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<特別寄稿>現実性を欠くG7広島サミットの気候変動メッセージ
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 特任教授)
▼概要文表示2023年7月号
5月20日、G7広島サミットは共同声明を採択して閉幕した。ウクライナ戦争、核軍縮等と並んでサミットにおける重要な柱になったのがエネルギー、気候変動問題である。首脳共同声明全体で40ページある中で気候変動、環境、エネルギー関連は10ページを占める。
首脳声明のベースとなったのが4月15︲16日、札幌において開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明である。本稿では気候・エネルギー・環境大臣会合共同声明について主要なポイント及び筆者としての見解を述べてみたい。
<特集2>オゾン層保護条約の国内実施とHFC規制
久保 はるか(甲南大学 共通教育センター 教授 行政学)
▼概要文表示2022年2月号

 オゾン層保護は、日本が本格的に地球環境条約の国内実施に取り組んだ最初の事例であり、後に続く先例として位置付けることができる。本稿では、先例から学びうる論点を三つピックアップして、アメリカと比較しながら検討する。
 論点は、①議定書の規制強化プロセスへの対応、②議定書の規定の国内法化、③規制物質の削減・廃止に向けた業界の対応である。そして最後に、温暖化対策の強化にともないモントリオール議定書に位置付けられることとなったHFCs対策について、国内対応の状況を紹介する。

<総説>地球温暖化対策に先行する水環境の順応性管理
堅田 元喜(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員/茨城大学 特命研究員)
▼概要文表示2021年8月号

環境問題の対策にはその原因を突き止めて規制を進めることが有効であるが、原因が複雑に絡み合う場合には予想外の不利益を生じることがある。例えば、汚濁が進んでいた瀬戸内海では、工場や家庭からの排水規制により水質が大きく改善したと同時に、漁獲量が低下してしまった可能性があるという。この現状に対して、政府は海の水質と生態系の両方を観測しながらバランスをとっていく「順応性管理」を採用した。地球温暖化問題に対しても、CO2 排出規制のみに目を向けずに経済開発や安全保障などとのバランスをみて目標を見直す柔軟な対策が必要である。

<特集>バイデン政権下の米国の気候変動対策――2030 年目標、グリーンリカバリー、カーボンプライシング・国境炭素調整を中心に
上野 貴弘(一般社団法人 電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員)
▼概要文表示2021年2月号
 バイデン大統領は選挙戦中に掲げた気候変動公約の実現に向けて動き出す。多岐にわたる論点の中で、日本に影響を及ぼしうるものとして、「① 2030年目標」「②グリーンリカバリー」「③カーボンプライシングと国境炭素調整」を取り上げ、①については、2005年比で40~50%の削減が今後の検討の目安となるであろうこと、②については、民主党が上院の多数派を奪取したことで成立の可能性が出てきたこと、③については、部門別の規制措置が優先され、カーボンプライシングの導入機運は高まっていないことを論じた。
<特集>温暖化関連ビジネスに潜むリスク
杉山 大志(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
▼概要文表示2021年2月号
 再生可能エネルギーや電気自動車など、温暖化関連ビジネスに乗り出す企業が増えている。だがそこにはいくつものリスクが潜んでいる。事業戦略決定の参考として提示したい。
 ①2050年CO2実質ゼロは実現不可能な目標であり、これを目指すことによって、日本はいっそう高コスト体質になる危惧がある。②かかる極端な対策を正当化するほど強固な科学的知見は存在しない。以上2 点から実質ゼロ目標がいずれ取り下げられることは必定である。③いま投資家はCO2に注目しているが、やがて脱中国の圧力が一層強まるとみられ、事業者は対応を迫られるだろう。④実質ゼロを目指すことと経済成長と両立するには「実質」の意味を弾力的に解釈し、国内では高コストなCO2削減策を避け、海外における日本の技術の利用によるCO2削減を広範に勘定するほかない。
<特集>中国のグリーン発展政策
倪 悦勇(三菱電機(中国)有限公司 ゼネラルマネージャー博士)/卢 春陽(中国情報通信研究院 博士)
▼概要文表示2021年2月号
 中国は経済発展最優先から経済と環境の両立へ発展方針を変更し、グリーン発展を提唱している。深刻な環境問題を解決するための環境規制の強化と遵法管理の厳格化は国策として推進されているため、企業の環境コンプライアンスリスクは高まっている。一方、中国は積極的に温暖化対策に取り組んでおり、責任ある大国として温室効果ガス削減の中長期目標を表明し、グリーン製造をはじめとした、社会を全面的にグリーン転換させる政策を計画、展開している。中国における環境ビジネスチャンスが潜んでいるといえる。
<特集>【サプライチェーンを取引先に持つ中小企業経営者向け「新型コロナ影響を踏まえたSDGs経営の重要性」オンラインセミナー】
▼概要文表示2020年11月号
  SDGsは国連が決めたもので、政府や自治体、大企業が取り組むものとのイメージがあるが、ESG 投資の潮流の中、特にサプライチェーンを取引先に持つ中小企業の取組みにおいても重要視されてきている。
 本セミナーでは、中小企業へのSDGs経営を推進するベイヒルズ税理士法人が、社会活動家 小島政行氏と、SDGsコンサルタント 中島達朗氏とともに、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたSDGsのリスクとチャンスを、具体的な取組み事例の紹介も交えてわかりやすく説明する。
 
〇トップ対談 社会活動家 × 税務プロフェッショナル
 小島 政行(社会活動家/一般社団法人 SDGs活動支援センター 理事長)/岡 春庭(税理士・中小企業診断士/ベイヒルズ税理士法人 代表社員)
 
〇新型コロナウィルスの影響を踏まえSDGsをビジネスに活かす
 中島 達朗(SDGsコンサルタント/株式会社ふるサポ 代表取締役)
 
<特集>企業におけるSDGs最前線――気づきの4段階
中川 優(オフィスグラビティー代表)
▼概要文表示2020年11月号
 SDGs(持続可能な開発目標)とは、よりよき地球社会を目指す2030年の行動指針である。SDGs最大の特長は、数多ある社会課題を17のゴールに集約するという手法で、投資や技術を呼び込み早期に課題解決が期待できる点にある。新型コロナのワクチン開発がその代表例である。そこで本稿では、なぜいまSDGsに注目が向かうのかについて、経営と投資、MDGs(ミレニアム開発目標)との対比などから検証するとともに、企業において「気づきの4 段階」を踏まえて、SDGsを経営に実装するためのプロセスモデルを紹介する。
<特集>シャボン玉石けんのSDGsへの取り組み
シャボン玉石けん株式会社
▼概要文表示2020年11月号
 1910年に福岡県北九州市で創業したシャボン玉石けん株式会社(福岡県北九州市/代表取締役社長:森田隼人)は、「健康な体ときれいな水を守る」を企業理念として掲げ、1974年より無添加石けんの製造・販売を行っている。
 SDGsの理念と弊社の企業理念、石けん系泡消火剤の研究開発をはじめとするこれまでの取り組み、さらに目指す将来像は多くの部分で重なっていたことから、2019年1月に「シャボン玉グループのSDGs宣言」を行い、改めてグループ全社を挙げてSDGs達成を推進している。
 国際サミットでのSDGs採択後は、弊社の事業をSDGsのゴール別に整理することから着手し、新たな取り組みとして生活者に対するSDGsの啓発を目的とした「私のSDGsコンテスト」の開催などにも取り組んでいる。
<特集>中国PM2.5の解決に貢献する日本のガスボイラー
樋口 哲也(リンナイ株式会社 広報部 次長)
▼概要文表示2020年11月号
 経済発展が著しい中国では現在もPM2.5 による大気汚染が大きな社会問題になっている。粒子径が2.5μm以下の微粒子であるPM2.5は、人々の健康に悪影響をおよぼし肺がんのリスクも含んでいる。
 PM2.5による大気汚染の発生原因は主に自動車の排出ガスや工場からの排気、そして家庭で使われる石炭ボイラー暖房による排気が主な原因である。燃料を石炭から天然ガスに変えることでPM2.5は大きく改善される。中国国内のガス会社とともに、上海リンナイは、これまで日本で培った技術をベースに、ガスボイラーの普及に努め大気汚染の防止に貢献している。
<特集>SDGsへ、サラヤのチャレンジ!
更家 悠介(サラヤ株式会社 代表取締役社長)
▼概要文表示2020年11月号
 新しい1万円札の顔になる渋沢栄一は道徳と経済の結合を説いた。では、現代のビジネスの道徳は何だろうか? それを端的にいえばSDGsである。
 サラヤは、ビジネスを通じて、①ボルネオの生物多様性の保全 ②ウガンダでの衛生向上 ③プラスチック海洋汚染防止、などの切り口でSDGsに取り組んでいる。ビジネスは理屈ではなく実践である。これらの取り組みとビジネスの経験について紹介・総括し、今後の展望を述べる。
<特集>企業は「より良い社会」づくりに向けた行動変容と連携を
北島 隆次(国連大学SDG企業戦略フォーラム事務局長/国連大学SDG 大学連携プラットフォーム事務局長/TMI 総合法律事務所 弁護士)
▼概要文表示2020年11月号
・SDGsの関心が高まる一方、その達成は容易ではなく、企業をはじめ社会の全ての構成員の行動変容が必要である。
・「人」、「モノ・サービス」、「金」、「経営」のすべての面において、企業がサステナブル経営に取り組むメリットは大きい。
・企業の取組みは、①社会貢献型、②現状維持・延長型、③行動変容型の3タイプに分かれる。日本企業は①②が大半だが、企業に大きなメリットを及ぼすのは③である。
・社会との連携は、今後の行動変容のための重要な要素であり、国連大学は企業、大学を軸に社会との連携のプラットフォーム化を目指す。
<特集>SDGs視点で俯瞰するネパールのコミュニティ・フォレスト50年
寺川 幸士(学術博士/国際協力コンサルタント)
▼概要文表示2020年11月号
 日本では輸入材の増加や後継者不足などによって、森林が荒廃し森林経営も危機に面している。一方で森林の持つ空気浄化作用や木材供給・バイオマス燃料など森林の機能も見直されている。一つの解決法としてコミュニティ・フォレストという考えがある。これは地元住民グループに管理を委譲された国有林のことを指す。
 ヒマラヤの国として知られるネパールでは、国有林の管理を部分的に地元住民に委ねる「Forests for people」という概念を盛り込んだ「国家林業計画」を1976年に策定した。これは世界で最も早く成立したコミュニティ・フォレスト法の一つである。本稿では、1990年代の民主化を経て王制から連邦共和国となったネパールのコミュニティ・フォレストの変遷を概観し、SDGsの視点から考察し、その課題と将来を考える。
<短期集中連載>【CLOMAアクションプラン キーアクション5(WG5)】プラスチック代替素材としての紙・セルロース系素材の普及に向けた取り組み
今野 武夫(日本製紙株式会社 取締役 常務執行役員 グループ販売戦略本部長)
▼概要文表示2020年11月号
 CLOMAワーキンググループ(WG)5は、プラスチック素材を木質バイオマスである紙・セルロース系素材で代替し、プラスチック使用量の削減に貢献することを目的としている。
 WG5は他のWGと異なり、グループ内で3つのサブテーマ、「紙・セルロース素材及びプラスチック複合素材の普及」、「未利用の紙系廃棄物、複合素材廃棄物のリサイクル」、「紙・セルロース素材の生分解性評価」を持ち、活動範囲は多岐にわたっている。
 本稿では、紙・セルロース系素材の高機能化によりプラスチックの性能に近づきつつある現状と、その普及に向けた各サブテーマの課題と取り組みについて紹介する。
<短期集中連載>【CLOMAアクションプラン キーアクション4(WG4)】プラスチックごみ問題解決に向けて――生分解性プラスチックの活用
市川 直樹(三菱ケミカル株式会社 高機能ポリマー部門 高機能ポリマー企画部長)
▼概要文表示2020年10月号
 プラスチックごみ問題の解決方法の一つとして生分解性プラスチックの活用が挙げられる。利便性の高いプラスチックは多岐にわたる用途で活用されているが、その中には、自然環境下で使われたあとの回収が困難な用途、あるいはリサイクルすることの技術的ハードルが高い用途もある。こういった用途における問題の解決策の一つとして、生分解性プラスチックの活用が注目されている。ここでは、生分解性プラスチックの特徴とその有用性を広くご理解いただくために、CLOMAのWG4 で現在取り組んでいる活動内容についてご紹介する。
<特集1>コロナウィルスと地球温暖化
有馬 純(東京大学公共政策大学院 教授)
▼概要文表示2020年9月号
 新型コロナウィルスは世界経済、エネルギー需給に甚大な影響をもたらしており、CO2排出量は足元では低下しているが、経済が回復すればリバウンドする可能性が高い。経済回復と温室効果ガス削減を同時達成しようというグリーンリカバリーの議論があるが、途上国であればあるほどコロナで疲弊した経済、雇用の回復とそれを可能にする石炭など、安価なエネルギー源に頼る可能性が高い。我が国はコロナからの回復にあたり、既に他国よりも高い電力料金のさらなる上昇を招くことは避け、次世代エネルギー技術のR&D 等に注力すべきだ。
<特集1>新型コロナウイルスと気候変動と大気汚染
竹村 俊彦(九州大学 応用力学研究所 主幹教授)
▼概要文表示2020年9月号
 新型コロナウイルス蔓延に伴う社会経済活動の制限により、温室効果ガスや大気汚染物質の排出量が一時的に減少した。しかし、温室効果ガスだけでなく、短寿命気候強制因子の動態も考慮すると、この行動制限は気候変動や大気汚染の本質的な解決には貢献していないと考えられる。た
だし、行動変容がなされれば、大気環境が改善することを世界的に体験できたことには意味があり、気候変動や大気汚染の緩和へ向けた継続的な取り組みを促進する契機になり得る。
<特集1>新型コロナウイルスが廃棄物処理事業に与える影響と対策
村岡 良介(一般財団法人 日本環境衛生センター 研修事業部長)
▼概要文表示2020年9月号
 新型コロナウイルスの国内の感染拡大から既に5か月が過ぎようとしているが、事態は改善の兆しがみられない。感染予防のために生活行動や事業活動に自粛や縮小が求められ、廃棄物の処理や3Rの推進にも大きな影響を及ぼしている。エッセンシャルサービスと呼ばれる廃棄物処理事業
は、ウイルスに接触するリスクに不安を覚えながら、家庭や事業所から日々排出される廃棄物を、集めて運んで適正に処分する重要な活動を継続している。
 本稿では、新型コロナウイルスが廃棄物処理事業に与えている影響を検証しながら、事業継続の一助とすべく策定した「廃棄物処理業における新型コロナウイルス対策ガイドライン」を紹介し、今後の廃棄物処理事業の在り方を展望する。
<特集1>横浜市にきく 感染と隣り合わせで働く「ごみ収集」の今
一般社団法人 産業環境管理協会 資源リサイクル促進センター
▼概要文表示2020年9月号
 新型コロナウイルス感染拡大の陰で、感染リスクと隣り合わせで休みなく続けられているごみ収集。外出自粛で家庭ごみが急増する中、ごみ収集員が感染し事業所閉鎖に追い込まれた例もある。
 新型コロナウイルスの影響はごみ収集の現場にどのような影響を与えているのか。さらに、感染リスクにさらされながら、どのようにこの難局を乗り越えようとしているのか。そのヒントを横浜市資源循環局に聞いた。
<短期集中連載>【CLOMAアクションプラン キーアクション3(WG3)】ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装を目指して
三浦 仁美(CLOMA WG3 座長/積水化学工業株式会社ESG経営推進部)/野部 哲也(CLOMA WG3 副座長/三井物産株式会社ベーシックマテリアルズ本部直轄サーキュラーエコノミー推進チーム)
▼概要文表示2020年9月号
 海洋プラスチック問題の解決のために取り組む必要がある課題は多い。その中でも「プラスチック循環の流れをつくること」は短期的には難しいかもしれないが、中長期を見据えて今から取り組んでいかなくてはならない喫緊の課題である。プラスチック循環システムを構築し、サーキュラーエコノミーへの転換を実現することこそ、不法投棄や、処理しきれない量の廃棄物をなくしていく根本的な解決方法だといえる。そしてプラスチック循環システムの確立は、マテリアルリサイクルをはじめとするさまざまな循環を後押しする方法があるものの、ケミカルリサイクル技術の開発や社会実装なくしては実現できないだろう。
 CLOMA WG3では、その「ケミカルリサイクル技術の開発と社会実装」のために企業連携を図り、共通課題を認識し、解決に向けて取り組むことを旨としてアクションプランを検討した。
<短期集中連載>【CLOMAアクションプラン キーアクション2(WG2)】マテリアルリサイクル率の向上
内貴 研二(サントリーホールディングス株式会社 コーポレートサステナビリティ推進本部 専任部長/田中 清(味の素株式会社 理事 サステナビリティ推進部長)
▼概要文表示2020年8月号
目指す方向 リサイクル率を向上させ資源循環を推進する
 
