊維強化複合材料の現状と将来
髙橋 淳 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻教授
▼概要文表示2008年11月号

 炭素繊維強化複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は,軽量,高強度等の優れた特性を有し,既存の金属材料と比べて大幅な軽量化が図れる極めて有望な素材であり,自動車等の車体軽量化による省エネ化が期待できる。しかし,従来の熱硬化性樹脂を用いたCFRPでは加工性,リサイクル性等に問題があり,用途が限定されていた。そこで,経済産業省では,成形性,加工性,リサイクル性が高く,自動車,産業機械等のより広い分野での利用が可能となる熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維強化複合材料(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)を開発するプロジェクト(サステナブルハイパーコンポジット技術の開発,平成20~24年度)を開始した。本稿では,その背景となる考え方を中心として,炭素繊維関連技術開発の現状と方向性を解説する。

<特集>光触媒材料
葉 金花 独立行政法人物質・材料研究機構光触媒材料センター長
▼概要文表示2008年11月号

 光触媒は,太陽光エネルギー変換及び次世代環境浄化材料として近年多大な注目を集めている。実際,二酸化チタン(TiO2)光触媒の脱臭,抗菌,防汚・防曇効果などを利用した製品開発がどんどん進められている。しかし,TiO2光触媒は,紫外線にしか活性を示さないため,効率や応用範囲が限られているのが現状である。光触媒科学やその関連産業がさらなる飛躍的な発展を遂げるためには,なお多くの課題,特に高感度な可視光応答型光触媒材料の研究開発に取り組む必要がある。

<特集>革新的太陽電池材料開発
増田 淳 独立行政法人産業技術総合研究所太陽光発電研究センター産業化戦略チームチーム長、近藤道雄 独立行政法人産業技術総合研究所太陽光発電研究センターセンター長
▼概要文表示2008年11月号

 太陽電池の飛躍的な市場拡大のなか、結晶シリコン太陽電池の増産が進むにつれ、その原料であるポリシリコンの供給限界が深刻な課題となっているが、本稿ではそれらの課題を解決する次世代の結晶シリコン太陽電池技術ならびに、薄膜シリコン、化合物薄膜、有機系などの各種新型太陽電池で使用される様々な材料と課題について述べる。

<特集>EcoTech2.0のすすめ
安井 至 科学技術振興機構研究開発戦略センターシニアフェロー
▼概要文表示2008年10月号

 現時点でもっとも緊急に対応を要する事態は、メディアなどが大きく取り上げないのだが、明らかに第三次石油ショックに突入をしてしまったことである。幸いにして、その対策は、温暖化抑制策とまったく同じである。その内容は新規技術開発と既存技術の途上国移転である。新規技術開発の方向性は、EcoTech2.0とでも命名すべきもので、すべて製品・システムの効率を2倍にすることである。本稿は、なぜそのような結論に至るか、根拠となるさまざまな事実を積み上げる検討した後、さらに、その技術のやや具体的なイメージを描いてみる。

<特集>空気吹き石炭ガス化複合発電(IGCC)の開発状況
長井輝雄 株式会社クリーンコールパワー研究所実証試験本部長
▼概要文表示2008年10月号

 石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)はガスタービン複合発電の技術を応用して石炭に適用したもので、従来の微粉炭火力発電から飛躍的な熱効率の向上が見込まれる。最新鋭の1,500℃級ガスタービンを使用した空気吹きIGCC商用機の熱効率は48~50%(LHV,送電端)が達成可能とされ、発電電力量(kWh)あたりの二酸化炭素(CO₂)排出量が2割近く削減されることになる。IGCC実証機プロジェクトは1999年から開始され、建設工事は2007年に完了し、現在は福島県いわき市において実負荷を伴う試験を行っている。

<特集>ITS技術による地球温暖化防止
津川定之 名城大学理工学部情報工学科教授
▼概要文表示2008年10月号

 自動車交通から排出される二酸化炭素(CO₂)の量は,日本全体が排出する量の約18%を占めており,石油を燃料とする自動車交通は地球温暖化の一大原因である。高度道路交通システム(ITS)には,信号制御,電子式料金自動収受システム(ETC),カーナビゲーションシステム,安全運転支援,自動運転,バス運行管理など多くの技術が含まれるが,これらの技術は,円滑な交通流を実現し,短い車間距離での車群走行を可能にして道路容量を増加させ,渋滞の発生を防ぎ,その結果,省エネルギー,CO₂発生削減に大きな効果がある。

