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環境管理バックナンバー カテゴリ:展望・日本のエネルギー問題を考える
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える67】第7次エネルギー基本計画が示すべきこと
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2024年7月号 -
エネルギー政策基本法第12条は、政府がエネルギー基本計画を定める義務を規定しており、その第5項は「少なくとも三年ごとに、エネルギー基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。」と定める。現行の第6次エネルギー基本計画は、2021年10月に決定されているため、政府の委員会において検討がはじめられた。
一方でパリ協定は、締約国に対して5年ごとにNDC(Nationally Determined Contribution, 自国で決定する貢献)を更新することを求めており、来年2月までに提出せねばならない。
わが国のエネルギー政策の方向性が、これらにおいてどのように示されるのか、エネルギー事業の関係者は極めて高い関心を持っている。しかし、それぞれの位置づけや役割も変化しており、今回の第7次エネルギー基本計画及びNDCでは何が示されるのか、何を示すべきなのかを考えたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える66】GX 実行の第2フェーズに向けて ― 第11回GX実行会議の議論の"読み方"―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2024年6月号 -
GX実行会議は、2022年7月に立ち上げられ、2023年末までに10回開催された。設置から半年間で5回開催され、2022年末にGX 基本方針を策定し、翌年2月には同方針の閣議決定に至っている。この方針に基づいて、2023年5月には「GX推進法」、「GX 脱炭素電源法」が相次いで成立し、わが国のGX は船出した。
バックボーンとなる法整備ができたところで求められるのは、戦略の策定である。法制定後初めての開催となった第6回GX実行会議では、各国のGX戦略の分析やわが国の産業分野別の今後の道行きが描かれ、速やかな戦略策定に向けての議論が行われた。それを受けて7月には「GX推進戦略」が閣議決定されている。
その後、産業分野別に支援のタイミングや規模などについての議論を進める一方で、その支援の償還原資となるカーボンプライシングについて第7回で議論が進められた。分野別投資戦略の議論は、GX実行会議の下に設けられたワーキングも含めて進められ、昨年12月に開催(持ち回り開催)された第10回GX実行会議でその概要が提示された。
このように、わが国のGXの実現に向けて実は議論が着々と進められてきた。そして5月13日に今年初となる第11回が開催されたが、ここからわが国はどのようにGXを加速化・具体化させていくのか。これまでの議論を踏まえ、GX実行会議での議論の“読み方”を共有したい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える65】わが国の電力システム改革はなぜ行き詰っているのか どう改善していくべきなのか ― 電力・ガス基本政策小委員会でのヒアリングを踏まえて―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2024年4月号 -
わが国のカーボンニュートラルの達成とエネルギー安定供給の確保に向けて、電力システム改革の修正が必要であることは、これまでも繰り返し指摘してきた。経済産業省は現在、2015年に成立した改正電気事業法の附則の定めにしたがって、これまでの改革の成果の検証を進めており、その中で必要な改革の修正に向けた議論を本格化させる方針だ。筆者も2024年2月開催の第70回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会で行われたヒアリングに招聘され私見を述べる機会を得た。そこで筆者が伝えようとしたことをベースとして、わが国の電力システム改革はなぜ行き詰っているのか、どう改善していくべきなのかを考えたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える64】電力問題・原子力発電に関する報道を考える
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2024年3月号 -
エネルギー問題のなかでも特に電力問題は、わかりづらい。瞬時瞬時で需要と供給を一致させなければならない「同時同量」をはじめとする電気の物理的・技術的特性はもちろんのこと、加えて外交や国際情勢、環境問題、経済学などとにかく幅広い知識と視点が必要とされるにもかかわらず、わが国では総合的に学ぶ機会はほとんどないのだから、一般の方がとっつきづらいと感じるのは当然だろう。
メディアによる情報提供が極めて重要な役割を担うこととなるが、電力問題や原子力発電に関する報道には、その正確性に首をかしげざるを得ないものも多い。一部には、大手電力会社や原子力発電に負のイメージを与えることが目的化しているのではないかとすら思わされるものもあるのは残念なことだ。批判すべき点は批判すべきで、それが政策や事業の健全な発展に寄与すると筆者は考える。しかし、昨今の電力問題・原子力発電に関する報道は、批判が目的化していないだろうか。最近の報道を振り返って考えてみたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える63】COP28の成果と宿題
