環境管理バックナンバー 2009年 9月号

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2009年9月号 特集:生物多様性と企業経営

<特集>

生物多様性と民間参画
鈴木 渉 環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室
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 2006年に開催された生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)では,企業などの民間セクターの参画を促す「民間参画に関する決議」が初めて決議された。これを契機として,企業等の参画に対する国際的な議論や機運が盛り上がりをみせている。政府は,2007年(平成19年),生物多様性条約の規定に基づき第3次生物多様性国家戦略を取りまとめ,この中で民間事業者向けのガイドライン策定を位置づけた。これを受け,環境省は「生物多様性民間参画ガイドライン」を取りまとめ、本年8月に公表した。来年2010年(平成22年)10月,愛知県名古屋市において条約のCOP10が開催されることから,日本の民間事業者の取組についても注目が集まっている。

求められる民間事業者の「生物多様性」への取り組みと「日本経団連生物多様性宣言」発表の意義と役割
岩間芳仁 日本経済団体連合会自然保護協議会事務局長
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 近年「生物多様性」の重要性が叫ばれているが,その劣化を食い止める試みは世界的にみるとあまり成果が上がっていない。そこで,「生物多様性条約」の枠組みの下,企業を含む民間部門の積極的な参画を求める動き,市場メカニズムや経済的手法を活用することで民間事業者の参画を推進しようという試みがあり,また,途上国の豊かな生物多様性を保全するための費用を先進国が負担すべきだという考え方など,生物多様性をめぐって,地球温暖化問題と同じような議論や対立の構図が見え始めている。こうした中,日本経団連では,従来の地道な自然保護に関する活動の実績や,会員企業の社会貢献活動などを通じた生物多様性への貢献を踏まえ,来年10月,名古屋で開催される生物多様性条約締約国会議をにらんで,「生物多様性宣言と行動指針」を作成・公表した。これは,日本産業界の生物多様性問題に対する基本的なスタンスを述べると同時に,会員企業が生物多様性に積極的に対処するための指針となるものである。今後「宣言」と「行動指針」の定着を図りつつ,生物多様性への積極的な貢献を果たしていきたいと考えている。

遺伝資源へのアクセスと利益配分―生物多様性条約に基づく海外遺伝資源の利用に関する国際ルールと新たなルール策定に向けた国際交渉
薮崎義康 財団法人バイオインダストリー協会事業推進部部長
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 生物多様性条約の目的は,「生物多様性の保全」,「構成要素の持続可能な利用」とともに,「遺伝資源の利用による利益の公正かつ衡平な配分」となっている。来年名古屋で開催の第10回条約締約国会議(COP10)ではこの第3の目的に関連した新たな国際的制度をまとめあげられるかが交渉の焦点となっている。本稿では,COP10での重要な争点を理解する一助として,財団法人バイオインダストリー協会が長年にわたり取り組んできた海外遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)について概説するとともに,国際交渉の現状を紹介する。

生物多様性と企業活動―経団連のアンケートにみるリスクとチャンス
香坂 玲 名古屋市立大学経済学研究科准教授
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 生物多様性と企業経営との関わりでは,そのビジネスチャンスとリスクの両面からの把握が鍵となる。規制をリスクと捉えるだけではなく,事業体にとっては,自社の活動を生態系に配慮する形で効率化・改善するチャンスでもある。環境省のガイドライン,経団連の生物多様性宣言などに則り,今後の議論と活動の展開が国内外から注目される。特に事業の操業に直接影響を及ぼすものとして,現在は生物多様性条約(CBD)の第10回締約国会議における,遺伝資源の利益配分に関する国際的枠組みの採択に注目が集まっている。本稿ではこれらの生物多様性条約の2010年の主要な論点を紹介しつつ,経団連が生物多様性宣言の作成にあたって行なったアーケート結果をもとに,企業にとってのリスクとチャンスについて考察する。