<特集>革新的ガラス溶融プロセス技術
伊勢田徹 社団法人ニューガラスフォーラム研究開発部新溶解研究室長
▼概要文表示2008年10月号

 我が国のガラス産業は全産業の約1%に相当するエネルギーを消費するエネルギー多消費型産業であり、大部分をガラス溶融工程で消費している。この消費エネルギーを1/3程度に低減できる可能性のある新技術が最近我が国に登場し、先導研究を経て、今年度より(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」プロジェクトとして、実用化に向けた本格的な研究開発が開始された。現行技術の限界、新技術の先導研究における成果、並びに、新プロジェクトの課題について概説する。

<特集>革新的製鉄プロセス
米澤公敏 新日本製鐵株式会社技術総括部・環境部
▼概要文表示2008年10月号

 鉄鋼業では現在、地球温暖化問題に対して、短期・中期課題と併せて、2050年を見据えた長期的な抜本的削減へ向けた開発に取り組んでいる。今回、Cool Earth50計画に基づいた日本鉄鋼業での長期研究開発プログラムについてその考え方を示す。

<特集>次世代高効率照明
鎌田策雄 パナソニック電工株式会社照明事業本部照明R&Dセンター長
▼概要文表示2008年10月号

 電力消費量のうち照明は約20%を占めており,Cool Earth―エネルギー革新技術計画として策定された21技術の一つとして次世代高効率照明が選定されている。水銀を含まない環境対応型光源でもある次世代照明光源のダイオート(LED),有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)が既存光源の白熱灯や蛍光灯を超える高効率を達成し,既存光源をすべて置き換えると照明が占める電力消費量の半減が期待できる。本稿ではさらなる効率向上に応じて照明応用拡大の進展が期待されるLED照明と照明応用の可能性追求の進展が期待される有機EL照明について紹介する。

<特集>高効率ヒートポンプ―空気中の熱を使えるエネルギーに変換する地球温暖化対策技術
矢田部隆志 財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 業務部
▼概要文表示2008年10月号

 エネルギーを取り巻く環境は新たな課題が生じている。化石燃料価格高騰によるエネルギーセキュリティー、温室効果ガス排出による地球温暖化問題などである。化石燃料の消費を抑制することが解決策であるが、社会的効用を落とさない技術の登場に期待がかかる。昨今、空気の熱エネルギーを活用する高効率ヒートポンプが家庭用から産業用の熱利用分野で燃焼の代替技術として注目されている。その高効率ヒートポンプについて政策的位置づけを交え紹介する。

<特集>工場・ビル・家庭用エネルギー管理システム(EMS)
工藤博之 財団法人省エネルギーセンター技術部部長
▼概要文表示2008年10月号

 わが国の省エネルギー技術は,工場における品質改善のための小集団活動での省エネ努力と、排熱利用や高効率機器の積極的な導入の成果である。エネルギー管理システム(EMS)は、工場・ビル・家庭でのエネルギー計測・管理と省エネを自動化するシステムであり、2050年に向けた「低炭素社会づくり行動計画」の柱となる21の「エネルギー革新技術開発」の一つにも選定されている。工場でのEMS普及をさらに進めるとともに、エネルギー使用量の増加が著しい家庭用EMS(HEMS)やビル用EMS(BEMS)の技術開発と普及に努める必要がある。本稿では、工場・ビル・家庭でのEMSの研究開発事例と、今後の課題について紹介する。

<シリーズ>【エコイノベーション 6】環境規制がイノベーションを促進するか―ポーター仮説の検証
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年9月号

