環境管理バックナンバー 2009年 6月号

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2009年6月号 特集:環境会計の新展開

<特集>

環境の変化と環境会計の動向
河野正男 中央大学経済学部教授
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 環境省の調査によると、自主的取り組みとしての環境会計の導入企業数が2007年に初めて減少に転じた。他方、財務会計制度の下で公表される損益計算書および貸借対照表への環境関連項目の開示企業数は増加しているが、いまだ第1部上場企業の1割程度であり、また、環境会計情報の企業内利用にかかわる環境管理会計実施企業数は環境会計導入企業の3~4割程度と考えられる。中長期的には、環境保全活動が従来に増して推進されると予測されることから、環境会計の諸分野の一層の展開が、そして諸分野の環境会計実施企業数も増加することが期待される。

環境会計の普及と評価
松本秀一 環境省総合環境政策局環境経済課課長補佐
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 環境会計は,環境保全のためのコストとその活動により得られた効果や環境保全対策に伴う経済効果を,可能な限り定量的に把握・分析し,公表するためのツールである。環境省では,環境会計に関する共通の枠組みの構築等を目的として,ガイドラインを作成・公表し,その普及促進を図っている。近年,環境保全意識の向上に伴い,環境会計を導入する企業が増えているが,環境配慮製品の普及に伴い,差額・按分集計が行いにくい,ストック概念が包含されていない等の課題がある。今後,これらの指摘も踏まえ,ガイドラインの改訂が検討される予定である。

資産除去債務の会計
阪 智香 関西学院大学商学部教授
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 会計基準の国際的なコンバージェンス(統一化)作業の一環として,わが国では2008年3月に,資産除去債務の会計基準とその適用指針が公表された。この会計基準は,これまでにない負債と資産の両建て計上などを求めている。そこで,資産除去債務とは何か,資産除去債務の会計処理のポイントについて,この会計処理の背景にある考え方も含めて取り上げ,さらに,既に同様の会計基準をもつアメリカでの研究結果をもとに,この基準が企業の財政状態や利益に及ぼす影響や,企業がとるべき対応についてふれたい。

土壌汚染の会計
植田敦紀 LEC大学総合キャリア部講師
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 従来土壌汚染が企業の会計対象として認識されることは少なかったが,2002年に「土壌汚染対策法」が制定され,2009年には同法改正案が国会に提出された。また財務会計領域においても,2008年に「資産除去債務に関する会計基準」が制定され,土壌汚染を債務として認識するケースが明文化された。こうした法律,および会計基準の整備・制定に伴い,企業の土壌汚染は会計対象としての認識が高まると同時に,適正な会計処理方法の確立が求められている。そこで本稿では,法制度,会計制度の展開を踏まえた上で土壌汚染の会計を思量する。

排出量取引の会計
村井秀樹 日本大学商学部教授
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 排出量取引の考え方は,新しいものではない。これは,経済学的にみれば,市場メカニズムを活用し最小のコストで最大の効果を上げる非常に合理的な制度である。2008年から京都議定書の第一次約束期間が開始し,国内外で様々な施策によって温室効果ガス(GHG:Greenhouse gases)を削減しようとしている。実際の排出量取引制度をみると,その手法は国や地域によって多種多様である。それゆえに,排出量取引における法的な整備や会計制度並びに税制の基準が確立されていない状況である。本稿では,特に排出量取引のインフラとしての会計基準に焦点を当て,これまでの会計基準の変遷と現状,そして今後の課題を考察する。

わが国における環境管理会計の展開―マテリアルフローコスト会計を中心とした検討
伊藤嘉博 早稲田大学商学学術院教授
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 マテリアルフローコスト会計(MFCA)は,研究においても,また実務においても,近年わが国の環境管理会計の主流となった感がある。事実,すでに100社を超える導入・試行企業があるといわれるが,成功事例がある一方で,目立った成果を挙げられずに頓挫したケースも少なくないようだ。本稿では,このMFCAを中心に,わが国の環境管理会計の現状を明らかにしたうえで,MFCAから得られる情報を具体的な改善施策に結びつける支援ツールの必要性と,サプライチェーンへの拡張に関する課題について検討する。

<総説>

阻集効率99.5%の流し台型油阻集器の効用
佐藤秀雄 株式会社大都技研代表取締役
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 一般に飲食店では,油が混じった水をそのまま排水として流し,下水処理場で生物浄化処理を行っている。流された油は排水管や下水道管の目詰まり,悪臭の発生の原因となり,排水処理費用の上昇を招くことになる。また,排水に油が多く含まれていると浄化槽がうまく働かず,流れ出た油は河川・湖沼・海の水質悪化を引き起こす。これら混油排水処理の問題を解決するには,従来の排水処理の発想を変えなければならない。本稿では,油脂分を含む排水を厨房排水の最上流部である流し台で油と水に分離する新しい技術の事例を紹介する。これにより,規制のかからない小規模事業者の排水問題の解決や,大規模事業者の排水処理のコスト削減,省エネ等が可能となる。

<解説>

環境対策のための支援措置の概要
斉藤千佳子 社団法人産業と環境の会企画課
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 平成21年度の税制改正により,環境対策のための支援措置については,揮発性有機化合物排出(VOC)抑制装置及びエネルギー需給構造改革投資促進税制(エネ革税制)の適用期限の延長等が行われた。また,税制全体のグリーン化を推進するとのことからの自動車取得税の見直しや,省エネ・新エネ設備等の投資促進に関する税制措置が講じられた。なお,財政投融資計画(全体)は,10年振りに対前年比で増加となった。

<シリーズ>

【環境法の新潮流64】自動車NOx・PM法改正の問題点
浜島裕美 明海大学不動産学部准教授
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 自動車NOx・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)は,自動車から排出される窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)による大気汚染が著しい特定の地域を対策地域に指定し,排出総量の削減を図る目的で制定された法律である。しかし,車種規制の及ばない対策地域外からの流入車による影響で局地的汚染が継続していたため,平成20年1月1日に法律の改正が行われた。局地汚染対策地区を新設し,流入車対策を設けたのがおもな特徴だが、交通インフラ上の要因もあり,今後取り組むべき課題も多い。

【実践マテリアルフローコスト会計45】MFCAによる廃棄物削減活動のインプロセス化
田村政也 キヤノンファインテック株式会社化成品事業企画部長
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 キヤノンファインテック㈱福井事業所は2004年にマテリアルフローコスト会計(MFCA)導入し,順次全職場に展開してきた。導入前は廃棄物削減活動として有価物化・減容化などのエンドオブパイプが中心だったが,導入後は生産活動における環境負荷低減へ意識改革し,環境保証活動とコストダウン活動を同軸化することでインプロセス化を図った。その結果,2007年までに廃棄物削減は不良発生削減を中心に400tを超えた。また,2007年以降は標準作業の見直しによる投入マテリアル削減に取組み,年間20t程度の廃棄物削減の目処がついた。

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