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2024年2月号 -
2023年は観測史上最も気温が高い1年となり、気候変動問題への関心は高まる一方だ。COP28への参加登録者数は7万人を超えたという。筆者がこの交渉プロセスに参加し始めたのは15年近く前になるが、その時は政府間交渉の場としての意義が大きく、これほど多様なステークホルダーが参加するイベントになるとは想像しなかった。
5年に1度のグローバル・ストックテイク(GST;パリ協定の目的および長期的な目標の達成に向けた全体としての進捗状況の評価)が初めて行われることもあり、注目を集めたCOP28はどのような成果を上げ、どのような宿題を残したのかを考えてみたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える62】「大手電力会社1兆円の黒字」のからくり― 電気料金の基礎を知ろう―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2023年10月号 -
食品やガソリンなど生活必需品の物価上昇が続き、電気料金にも大きな関心が寄せられている。電気は、生活・経済にとって死活的に重要な財であり、料金上昇は特に弱者に大きな影響を与える。電気料金の変動に関心が高いのは当然だが、原価の構造や既に自由化されていることも十分に理解されておらず、メディアの報道も正確ではないものが多い。
本稿では、消費者からは見えづらい電気料金について、基礎的な点も含めて整理したい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える61】電力自由化の再設計に向けた提言 ― 各国研究者が提唱する「ハイブリッド市場」を踏まえて考える―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2023年7月号 -
政府は2022年、GX実行会議を開催し、12月には化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するGX基本方針を策定した。温室効果ガス削減だけでなく、わが国の成長戦略としてクリーンエネルギーへの転換を進めるというその方針は、GX実行会議において多くの賛同を得た。しかし一方で、2021年1月における全国的な電力需給逼迫以降、電力供給力の不足がたびたび発生している。電気は、瞬時瞬時で需要と供給を一致させる「同時同量」というデリケートな物理的制約を負い、その制約をクリアして安定的に供給されることが人々の生活・経済にとって極めて重要である。長期にわたるトランスフォーメーションの過程で、電力の安定供給に支障が生じるようなハードランディングは回避しなければならない。第1回のGX実行会議において多くの委員が指摘したのも、電力の安定供給確保と価格抑制に対する強い問題意識であった。そのため、政府は「脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革に向けてのロードマップ」を策定する前提として、「日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策」を論点に掲げ、電力分野については、まずは足元の危機(電力供給力不足)に対して既存の政策を総動員する一方、「電力システムが安定供給に資するものとなるよう制度全体の再点検」を行うことを表明している(第2回GX 実行会議資料)。
しかし、安定供給と脱炭素化を両立し、わが国が目指す電源構成を実現するには、これまで世界中で行われてきた電力システム改革の考え方自体が再考の時期にあることを考慮する必要がある。海外の研究者の論考等を踏まえて、わが国の電力システム改革の再設計に向けた考察を行いたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える60】原子力発電所の稼働期間延長に関する考察
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2023年4月号 -
岸田政権が2023年2月に閣議決定したGX基本方針は、徹底した省エネの推進や、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用、水素・アンモニアの導入促進などを含む14の取り組みと、「成長志向型カーボンプライシング」の素案を掲げる。原子力発電については、原子力規制委員会による安全審査に合格し、かつ、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進めるという従来の方針に加えて、次世代革新炉の開発・建設に取り組むこと、既存の原子
力発電所の活用に向けて一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることが明記された。
筆者の見解としては、技術の新陳代謝によって、安全性や効率性を高めていくことが技術利用における基本であると考えているが、「まだ使える」原子力発電所を早期に廃止することは国民経済にとってはマイナスとなるし、特
にわが国においては福島第一原子力発電所事故の経験を経て、安全規制を抜本的に見直して対策を行っている。安全性にかかわる事柄であり、科学的知見に基づく議論が必要とされるが、この運転期間の制限に関しては、どのよ