 マイケル・ポーター教授が提唱したいわゆる「ポーター仮説」は、「適切に設計された環境規制は、費用低減・品質向上につながる技術革新を刺激し、その結果、国内企業は国際市場において競争上の優位を獲得し、他方で国内産業の生産性も向上する可能性がある」としている。本稿では、ポーター仮説が成立する典型的な例として、日本でしばしば引用されている日本版マスキー法の事例を取り上げて検証した。その結果一般論として、ポーター仮説が成り立つとは言い難いことがわかった。インプラントの改善は環境負荷低減にもコスト削減にも有用であるが、これを達成するためには環境規制が必要不可欠ではなく、企業の自主的取り組みでも十分対応可能である。したがって今後は、前年よりも排出物質を削減するインセンティブが働き、企業の自主的な削減努力を誘引するような化学物質排出移動量届出制度(PRTR)等の公表制度の活用が適切であると考えられる。

<シリーズ>【エコイノベーション5】環境と金融
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年8月号

 金融の環境化は、企業の環境情報とその評価結果を公表し、それに応じて金融上のメリットを与えるという手法が中心であるが、これは、市場メカニズムの中で、環境負荷の低減を助長することを目指しており、End of Pipe(出口)規制型の環境規制よりも効果的であると考える。産業公害から地球環境へと環境問題の広がりに呼応し、環境規制の形態が変化している。具体的には、環境規制の代替策として「金融の環境化」が進んでいるが、このような動きは、政府系金融機関、大手銀行にとどまらず、地方銀行、非営利組織(NPO)にも波及している。

<シリーズ>【エコイノベーション④】我が国の環境協力の現状と課題
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年7月号

 現在、我が国の環境協力は、政府開発援助(ODA)による国際機関への出資や二国間援助を通じて、また、地方自治体、民間企業、大学等のボトムアップ型の環境協力を通じて、多方面、多分野にわたって行われている。まずはじめに、その実態について紹介する。次に、我が国の環境協力は、ハード整備中心の支援のほか、近年では、公害防止管理者制度の構築支援のようなソフト面の協力支援もみられる。そこで、経済産業省のソフト面を中心とした支援策の一つであるグリーンエイドプラン(Green Aid Plan: GAP)と公害防止管理者制度の構築支援について紹介する。さらに、我が国の環境協力の留意点を整理するとともに、環境協力の一環として行われている環境計測機器企業の海外進出、特に中国への進出事例を紹介する。最後に、以上を踏まえ、アジアの環境汚染を克服するため、今後の我が国の環境協力は、環境法令の執行の徹底を支援することが最も必要であるとの結論を得た。

<特集>持続可能な発展と低炭素社会の実現に向けて―ALPSプロジェクト
秋元圭吾 財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)
▼概要文表示2008年6月号

 地球温暖化問題は、自然環境ひいては人類に深刻な影響をもたらす。一方で温暖化は近代的で豊かな人類活動の営みに起因している。とりわけ今後、経済の発展によってより豊かな生活を強く願う途上国の発展を阻害しないようにしつつ、温暖化防止につなげていくことは容易なことではない。しかし現状のような状況を続けば、地球温暖化を含め、いずれ地球が破局を迎えることは明白である。財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)が取り組む研究プロジェクトALPSは、世界の持続可能な発展と地球温暖化対策についての、人類が選択可能な総合的・整合的かつ具体的なシナリオの提示を目指すものである。本稿ではその背景と目的、および研究の一部を紹介する。

<特集>「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」について
小林正孝 経済産業省資源エネルギー庁総合政策課エネルギー戦略推進室
▼概要文表示2008年6月号

 エネルギー分野において世界トップ水準の技術を有する我が国は、世界をリードできる技術分野に研究開発資源を集中化し、技術開発を加速・推進することにより競争力を維持・強化している。今後は、国際的な連携を強力に推進し、2050年までの温室効果ガス排出量大幅削減に積極的に貢献していくことが必要である。経済産業省では、・2050年の大幅削減に向けて、我が国が重点的に取り組むべき革新技術として「21」技術を選定・長期にわたる技術開発のマイルストーンとして、各技術のロードマップの作成・長期的視点から技術開発を着実に進めるためのロードマップを軸とした国際連携のあり方について検討を行い、「Cool Earth -エネルギー革新技術計画」を取りまとめた。