〇PET
 -到達したい目標
  ・ 2030 年までに回収率100%、リサイクル最大化(有効利用率100%)を目指す
  ・ 水平循環の実現に向けた質の高いリサイクルを志向する
 -活動の概要
  ・ 事業系:有効な回収策の立案と実装
  ・ 自治体:PETの取り扱い実態の調査
  ・ 日本の先進的な設計基準をアジアを始めグローバルに展開
 
〇その他プラ
 -到達したい目標
  ・ 2030 年までにリサイクル率60%を目指す
  ・ 単純焼却ゼロ・埋立ゼロを図る
 -活動の概要
  ・ リサイクル品の高付加価値化
  ・ リサイクル品利用促進の仕組みづくり
  ・ マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの活用分担
<特集1>【インタビュー】 CLOMA会長 澤田道隆氏にきく 海洋プラスチック問題解決へのチャレンジとESG経営
本誌編集部
▼概要文表示2020年7月号
 昨年設立された「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」(Japan Clean Ocean Material Alliance、CLOMA)は、地球規模の課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて業種を超えた幅広い活動をしている。プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発、情報共有などを企業が連携して推進するためのプラットフォームとして、CLOMAが産業界で現在大きく注目されている。
 このたびのCLOMAアクションプラン策定に際し本誌では、ワーキンググループごとの行動プランを3 回にわたって掲載する。連載にあたり、CLOMA会長(花王社長)澤田道隆氏から、CLOMAの方向性についてお話をいただいた。さらに、ESG経営で日本をリードしてきた花王社長としての視座から、日本企業のESG経営への取り組みについても語っていただいた。
<特集1>【CLOMAアクションプラン キーアクション】CLOMAアクションプランの目指すところ
柳田 康一(CLOMA事務局 技術統括)
▼概要文表示2020年7月号
 地球規模で広がる海洋プラスチック問題の解決には、一企業や特定の業界だけでなく、国を挙げてあるいは世界全体の参画が求められている。素材産業を含む各種製造業、小売業、リサイクル業など335を超える企業や団体が参画する「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」(CLOMA)では、サプライチェーン全体の技術や知恵を活かし、消費者を含む官民の連携でソリューションを生み出し、世界へ発信することを目指している。本稿では、注目されるCLOMA設立の背景やユニークな活動内容などを具体的に報告する。
<特集1>【CLOMAアクションプラン キーアクション1(WG1)】プラスチック使用量削減に向けた課題と取り組み
岡野 知道(ライオン株式会社 執行役員 生産技術研究本部長)
▼概要文表示2020年7月号
 日本は高度成長期以降、「大量生産・大量消費・大量廃棄」により発展し、その経済活動により生み出された廃棄物を埋め立てる最終処分場が足りなくなる事態が生じた。その中でも多くを占めるプラスチック包装については、1995年には「容器包装リサイクル法」が施行され使用量を削減する企業努力がなされてきたが、昨今の海洋プラスチック問題への対応など新たな課題が顕在化してきた。現在CLOMAのWG1では新たな視点でプラスチックの使用量削減について検討を行っている。今回検討中の内容についてご紹介する。
<特集>革新的環境イノベーション戦略
経済産業省 エネルギー・環境イノベーション戦略室
▼概要文表示2020年5月号
 政府は2020年1月21日、温室効果ガス(GHG)排出量の抜本的な削減に向けた「革新的環境イノベーション戦略」を新たに策定した。本戦略は、2050年までに世界全体のカーボンニュートラルを目指すのみならず、産業革命以降、大気中に排出され続けたストックベースのCO2をも削減する「ビヨンド・ゼロ」を実現するために必要な技術確立を目指しており、野心的なものである。
 気候変動問題という地球規模の社会課題をイノベーションの創出により克服するため、産業界、金融界、アカデミアが一丸となって取り組むべき具体的な課題が示されており、今後我が国のエネルギー・環境関連政策の重要な指針となると期待される。
<特集>産総研ゼロエミッション国際共同研究センターの取組
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ゼロエミッション国際共同研究センター
▼概要文表示2020年5月号
 産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター(GZR:Global Zero Emission Research Center)が設立され、研究センター長はノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士が就任した。本研究センターは、欧米等の研究機関との国際共同研究を通して、最先端の研究開発を担う国内外の叡智を結集し、ゼロエミッション社会を実現する革新的環境イノベーションの創出を目指す。ここでは本研究センターが取り組む重要課題のうち、太陽電池、人工光合成技術、水素利用技術、ならびに二酸化炭素有効利用技術のLCA 評価について概説する。
<特集>気候変動がもたらす経営管理の変革
後藤 茂之(監査法人トーマツ リスク管理戦略センターディレクター)
▼概要文表示2020年5月号
 企業にとって、脱炭素社会への移行リスク、物理的リスク、賠償責任リスク、これらの結果生じる評判リスクはすべて統合的リスク管理(Enterprise Risk Management:ERM)の対象となる。ERMは戦略・リスク両面をカバーするため、温暖化への緩和策や適応策に深く関係すべきである。しかし、気候変動が自然資本にもたらすリスクはこれまで市場メカニズムの外に置かれていたため、財務情報に基づくリスク、リターン、資本の管理を中心とするERM体系の中に完全に組み込まれていなかった。今後、気候変動は経営管理の基本的枠組みを変革することになるものと考えられる。本稿では、変革の内容とその変革にどのように対応すべきかを整理する。
<特集>浅海域で貯留されるブルーカーボンのポテンシャル
桑江朝比呂(国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ長)
▼概要文表示2020年5月号
 海洋生物によって大気中のCO2が取り込まれ、海洋生態系内に貯留された炭素のことを、2009年に国連環境計画(UNEP)は「ブルーカーボン」と名付けた。全球の海底泥には、毎年1.9~2.4億tのブルーカーボンが新たに貯留され、長期間(数千年程度)保存される。浅海域には年間貯留量の約73~79%ブルーカーボンが貯留される。本稿では、浅海域にブルーカーボンが貯留されるメカニズムや貯留速度、他の様々な気候変動緩和技術と比較した場合のブルーカーボン活用技術の長所短所、そしてブルーカーボンを活用した取り組みに関する国内外の最新動向について紹介する。
<総説>「地球温暖化観測所」設置の提案
杉山 大志(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)/近藤 純正(東北大学 名誉教授)
▼概要文表示2020年4月号
 地球温暖化の速度は、過去100年で0.7℃程度であった。これまで地上の観測所においてこの測定が行われてきたが、都市化や周辺環境の変化によるノイズが大きく、精確な地球温暖化の計測となっていなかった。そこで、鉄塔の上において温度を計測する「地球温
暖化観測所」の設置を提案する。鉄塔の候補としては、専用の鉄塔建設が最も望ましいが、費用低減のためには、既存の気象観測所の測風塔、電力送電用の鉄塔、携帯電話基地局の鉄塔等の流用も可能であろう。
<特集1>民間企業における気候変動適応
髙橋 一彰(環境省 地球環境局 総務課 気候変動適応室長)
▼概要文表示2020年3月号
 近年、気象災害の激甚化や熱波の発生、農作物の不作など気候変動に起因する影響が顕在化しており、既に事業活動のあらゆる場面で影響を及ぼし、企業の持続可能性を左右する重大な課題となっていることから、気候変動影響を将来にわたり回避・軽減する「適応」の取組が注目されつつある。自らの事業活動の特性をしっかり踏まえた上で気候変動適応に戦略的に取り組むことは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)における気候リスク開示にも通ずる取組であり、顧客や投資家等からの信頼を高め、新たな事業機会を創出するなど、民間企業の競争力を高めることにつながる。
<特集1>気候変動適応と国立環境研究所の取組み
行木 美弥(国立研究開発法人 国立環境研究所 気候変動適応センター 副センター長/田中弘靖(国立研究開発法人 国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動適応推進室 高度技能専門員)
▼概要文表示2020年3月号
 このところ気候変動によると思われる様々な影響を身近に感じることが増えている。このような状況下、現在と将来の気候の変化とその影響を知り、対応できるように備える「適応」は喫緊の課題といえる。国立環境研究所は、2018 年に制定された気候変動適応法により、気候変動の影響と適応に関する情報の提供や、地方公共団体などの適応推進への技術的支援を行うこと等を新たな機能として担うことになった。本稿では、特に地方公共団体と事業者による取組みに関する活動に力点をおきつつ、国立環境研究所の気候変動適応に関する取組みを概観する。
<特集1>気候変動適応とISO 14001――いまISO 14001はどのような価値を提供できるか
竹内 秀年(株式会社 日本環境認証機構(JACO)審査本部 参事)
▼概要文表示2020年3月号
 ここ数年、記録的大雨や大型台風による災害が顕著である。特に2019年の台風15号、19号による風水害は、大規模なインフラ被害、河川氾濫等により、多くの人にとって気候変動に対する具体的な危機感が実感された出来事だったのではないか。
 本稿は、この機会に、2015 年に改訂されたISO 14001(以下ISO 14001:2015)、そして2018 年に法制化された気候変動適応法について、大手電機メーカーの環境担当からISO認証機関に転身した筆者の経験を踏まえつつ、事業者としていかに「気候変動への適応」に取組むべきかを考察するものである。
<巻頭レポート>日本企業の温暖化対策ランキングからみえてきたこと
池原 庸介(WWFジャパン気候変動・エネルギーグループプロジェクトリーダー)
▼概要文表示2020年1月号
 WWFは、独自プロジェクト「企業の温暖化対策ランキング」の下で、製造業を中心に企業各社の取り組みが真に実効性のあるものであるかを業種横断的に評価してきた。その結果、素材産業の多くやエネルギー関連業種において、情報開示の面ではある程度取り組みレベルが高まっている反面、戦略や目標の策定の面では、全般的に取り組みが遅れている実態が浮き彫りとなった。TCFD提言に沿って、将来にわたる事業活動の持続可能性を示す上でも、まずは短期志向から早急に脱却し、2030年や2050年、2100年といった長期の視点に立つことが重要である。
<特集>温暖化をめぐる内外情勢と我が国の課題
有馬 純(東京大学公共政策大学院 教授)
▼概要文表示2019年10月号
 COP24 では、全員参加型のパリ協定の精神を踏まえた詳細ルールが合意された。市場メカニズムのルールはCOP25 に持ち越されたが、パリ協定の実施体制が整ったといえる。他方、欧州では温暖化防止を理由に2050 年カーボンニュートラルや石炭の排除論が勢いを増す一方、アジアの途上国では石炭の役割が依然大きく、パリ協定の1.5 ~ 2℃目標と現実との間のギャップが拡大している。両者のギャップを埋められるのは革新的技術開発であり、日本は水素、カーボンリサイクル等の分野でリーダーシップを発揮すべきだ。
<特集>温暖化対策とエネルギー展望――国内外の動向を踏まえた企業の対応の方向性
秋元 圭吾(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ グループリーダー)
▼概要文表示2019年10月号
 パリ協定以降、世界のCO2排出削減への取り組みや課題認識は、政府、企業、市民レベルともに高まってきている。一方で、米国トランプ政権のように積極的な対応をとらない国も存在し、まだら模様の様相である。世界CO2 排出量は依然として上昇し続けており、削減の取り組みは成功してはいない。このような中、製品・サービスの世界展開を含めたライフサイクルでの排出削減への取り組みが重要である。さらにはイノベーションが不可欠である。エネルギー供給サイドに加え、情報技術等の進展により、需要サイドの様々な技術そして社会イノベーションを誘発していくことが求められる。企業も長期的な脱炭素化の方向性を認識しつつ、ハードとソフトの融合による新たな付加価値を生み出しながら、CO2排出削減に貢献していく企業戦略が求められる。
<特集>気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の活動
長谷 代子(環境省 地球環境局 総務課 脱炭素化イノベーション研究調査室 室長補佐)
▼概要文表示2019年10月号
 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)は、世界中から選定された科学者が最新の気候変動に関する科学的知見を集約・評価した報告書を公表する国際組織である。その報告書は、政策中立でなければならないことを原則としつつ、世界中から選出された科学者と各国政府の共同作業によって作成・公表されていく。特に2007年に公表された第4次評価報告書以降現在に至るまで、気温上昇、温室効果ガスの排出量、気候変動による(自然、社会、経済等の)影響の現状・将来予測、および必要となる適応・緩和の選択肢について、国内外の政策に不可欠な科学的基礎を提供している。
<総説>昨今の中国環境規制・取締り強化とその対処法
大野木 昇司(日中環境協力支援センター有限会社 取締役社長)/内海 真一(日中環境協力支援センター有限会社 社長補佐)
▼概要文表示2019年8月号
 ここ数年、中国の環境規制の大幅な強化は「環境規制革命」とも表現できる。環境政策は共産党中央委の方針へと格上げされ、その取締りの厳格化は製造業各社にとって大きな経営リスクとなっている。これは習近平政権の看板「生態文明建設」であるため、今後も長く続くと見込まれる。本稿では昨今の中国の環境政策( 特に環境アセス)や環境取締り( 特に中央環境査察)の現状、それを受けて日系製造業各社が講じるべき対応策(取締り時の対応や予防的対応)についてまとめた。
<レポート>G20 エネルギー・環境関係閣僚会合
本誌編集部
▼概要文表示2019年7月号
 持続可能な成長へのエネルギー転換と地球環境に関するG20のエネルギー・環境関係閣僚会合が、軽井沢プリンスホテルにて開催され、2019 年6月15、16日の予定を終えて閉幕した。この閣僚会合は6 月下旬に大阪で行うG20サミットに伴って実施されたもので、新興国と途上国を含むG20メンバー国をすべて合わせると、世界のGDPの約86%(2017)、GHG排出量の約77%(2015)、エネルギー消費量の約78%(2017)、人口の約63%(2017)を占めるという。
 日米欧と新興国の20 か国・地域による閣僚会合は海洋プラスチックごみ削減に向けた国際枠組みの構築に合意した。本レポートでは、特に海洋プラスチックごみに関する新しい枠組みについて簡単に報告し、関係閣僚会合のサイドイベントである「G20イノベーション展」についてもレポートする。
<総説>脱炭素社会に向けた世界の動向と非国家アクターによるイニシアティブ
池原 庸介(WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ プロジェクトリーダー)
▼概要文表示2019年7月号
 パリ協定の下、企業や機関投資家、都市、自治体、NGOなどの「非国家アクター」による脱炭素社会の実現に向けた取組みが加速している。世界の主要都市が、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするコミットメントを表明し、企業がパリ協定と整合した排出削減目標を策定する「Science Based Targets」が世界のスタンダードになりつつある。こうした取組みを強力に後押ししているのがESGの潮流であり、長期的な視点を持ち実効性の高い気候変動対策を進め、適切な情報開示を行っている企業が、投資家からも高い評価を得るようになっている。
<総説>気候変動対策のパラダイム転換とビジネス
高村 ゆかり(東京大学 未来ビジョン研究センター 教授)
▼概要文表示2019年4月号
 2015年12月12日、フランス・パリで開催された気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、地球温暖化(気候変動)問題に対処するために合意された、京都議定書採択以来18 年ぶりの法的拘束力ある国際条約である。パリ協定は、多数国間の条約としては実に異例の速さで、採択から1 年足らずの2016年11月4日発効した。2019年3月20日時点で、日本を含め世界の温室効果ガス排出量の89%超に相当する184か国とEUが批准している。トランプ政権への交代が決まってからも80か国以上の国が締結した。米国トランプ政権の立場に関わりなく、パリ協定を気候変動対策の要とするという諸国の強い意志とパリ協定への期待が表れている。
 2018年12月に開催されたCOP24では、海外で排出を削減した量を排出枠(クレジット)として獲得することができる市場メカニズムに関する規則を除き、パリ協定の実施規則が合意された。パリ協定を本格的に運用していくための制度が整備されたことになる。その傍ら、気候変動対策をめぐっては、非国家主体、とりわけビジネス、金融・投資家にかつてない大きな変化、ダイナミズムが生まれている。
 本稿では、最初にパリ協定の合意について簡単に振り返ったあと、気候変動対策をめぐってこの間起きている大きな変化を紹介したい。
<特集2>環境省の脱炭素経営の促進について
岸 雅明(環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 課長補佐/曽根 拓人(環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 環境専門調査員)
▼概要文表示2019年2月号
 2016年11月にパリ協定が発効して以来、世界は急速に脱炭素化に向かっている。脱炭素化に向けた市場の成長、ESG投資の拡大の動き、サプライチェーン全体での排出量削減を目指す取組みが広がりつつあり、企業も対応が求められている。環境省では、脱炭素経営に取り組むことが企業価値を高めるという考えに立ち、日本企業が脱炭素化の潮流に着実に対応し、その企業価値を高めていくために、脱炭素化へと舵を切る企業を支援していく。
<特集2>立川市における中小企業向けの省エネルギー対策の支援について
桜井 優(立川市 環境下水道部 環境対策課 温暖化対策係)
▼概要文表示2019年2月号
 立川市は温暖化防止に向けた省エネルギー、温室効果ガス排出量削減を目的として、中小企業向けに省エネルギー設備改修補助事業制度を実施している。これまでの中小企業の省エネルギー改修における取組の成果より、省エネルギー対策の効果について紹介する。
<特集1>中国の資源ごみ輸入禁止の波紋――原料断たれ業者悲鳴、東南アジアでは密輸横行
浅井 正智(東京新聞 上海支局長)
▼概要文表示2018年11月号
 中国で資源ごみ処理の大改革が始まった。環境対策を理由に昨年末から資源ごみの輸入を大幅に制限して11 か月。中国政府の急激な方針転換は、資源ごみ輸入で成り立ってきた中国のリサイクル業界に混乱をもたらし、廃プラスチックのリサイクル業者の倒産や事業縮小が相次いだ。影響は中国国内にとどまらず、さまようごみの新たな受け皿となった東南アジアに火種を持ち込んだ。そんな状況を現地からレポートする。
<特集1>中国生態環境部の発足と環境規制の動向
高木 正勝(日本テピア株式会社 テピア総合研究所 所長)
▼概要文表示2018年11月号
 昨年10 月の中国共産党大会で習近平国家主席は「生態文明建設」の理念のもと、環境配慮型の経済体制を確立する方針を述べ、汚染物質を排出する事業者に対して厳罰で臨む考えを改めて強調した。2015 年1 月の「中国環境保護法」の改正以来、地方政府の環境保護部門の権限が強化され、環境規制違反に対する罰金や生産停止等の措置を含む厳しい取締り活動が展開されている。今年3 月には中国国務院の5 年ぶりの大規模な機構改革が行われ、これまでの環境保護部が廃止されて新たに生態環境部が発足した。本稿では、生態環境部発足の背景と今後の中国の環
境規制の動向について考察する。
<特集1>改正中国RoHSの動きと各国RoHS規制の広がり
佐竹 一基(OFFICE KS(環境と技術)代表/一般社団法人 産業環境管理協会 技術顧問)
▼概要文表示2018年11月号
 欧州に端を発した電気・電子機器に対する特定の化学物質の使用を制限する規制は、通称「○○RoHS」( ○○には国や地域の名前が入る)と呼ばれ、世界に広がりをみせている。中国においても通称改正中国RoHS( 電器電子製品有害物質使用制限管理弁法)が2016 年から施行されている。改正中国RoHSは2 段階規制となっており、第1 段階目は表示規制のみであったが、来年にはいよいよ第2 段階目である特定の機器に対する有害物質の実際の制限が開始される見込みである。中国RoHSのこれまでの流れを説明するとともに、製品中の化学物質管理の基本を紹介する。
<巻頭レポート>世界の屋根ヒマラヤ氷河は消滅するか――ネパール国際山岳博物館でみた環境問題
本誌編集部
▼概要文表示2018年10月号
 謎めいた展示もあるネパール国際山岳博物館で環境問題に関する情報を多数入手した。山岳博物館のユニークな展示テーマの中から地球環境に関するものを厳選して解説する。かつてIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「2035年までにヒマラヤ氷河が消失する可能性は非常に高い」とし、「氷河が消滅すると氷河起源の水を利用するアジア14 億人にとって水資源不足が脅威」といった言説も世界で報道された。その科学的根拠は必ずしも明確でない。
 氷河後退は継続しているが、融氷水の影響は流域全体の3%程度しかないのが科学的な事実のようだ。世界の屋根ヒマラヤでどのような異変が生じているのかレポートする。
<総説>地力型地域循環経済社会の構築とSDGs
壁谷 武久(一般社団法人 産業環境管理協会 地域・産業支援部門 副部門長)
▼概要文表示2018年10月号
 2017 年4 月に当協会では地域・産業支援センタ-を設置し、「地力型地域経済社会づくり」を目指して、自治体、地域産業等の支援事業を開始しています。なかでもSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の目標達成に向けた取組みは、社会課題解決につながる新たなビジネスチャンスととらえ、地域企業とともに、その具体的な方策等について探っていきます。本稿では、「地力型地域循環経済社会」についての考え方と持続可能な発展(開発)を巡る系譜を整理するとともに、地域でのSDGs目標達成行動を通じたSDG 市場創出のアプローチについて提案しています。
<総説>グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献量の見える化
佐藤 乃利子(経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 係長)
▼概要文表示2018年6月号
 2016 年11 月、京都議定書に代わる新たな枠組みとして「パリ協定」が発効し、世界共通の目標として2℃目標が掲げられた。今後、温室効果ガスを大幅に削減していくためには、省エネ対策等の自らの事業活動における排出削減だけでなく、日本企業が有する優れた低炭素技術を生かし、温室効果ガス削減に資する環境性能の優れた製品・サービス等を国内外に展開し、世界全体の大幅削減の実現に貢献していくことが重要である。本稿では、バリューチェーンを通じた産業界の削減貢献量の見える化に関する取組について述べる。
<巻頭特集>日刊工業新聞編集委員 松木 喬氏にきく 「脱炭素」から「地方創生」まで──2018年度の環境ビジネスと環境経営
本誌編集部
▼概要文表示2018年3月号