うな経緯で追加的な延長を認めるという判断が為されたのであろうか。報道も表層的なものが多く、議論の全体像が分かりづらい。これまでの経緯を整理し、GX 基本方針が謳う原子力の活用に向けて何が必要なのかを述べたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える59】GX と整合的なカーボンプライシングとは ― GX実行会議での提言を踏まえて―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2023年2月号 -
2022年の暮れも押し詰まった12月22日、官邸で開催された第5回GX実行会議では、それまで交わされた議論を踏まえて「GX実現に向けた基本方針(案)~今後10年を見据えたロードマップ~」が示され、概ね構成員の賛同を得た。
徹底した省エネの推進や、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用、水素・アンモニアの導入促進などを含む14の取り組みと、「成長志向型カーボンプライシング」の素案が示されている。26ページに及ぶこの基本方針は、2023年1月22日までパブリック・コメントを受け付け、その後今年の通常国会で必要な法案審議など、議論の具体化が進められることとなっている。
メディアでは原子力政策の転換にばかり注目が集まるが、長年検討されながらも先送りされてきたカーボンプライシングについて具体的な方針が示されたことは、この会議のもう一つの「成果」といえるだろう。しかし「成長志向型カーボンプライシング」とはどのような制度を指すのか疑問に思っている方も多いであろうし、制度の全体像が見えずに戸惑っている方も見受けられる。本稿では、GX実行会議で打ち出されたわが国のカーボンプライシングの構想を整理し、その制度をより良いものとするための私案を提示する。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える58】わが国のGX をどう進めるか ― COP27の概観と第三次オイルショックを踏まえて考える―
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2023年1月号 -
新型コロナウイルスのパンデミックによる混乱もようやく収まりつつあり、わが国でも「3年ぶり」が今年の世相を表す言葉として多く使われている。筆者もまさに「3年ぶり」にエジプトの紅海沿岸のリゾート地シャルム・エル・シェイクで開催されたCOPに参加してきた。一昨年はCOP開催が見送られ、昨年英国・グラスゴーで開催されたCOP26は大事をとって不参加であったので、久しぶりのCOPである。ロシアによるウクライナ侵攻という新たな危機も加わり、世界はまさに今「第三次オイルショック」というべきエネルギー危機に直面している。
わが国も、2021年10月、菅義偉前総理大臣が「2050年のカーボンニュートラル実現」を掲げてから、それを実現する政策の一つとしてカーボンプライシングの検討を加速させていたが、現下のエネルギー価格の高騰に伴い、ガソリン、電気・ガス等のエネルギーに補助金を出すという、真逆の政策を余儀なくされている。
各国が気候変動政策とは逆行するような施策を採らざるを得なくなっている現状を踏まえ、どのような議論が交わされるのか、世界はこの長期的な課題とどう向き合おうとしているのかを実際に把握したいと考えて参加したCOP27で得た雑感とあわせて、岸田政権の目玉政策として議論されているGX(グリーン・トランスフォーメーション)について考える。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える57】FIT 制度10年の評価と検証
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2022年11月号 -
本年7月で、わが国がFIT制度を導入してからちょうど10年が経過した。この間、日本の再生可能エネルギー(以下、「再エネ」という)を巡る状況は大きく変化した。わが国の再エネ普及は急速に進み、再エネ発電設備導入量は世界第6位、太陽光発電についていえば世界第3位となっている。再エネは基本的に太陽エネルギーを受け止める土地面積の取り合いであるので、平地が乏しく、そこに人口が密集して住んでいるわが国は有利な条件に恵まれているとは言い難い。中国、米国というわが国の25倍の国土を持つ国に次いで太陽光発電導入量3位に至っているのは、2012年7月に開始した全量固定価格買い取り制度(以下、「FIT」という)による支援の成果であるといえよう。
しかし、再エネ導入量だけで政策を評価することはできない。費用対効果やその他の政策目的との共存など、総合的な評価と検証を行うことが、今後の再エネ導入政策をよりよくするうえでは重要だ。10年という節目に当たり、FITの評価と検証を行いたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える56】日本の原子力は復権するのか?(3)需給ひっ迫の背景要因についての考察と対策―原子力稼働との関係から
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2022年8月号 -
電力供給の安定性確保には、①発電設備の十分な確保(kW)、②燃料の十分な確保(kWh)、③送配電ネットワークの強靱性確保といった3つの側面からの取り組みが必要となる。設備投資がカギを握る①および③についてはこれまでわが国で課題とされることはほとんどなく、化石燃料資源を海外に依存するわが国にとって、電力安定供給とは長年燃料調達の安定性確保が重要であるとされてきた。コロナからの各国の経済復興と、それまでの化石燃料開発投資停滞によるエネルギー価格高騰に加え、ウクライナ危機により特にLNG(液化天然ガス)の国際的争奪戦が始まる中で、②の燃料の十分な確保は引き続きわが国の電力供給における最重要課題である。しかし毎夏冬に需給ひっ迫が懸念される事態となり、発電設備の確保に課題があることが明らかになってきた。また、人口減少・過疎化が進む中で送配電ネットワークの強靱性を維持する投資が困難になりつつある。自然災害が増加・激甚化するなかで今後は送配電網への投資の費用対効果をどのように考えるかについても社会的議論の必要性があろう。