<特集>二酸化炭素回収・貯留(CCS)について
赤井 誠 独立行政法人産業技術総合研究所主幹研究員
▼概要文表示2008年6月号

 二酸化炭素の回収貯留(隔離)技術(Carbon Dioxide Capture and Storage:CCS)は、火力発電等の大規模排出源の排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、それを地中または海洋に長期間にわたり貯留または隔離することにより大気中へのCO2放出を抑制する技術である。この技術は大気中のCO2を短期間で大幅に削減する有力なオプションとして国内外で注目が高まっており、Cool Earth-エネルギー革新技術計画においても重要課題として取り上げられている。本稿では、このCCS技術について、技術の概要、研究開発動向、及び国内外の関連政策動向を中心に解説する。

<特集>革新的太陽光発電技術
佐賀達男 シャープ株式会社ソーラーシステム事業本部副本部長兼次世代要素技術開発センター所長
▼概要文表示2008年6月号

 太陽光発電は、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、またエネルギー源として無尽蔵な太陽光エネルギーを利用するため、環境問題およびエネルギー問題の両者に貢献できるという特徴を持つ。太陽光発電を大幅に普及させるためには、発電コストを現状の46円/kWh程度から汎用電力並の7円/kWh以下にまで低減する必要があると考えられる。発電コストの大幅な低減のためには、主として変換効率を飛躍的に向上しうる第三世代型太陽電池等の大きな技術革新が必要となる。

<特集>トヨタプラグインハイブリッド
小松雅行 トヨタ自動車株式会社パワートレーン本部HVシステム開発部HV開発統括室主幹
▼概要文表示2008年6月号

 自動車が抱える課題として石油資源の枯渇,二酸化炭素(CO2)増加による地球温暖化,排気ガスによる都市部の大気汚染がある。これらの課題に対して,エネルギー回生等の機能により燃費向上,CO2低減が可能なHybrid Vehicle(HV)が世界中で普及し始めている。HVに対し,さらに電気自動車(EV)の長所を併せ持ったプラグインハイブリッド(PHV)が次世代ハイブリッド技術として注目を集めている。本稿では,PHVの有効性を紹介する

<シリーズ>【エコイノベーション 3】我が国の環境ビジネスの現状と課題
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年6月号

 本稿では、環境ビジネスの中の自然共生・公害関連のビジネスを中心に、その産業競争力と今後の展望について議論する。具体的には、大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理の三つのビジネスの動向について、国内市場及び海外市場、とくに中国市場を中心に考え、以下の結論を得た。第一に、昨今の中国の環境規制のエンフォースメントの高まりは、日本企業にとってチャンスとなる。もちろん、公害防止装置は一般的に成熟した技術であるため、日本の公害防止装置は、価格競争力がないというのが実態である。しかしながら、日本企業の装置は安定性と正確性が卓越しており、それが再評価されるような環境が醸成されれば、日本企業の参入の余地があると思われる。第二に、日本企業は、製品販売型のビジネスから事業実施型のビジネスへ移行すべきである。その理由としては、製品販売は売り切りで、類似品を作られると収益を得る糧がなくなってしまうが、事業実施型のビジネスであれば、事業期間中、安定した収益が得られるからである。第三に、中国のような未成熟な市場では様々なリスクが存在するのは事実である。ただし、今後、日本は人口減少や高齢化が進み、需要が減退するリスクの方が、それらのリスクよりも大きいと思われる。座して死を待つか、積極的に打って出るか、日本にとって今が分岐点にあるといえる。

<シリーズ>【エコイノベーション 2】環境ベンチャー企業の現状と今後の展望
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年5月号

 エコイノベーションを促進し、環境ビジネスを振興させるためには、大学、大企業中心の研究開発だけではなく、ベンチャー企業の役割が重要であることが認識されるようになってきた。そこで、本稿では、アンケート結果に基づき、環境系大学発ベンチャー企業の現状と課題を明らかにする。また、環境系大学発ベンチャー企業のSTACとソフィア、及び環境系理化学研究所発ベンチャー企業のワイコフ科学の現状及び今後の展開を探った。その結果、環境系大学発ベンチャー企業は、他の大学発ベンチャー企業とは異なり、研究開発は大学に任せ、大学の研究成果を製品化し、その製品の普及を中心に事業を実施していることが明らかになった。また、環境系大学発ベンチャー企業の成功の鍵は、公共調達の活用にあり、公共調達を活用して如何に販売実績を示すかが重要である。