 昨年末に開催されたCOP23 では「脱石炭」を目指すイニシアチブが拍手喝采で迎えられる一方、日本は「石炭火力発電の推進国」と強調され、世界に存在感を示すことができなかった。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの利用も立ち遅れつつあるが、反面、いち早く「CO2ゼロ」を宣言する企業や、風力発電を地方創生の起爆剤とする自治体も出てきている。本記事では、そんな環境の現場を丹念に取材、報道する日刊工業新聞の松木喬編集委員に、企業における環境問題の現状と2018 年度に向けた環境経営のあり方について語っていただいた。

<特集1>大洋を漂流するマイクロプラスチックの現状と今後
磯辺 篤彦(九州大学 応用力学研究所 教授)
▼概要文表示2017年9月号

 日本近海の東アジア海域は、浮遊マイクロプラスチックのホット・スポットであることがわかった。海面近くの海水1m3当たりに浮遊する個数(浮遊密度)は3. 7個を数え、この値は他海域と比べて一桁高い。南極海における浮遊密度は、東アジア海域に比べて二桁は少ないものである。それでも生活圏から最も遠い南極海ですらマイクロプラスチックの浮遊が確認されたことは、すでに世界の中でプラスチック片が浮遊しない海など存在しないことをうかがわせる。

<特集1>マイクロプラスチック汚染の現状と国際動向・対策
高田 秀重(東京農工大学 教授)
▼概要文表示2017年9月号

 プラスチックによる海洋汚染は21世紀に入り、マイクロプラスチック問題として新局面を迎えた。汚染は海洋表層水だけでなく、海底堆積物、海洋生態系全体に広がっている。プラスチックに含まれる有害化学物質はプラスチックを摂食した生物に移行し、リモートな海域ではその寄与が大きい可能性が示唆された。国際的には予防原則的な対応がとられ、国際条約の可能性を探る会議も行われている。海洋プラスチック汚染の解決策は、持続的で循環型の社会形成の中で、温暖化、富栄養化などの環境問題全体を解決する中に位置づけて、物質循環の視点から対応を考える必要がある。

<巻頭特集>とけてゆくスイス 氷河×光×地球の未来――環境ドキュメンタリー制作の現場から
濱中 貴満(北海道テレビ放送 プロデューサー)
▼概要文表示2017年7月号

 北海道テレビでは、地球温暖化進行のバロメータといわれる「氷河」の減少と温暖化を食い止める科学技術にスポットを当てたドキュメンタリーを制作した。
 アルゼンチン・パタゴニア、スイス・アルプス、グリーンランドで減少する氷河や氷河研究者たちの研究に密着し氷河の現状を撮影し、CO2 削減のソリューションとしての水素エネルギーの可能性と人工光合成の最新研究を紹介、地球温暖化という危機的状況を打破する科学者たちの挑戦と世界をリードする日本の科学技術にスポットを当てた当番組は、放映時から評判を呼び、日本で唯一の環境をテーマとした「グリーンイメージ国際環境映像祭」でグリーンイメージ賞を受賞した。その内容を紹介する。

<特集2>長期地球温暖化対策プラットホームについて
経済産業省 産業技術環境局 環境政策課
▼概要文表示2017年6月号

 2016 年11月に発効したパリ協定において、各国は「長期低排出発展戦略」を作成・提出することが求められている。経済産業省では同年7月より「長期地球温暖化対策プラットフォーム」を開催し、2030 年以降の長期の温室効果ガス削減に向けて論点・ファクトを整理してきたところ、本年4月に報告書をとりまとめた。報告書では、①既存の枠組にとらわれない発想の転換(リフレーム)により、不確実性と共存する「強さ」と「しなやかさ」を備えた戦略を策定すべきであり、②「国際貢献」、「グローバル・バリューチェーン」、「イノベーション」にまで視野を広げる「地球温暖化対策3本の矢」により、すべての主体が自らの排出を上回る削減(カーボンニュートラル)へ貢献する「地球儀を俯瞰した地球温暖化対策」を戦略の核とするべきとの提唱を行った。

<特集2>長期低炭素ビジョンのあらまし
環境省 地球環境局総務課 低炭素社会推進室
▼概要文表示2017年6月号

 平成29年3月、中央環境審議会地球環境部会において「長期低炭素ビジョン」が取りまとめられた。気候変動対策をきっかけとした経済・社会的諸課題の「同時解決」をコンセプトとし、2050年80%削減を実現した社会の絵姿を描き、その実現に向け既存技術、ノウハウ、知見の最大限の活用とともに、経済・社会システム、技術、ライフスタイルのイノベーションを創出することの重要性を記している。環境省は、2050年80%という温室効果ガスの長期大幅削減を目指し、長期低炭素ビジョンを気候変動対策の基本的な方針として取組を進めていく。
 

<特集>トランプ大統領の下で米国の温暖化対策はどうなるのか
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 教授)
▼概要文表示2017年5月号

 本年1月に発足したトランプ政権は、国内エネルギー生産・インフラ整備を前面に打ち出す一方、
クリーンパワープランの廃止、温暖化関連予算の廃止など、温暖化対策には極めて冷淡な姿勢を
示している。困難な交渉の結果、合意されたパリ協定についても選挙期間中、「キャンセルする」
と公約してきたが、政権発足後は旗幟鮮明にしていない。トランプ政権のエネルギー・温暖化対策
の方向性とその国際的影響について考察する。

<特集>トランプ新政権と温暖化対策
上野 貴弘(一般社団法人 電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員)
▼概要文表示2017年5月号

 トランプ大統領は、選挙戦中も、選挙後も、就任後も、オバマ政権の温暖化対策をほぼ全否定してきた。そして、エネルギー独立を目指し、国産化石燃料の増産に傾斜しようとしている。しかし、前政権からの政策転換を図ろうにも、トランプ政権が取りうる手段には制度上の制約があり、この時点で最終的な着地点を見通すのは困難である。
 ただ、どのようなパターンを辿るとしても、オバマ政権が進めた温暖化対策を緩めていくことには変わりはない。施策見直しでCO2 排出削減が遅れれば、オバマ政権が掲げた2025 年目標の達成は遠ざかることになる。

<特集>気候変動問題を巡る国際潮流とカーボンリスクマネジメント
本郷 尚(株式会社 三井物産戦略研究所 国際情報部 シニア研究フェロー)
▼概要文表示2017年5月号
 「2度目標」やすべての国が削減目標を持つことなどが盛り込まれてパリ協定は2016 年11月に発効要件が充足し、実施に向けて動き出した。気候変動問題の歴史的な転換点であり、経済面でも大きなゲームチェンジの始まりだ。他方、同じ11月には気候変動対策に対して否定的なトランプ大統領の当選が決まり、オバマ政権時代の対策を見直す大統領令も出した。2017年には中国の共産党大会やポピュリズムが台頭するEUで主要国の選挙など政治面の不確実性も高い。
 企業はどう対応したらよいのか。企業のリスクマネジメントはまず足元のCO2 排出量の把握から始まる。数値規制、炭素税、排出量取引など何らかの規制がかかれば、排出に伴うコストが発生する。将来の規制を想定し、それを数値化したものが企業にとっての炭素価格であり、企業内の分析目的に使うことからシャドープライスとも呼ばれる。シャドープライスで商材や企業経営へのインパクトを評価できる。
 また、規制に対応するために投資や技術開発が必要になる。それは商機だ。低炭素化に向えば間違いなく必要になる「約束された市場」だ。様々な技術やアプローチの中からチャンスを見極めるときにも炭素価格は活用できる。
 企業活動に影響を与える各国政策はまだら模様だ。各国の政策は「気候変動枠組条約」など国際枠組みに対応するものであり、国際枠組みを左右するのが「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」など気候変動の科学だ。変革の時代に備えるには国際的なCO2規制の議論と気候変動の科学の動きの「定点観測」が欠かせない。
<総説>「環境主義」は本当に正しいのか?──ゴア元副大統領とチェコ元大統領を例に考察
住友 進(翻訳家)
▼概要文表示2017年4月号

 自分の意見を主張することは悪いことではない。しかし、それが高じて自分とは異なる意見にどんな手段を使っても論駁するとなったら、争いになることは必至である。環境問題においてもそれは例外ではない。特にそれが政治と絡んでしまう場合には、もはや科学的事実や客観性が度外視されてしまう事態にもなりかねない。アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプの環境政策にも似たような状況が読み取れる。
 本稿では、チェコ共和国の大統領(当時)ヴァーツラフ・クラウスが2007 年に刊行した『「環境主義」は本当に正しいのか?』(日経BP出版センター、拙訳)を引用して環境主義者のアル・ゴアに対する批評と「環境主義」の意味を論じ、トランプ大統領の環境政策も取りあげる。

<総説>環境保護庁長官は人為起源の温暖化に疑義――アメリカの教科書からみる地球温暖化問題
本誌編集部
▼概要文表示2017年4月号

 高い海水温が続いたのが原因で宮古島周辺や石垣島近海のサンゴの大規模白化が確認され、美しいサンゴ礁が絶滅するのでは、といったニュースを最近目にする。一方で「東京湾にサンゴや熱帯魚」といったニュースはまだ大きな話題になっていない。これらが温暖化による影響なのかどうかは100%証明されていない。そこでアメリカの大学(カリフォルニア州立大学・ミネソタ州立大学)の環境科学テキストを引用して、温暖化に批判的な主張も含め、科学的な視点で温暖化問題をレビューする。