今回は、発電設備の十分な確保について考えたい。初となる電力需給ひっ迫警報が発令された本年3月22日は、結果的に計画停電および広域大停電に陥るような事態は回避できた。しかしこの日電気は「足りた」のかと言えば、「足らせた」と表現した方が正確だと考えられる綱渡りの供給であった。当日採られた施策の中には、顧客の需要抑制(デマンドレスポンス)や節電行動だけでなく、電圧調整、火力増出力運転、信頼度低下をともなう連系線マージン利用といったリスクをともなう対策も総動員されている。また、翌日には天候が回復して需要減少、太陽光発電の発電量増加を見たが、翌日も悪天候であれば停電に陥ることは避けがたかったと考えられる。
こうした課題認識は、戸田[2022]などに示されているが、発電設備の不足が需給ひっ迫の原因ではないとする論もある。原因を見誤れば対策は当然異なるのであり、今回はわが国の発電設備の十分な確保に関する課題について考察する。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える55】日本の原子力は復権するのか?(2)原子力規制行政の在り方について
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2022年7月号 -
技術の利用は、安全規制によって多大な影響を受ける。安全規制は技術の生殺与奪を握っているといっても過言ではないだろう。規制の役割は、その技術の利用にあたって満たすべき安全基準を設定し、それに合致しているかどうかを確認することであり、安全規制が適切にその役割を果たして社会の信頼を得ることは、社会がその技術利用を受容する前提条件と言える。安全規制が適切に機能せず、事故やトラブルが発生すれば社会はその技術利用によるメリットよりも、デメリットの方が大きいと判断するだろう。原子力技術の場合は特に、立地地域の住民が安全規制を信頼できなければ、稼働に対する同意が得られない。逆に安全規制が厳しすぎて事業性が成り立たなくなったり、内容の改変が頻繁に行われるなど予見可能性が無ければ、事業者はその技術への投資判断ができず、市場に参入することができなくなる。その技術は社会にとって存在しないものとなる。
このように、安全規制の役割は非常に大きく、また、高度なバランスが求められる。わが国は福島第一原子力発電所事故以降、安全規制を抜本的に見直したが、その際に議論を十分に重ねたといえるのだろうか。規制組織の体制から見直しを行い、活発な議論が行われていたとはいえ、当時の国会での議論や報道を見れば、基本的には過去の否定が主で、規制のあり方までさかのぼった議論が十分行われていたとは言い難い。
筆者は去る6月8日、衆議院の原子力問題調査特別委員会に参考人として招致され、意見陳述する機会を得た。その際の議論を主として、原子力規制行政の在り方を考察してみたい。
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<シリーズ>【展望・日本のエネルギー問題を考える54】日本の原子力は復権するのか?(1)原子力の緊急再稼働の必要性と可能性を考える
竹内 純子(NPO 法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員/東北大学特任教授) ▼概要文表示2022年6月号 -
気候変動問題への危機感の高まりや、コロナからの経済復興にともなう化石燃料価格の高騰、ウクライナ危機、そして電力需給ひっ迫など、危機が危機を上書きするような状況が続き、エネルギー政策が見直しを迫られている。見直しといっても、これらの課題に対処するには化石燃料への依存度低減を進めていくことが肝要であり、省エネルギーの重要性や再生可能エネルギー(以下、「再エネ」という)の導入拡大が見直されるわけではない。誤解を恐れずに言えば、企業や消費者にとって脱炭素にむけた省エネや再エネへの投資は、これまでSDGsなど社会的な「やらねばならぬ」であったが、今後化石燃料価格の高騰が当面続くとすると、コスト対策の観点からの「やらねばならぬ」に代わることとなる。しかし、省エネや再エネの拡大には長期の時間を要する。
燃料調達の不安定化に加えて、発電設備の余力も薄くなっている。電力自由化と再エネ導入拡大により、火力発電所の廃止が続いているのだ。経済産業省の資料には、「2016年度からの5年間、休止等状態の火力が増加しつつ、毎年度200~400万kw程度の火力発電が廃止となっている」とある(第46回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会)。こうした状況から、予備率は低下を続けており、今年3月22日には政府からはじめて「電力需給ひっ迫警報」が発出されるに至ったうえ、来年1月、2月には東京電力管内の予備率は▲1 .7%、▲1 .5%になるとの見通しが示されている(第72回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会)。我が国が電源不足に陥っていることはもはや否定しがたい事実となっている。
こうした状況において、我が国では既存の原子力発電を活用すべきとの声も上がっているが、実際に原子力発電を緊急で活用することは可能なのだろうか。原子力規制員会の審査の進展状況等により、具体的にどの程度が「戦力」として見込めるのかについて考察したい。*2022年6月よりシリーズ名が変更となりました。