<総説>本格化するEuP指令
市川芳明 株式会社日立製作所環境本部主管技師
▼概要文表示2008年4月号

 2006年8月に環境配慮設計を義務づけた世界初の法律,「EuP枠組み指令」がEU域内で発効された。その対象とする製品範囲は「エネルギー使用機器」と幅広く,日本の産業界に大きな影響が懸念される。現在では最初の14製品群の事前調査は終わりつつあり,既に実施措置(IM)の中身が見えてきた。エネルギーラベルとの補完関係など,予断を許さない展開も見られている。さらに新たな25製品分野に拡大する計画が具体化しつつある。本稿ではこのEuP指令の最新状況について述べる。

<シリーズ>【エコイノベーション 1】エコイノベーションとは何か
中村吉明 経済産業省環境指導室長
▼概要文表示2008年4月号

 我が国の強みである「ものづくり」と「環境・省エネ」の技術力を梃子に、持続可能な社会システム面での改革を一体的に推進することをエコイノベーションと定義し、1)サステナブル・マニュファクチャリングの実現、2)ゼロエミッション型社会インフラの実現、3)サステナブルな社会の実現、4)人間重視・受け手中心のイノベーションに分けて、エコイノベーションの意義を明確化するとともに、実例を紹介する。本稿の提言は2点ある。第1点は、世界規模でエコイノベーションを実現するためには、我が国だけではなく、諸外国の協調が不可欠であるため、OECD等の協力を求めつつ、エコイノベーションの普及・拡大することが必要であるという提言である。第2点は、エコイノベーションの推進に向けた様々な施策やプロジェクトを、それぞれの部分均衡で終わらせずに、ネットワークを作り、協力・協調しながら、一般均衡を目指すことが肝要であるという提言である。

<特集>自然由来の土壌・地下水汚染調査について
成沢 昇 財団法人日本ガス機器検査協会環境調査部
▼概要文表示2008年3月号

 近年,日本列島の各地において,自然由来の土壌中の有害重金属に対する対処の方法にて,多くのトラブルが生じている。自然由来でありながら,その一部は土壌汚染と判断されて過大な浄化コストとなり,土地取引に大きな影響を与えている。一方で,自然由来か人為的な原因かの判別は容易ではなく,科学的根拠をもって,十分に検討がなされないケースも多い。その他,法律(土壌汚染対策法)の解釈についてもあいまいな部分が存在し,自然由来の土壌汚染に対しては,多くの課題が残されているのが現状である。

<特集>紙パルプ産業におけるメタン発酵排水処理技術の利用
濱田 薫 日本製紙株式会社技術研究所
▼概要文表示2008年3月号

 メタン発酵処理技術は,排水中の有機物からエネルギーを回収できるだけでなく好気性処理に比べて余剰汚泥の発生が少ないことなどが特徴であり,非常に有用な技術である。この技術は,UASB法の開発などにより処理効率が飛躍的に向上したことから食品をはじめとする多くの産業に導入されている。紙パルプ産業においてもメタン発酵設備は欧州を中心に導入されており,当社でも2004年(平成16年)に勇払工場,2005年(平成17年)には岩国工場に実機設備を導入している。両工場ではメタン発酵処理をクラフトパルプ製造工程で発生する黒液の蒸留液(KPエバドレン)に対して適用しているが,この排水への適用は国内初である。

<特集>アクティブノイズコントロール
西村正治 鳥取大学工学部機械工学科教授
▼概要文表示2008年3月号

 工場騒音,交通騒音,生活騒音などの各種騒音問題は,単に一過性でなく,精神面への問題が蓄積される重要な環境問題のひとつである。これまで機械の音源対策,伝播経路対策が進み,かなりの静粛化が図れるようになってきたが,従来の受動的対策だけではなかなか革新的低騒音化は期待できない。本稿では,逆位相の音を出して元の音をキャンセル消音するアクティブノイズコントロール(ANC)技術を取り上げ,その原理,基本的手法,開発状況などの概要を紹介した。ANCは決して万能ではないが,その限界も明確になり,騒音対策の道具のひとつとして実用され始めている。今後さらに研究開発が進み,広く活用されることを期待する。

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