<コラム>トランプ次期大統領の温暖化対策への考え
本誌編集部
▼概要文表示2016年12月号
 アフリカのモロッコで開催された地球温暖化対策を議論する国際会議COP22では、アメリカの次期大統領に選ばれた不動
産王トランプ氏が異例の注目を浴びた。アメリカからの数千億円規模の資金拠出がなくなるとパリ協定の枠組み自体への影
響は非常に大きい。
 トランプ氏は温暖化対策に極めて否定的であり、「温暖化はでっちあげ」としてパリ協定からの脱退を示唆している。今回の大統領選の結果は想定外であり世界のマスコミも裏をかかれたことで大きく混乱した。トランプ勝利を導いたツイッター情報を含め、現段階における最新情報をレポートする。
<特集2>地域に期待される気候変動適応と取組状況、 次なる課題
白井 信雄(法政大学 教授(サステイナビリティ研究所専任研究員))
▼概要文表示2016年9月号
 2015年11月に「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定され、環境省等の支援もあって、地方公共団体における気候変動適応策の検討が活発化している。一方、地方自治体においては、①行政内での適応策の位置づけと基本方針の作成、②適応策の推進基盤の整備と地域推進、③追加的適応策の具体化、といった三つの段階での取組みが期待される。全国の32都道府県において適応策に関する何らかの検討が成されているものの、適応策の位置づけの確認や既存の施策の整理に留まっている場合が多い。適応策のファーストステージが始まった今、次のセカンドステージを視野にいれた取組みが期待される。
<特集2>埼玉県における適応策の推進について
石塚 智弘(埼玉県環境部 温暖化対策課長)
▼概要文表示2016年9月号
 地球温暖化の影響は、人々の生活に関わる様々な分野において密接に関わっている。本県でも2010年の記録的猛暑により白未熟粒の発生が多発するなど、その影響が現れている。このため、「緩和策」だけでなく、温暖化の影響に適切に対応する「適応策」にも積極的に取り組むことが必要であるとの認識から、地球温暖化対策実行計画(区域施策編)「ストップ温暖化・埼玉ナビゲーション2050」に「適応策」に関する記述を盛り込んでいる。また庁内に横断的な検討組織を設け、地球温暖化の影響に適時的確に適応していけるよう、全庁を挙げて取り組んでいる。
<特集2>長野県における気候変動適応の推進体制
浜田 崇(長野県環境保全研究所 自然環境部 温暖化対策班)
▼概要文表示2016年9月号
 気候変動による影響は地域によってその現れ方が異なるため、地方自治体における気候変動への適応の取組が重要である。長野県では、2012年に策定した「長野県環境エネルギー戦略」の中に気候変動適応策を位置づけ、気候変動の影響把握と予測を行う体制の構築と、気候変動に関する情報共有と適応策の検討の場を構築することとした。これら二つの体制により気候変動適応を推進していく予定である。
<特集2>気候変動適応策の推進に向けた三重県の取組
三重県環境生活部 地球温暖化対策課
▼概要文表示2016年9月号
 三重県では、適応策の推進に関する規定を三重県地球温暖化対策実行計画や三重県地球温暖化対策推進条例に位置づけており、具体的な取組を、平成24 年度から開始している。
 これまで、県内の温暖化の現状や将来予測について明らかにした冊子「三重県気候変動レポート2014」の作成や気候変動に関する講演会・セミナーの開催などを行ってきた。
 平成27年度には、県内における気候変動影響の現在の状況と将来の影響予測を明らかにするため、報告書「三重県の気候変動影響と適応のあり方について」を作成した。本稿では、現在に至るまでの取組の経過と報告書「三重県の気候変動影響と適応のあり方について」のポイントを紹介したい。
<特集2>滋賀県の気候変動適応策への取組
滋賀県庁 琵琶湖環境部 温暖化対策課
▼概要文表示2016年9月号
 世界や国でも「適応」という考え方が新たに重要となってきている中、地方においても気候変動の影響に関する評価やその適応策について検討していくことが求められている。
 そこで本県では、2015年度にこれまでの気候情報や気候の将来予測情報について整理を行い、気候変動の影響評価や適応策の検討を開始した。本稿では本県の気候変動適応策への取組について、これまでの経緯と併せて、本県として特徴的な適応策の例の紹介や今後の適応策の展開について述べる。
<特集2>福井県における水稲の気候変動適応策
小林 麻子(福井県農業試験場 ポストコシヒカリ開発部 主任研究員)
▼概要文表示2016年9月号
 本稿では、福井県における水稲の気候変動適応策について述べる。福井県では、1999年以降、登熟期の高温による玄米外観品質の低下が顕著となった。そのため、福井県農業試験場では、2000年より水稲の高温登熟耐性に関する遺伝学的な基礎研究を行い、高温登熟耐性を選抜するDNAマーカーの開発に成功した。2011 年から開始した「ポストこしひかり」品種の開発では、このDNAマーカーを用いて高温登熟耐性の選抜を行った。また、栽培的対応として2010年から、「コシヒカリ」の五月半ばの適期田植えを実施し、その効果は農産物検査における一等米比率の向上として現れている。
<総説>エネルギー・環境イノベーション戦略による気候変動問題へのアプローチ
小浦 克之(内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付企画官)
▼概要文表示2016年7月号

 平成28年4月19日、政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で、エネルギー・環境イノベーション戦略が決定された。第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で言及された「2℃目標」の実現には、現状の水準から温室効果ガスをさらに約300億t超追加的に削減することが必要であり、本戦略は、政府として特に重点的に開発すべき革新技術分野を特定し研究開発を強化することで、既に開発・実証が進んでいる技術の適用と合わせて、世界全体で数10~100億t超の削減を期待するものである。本稿では本戦略策定の経緯と今後の展望について解説する。

<総説>気候変動適応策に関する国際動向と日本の取組について
竹本 明生(環境省 地球環境局 総務課 気候変動適応室長)
▼概要文表示2016年6月号

 2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議で採択されたパリ協定に基づき、世界各国は気候変動緩和策と適応策の両者を実施していくこととなった。政府による適応に関する戦略や計画は、日本を含めすでに多くの国で策定している。我が国では、環境基本計画や中央環境審議会が行った気候変動影響評価等の取組みなどを経て、2015 年11月に政府の適応計画が閣議決定され、現在、関係府省庁において適応への取組が進められている。適応計画策定が先行している英国、フランス、アメリカなどでは、ウェブサイトを活用した適応に係る情報の地方自治体や事業者などへの提供や地方自治体に対する支援が進められている。

<総説>ISO 14001:2015の改訂内容について(後編)
吉田 敬史(合同会社グリーンフューチャーズ 社長)
▼概要文表示2016年6月号

 昨年9 月15 日にISO 14001 の2015 年版が発行された。改訂のポイントとして「組織トップのリーダーシップを求める」、「環境改善と事業戦略の一体化」、「事務局任せでは許されない」、「トップマネジメントの説明責任」の四つが挙げられる。本稿は2015 年改訂の経緯、変更点、要求事項等改訂内容の全般について、ISO/TC207/SC1(ISO14001)日本代表委員である吉田敬史氏にご講演いただいた内容をまとめたものである。
(一般社団法人 産業環境管理協会発行「CEAR」誌掲載「CEAR 講演会講演録」より内容を一部変更の上、転載)

<シリーズ>【エネルギーからみた地球温暖化問題/第2回】  長期削減目標達成には何が必要か──2℃目標と我が国の2050年80%削減
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/ 主席研究員)
▼概要文表示2016年5月号
「エネルギー」と「環境問題」の現場を歩き、地球温暖化を論考するシリーズ(第2回)
<特集1>気候変動に対する適応策の展開
三村 信男 茨城大学 学長
▼概要文表示2016年4月号
 昨年、世界の注目の中で開かれたCOP21は「パリ協定」を採択した。その目的である気候変動に対するリスク管理は、緩和策と適応策を二つの柱としている。気候変動の影響が顕在化し、国際的にも適応策への関心が高まっている中、昨年11月に我が国で初めての「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定された。気候変動への適応策には、不確実性下の意思決定や影響の地域性を反映して地域が主体となるといった他の政策にない特性がある。こうした背景と特性を踏まえて、社会のレジリエンス(強靱性)の構築を目指す適応策の展望を述べる。
<特集1>国土交通省気候変動適応計画について
小川 智 国土交通省 総合政策局 環境政策課 交通環境・エネルギー対策 企画官
▼概要文表示2016年4月号
 地球温暖化に伴い、短時間強雨や大雨の発生頻度の増加、海面水位の上昇、台風の激化、干ばつ・熱波の増加などが懸念されており、これらに対処する適応策の検討が喫緊の課題となっている。国土交通省は、国土の保全、まちづくり、交通政策、住宅・建築物、気象など多様な分野を所管し、安心・安全な国土・地域づくりを担うなど、適応策に果たす役割が大きいことから、平成27年11月に、自然災害、水資源・水環境、国民生活・都市生活、産業・経済活動など様々な分野の適応策を取りまとめた国土交通省気候変動適応計画を策定・公表した。
<特集1>農林水産省の気候変動適応計画について
酒井 一有 農林水産省 大臣官房政策課 環境政策室 環境企画官
▼概要文表示2016年4月号
 地球温暖化は確実に進んでおり、今世紀末までの約100年間で世界の気温は最大4. 8℃、海面水位は82cm上昇するとの予測がある。既に我が国でも米や果実の品質低下、害虫の北上、豪雨の発生頻度の増加傾向などがみられており、今後もこのような被害や極端な気象現象が増加すると予測されている。
 このため農林水産省では、水稲において高温耐性品種や高温不稔耐性を持つ育種素材の開発、果樹において優良着色品種等への転換など、特に気候変動の影響が大きいとされる品目への重点的な対応、山地災害発生の危険が高い地区のより的確な把握等の災害対策の推進、将来影響の知見が少ない人工林や海洋生態系等に関する予測研究の推進などを盛り込んだ総合的な気候変動適応計画を策定した。
 本稿では、農林水産省の気候変動適応計画の概要について紹介する。
<総説>苫小牧CCS 実証試験
澤田 嘉弘 日本CCS調査株式会社 常務取締役 プラント本部長田中 豊  日本CCS調査株式会社 技術企画部長
▼概要文表示2016年3月号
 地球温暖化対策の切り札として期待されるCCSの実証試験が2016年4月から北海道苫小牧市にて開始される予定である。本実証試験は、CCSの実用化段階に近い、二酸化炭素(CO2)を年間10万t以上の規模で分離・回収、輸送、圧入・貯留しCCSのトータルシステムを実証するものであり、CO2を陸上から掘削された坑井により、海底下の深部塩水層に貯留する計画である。実証試験のための坑井や地上設備の建設は終了し、現在試運転中である。本実証試験の概要、目的、課題について述べる。
<巻頭特集>COP21 パリ協定とその評価
有馬 純 東京大学公共政策大学院教授
▼概要文表示2016年2月号
 先進国のみが削減義務を負う京都議定書に代わり、190超の国が温室効果ガス排出削減、抑制に取り組む枠組みが出来上がったことが国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の歴史的意義である。パリ協定が合意され、各国が約束草案の実現に乗り出す以上、2013年比で2030年26%削減という「目標達成のためには原発再稼働が不可欠である」という疑いのない事実を政府は辛抱強く国民に説明し理解を得る努力をしなければならない。
 本稿では温暖化国際交渉の流れの中でのCOP21の位置づけを最初に説明し、COP21に参加した立場から、米中インドなど先進国と途上国による交渉過程の解説、1. 5℃という非現実的な努力目標などパリ協定の主要ポイントについても解説する。そして最後にパリ協定の評価及び日本の
対応についても論じる。
<巻頭特集>COP21「パリ協定」合意の意味するもの
手塚 宏之 経団連環境安全委員会国際環境戦略WG 座長/JFEスチール株式会社技術企画部理事地球環境グループリーダー
▼概要文表示2016年2月号
 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で合意された「パリ協定」は、1997 年以来長く続いた京都議定書時代の終焉を意味している。途上国を含む世界各国がボトムアップで自主的に目標を掲げ、進捗を透明なプロセスの下に相互確認する方式は、経団連の「環境自主計画」と相似形であり、既に実績を積んでいる日本が運用面で貢献する余地は大きい。途上国が経済成長を続ける中、世界全体で「パリ協定」の長期目標達成を達成するためには、対策が限られてきている日本の国内対策の強化に拘泥せず、日本の持つ優れた省エネ、環境技術の国際普及促進と、革新的な技術開発の推進を図るべきである。
<新春対談>東京大学 安井 至 名誉教授にきく 地球温暖化問題の最終解 環境イノベーションの創出と日本の選択
東京大学 名誉教授 安井 至 × 産業環境管理協会 会長 冨澤 龍一
▼概要文表示2016年1月号
 地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑える長期目標がCOP21で合意され、排出実績などを点検してすべての国が5年ごとに削減目標を国連に提出する義務が採択された。地球温暖化対策は火力発電をはじめ日本の産業界に与える影響が予想以上に大きい。本記事では、環境分野で幅広い知見を持つ安井至先生に当協会・冨澤龍一会長とご対談いただき、「2度目標」などの捉え方、産業界に求められる電力貯蔵技術や材料開発など環境イノベーション、再生可能エネルギーと石炭火力発電、さらに低炭素社会における資源循環など具体的かつ興味深いテーマについて語っていただいた。
<巻頭特集>茨城大学学長 三村信男氏にきく「地球温暖化の最新知見と日本の「適応策」── IPCC 第5次評価報告書からCOP21「パリ合意」まで」
聞き手:黒岩 進/取材・文・写真:本誌編集部
▼概要文表示2015年10月号
 12月のCOP21「パリ合意」に向けて、国際社会は2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みを模索している。2014年には各国の政策決定者に向けたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書がとりまとめられ、最新の知見と国際的な共通認識のもとに議論が進められている。本記事では、長年にわたりIPCCワーキンググループのメンバーとして活躍されており、気候変動問題における「適応策」分野の第一人者である茨城大学学長・三村信男先生にインタビューし、日本を取り巻く現状と今後について語っていただいた。
<シリーズ>【産業界が取り組む地球温暖化問題7】BAT技術の普及、技術フルリストとカスタマイズド・リスト
岡崎 照夫 日鉄住金総研株式会社 参与 環境エネルギー部長
▼概要文表示2015年10月号
 鉄鋼セクタ―は協力的セクトラル・アプローチのもと、世界の鉄鋼業が共有しうる136 の省エネ・環境技術のリストを作成し、この中からインド・ASEANに向けてのカスタマイズド・リストを選定した。気候変動枠組条約では先進国から途上国への技術移転や資金的な支援が条約実施への重要な手段として位置づけられており、二国間クレジット制度( JCM)はその取り組みの一つである。JCMをめぐる4主体(両国の政府と両国の民間)の役割とインセンティブ、これからの課題について解説する。
<コラム>「史上、最も大気に悪影響を与えた男」トーマス・ミジリー
本誌編集部
▼概要文表示2015年6月号
 アメリカの科学者トーマス・ミジリー・ジュニア(1889〜1944)は、「有鉛ガソリン」と「フロン」という二つの化学物質の発明者である。どちらも当時の人々の生活環境を飛躍的に改善した「夢の化学物質」だったが、皮肉にもどちらも20世紀の「環境破壊の元凶」と評価されることとなった。二つの発明とミジリーの横顔を紹介する。
<特集>フロン法改正の意義と課題
西薗大実 群馬大学 教育学部 教授
▼概要文表示2015年6月号
 日本国内のフロン市中ストックの大半は冷媒フロンである。特に業務用冷凍空調機器からのフロン排出が増加しており、従来の「フロン回収・破壊法」が大改正され、新たに「フロン排出抑制法」が本年4月から施行された。機器使用時の漏えいが排出の最大原因であり、中長期に向けた対策としてノンフロン製品・低GWP(地球温暖化係数)製品の開発・導入に早急に取り組みつつ、短期的には点検修理をはじめとする機器管理を進めるために、機器ユーザーには新たに管理者としての役割が求められている。本稿では、フロン規制の歴史的経緯を概観しながら、法改正の意義と課題について考える。
<特集>「フロン排出抑制法」における管理者の役割と責務
作井正人 一般財団法人日本冷媒・環境保全機構専務理事
▼概要文表示2015年6月号
 「フロン排出抑制法」が2015年4月1日より施行となり、フロン類を用いた冷凍空調機器の所有者(以下、管理者)に対して「管理者が守るべき判断の基準」が導入された。これは、経済産業省の調査により、冷凍空調機器の使用時において機器に充塡されている冷媒の相当量が漏えいしていることが判明したことと、その漏えい量は機器の種類や管理形態によっても大きく異なることがわかったからである。したがって、法改正の目的は使用時の冷凍空調機器からの冷媒の漏えいの低減策であり、管理者の冷媒漏えいに対する意識改革と機器管理水準を引き上げることで使用機器からの冷媒の漏えい排出抑制を実現させることである。以下に、法改正における管理者の責務についてのポイントを述べる。
<特集>フロン排出抑制法の概要と実践について
藤本 悟 ダイキン工業株式会社 CSR・地球環境センター 室長
▼概要文表示2015年6月号
 現在、冷凍空調機器に使用されている冷媒は地球温暖化係数が高く、このまま排出が続けば2020年にはCO2換算で4,000万tの温室効果影響があると懸念されている。こうした状況で法律が改正され、平成27年4月1日より「フロン排出抑制法」が全面施行された。冷凍空調全般に関係するので多くの事業者に影響を与える法律である。環境管理・推進責任者にとっては大きな課題となる。ここではおもに企業の担当者の立場に立って、どのように本法律の内容を理解し、冷媒の管理を進めていけばよいかを解説する。
<特集>前川製作所の自然冷媒への取り組み
川村邦明 株式会社 前川製作所 専務取締役
▼概要文表示2015年6月号
 モントリオール締約国会議でオゾン層破壊、京都会議で温暖化の議論がなされ、フロンの使用に疑問が出された。弊社は製造販売している産業用冷凍機での耐用年数、長期冷媒入手性などから冷媒選定を検討し、冷媒の中で最高の効率を持つアンモニア(NH3)を中心とした自然冷媒系冷媒が最適と判断し、現在は同じ自然冷媒である二酸化炭素(CO2)との組み合わせ製品として多くのお客様に採用いただいている。低温用には空気冷媒で提供し、現在は自然冷媒のラインアップも完成した。
 本稿では冷媒選定、コンセプト、実例を紹介する。
<特集>改正フロン法に対応する現場の実務と課題――管理者、充塡回収業者、行政の役割等
坂本裕尚 株式会社リーテム 法務部 部長補
▼概要文表示2015年6月号
 フロン排出抑制法については、本読者の多くの方々は理解されているものと思われるので、本稿では、国や自治体、また各業界団体や管理者となる企業などの動向や今後の取り組み、さらに本改正を受けて新たなビジネスを展開している企業のサービスなどに触れ、法律上「管理者」となる企業の実務担当者が現場で役に立つと思われる情報をここでいくつか紹介することにする。
<特集>世界中で頻発する水災害と水不足
本誌編集部
▼概要文表示2015年5月号
 最近、集中豪雨や洪水、津波などの「水災害」が世界中で頻発している。政府は地球温暖化に伴う洪水や高潮といった水による被害を減らす対応策を「適応計画」として法制化する方針であるが、国内企業はもとより海外進出先の対応や部品・原材料などのサプライチェーンを含む、より強靭で持続可能な経済活動ができるような政策が求められている。本コラムでは特集にあたり、世界で頻発する水災害、水不足の問題を取り上げる。
 