NECグループの生物多様性へのアプローチ
宇郷良介 日本電気株式会社環境推進部統括マネージャー
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 生物多様性への対応の重要性は,1992年のリオ・サミットで地球温暖化と同時に国際的な認知を得たにもかかわらず,実行面ではこれまであまり大きな進捗がみられていない。特に,企業の対応は産業界全体として低調な状況であろう。しかし,国内において2007年に「第三次生物多様性国家戦略」が発行され,企業に対する実効的な取り組みへの期待は強まる傾向にある。このような状況下で,事業活動の継続性確保と連動した企業の本質的な生物多様性対応がいっそう重要になる。本稿では,企業の取り組みのおける今後の一つの方向性を示すとともに,NECグループの現状活動をその中に位置づけながら具体的な事例を紹介する。

東京電力の生物多様性保全に向けた取り組み
北原隆朗 東京電力株式会社環境部(尾瀬林業株式会社出向)
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 東京電力では,グループ全体の経営理念として「エネルギーの最適サービスを通じて,豊かな生活と快適な環境の実現に貢献する」と謳っており,従来から尾瀬をはじめとする自社が保有する自然環境資産を適切に保全・管理してきた。また,発電所建設などの開発行為に際しても,既存の自然を最大限保全するとともに,新たな緑地の創造に努めている。これらの取り組みは,東京電力の伝統として引き継がれ,生物多様性の保全に向けた活動へと進化している。本稿では,東京電力が保有する代表的な自然環境エリアにおいて実践されているこれらの取り組みを簡潔に報告する。

<技術報告>

中小印刷業におけるVOCの排出実態と対策―その1:グラビア印刷における排出実態の概観
小林 悟 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門、浦田昭雄 環境コンサルタント・浦田事務所、竹内浩士 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門
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 大気汚染防止法の一部改正に伴い,揮発性有機化合物(VOC)排出抑制制度が制定され,法規制と事業者の自主的取組とのベストミックスの手法により,効率的にVOC排出抑制を目指すことになった。筆者らは,特にVOC排出量の多い工業塗装分野,印刷分野に注目し,中小・零細企業等の自主的取組が円滑に推進されるように,VOC排出抑制対策技術を検討する際に最も重要なVOC排出源の実態調査,並びにこの実態調査に基づいて,中小排出源にも導入可能な対策技術の検討を行っている。本稿では,既報(本年3月)の工業塗装分野での調査結果に引き続いて,印刷分野,特にグラビア印刷工場での排出ガス中の全炭化水素濃度,成分構成,排風量の測定等を実施した結果を報告する。

<シリーズ>

【環境法の新潮流67】諸外国における再生可能エネルギーの導入拡大に係る制度設計の動向―RPS制度を中心として
村上友理 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社製品安全・環境事業部CSR・環境グループリーダー
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 低炭素社会の実現に向けて,太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入拡大が必要不可欠である今,その技術開発や普及促進に向けた取組が注目されている。特に太陽光発電については,日本の技術力の強みを生かし,将来の産業の中核を担うものとして期待も高く,新たな買取制度の導入に向け,7月末現在,詳細な制度設計が行われている。本稿では,再生可能エネルギーの導入促進施策としてのRPS制度と固定価格買取制度をめぐる議論を振り返りつつ,我が国でも導入されているRPS制度を中心に,各国で行われている制度の見直し動向を紹介する。

【実践マテリアルフローコスト会計48】倉敷化工株式会社におけるサプライチェーン省資源化連携促進事業への取組み ―MFCA手法の実践とLCA評価の検証活動の成果
和気昭彦 倉敷化工株式会社産業機器事業部開発部開発課課長
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 防振ゴム(自動車部品,産業防振,建築防振,精密防振各分野)の専門メーカーである倉敷化工㈱では,防振ゴムの製造工程から排出されるゴムスクラップを再利用した環境製品の製造,販売を手掛けてきた。現在,サプライチェーン(㈱USS東洋,くろがね産業㈱)で進めている工程内で排出される防振ゴム用天然ゴム(以下NR)のゴムスクラップを再生ゴム化する「クローズドマテリアルリサイクル化」について報告する。また,防振ゴムのゴムスクラップから防振ゴム用ゴム材料をつくる目的で2軸押出方式による脱硫再生ゴムの製造技術を紹介し,この技術による環境負荷(ライフサイクルアセスメント(LCA)による二酸化炭素(CO₂),省資源)の低減とマテリアルフローコスト会計(MFCA)手法を導入したコストダウンの成果について,「サプライチェーン省資源化連携推進事業(以下SC事業)」で取り組んだ成果と課題について報告する。

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