<特集>企業の水リスクへの対応
橋本淳司 水ジャーナリスト・アクアコミュニケーター
▼概要文表示2015年5月号
 農業生産・工業生産には水が必要だ。水のないところでは生産活動はできない。地球レベルでの水不足が進行するなか、多くの企業が水使用のあり方を見直している。日本企業はこの問題とは無縁に思われがちだが、それは錯覚である。原材料生産のほとんどを海外に依存し、そこに水不足・水汚染の懸念がある。企業活動の持続性を維持するための課題は、自社のサプライチェーン全体での水リスクを把握し、対応することである。本項では水リスクの概要と欧米企業の対応方法について述
べる。
<特集1>いまベトナムが日本で注目されている!
本誌編集部
▼概要文表示2015年3月号
 製品・部品の製造拠点を中国に一極集中するリスクを回避するための戦略を「チャイナ・プラスワン」と呼ぶ。反日デモや賃金の高騰、公害問題などマイナス面が露呈してきた中国に代わって日本企業の新たな進出先としていま注目されているのがベトナムである。
 安価で優秀な労働力を持ち、6億人規模となるASEANの巨大市場の中心にあることから、日本の中堅・中小企業は続々とベトナムへビジネス展開している。本特集では環境保全を切り口として、ベトナム企業の現況、日系企業のベトナム進出、ベトナム環境法の現状について報告する。
<特集1>ベトナム食品メーカー 環境管理の理念 ―ミンズン食品会社 ホン社長にきく
本誌編集部
▼概要文表示2015年3月号
 ベトナムにあるミンズン食品会社は日本政府の技術支援や研修などにより自社の環境管理を改善してきた中堅の食品メーカーである。公害防止や環境管理は企業の利益に直接貢献しないため、発展途上国の企業ではどうしても後回しになりがちであるが、今回取材した同社は経営者の発想や考え方が先進的で、可能な限り理想を追い続けている。現地取材に基づいてその地道な環境保全活動の実態をレポートする。
<特集1>日系めっき工場の建設認可を受けて ベトナム進出に成功した事例報告
北川浩一郎 ベトナム経済研究所理事
▼概要文表示2015年3月号
 めっき専業の日系企業がベトナム進出に初めて成功した背景には、部品類の輸入によりベトナムの国際収支の赤字が増大してしまったことがある。つまり、海外有名企業を誘致して組み立て作業中心の労働力提供型の工場を立地させるだけでは不十分であり、めっき業など部品を生産するサポートビジネスを育成しないと国家が近代化できないことを、ベトナム政府がやっと理解したためである。その経過を進出企業の排水処理の状況とともに報告したい。
<特集1>環境調査・分析業としての ベトナム進出
村岡裕彦 中外テクノス株式会社取締役事業本部長
▼概要文表示2015年3月号
 製造業の海外拠点として注目されているベトナムで、環境調査・分析会社を立ち上げた。日系の環境サービス業としての進出はあまり事例がなく、立地場所の選定やベトナム人の採用と教育、そして営業を開始するまでに、多くの苦労があった。特に、ベトナム人社員の採用から教育では、多くの失敗を通して、外国人雇用を行う上での課題を学んだ。当社の経験が、これから進出しようとする中小企業の参考になれば幸いである。
<特集1>厳格化するベトナム環境法
武藤司郎 西村あさひ法律事務所ハノイ事務所
▼概要文表示2015年3月号
 新環境保護法(以下、新法という)がベトナムの国会において2014年に制定されたが、旧法を施行する多数の法令群が存在しているところ、今後、新法を施行する多くの法令群の制定が予定されている。
 2013年には、製造・輸入業者に対して、市場に出た後の廃棄製品一般について、回収所を設置し、廃棄物を受領し、そこから処理場に運送する義務まで負わせるなど、広範な義務を定める首相の決定が出され、現地進出企業を驚かせた。このような背景もあり、進出した日系企業は環境保護法を施行する諸法令に高い関心を寄せている。本稿では、この新法の概要をベトナムの環境保護の法制的な状況とともに紹介する。
<特集1>ベトナム環境保護法の改正に伴う政令の策定支援について
富坂隆史 環境省廃棄物・リサイクル対策部循環型社会推進室企画官
▼概要文表示2015年3月号
 これまで、環境省はベトナムにおいて2009年度、首相令として承認された「固形廃棄物統合管理に関する国家戦略(NO.2149,2009)」について、アジア各国の3R国家戦略計画的推進支援の一環として策定を支援してきた。また、同様の主旨でベトナム天然資源環境省(MONRE)からの依頼を受けて、環境保護法(LEP)の全面改正についての支援を行い、さらに環境保護法(LEP)に紐付く廃棄物関連法令の策定についても支援している。今後、環境関連法規を整備していくベトナムにおいて、日本のこれまでの廃棄物行政の経験を活かした固形廃棄物の適正処理はもとより、コスト面も考慮した廃棄物管理の手法や廃棄物処理施設のための法令策定についての支援状況について述べる。
<総説>IPCC報告の内容の解説
杉山大志 IPCC第5次評価第3部会報告書統括執筆責任者
▼概要文表示2015年3月号
 2013 年から2014 年にかけて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第1部会(自然科学の知見)、第2部会(環境影響評価)、第3部会(排出削減対策)、及びそれらをまとめた統合報告書の4部からなる、第5次評価報告を発表した。筆者はこのうち第3部会に、日本から唯一人の統括執筆責任者として参加した。
 IPCC 報告に関する解説はすでに多く出されている(例えば環境管理2014年10月号)。ただし、多くはプレスリリースや抄訳に基づいた紹介であり、内容について詳しく検討した上で解説したものは少なかったと思う。以下では、日本での温暖化対策の検討にあたって重要な意味があると思われる点に絞って、第3部会(排出削減対策)、第2部会(環境影響評価)の順に解説する。
<総説>中国環境保護法改正のインパクト
西堀祐也 弁護士法人三宅法律事務所弁護士
▼概要文表示2015年3月号
 25年ぶりに改正された中国環境保護法は、環境汚染に対する事業者の責任を厳格化するものであり、生産活動を行う事業者にとって、環境汚染に関するリスク管理の点から注目すべき内容となっている。
 また近時、中国では環境公益訴訟において、事業者に対し、過去最高額の賠償金の支払いを命ずる判決が出されているところ、今回の法改正及び新しい司法解釈により今後の環境公益訴訟の利用の促進が予想される。
 こうした点を踏まえ、本稿では、事業活動に与える影響が大きいと思われる規定を中心に改正法の概要を紹介し、環境公益訴訟についても制度の概要と実例を紹介する。
<総説>Innovation for Cool Earth Forum(ICEF:アイセフ)第1回年次総会について
小浦克之 経済産業省産業技術環境局環境調和産業・技術室長
▼概要文表示2014年12月号
 気候変動問題を解決するためのイノベーションの重要性に関して、世界の産官学のリーダーが集まって議論するための知のプラットフォームとして、いわば「エネルギー・環境技術版ダボス会議」ともいえる国際会議「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF:アイセフ)」の第1 回年次総会を、経済産業省とNEDOの主催により、本年10月8日に東京で開催した。
 本稿では、会議の開催に至った背景や考え方に触れつつ、会議での議論の概要及び付随して行われた取り組み等について紹介する。
<総説>ネパールにおける ひ素地下水汚染の現地調査(速報)
駒井 武 東北大学大学院環境科学研究科教授/中村圭三教授ほかネパール調査チーム
▼概要文表示2014年11月号
 ネパール国のテライ低地では、1990年後半から地下水の摂取による健康影響が報告され、2000年以降に、国際協力事業団JICAや現地のNGOなどによって広域の現地調査が行われてきた。特に、ナワルパラシ地域の多数の集落では、井戸水に含まれる高濃度のひ素の曝露により健康障害が生じていることが指摘された。筆者らは、2007年よりナワルパラシ地域の30以上の集落を対象に現地調査を実施し、地下水中のひ素の濃度やその分布、地質環境と帯水層との関係、ひ素による健康リスクの軽減対策を中心に検討を進めてきた*1。その結果、飲料水中のひ素による健康被害が確認され、その影響が広域に及んでいることを確認した。本報では、2014年の3月と8月に実施した現地調査及び各種解析の結果について速報する。
<総説>ネパール・テライ低地における気候環境の現地調査
中村圭三 敬愛大学国際学部教授/松本太講師ほかネパール研究チーム
▼概要文表示2014年11月号
 ネパール南部中央のルンビニ県ナワルパラシ郡ピパラにおいて、2012 年3月から本年8月まで総合気象観測を実施しデータを解析した。その結果得られた主な知見は、次の通りである。①気圧はモンスーン季に低く、冬季に高い年周期で変動する。② 2012 年4月後半から6月中旬までの日最高気温は、連日40℃を超えた。③モンスーン季にはENEの風が卓越し、全風向の30%以上を占めた。④プレモンスーン季およびポストモンスーン季の風向には、日変化が認められる。⑤水蒸気圧は、モンスーン季に高く、冬季に低い年周期を示すが、相対湿度は、モンスーン季から冬季までの期間、80~100%で推移した。
<総説>国際標準でグローバルビジネスに勝つ
胡桃澤昭夫 一般社団法人産業環境管理協会国際協力・技術センター主査
▼概要文表示2014年11月号
 企業に対する製品やサービスにおける環境配慮が持続可能な社会を実現するために強く求められている。我が国の企業における環境配慮の努力はすでに始まっており、先進的な企業では数十年来の歴史が積み重ねられている。国際標準化機構(ISO)においては、1992 年の「環境と開発に関する国連会議」(環境サミット)を契機として、「持続可能な発展を支援する環境マネジメントシステムとツールの分野における標準化を管轄する専門委員会」として環境管理専門委員会(TC 207)が1993 年に設置され、日本は、ISO/TC 207の設立当初から、当分野における標準化活動に積極的に参加してきた。
 本稿では、ISO/TC 207における国際標準化作業の最新動向を紹介するとともに、環境経営を推進するための国際標準規格への取り組みの有効性について述べる。
<コラム>ネパールの山頂にホテルを建てる ―80歳からの「夢」と「闘い」
本誌編集部
▼概要文表示2014年5月号
 「世界一高い場所のホテル」——ギネスブックにも認定されたネパールのホテルを建設した日本人が、再びホテル建設に取り組んだ。ヒマラヤ絶景を一望できるホテルをつくって多くの人に見てもらいたい……80歳になる起業家・宮原巍氏の新たな「夢」と「戦い」を追う。
<レポート>IPCC総会
本誌編集部
▼概要文表示2014年5月号
 本年3月に横浜、4月にベルリンで開催されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)国際会議について報告する。
<解説>温暖化でヒマラヤ氷河が消え去るか?
本誌編集部
▼概要文表示2014年5月号
 IPCCは7年前の第4次評価報告書で「ヒマラヤ氷河が2035年までに消失」する可能性について報告したが、これは科学的根拠が不十分であった。
 本レポートでは「氷河スキャンダル」ともいわれた事件の概要に続いて、ネパール政府から気候変動に関する情報が提供されたので観測結果などを探ってみた。
<解説>日本列島が経験した温暖化と海面上昇
本誌編集部
▼概要文表示2014年5月号
 IPCC報告で海面水位や平均気温の上昇が指摘され影響が予測されているが、日本では縄文時代に我々の祖先が大きな気候変動を経験している。そこで2万年から2300年前頃までの歴史をひも解き、気候変動で人間の生活や文化が変遷する様子をみていくこととする。
<特集>近年の異常気象とその将来予測
気象庁地球環境・海洋部気候情報課
▼概要文表示2014年5月号
 この稿では、異常気象や地球温暖化といった社会的な関心への解説として、日本及び世界で発生している異常気象の近況や将来予測について述べる。日本では、近年は異常低温の発生が少ない一方で、猛暑日や熱帯夜が、地球規模の温暖化の進行にともなって明瞭に増加している。1時間降水量が50mmを超えるような非常に強い雨の発生回数は、地球温暖化が進行すると、全国的に増加すると予測されている。こうした異常気象の発生状況に対応し、気象庁は気候リスク管理技術の普及に取り組んでいる。 
<特集>平成25 年の利根川水系の渇水について
楜沢義一 国土交通省関東地方整備局河川部河川環境課建設専門官
▼概要文表示2014年5月号
 平成25年、関東の1都5県の水源である利根川水系においては、利根川上流8ダムが少雨の影響を受け、各ダムからの補給量が増加し、貯水量が減少した。このため、利根川水系渇水対策連絡協議会を開催し、7月としては平成6年以来となる10%の取水制限を7月24日から開始した。国土交通省は、節水PRやHP等での渇水情報の発信、一般国道の路面清掃における下水処理水(再生水)の活用等を行って対応した。
 その後、台風第18号等の降雨により貯水量が回復し、河川流況も改善されていることから、9月18日に10%の取水制限を全面解除し、57日間にわたる渇水期間が終了した。
<特集>進化し続ける民間気象会社のサービス ―情報提供とコンサル機能
常盤勝美 株式会社ライフビジネスウェザー取締役ビジネス気象研究所所長
▼概要文表示2014年5月号
 民間気象会社は、気象庁の俯瞰的な予報に対して、個別ニーズに応えるためのきめ細かい予報を発表して利用者に価値を創造してきた。しかし今や気象庁の予報はかなり細密なものとなっており、予報の解像度の細かさだけではビジネスになりにくい時代である。その時代にあっても利用者に価値を認めてもらえるよう、民間の気象会社のサービスは時代とともに進化を続けている。多彩なニーズに対応したプッシュ通知機能、業務システムへの組み込み、中長期的な気候予測に基づくコンサルテーションへの取り組み、の大きく三方向にまとめることができる。
<特集>アジア諸国の環境法制概観
板橋加奈 ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士
▼概要文表示2013年7月号
 日本企業のアジア進出が増加している中、日本企業が直面する問題の一つとして、現地における環境規制及び環境問題への対応がある。先進的な環境対策を展開する日本企業の環境配慮行動には現地においても高い関心が寄せられており、アジア各国に進出する日本企業には、現地の環境規制を遵守した事業活動が期待されている。そこで、近年の環境紛争事例を紹介しつつ、日本企業が留意すべき各国の環境規制を概観することとしたい。
<特集>東南アジアの環境問題--公害問題を中心に
小島道一 JETROアジア経済センター 資源・環境研究グループ長
▼概要文表示2013年7月号
 国によって経済水準の異なる東南アジア諸国では、直面している環境問題が異なり、また、公害規制の執行状況も異なっている。先進国の経験などを参考にしながら、規制の制定、執行の強化などが進められているが、課題を抱えている国も少なくない。本稿では、東南アジア諸国の中でも、大気汚染、水質汚濁などの公害問題に焦点を当てながら、その現状について検討する。また、多くの国で導入が模索されているリサイクル法制の検討状況について紹介する。その上で、経済統合が進む東南アジア諸国への環境協力の在り方を論じる。
<特集>アジアの環境管理協力について
野田英夫 独立行政法人 国際協力機構 地球環境部 環境管理第一課
▼概要文表示2013年7月号
 アジアでは他の地域にも増して、環境管理分野の問題が多様化、高度化並びに複雑化しており、JICAではこれらの問題解決に向けて、法規制等の制度の整備を含む様々な協力を実施している。例えば、中国ではエコタウン整備について、マレーシアでは廃電気・電子機器(e-waste)リサイクルについて、タイでは、環境汚染物質排出移動量登録(PRTR)について、新たな制度の整備を支援している。
<特集>東南アジアの化学物質規制
永田裕子 みずほ情報総研株式会社 コンサルティンググループ 次長/菅谷隆夫 みずほ情報総研株式会社 環境エネルギー第2部 シニアマネージャー
▼概要文表示2013年7月号
 日本企業にとって東南アジアは、生産・輸出基地や市場としてますます重要性を増している。東南アジアのビジネスにおいて各国の政策や法制度を知ることの重要性は論を待たないが、そこには様々な「壁」がある。言語の壁はもちろんであるが、法体系も複雑で運用実態が不透明であり、日本企業にとっては戸惑うことが多いと思われる。
 そこで本稿では、日本企業がこれらの壁に対処する際に、些かでも参考となるよう、東南アジアの環境規制、特に化学物質規制について概説していくこととする。
<特集>モンゴルのJICA大気汚染プロジェクトと二国間オフセット・クレジット制度
田畑 亨 株式会社 数理計画 プロジェクトマネジャー
▼概要文表示2013年7月号
 モンゴル国では、燃料の大部分を石炭に依存し、ウランバートル市では石炭燃焼による大気汚染が深刻となっている。また、コベネフィットの観点による温室効果ガス(GHG)削減に向けた、二国間オフセット・クレジットのための実証調査を実施している。ここでは、(株)数理計画が受託したJICAウランバートル市大気汚染対策能力強化プロジェクト及び環境省委託業務の二国間オフセット・クレジット制度のMRVモデル実証調査等について紹介する。
<特集>公害防止管理者制度のアジア展開
池田 茂 一般社団法人産業環境管理協会 環境技術・人材育成センター所長/鶴崎 克也 一般社団法人 産業環境管理協会 環境技術・人材育成センター技術参与
▼概要文表示2013年7月号
 近年急速に経済発展を遂げ、産業公害が深刻化してきたアジア諸国では、公害防止に関する基本的な法制度や規制基準等は比較的良好に整備されてきたが、それを遵守させるための体制が不十分であった。このため、これらの諸国に日本の公害防止管理者制度を紹介し、これを参考としつつも各国の国情に適した自主管理制度が構築できるよう、産業環境管理協会は技術協力を行ってきた。この結果、タイ、インドネシアにおいては、すでに正式に管理者制度が発足し、中国は試行を行っている段階である。現在はベトナムに対して制度構築支援を行っている。
<総説>GSEP電力ワーキンググループのインドネシアでの活動について
前田 一郎 電気事業連合会 地球環境部 部長(国際問題担当)
▼概要文表示2013年4月号
 「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)から「エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ」(GESP)に移行して電力ワーキンググループはGSEPとして第一回の活動をインドネシアで実施した。インドネシアは、エネルギー・鉱物資源省とPLN(電力会社)が参加した。
 ジャカルタで1月21日に発電・送配電、需要管理技術に関するワークショップを実施した後、1月22日には西ジャワのスララヤ火力(4号機40万kW)を訪問し、設備診断を実施した。1月23日にはまとめを行い、閉会した。
 インドネシアはこの活動の趣旨に理解を示すとともにスララヤ火力の所長・スタッフは大変丁寧に対応をしてくれた。日本・米国・英国からの主席者はこれまでのAPPの実績と役割、官民パートナーシップである意義などが紹介された。個別にはGSEPが特に既設石炭火力に焦点を置いて熱効率を維持することを活動の中心とする意味、デマンドサイドマネージメントの制度設計上注意しなればならない点などを取り上げた。
 スララヤ火力の訪問では、個々の問題点の指摘を発電所関係者との間で共有し、最大2%の効率の改善が見込まれ、年間6万4千トンの燃料節約、15万トンのCO2削減が図れることを紹介した。
 この活動の内容はクリーンエネルギー大臣会合(4月インド)で報告をされる。今後、活動の認知度を上げていくことが重要である。
<特集>GSEP鉄鋼WGについて
岡崎照夫 一般社団法人 日本鉄鋼連盟国際環境戦略委員会委員長、手塚宏之 一般社団法人 日本鉄鋼連盟国際環境戦略委員会理事、中野直和 一般社団法人 日本鉄鋼連盟国際環境戦略委員会理事、内藤敏幸 一般社団法人 日本鉄鋼連盟国際環境戦略委員会事務局
▼概要文表示2012年7月号

 中国・インドなどの成長により中長期的にも世界の粗鋼生産が拡大基調で推移していくことが見込まれているなか、鉄鋼業はエネルギーを多く使うことから、日本の優れた省エネ・環境技術の世界中の製鉄所への移転は、地球規模で見た際の持続可能な社会形成に不可欠である。日本鉄鋼業界は、省エネ・環境技術普及のための協力的セクトラルアプローチを推し進めており、とりわけ技術に基づくボトムアップ型の官民連携アプローチであるGSEP (エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ)鉄鋼WG(ワーキンググループ)はその中核をなす取組である。本稿では、鉄鋼業界が取組む協力的セクトラルアプローチをStepごとに分けて解説し、官民連携の意義、APP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ) 鉄鋼Task Force(特別作業班)からGSEP 鉄鋼WGへの移行した経緯、GSEP鉄鋼 WGの概要を紹介していく。

<特集>セメント産業におけるセクター別アプローチとGSEPの取り組み
和泉良人 社団法人セメント協会
▼概要文表示2012年7月号

 官民が連携した国際的なセクター別アプローチは、2006年に開始された「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」が代表的な事例であり、その後「エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ(GSEP)」に引き継がれた。GSEPのセメント部会は、APP7カ国に加えて、欧州、ブラジル、南アフリカのセメント協会や欧州セメント研究機関(ECRA)などが参加を希望しており、これまでAPPで行なってきた既存技術の普及・促進や新技術の開発、人材育成プロジェクトに加え、測定・報告・検証(MRV)方法論や資金支援メカニズムなどの政策的な議論をする場になることを期待したい。

<特集>電力セクターにおけるAPP活動の実績とGSEPへの取り組み
前田一郎 電気事業連合会
▼概要文表示2012年7月号

 電力セクターはAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)活動の中で、火力発電所運転保守管理のピアレビューを「発送電タスクフォース」の主要なアクションプランと位置づけて推進してきた。ところが米国は政権が民主党に代わったことからAPP活動の終了が提案されたが、APP活動が重要であると考える日本他の関係者は、新たに成立したGSEP(エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ)のワーキンググループにAPPの活動と経験を引き継がせることとした。GSEPの元で日本が議長となり、パワーワーキンググループが今年立ち上った。GSEPにおいては関係国を拡大すること、官民パートナーシップの中、民の資源を一層活用する必要から電力の民間の国際的イニシアティブである「国際電力パートナーシップ」が関わることとした。

<特集>エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ(GSEP)の目的と概要
河野孝史 経済産業省地球環境対策室国際交渉担当補佐
▼概要文表示2012年6月号

 産業部門の省エネ・環境対応を促進する国際イニシアティブとして,日米政府の主導の下,APPからその成果を受け継ぎ2010年にGSEPGlobal Superior Energy Performance Partnership)(セクター別ワーキンググループ(WG))は正式発足した。2011年度には2回の会合を開催し,さらなる参加国拡大や取組の具体化等の課題は指摘されたものの,多くの参加者を得,その活動の進展に対する期待が共有された。今後,我が国が主導するボトムアップアプローチを体現する組織として,官民協力という特徴を活かしつつ,気候変動交渉への効果的なインプットも含め,その活動の発展が期待されている。

<特集>セクター別アプローチ(Sectoral Approach)について―気候変動交渉とAPP,セクター別アプローチ
本部和彦 東京大学公共政策大学院特任教授
▼概要文表示2012年6月号

 セクター別アプローチは,製造,発電,輸送,家庭などのセクター毎に,技術を中心に最適な削減策を検討し,これを統合して全体像とするボトムアップ型のアプローチである。本アプローチは,先進国の公平な削減目標の設定と,技術移転を通じて途上国の削減行動の双方に寄与することから,気候変動の新たな枠組みにおいて骨格をなす可能性がある。バリからコペンハーゲンに至る交渉の経験を踏まえ,アジア太平洋パートナーシップ(APP)からエネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ( GSEP )に移行した実践の場で蓄積を積みながら,気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)で決定されたダーバンプラット・フォームにおける交渉に生かしていくことが望まれる。

<特集>二国間クレジット制度と環境技術移転
小松 潔 一般財団法人日本エネルギー経済研究所主任研究員
▼概要文表示2012年6月号

 日本政府は,日本の優れた温室効果ガス(GHG)排出削減技術や製品などを,途上国に提供し,その結果,得られるGHG排出削減量を,将来の日本の排出削減目標の達成に利用することを目的とした二国間オフセットクレジット制度(BOCM)の構築に向けて動き出した。京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)が様々な課題を抱えていることが背景にあり,本稿では,CDMの課題を踏まえ,BOCMで検討されている新しいアプローチについて説明し,日本の省エネルギー技術の普及において担いうる役割を検討する。

<特集>企業が進める生態系保全活動「日立ITエコ実験村」とITを用いた見える化
谷 光清 株式会社日立製作所情報・通信システム社環境推進本部,西本恭子 株式会社日立製作所情報・通信システム社環境推進本部,嶋野知生 株式会社日立コンサルティング
▼概要文表示2012年3月号

 日立グループは,持続可能な社会の実現をめざして2007年に「地球温暖化の防止」「資源の循環的な利用」「生態系の保全」を柱とする中長期の「環境ビジョン」を掲げ,環境保全に資する製品・サービスの提供,環境負荷の低減に努める事業活動をグローバルに展開している。こうした中,情報通信事業部門においては環境配慮活動が今後ますます重要になってくるとの認識のもと,ITを利用して,恵みある大地(地球)に向けた活動を実践する地球環境貢献プラン「GeoAction(ジオアクション)100」を2010年6月に策定した。「GeoAction100」の取り組みテーマの一つである「生態系の保全」については,「従業員が地域に目を向ける機会を作り」「活動を通じて達成感を味わい」「ITを通じた社会貢献の事例作り」を狙いに地域の協力を得て「日立ITエコ実験村」を2011年4月に神奈川県秦野市に開村し,新たな取り組みをスタートした。

<特集>事業活動による生態系影響の見える化--東芝グループの取り組み
小林由典 株式会社東芝環境推進部
▼概要文表示2012年3月号

 東芝グループは世界的な生物多様性の損失を食い止めるためグローバルな取り組み体制を構築し,製品・サービス,事業プロセス(工場・事業所)および社会貢献の三つの領域で生物多様性保全活動を進めている。本稿では,LIME(日本版被害算定型影響評価手法)による生態系影響の見える化,WET(全排水毒性評価)による事業所排水管理,流域思考に基づく生態系ネットワーク構築など,東芝グループの取り組みを紹介する。

<特集>企業活動における生物多様性への影響と貢献度の定量的評価方法
朽網道徳 富士通株式会社環境本部プリンシパルテクノロジスト
▼概要文表示2012年3月号

 現在の生物多様性の危機的な状況は,人間の生活や企業の活動が多くの影響を与えていることが原因の一つと考えられる。愛知目標で謳う『2020年までに生物多様性の損失を止め,健全な状態に戻していくこと』達成するためには,民間セクターの活動が重要である。そして具体的で効果的な活動を実施するためには,企業などの活動や技術がどのような影響を与えるかを定量的に評価することが必要である。今回,多面的な企業活動が生物多様性に与える影響を定量的に評価する統合指標(BDTI)を検討した。ここでは,指標の考え方,評価のプロセスに加えて,企業活動として,事業活動,製品の改良,さらにソリューションの提供による効果を評価した事例を紹介する。

<特集>持続可能な森林経営と生物多様性--日本製紙グループ
渡邊惠子 株式会社日本製紙グループ本社CSR本部主席技術調査役
▼概要文表示2012年3月号

 日本製紙グループは,生物多様性と深いかかわりを持つ森林から供給される木質資源を原料として,人々の生活や文化を支える建材,紙,化学品などを社会に提供している。そのため,環境憲章の冒頭に生物多様性に配慮した企業行動を掲げ,木質資源の調達においては,森林認証を活用した持続的な森林経営と原材料調達を推進してきた。本稿では,当グループの生物多様性への取り組みとして,ブラジル植林事業における生物の生息調査や地域コミュニティへの啓発を通じた保護活動,また国内社有林における生物多様性に配慮した森林施業などについて紹介する。

<特集>金融機関の生物多様性への取り組み
後藤文昭 住友信託銀行企画部社会活動統括室
▼概要文表示2012年3月号

 生物多様性問題は金融機関にとってリスクとビジネスチャンスの二つの側面を持つ。融資や投資の対象企業やプロジェクトの生物多様性に関する取り組みや影響が金融機関の評価や業績にも影響を与える。一方で生物多様性問題に対する企業,NGO等の取り組みを支援する金融商品・サービスは社会的意義も高く収益獲得の機会でもある。住友信託銀行では,融資,資産運用,不動産等の各事業分野において生物多様性に関連する商品・サービスの提供に努めている。また,金融機関の活動や商品・サービスはエコロジカルネットワーク構想実現にも重要な要素となる。

<特集>生物多様性とビジネス戦略
生田孝史 株式会社富士通総研経済研究所上席主任研究員
▼概要文表示2012年3月号

 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の成功は,生物多様性保全に貢献する製品・サービスを供給できる企業にとって,ビジネス機会の拡大を意味する。全世界の生物多様性ビジネス市場は,2008年の約650億ドルから2020年には2,800億ドル超への増加が見込まれている。生物多様性ビジネス市場の主戦場は,既存ビジネスの転換となる「生物多様性配慮型製品・サービス」分野であるが,新規ビジネスを主とする「生物多様性保全・再生ビジネス」や「生物多様性配慮支援サービス」の成長も期待されている。海外では市場メカニズムの活用も進んでいる。生物多様性の視点からビジネス開発可能性を戦略的に検討し,企業競争力強化を図ることが望まれる。

<総説>COP17の成果と意義
山口建一郎 株式会社三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部地球温暖化戦略研究グループ主席研究員
▼概要文表示2012年3月号

 気候変動枠組条約第17回締約国会議及び京都議定書第7回締約国会合(COP17及びCOP/MOP7)は2011年11月29日から12月10日(閉会は12日)にかけて南アフリカのダーバンで開催された。この成果と意義についてとりまとめる。

<特集>コペンハーゲン合意と我が国の温室効果ガス排出削減目標
相澤寛史 環境省地球環境局地球温暖化対策課国際対策室,手島裕明 環境省水・大気環境局大気環境課
▼概要文表示2010年5月号

 気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の成果である「コペンハーゲン合意」では,各国は2020年の温室効果ガス排出削減目標・行動を本年1月31日までに条約事務局に提出することとされ,我が国も1990年を基準年として「25%削減,ただし,すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提とする」という削減目標を条約事務局に提出した。我が国を含め,世界全体の排出量の8割以上を占める国々がコペンハーゲン合意に賛同して削減目標・行動を提出しており,同合意は今後の交渉の重要な基盤になると考えられる。引き続き,すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築に向け,各国の積極的な取組を促すとともに,環境による成長の実現に向け,中期目標の実現に向けたさらなる検討を進めていくことが重要である。

<特集>コペンハーゲン合意の役割と将来の方向性―教訓を将来に活かすことができるか?
松尾直樹 クライメート・エキスパーツ,PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
▼概要文表示2010年5月号

 コペンハーゲン会議は,法的拘束力のある統一された新協定を目指す先進国と,先進国の急進的な要求に反発する途上国という構図に終始した。ようやく自主目標を打ち立ててきた途上国が,内政干渉とも捉えられる国際法的な縛りを,バリ会議の合意事項を超えていきなり押しつけられることを拒んだといえる。この教訓をどう活かすか?が今後の課題であるが,途上国の主張は尊重しつつ,一歩ずつ合意できるところを積み重ねていき,むしろ法的性格の形式論よりも対策の実効性を促進していくことがもっとも有効ではなかろうか。

<特集>国際海運と国際航空のポスト京都議定書への取り組み
藤本敏文 気象庁地球環境・海洋部海洋気象課海洋気象情報室調査官,田村顕洋 国土交通省海事局安全・環境政策課課長補佐,清水 哲 国土交通省航空局監理部総務課地球環境保全調整官
▼概要文表示2010年5月号

 国際海運・国際航空からの温暖化効果ガス(GHG)の排出については,現行京都議定書では,各々国際海事機関(IMO),国際民間航空機関(ICAO)で排出削減・抑制に向けた取り組みを行うこととされている。気候変動枠組条約(UNFCCC)の第15回締約国会合(COP15)においては,ポスト京都議定書におけるこれらセクターの取り扱いは決定されなかったが,IMO,ICAOでは,ポスト京都議定書も視野に入れ排出削減・抑制対策の審議・検討が続けられており,我が国も国際海運・国際航空の先進国として,国際議論への積極的な参加・貢献を行っている。

<特集>COP15コペンハーゲン会合における森林関連課題の進展
赤堀聡之 林野庁研究・保全課
▼概要文表示2010年5月号

 森林吸収源は,第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)(京都会議,1997年11月)で策定された京都議定書に盛り込まれており,第1約束期間において我が国は1,300万炭素t(基準年90年比3.8%相当)まで適用が認められているところである。次期約束期間での森林等吸収源の取扱い(LULUCF)については,他の交渉分野とともにCOP15までの合意に向け交渉が進められていた。また,森林関連の新たな交渉分野として,途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)についても,別途交渉が行われた。COP15に至るこれらの森林関連議題の動きについて解説する。

<特集>25%削減の意味と企業競争力維持のための国際枠組みのあり方
濱崎 博 富士通総研経済研究所主任研究員
▼概要文表示2010年5月号

 COP15において“留意”されたコペンハーゲン合意に基づき各国が削減目標・行動を国連事務局に提出を行ったが,気候安定化に十分な削減の確保はできていない。こういった状況において我が国政府は2020年に1990年比25%という非常に高い目標を掲げているが,全世界で不足する削減量のため,現在以上の削減責任を負う可能性がある。25%をすべて自国で削減することは現実的ではなく我が国企業の競争力を大幅に損なう,他国での削減の活用が不可欠であろう。よって,我が国政府は,25%削減を国内問題ではなく国際問題ととらえ,技術移転を通じて地球規模で効率的な削減を実現するための枠組み提言を国際社会に向けて行う必要がある。

<総説>COP15の成果と意義
山口建一郎 株式会社三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部 地球温暖化戦略研究グループ主席研究員
▼概要文表示2010年3月号

 第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)及び第5回京都議定書締約国会合(COPMOP5:以後COP15と略する)は2009年12月7日から18日にかけてコペンハーゲンのBella Centreで開催された(会議終了は19日午後)。2007年12月のCOP13(バリ)での「バリ行動計画」の決議以降2年間にわたり,ポスト2012年の議論は米国を含む特別作業部会(AWGLCA)と,京都議定書締約国による第2約束期間を決定するための特別作業部会(AWGKP)の場で併行して検討されていたが,COP15はその集大成となるはずであった。従ってCOP15の注目度は高く,参加者は45,000人(通常のCOPの数倍)に達したといわれ,また通常来訪する閣僚クラスに加えて約120か国の首脳が参集した。このような未曾有の規模となったため,会議運営上多くの問題を呈した。本稿はCOP15の成果と意義について述べるものであるが,「コペンハーゲンアコード」をはじめとするCOP15の成果については既に詳細な報道がなされており,本書ではCOP15の意義について筆者の所感を中心として記載することとする。

<特集>BRICsの経済と環境問題―エネルギー・地球温暖化問題を中心に
本蔵 満 財団法人日本エネルギー経済研究所戦略・産業ユニット国際動向・戦略分析グループ研究主幹
▼概要文表示2009年12月号

 BRICsは国土が広く人口も多い。近年の高い経済成長に伴い,BRICsのエネルギー消費量は増加を続け,世界全体の3割を占めている。この結果二酸化炭素(CO₂)排出量も増加を続け,2007年には中国が米国を抜いて世界1位の排出国となり,3位,4位にはロシア,インドが続いている。今後も中国,インド,ロシアのCO₂排出量は増加を続け,3か国のCO₂排出量増加は世界全体の増加分の7割を占める見通しである。CO₂排出抑制策の一つである省エネについては,中国,インド,ブラジルでは政策が策定されているが,ロシアについては政策的な取り組みが遅れている。

<特集>ブラジルの環境管理及び産業廃棄物管理関連法制度・組織について
田村えり子 独立行政法人国際協力機構地球環境部環境管理グループ環境管理第二課
▼概要文表示2009年12月号

 国際協力機構(JICA)はアマゾナス州のマナウスフリーゾーン(MFZ)における産業廃棄物管理を対象に「マナウス工業団地産業廃棄物管理改善計画調査」を実施している。本調査の過程で,ブラジルにおける国,州,市の各レベルにおける環境管理及び産業廃棄物管理関連法制度,組織の実態把握を行った。環境関連法制度及び組織は,国(連邦),州,市の各レベルで整備はされているものの,法令の執行面,特に地方行政機関(州,市レベル)の業務執行能力に課題があることが判明している。本調査で作成予定のマスタープランにより,MFZの産業廃棄物管理の改善に向けての提言を行う予定であり,ブラジルにおける環境管理の促進に貢献したいと考えている。

<特集>ロシアの環境事情―「環境政策なき環境改善」とその後
徳永昌弘 関西大学商学部准教授
▼概要文表示2009年12月号

 経済システムの転換に伴う1990年代のロシアの構造不況は,経済活動の停滞による環境負荷の大幅減だけでなく,環境負荷の大きい汚染産業の解体を促し,エネルギー効率が極めて悪い生産設備の休停止をもたらしたため,その後の経済成長は環境負荷の急増に繋がらなかった。こうした「環境政策なき環境改善」は,最小限の政策費用で短期間の環境汚染の改善を実現した反面,環境ガバナンスの向上という点では中長期的にマイナスの影響を及ぼした。短期間の環境改善が中長期的な環境ガバナンスの向上を阻むという逆説的な事態は,ロシアの環境事情を理解する重要なカギである。

<特集>インドの環境問題と持続的開発
酒井康裕 財団法人地球環境戦略研究機関関西研究センター総務課長、石川治子 財団法人地球環境戦略研究機関関西研究センター研究員、志賀雄樹 財団法人地球環境戦略研究機関関西研究センター研究員
▼概要文表示2009年12月号

 インドの環境問題と持続的開発を考える上で特徴的な要素の1つが,人口の25%を占める貧困層の存在である。インドは,この貧困問題の解決のために自国の経済成長を優先しなければならないが,その一方で,大気,水質,廃棄物等の公害問題やエネルギー消費の急増,インフラの未整備がその経済成長を脅かす存在になっている。また,二酸化炭素(CO₂)排出量は日本と同じく世界の約5%を占めるに至っていることから,インド政府はNational Action Plan on Climate Change(NAPCC)等,次々と対応策を打ち出しているところである。内需が経済成長を牽引し,2050年には世界1位の人口を有するインドは魅力的な巨大市場ではあるが,このように困難な状況に直面しているインドを理解することは容易なことではない。本稿は以上の背景を踏まえ,インド環境森林省が2009年7月に発表した「State of Environment Report India 2009」(SOE2009)の中で取り上げられている5つの主要な問題について,最近の動向にも触れつつ,その概要を紹介する。

<特集>インドの省エネ促進及び持続的水利用に関するJICAの取り組み
田村桃子 独立行政法人国際協力機構南アジア部南アジア第一課調査役、林遼太郎 独立行政法人国際協力機構南アジア部南アジア第一課副調査役
▼概要文表示2009年12月号

 新国際協力機構(JICA)が2008年10月に発足して以降1年が経過したが,その間民主党新政権が積極的な気候変動対策推進を打ち出したこともあり,新JICAが取り組んできている気候変動及び環境対策を通じた国際協力の重要性は益々高まっている。そこで今回は国際的な気候変動の議論を巡っていつも注目を集める国のうち,インドに絞ってJICAがどのような支援を実際に行っているのかを紹介したい。特に本稿ではJICAが近年支援を強化しているインドの省エネ化の促進を日本企業の進出支援という観点から,またインドの持続的な飲料水確保のための課題を上水道整備及び水道料金の観点から紹介する。

<特集>中国の環境問題と保全への取組
小柳秀明 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長
▼概要文表示2009年12月号

 最近世界的に注目を集めている中国の環境問題の概要について,大気汚染,水質汚染の状況を中心に紹介するとともに,これらの問題に対処するため,1978年の改革・開放以来中国政府がとってきた措置についてレビューする。特に21世紀に入り,粗放型・資源浪費型の発展パターンから環境と経済の両立を真剣に考えた政策への大きな転換(歴史的転換)を具体的な事例を挙げて紹介した。拘束性目標を掲げ,初めて取り組んだ省エネ・汚染物質排出削減措置の概要と中間的な成果について具体的な数値を挙げて紹介した。気候変動対策への取組方針についても簡単に紹介した。

<総説>中期目標の六つの選択肢が意味すること
秋元圭吾 財団法人地球環境産業技術研究機構
▼概要文表示2009年11月号

 2013年以降の日本の排出削減目標を決定するにあたり,2008年11月~2009年4月にかけて政府の中期目標検討委員会において,2020年の排出削減目標を中心に分析・検討が行われた。そこでは,2005年比で4%減から30%減までの六つの選択肢を提示し,それぞれの選択肢について,国際的公平性,長期目標との関係,実現可能性,国民負担の大きさの視点を中心に分析が行われた。本稿では,六つの選択肢が,これらの四つの視点からどのように評価されたのかについて解説する。また国民が,科学的に分析・評価された情報を基にしつつ,この六つの選択肢をどのように評価したのかについても触れる。

<総説>EUによる中期目標検討とその背景
工藤拓毅 財団法人日本エネルギー経済研究所地球環境ユニット総括
▼概要文表示2009年11月号

 気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では,京都議定書以降の気候変動に関する新たな枠組み合意に向けた議論が行われる。そこでは特に,各国における2020年前後における中期の温室効果ガス排出量目標(中期目標)がどういった形で取りまとめられるかが注目されている。日本の中期目標のあり方を議論するにあたっては,先進国間における目標の公平性をいかに担保するかが課題となるが,その検討には欧州連合(EU)をはじめとする各国の目標検討背景やその内容を十分に吟味することが必要である。

<総説>IPCCの概要と最新の動向
大西 洋 財団法人地球産業文化研究所主席研究員
▼概要文表示2009年11月号

 地球温暖化問題への関心がかつてないほど高まりをみせるなか,「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の活動に世界の注目が集まっている。IPCCは,広範な分野にわたる専門家の執筆・査読を通じて,これまでに4回の評価報告書を作成しており,最も権威のある科学的論拠として「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」等の国際的取組や各国の政策決定者へ様々な知見を提供してきた。現在,2013年から2014年の完成を目指して,第5次評価報告書の作成作業が始まっている。本稿ではIPCCと各評価報告書の概要,最新の動向について解説する。

<特集>生物多様性と民間参画
鈴木 渉 環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室
▼概要文表示2009年9月号

 2006年に開催された生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)では,企業などの民間セクターの参画を促す「民間参画に関する決議」が初めて決議された。これを契機として,企業等の参画に対する国際的な議論や機運が盛り上がりをみせている。政府は,2007年(平成19年),生物多様性条約の規定に基づき第3次生物多様性国家戦略を取りまとめ,この中で民間事業者向けのガイドライン策定を位置づけた。これを受け,環境省は「生物多様性民間参画ガイドライン」を取りまとめ、本年8月に公表した。来年2010年(平成22年)10月,愛知県名古屋市において条約のCOP10が開催されることから,日本の民間事業者の取組についても注目が集まっている。

<特集>求められる民間事業者の「生物多様性」への取り組みと「日本経団連生物多様性宣言」発表の意義と役割
岩間芳仁 日本経済団体連合会自然保護協議会事務局長
▼概要文表示2009年9月号

 近年「生物多様性」の重要性が叫ばれているが,その劣化を食い止める試みは世界的にみるとあまり成果が上がっていない。そこで,「生物多様性条約」の枠組みの下,企業を含む民間部門の積極的な参画を求める動き,市場メカニズムや経済的手法を活用することで民間事業者の参画を推進しようという試みがあり,また,途上国の豊かな生物多様性を保全するための費用を先進国が負担すべきだという考え方など,生物多様性をめぐって,地球温暖化問題と同じような議論や対立の構図が見え始めている。こうした中,日本経団連では,従来の地道な自然保護に関する活動の実績や,会員企業の社会貢献活動などを通じた生物多様性への貢献を踏まえ,来年10月,名古屋で開催される生物多様性条約締約国会議をにらんで,「生物多様性宣言と行動指針」を作成・公表した。これは,日本産業界の生物多様性問題に対する基本的なスタンスを述べると同時に,会員企業が生物多様性に積極的に対処するための指針となるものである。今後「宣言」と「行動指針」の定着を図りつつ,生物多様性への積極的な貢献を果たしていきたいと考えている。

<特集>遺伝資源へのアクセスと利益配分―生物多様性条約に基づく海外遺伝資源の利用に関する国際ルールと新たなルール策定に向けた国際交渉
薮崎義康 財団法人バイオインダストリー協会事業推進部部長
▼概要文表示2009年9月号

 生物多様性条約の目的は,「生物多様性の保全」,「構成要素の持続可能な利用」とともに,「遺伝資源の利用による利益の公正かつ衡平な配分」となっている。来年名古屋で開催の第10回条約締約国会議(COP10)ではこの第3の目的に関連した新たな国際的制度をまとめあげられるかが交渉の焦点となっている。本稿では,COP10での重要な争点を理解する一助として,財団法人バイオインダストリー協会が長年にわたり取り組んできた海外遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)について概説するとともに,国際交渉の現状を紹介する。

<特集>生物多様性と企業活動―経団連のアンケートにみるリスクとチャンス
香坂 玲 名古屋市立大学経済学研究科准教授
▼概要文表示2009年9月号

 生物多様性と企業経営との関わりでは,そのビジネスチャンスとリスクの両面からの把握が鍵となる。規制をリスクと捉えるだけではなく,事業体にとっては,自社の活動を生態系に配慮する形で効率化・改善するチャンスでもある。環境省のガイドライン,経団連の生物多様性宣言などに則り,今後の議論と活動の展開が国内外から注目される。特に事業の操業に直接影響を及ぼすものとして,現在は生物多様性条約(CBD)の第10回締約国会議における,遺伝資源の利益配分に関する国際的枠組みの採択に注目が集まっている。本稿ではこれらの生物多様性条約の2010年の主要な論点を紹介しつつ,経団連が生物多様性宣言の作成にあたって行なったアーケート結果をもとに,企業にとってのリスクとチャンスについて考察する。

<特集>NECグループの生物多様性へのアプローチ
宇郷良介 日本電気株式会社環境推進部統括マネージャー
▼概要文表示2009年9月号

 生物多様性への対応の重要性は,1992年のリオ・サミットで地球温暖化と同時に国際的な認知を得たにもかかわらず,実行面ではこれまであまり大きな進捗がみられていない。特に,企業の対応は産業界全体として低調な状況であろう。しかし,国内において2007年に「第三次生物多様性国家戦略」が発行され,企業に対する実効的な取り組みへの期待は強まる傾向にある。このような状況下で,事業活動の継続性確保と連動した企業の本質的な生物多様性対応がいっそう重要になる。本稿では,企業の取り組みのおける今後の一つの方向性を示すとともに,NECグループの現状活動をその中に位置づけながら具体的な事例を紹介する。

<特集>東京電力の生物多様性保全に向けた取り組み
北原隆朗 東京電力株式会社環境部(尾瀬林業株式会社出向)
▼概要文表示2009年9月号

 東京電力では,グループ全体の経営理念として「エネルギーの最適サービスを通じて,豊かな生活と快適な環境の実現に貢献する」と謳っており,従来から尾瀬をはじめとする自社が保有する自然環境資産を適切に保全・管理してきた。また,発電所建設などの開発行為に際しても,既存の自然を最大限保全するとともに,新たな緑地の創造に努めている。これらの取り組みは,東京電力の伝統として引き継がれ,生物多様性の保全に向けた活動へと進化している。本稿では,東京電力が保有する代表的な自然環境エリアにおいて実践されているこれらの取り組みを簡潔に報告する。

<総説>COP14の成果と意義
山口建一郎 株式会社三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部地球温暖化戦略研究グループ主席研究員
▼概要文表示2009年2月号

 2008年12月2日から12日までポーランドのポズナンで開催された気候変動枠組条約第14回締約国会合兼第4回京都議定書締約国会合(以下COP14)について述べる。今回会合は次回COP15への準備という位置づけであったが,米国の政局,EUの気候パッケージの交渉難航,経済危機等により,将来枠組に関する実質的な議論は進展せず,専ら第1約束期間内の実務的な事項が議論された。今後米国のオバマ政権を迎えて本格的な交渉が開始されるが,スケジュールは過密を極め,COP15での次期枠組の成立には大きな困難が伴う。

<特集>特別対談 ポスト京都に向けて―わが国の役割
澤 昭裕 東京大学先端科学技術研究センター客員教授/経団連21世紀政策研究所主幹、新井直樹 帝人株式会社エグゼクティブアドバイザー
▼概要文表示2008年9月号

 ポスト京都に向けたわが国の役割は何か―洞爺湖サミットを振り返り、合意事項への評価を加えながら日本が今後進むべき方向を論じる。アメリカや中国の問題、セクター別アプローチ、エネルギー問題などの話題を掘り下げ、地球温暖化問題の課題を明らかにしていく。

<特集>洞爺湖サミットを終えて―「全員参加」への大きな一歩
川村尚永 経済産業省地球環境対策室課長補佐、廣田大輔 経済産業省地球対策室係長
▼概要文表示2008年9月号

 2008年7月7~9日、北海道洞爺湖においてG8主要国首脳会合(G8サミット)及びエネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国会合(MEM)が開催された。G8サミットでは、気候変動問題様々な国際的課題について広範に議論が行われ、気候変動問題について、長期目標、中期目標、セクター別アプローチの有用性などについて、先進国間での合意を得た。また、G8に加えて、中国、インド等の主要な途上国も参加したMEMでは、途上国も排出削減に対してある一定の貢献をすること等について合意がなされ、世界全体の排出削減に不可欠な「全員参加」型の公平で実効性のある2013年以降の枠組み構築に向けての大きな一歩となった。

<特集>G8環境大臣会合を終えて―神戸から洞爺湖へ
環境省G8環境大臣会合等準備室
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 5月24~26日に神戸でG8(主要8カ国及び欧州委員会)環境大臣会合が開催された。G8各国をはじめとする19の国の大臣及び政府高官と、八つの国際機関の代表等が参加し、「気候変動」「生物多様性」「3R」の三つの議題について議論を行った。気候変動では、「2050年までに世界全体の排出量を少なくとも半減させる目標を洞爺湖サミットで合意することに強い意志を表明」されたほか、生物多様性では、生物多様性の持続的な利用などの呼びかけをまとめた「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ(Kobe Call for Action for Biodiversity)」、3Rでは3R関連政策の優先的実行及び資源生産性の向上などをまとめた「神戸3R行動計画(Kobe 3R Action Plan)」が合意されるなど、多くの成果を得た。

<特集>G8+中国、インド、韓国エネルギー大臣会合を終えて
資源エネルギー庁長官官房G8エネルギー大臣会合等対策業務室
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 2008年6月8日、青森においてG8、中国、インド、韓国エネルギー大臣会合が開催された。原油価格高騰を背景に石油市場と投資環境について議論が行われ、一致した行動をとっていくことの必要性が確認された。また、エネルギー安全保障、省エネルギーへの取り組み等も議論されるとともに、省エネ政策の有効性強化としてセクター別アプローチが有益と確認された

<特集>「北海道洞爺湖サミット記念 環境総合展2008」への参加
安井基晃 一般社団法人産業環境管理協会エコプロダクツ展チーム
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 6月19日(木)から21日(土)の3日間、北海道の札幌ドームで「北海道洞爺湖サミット記念・環境総合展2008」が開催された。(一社)産業環境管理協会が本展示会に参加した所感を振り返る。

<総説>「アジア経済・環境共同体」構想
中村 智 経済産業省通商政策局経済連携課
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 「アジア経済・環境共同体」構想は本年5月に経済産業省、環境省及び関係府省が共同してとりまとめたものであり、政府の基本方針2008(平成20年6月27日閣議決定)にも盛り込まれている。同構想は、アジアにおいて経済成長や環境問題の克服に向けて協働することを基本思想としており、我が国経済が成熟化し、少子高齢化も進展する中、「アジアの発展に貢献し、アジアとともに成長すること」を要とした成長戦略の核として実現させることが重要である。

<総説>クリーンアジア・イニシアティブ
清家弘司 環境省地球環境局環境協力室
▼概要文表示2008年9月号

 「クリーンアジア・イニシアティブ(CAI:Clean Asia Initiative)」は、「アジア経済・環境共同体」構想の軸として、環境省が6月にその詳細をとりまとめて発表したものであり、政府の骨太の方針2008(平成20年6月27日 閣議決定)にも盛り込まれた。環境と共生しつつ経済発展を図るアジアモデルの持続可能な社会の構築を目指すものであり、政策目標として①低炭素型・低公害型社会の実現、②循環型社会の実現、③気候変動に適応し自然と共生する社会の実現を、横断的目標として④市場のグリーン化の促進等を掲げている。今後は、本年10月にベトナムで開催される第1回東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合等の場を活用し、これらの目標の具体化を図っていく予定である。

<総説>「エコプロダクツ国際展」の概要
宮川世津子 国際機関APO(アジア生産性機構)工業企画官
▼概要文表示2008年9月号

 アジア太平洋地域の社会経済発展に寄与するため生産性向上に関する諸活動を行っている国際機関アジア生産性機構(APO:Asian Productivity Organization)は、加盟国であるマレーシア・タイ・シンガポールで、2004年以降エコプロダクツ国際展を開催してきた。本年ベトナムで実施した第4回展(「Eco-products International Fair 2008」)は約10万人の来場者の関心を集めるなど、その規模を拡大させている。現在、APOでは来年3月のフィリピンでの開催を目指して準備を進めている。

<特集>ポスト京都の国際枠組みとしてのセクター別アプローチについて
松橋隆治 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
▼概要文表示2008年7月号

 本稿では、まず地球環境に関する国際交渉の中での気候変動の位置づけを説明し、京都議定書第一約束期間の遵守のための国内方策について述べた。次に、ポスト京都枠組の比較評価の構造について説明する。さらに、クロスインパクト法を用いて各々のポスト京都の枠組が実現する確率を推定した。その結果、多様なバリエーションを持つセクトラルアプローチの関連制度が実現する可能性が示され、本アプローチに関する評価を進めることの有効性が示された。

<特集>ポスト京都の国際枠組み―日本版セクター別アプローチ
澤 昭裕 東京大学先端科学技術研究センター教授
▼概要文表示2008年7月号

 セクター別アプローチについて、その定義、交渉方式、国別目標との関係、排出権取引市場との関係、環境効果性などすべての論点について一貫した考え方を提示した経団連21世紀政策研究所報告書(本年3月)をもとに、ポスト京都議定書の枠組みを考える。このセクター別アプローチ提案は、実際の国際交渉に適用可能であり、将来の国内対策を検討する際の羅針盤ともなる。

<特集>日本鉄鋼業が推進するセクター別アプローチ
三宅隆夫 社団法人日本鉄鋼連盟技術・環境本部長
▼概要文表示2008年7月号

 洞爺湖サミットを前に地球温暖化問題への関心が高まっている。日本鉄鋼業では、かねてより京都議定書の限界を克服し、実効性のある温暖化対策を可能とする仕組みとして、セクター別アプローチを推進し、日中連携、クリーン開発機構に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)、国際鉄鋼協会(IISI)と、それぞれの取り組みにおいて、一定の成果を上げてきた。これらの成果をここに紹介するとともに、鉄鋼業の取り組み事例が、ポスト京都において、一つの有効な解につながることを期待する。

<特集>セメント産業におけるセクター別アプローチ
和泉良人 社団法人セメント協会APPセメントタスクフォースメンバー太平洋セメント株式会社
▼概要文表示2008年7月号

 持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD:World Business Council for Sustainable Development)を基盤としたセメント産業部会(CSI:Cement Sustainability Initiative)は、世界のセメント企業18社の工場別データをもとに、二酸化炭素(CO₂)排出削減に向けたシナリオ策定を検討している。一方、2006年に開始された「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)のセメントTF(タスクフォース)では、技術を基本としたベンチマーキング設定や技術移転の仕組み作りに取り組んでいる。この両者に参画しているわが国は、これらの自主的な取り組みの整合を図る役割を担うと同時に、高効率のセメント製造技術を途上国に普及促進させる「セクター別アプローチ」の実現化に向けて努力してゆく。

<特集>電力におけるセクター別アプローチの取り組み
渡邊広志 電気事業連合会立地環境部長
▼概要文表示2008年7月号

 日本の火力発電所の熱効率は世界最高レベルにあり、エネルギー効率が比較的低い途上国の石炭火力に運転・保守管理技術を普及し、熱効率の改善を図ることで、世界のCO₂削減に大きく貢献できるといえる。我々は、従来より途上国の電力会社を中心に支援・協力を行っており、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)のピア・レビュー活動などを通じ日本のベストプラクティスをより多くの国で共有できた場合のCO₂削減ポテンシャルは約18.7億tとも試算される。こうした先進国と途上国が協力し合う仕組みであれば、経済成長と地球環境保全の両立が可能であり、途上国が参加するインセンティブにもつながるものと考えられる。

<特集>電機(電子)のセクター別アプローチ
斎藤 潔 電機・電子温暖化対策連絡会社団法人日本電機工業会環境部
▼概要文表示2008年7月号

 電機・電子産業は、原子力発電の推進や火力発電の高効率化、新エネルギー機器の普及拡大による発電部門での低炭素電力供給、トップランナーの省エネ機器開発などによる民生や業務部門などでの省エネルギーなど、エネルギー需給の両面にかかわる様々な技術・機器のイノベーションで省エネ・低炭素社会の実現に大きく貢献できることが特徴である。それら技術・機器のグローバルな事業展開に伴い、各国及び途上国を含めた世界市場で、低炭素・省エネ機器が普及することで地球規模でのCO₂排出削減が具現化できる。我々は、「グローバルなグリーン市場の形成・拡大とCO₂排出削減に向けて、技術・機器のイノベーションで貢献する」との方針の下、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)などの活動を通じて、主として省エネ製品の国際的な普及促進の観点から、電気機器セクターの取り組みを進めている。今後、セクター間の協力で、エネルギー需要が急増する途上国においても省エネ機器普及促進の政策・制度、市場形成などが推進されることで、地球規模での持続可能な発展につながる。同時に、途上国が、温暖化防止の国際枠組みに参加するインセンティブにもなりうると考えている。

<特集>排出量取引の現状と課題
塩野谷毅 日本政策投資銀行企業金融第5部次長
▼概要文表示2008年5月号

 今各国は、温室効果ガスの削減による地球温暖化防止という困難な課題克服に向けて種々の取り組みを進めている。その中で注目を集めているのが、排出量取引を活用した対策の実施である。欧州連合(EU)は既にEU-ETSという排出量取引を核とした仕組みを立ち上げており、また、議定書を離脱した米国でも州政府等を中心に排出量取引導入を進める動きをみせている。しかしながら、排出量取引制度については、依然多くの課題を抱えており、今後我が国が排出量取引の仕組みを整備していくとすれば、これらの課題を克服した健全な形での導入が望まれる。

<特集>中国での省エネCDM事業について
青野雅和 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部東京第一本部シニアコンサルタント
▼概要文表示2008年5月号

 中国における省エネCDMが増加しつつある。これは、第11次五カ年計画で公表された「一万元(約15万円)GDPにおけるエネルギー消費率を2010年までに2005年をベースとして20%削減する」の目標に省エネを進める一連の政策と密接に関連する。現在の中国企業の省エネニーズは生産プロセスの改善を優先させているが、本来、古い方式での生産設備が設置されていることから、先進技術にリニューアルすることで、結果的に省エネ効率も生産効率同様にアップする。したがって国の省エネ政策もクリアできる形となるから、必然的に多様な省エネ方式の積み上げを行うのではなく、生産プロセスの改善を優先的に進める風潮が見受けられる。省エネCDMについてはセメント、鉄鋼、コークス業界で占められており、今まさに生産プロセスにおける省エネ効率の改善が政策として求められている業界である。またこれらの一部の企業においては、先に生産拡大を目的とした設備投資は自己投資で、省エネ化事業は余熱発電としてCDM化して外資を利用する戦略をとる傾向もある。一方で、プログラムCDMの事例が出てきたことや、コベネフィットCDMを推進する傾向もでてきており、投資を必要としない運用型の省エネ化や大気汚染、廃棄物処理など環境負荷と温暖化ガス削減の双方を解決できるモデルが中国でも進むであろう。

<特集>CDM促進に向けたODAの活用
須藤智徳 国際協力銀行開発業務部気候変動対策室兼業務課参事
▼概要文表示2008年5月号

 クリーン開発メカニズム(CDM)は2005年2月の京都議定書発効以降急速に登録件数が増加し、ようやく市民権を得てきた感があるが、そのポテンシャルが十分に発揮されているとはいえない。これまでCDM事業に対するODA支援は「ODAの流用」として認められないとの認識があったが、すべてのCDM事業支援でODAの活用が認められないわけではない。CDM市場のさらなる拡大を図りCDMの地理的分布の偏在を解消しつつ、開発途上国の温室効果ガス(Greenhouse Gases:GHG)削減への積極的な参加を促進していくためには、民間企業等がCDM事業を実施しにくい国やセクターにおいて、ODAを活用したCDM事業の実施支援を図っていくことが必要である。

<特集>ポスト京都議定書、国内政策、排出量取引制度
長谷川雅巳 社団法人日本経済団体連合会産業第三本部環境グループ長
▼概要文表示2008年5月号

 政府の各種懇談会・研究会で、洞爺湖サミットに向けて、排出量取引制度に関する議論が進められているが、ポスト京都議定書の国際枠組が議論される洞爺湖サミットに向けて、削減のための手段である国内政策を議論する意義は乏しい。むしろ、国別総量削減目標を前提とする議論だとすれば、米国、中国、インド等の主要排出国の参加を阻害するおそれがある。排出量取引制度を検討するにあたっては、地球温暖化防止に資するか((1)技術開発に資するか、②炭素リーケージが生じないか、③確実な排出削減は可能か)、(2)環境と経済の両立は可能か(①経済活動への規制となるか、②国際競争力との関係はどうか、③経済に対する統制とならないか、④不公平の招来や経済厚生の減少につながらないか)、わが国の温暖化問題の課題と合致しているかといった視点が重要である。他方で、「他の国が導入しているから、わが国も乗り遅れるべきではない」といった観点は、重要とは考えにくい。

<特集>省エネルギー促進に向けたCDMの課題
伊藤葉子 財団法人日本エネルギー経済研究所地球環境ユニット地球温暖化政策グループ研究員
▼概要文表示2008年5月号

 本稿では、省エネルギープロジェクトの促進を念頭にCDM(Clean Development Mechanism(クリーン開発メカニズム))の課題について整理した。省エネのCDMプロジェクトを拡大するには多くの課題が存在するが、CDMの制度運営に係る問題が重要である。まず、省エネの方法論に関する承認の割合が低く、CDMとして実施するため汎用性が限られることが挙げられる。さらに、プロジェクトの登録に際しての審査基準は省エネプロジェクトに相対的に不利な条件を作り出している。また、CDMの方法論やプロジェクトの承認、及びクレジット発行の審査にあたるCDM理事会の運営については、その効率性、独立性についての限界が観察され、改善が求められる。それら問題点等を踏まえ、「プログラムCDM」を含む省エネプロジェクトが本流となるような制度構築に向け、国内外に働きかけを行うことが重要である。

<特集>コベネフィッツ型CDMによる排出権の獲得
佐野真一郎 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部シニアコンサルタント、弓場雄一 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンサルティング事業本部シニアコンサルタント
▼概要文表示2008年5月号

 地球温暖化の深刻化に対する社会の認識が高まるなか、国際的な取組が進められてきた。京都議定書に基づく京都メカニズムは、地球温暖化の直接的な原因である温室効果ガスの削減と、将来的に課題となりうる途上国の持続可能な発展を目的として導入された経済的手法だが、必ずしも途上国の持続可能な発展に寄与しないケースもあることが課題としてあげられてきた。コベネフィッツ型アプローチは、途上国の持続可能な発展と地球温暖化対策の両立を達成する手法として期待されている。

<特集>信託機能を活用した排出量取引
平 康一 三菱UFJ信託銀行株式会社フロンティア戦略企画部環境室
▼概要文表示2008年5月号

 日本でも4月から京都議定書第1約束期間に入ったものの、排出権の取得を通じて温室効果ガス削減にかかわるためには、さまざまな困難が存在する。かかる状況下、国内法の整備も進み、信託機能を活用することを通じて、排出権の取得・管理に関する課題を軽減することが可能となった。排出権の取引を概観し、信託機能を活用した仕組みについて解説するとともに、その活用事例を紹介しながら、今後の課題や展望について考えを述べる。

<総説>COP/MOP3の成果と意義
山口建一郎 株式会社三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部地球温暖化対策研究グループ主任研究員
▼概要文表示2008年3月号

 COP/MOP3(気候変動枠組条約第13回締約国会合兼第3回京都議定書締約国会合)は,2007年12月3日から14日までインドネシアのバリで開催された。議長はインドネシアのウィトゥラル(Rachmat Witoelar)環境大臣であった。 COP/MOP3の最大の成果といわれるのが「バリ行動計画」(Bali Action Plan)である。「バリ行動計画」を中心として,COP/MOP3の意義について解説したい。

<特集>新春対談 持続性社会に向けての産官学の役割
吉川弘之 南 直哉
▼概要文表示2008年1月号

 吉川産総研理事長は東大総長時代に柏キャンパスに新領域創成科学研究科を創設され,産総研では本格研究を推進されている。そこに共通するのはサスティナビリティである。持続可能性に対する人類の知識のあり方,産業の重心移動,自然の経済学の視点,全地球的生産性の視点の重要性等について,南会長と熱く語る。

<総説>ポスト京都議定書に向けた新たな枠組みの提案
澤 昭裕 経団連21世紀政策研究所研究主幹(東京大学先端科学技術研究センター教授)
▼概要文表示2008年1月号

 技術の観点が欠落し,時間的・地域的カバレッジが限定されていることによって,京都議定書は実質的に地球温暖化対策に貢献していない。2013年以降の枠組みを交渉するに当たっては,こうした問題を解決するための新たな思考が求められている。経団連21世紀政策研究所が昨年10月に発表した「ポスト京都議定書に向けた新たな枠組みの提案」では,京都議定書に代わる新たな国際協力の枠組みを具体的に示している。主要排出国がすべて参加し,排出権取引によらずに実質的な温暖化ガス削減につながるCommit&Act方式がそれである。

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