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<特集>環境汚染賠償責任保険EIL企業の環境賠償責任を移転する、リスクトランスファー
大岡 健三(一般社団法人産業環境管理協会 環境管理部門 技術参与)
▼概要文表示2024年10月号
環境汚染賠償責任保険(EIL)は環境汚染に特化したリスクを外部に移転できる損害保険で、環境汚染クレームをトリガーとする保険である。具体的には、第三者の身体障害や財物損壊に対する損害賠償金、汚染物質の除去や環境修復・対策にかかわる浄化対策費用、さらに、争訟に伴う弁護士費用や裁判費用などが支払われる。筆者は、EILの保険約款作成に加え保険引受けノウハウ構築に従事し、保険アンダーライターとして1992年に国内で初めてEILを引受けた経験を持つ。そこで本稿では事例を引用してユニークなEILについて興味深い解説をする。
<特集>近年の自然災害を踏まえたBCPの 点検・見直しのポイント
飛鳥馬 隆志(SOMPOリスクマネジメント株式会社 BCMコンサルティング部上席コンサルタント)
▼概要文表示2024年10月号
近年は大きな被害をもたらす災害が各地で頻発しており、事業継続に大きな障害が発生した企業も増えてきている。今後も国内外を問わず、自然災害やその他事象を原因とする危機は頻発し、企業活動がグローバル化かつサプライチェーンが複雑化する中で、事業を中断させる要因が増える一方であることが予想され、BCPおよびそれを継続的に改善しながら洗練させていくBCMのニーズはますます高まっていくといえる。本稿はすでにBCPを策定済みの企業のご担当者を主な読者層と想定し、BCPの点検・見直しのポイントについて紹介する。
<特別寄稿>資源循環を睨んだ「欧州重要原材料法(CRMA:Critical Raw Material act)」について(前編)―法規制定に至る、EU委員会及びJRCでの検討―
浅田 聡(一般社団法人産業環境管理協会 国際化学物質管理支援センター)
▼概要文表示2024年10月号
欧州資源循環政策の一環として、欧州重要原材料法(CRMA)が、2024年5月3日に公布された。本法では、将来需要と供給リスクの観点から、重要原材料(CRM:34品目)と戦略原材料(SRM:17品目)を定めるとともに、2030年に向け戦略原材料の消費の少なくとも①10%を域内採掘、②40%を域内で中間処理、③25%をリサイクル原料とする目標とともに、特定の国からの輸入比率が65%を超えないものとしている。ここでは、本法策定にあたり、EU委員会、JRC等が報告した、重要原材料の需要と供給予測の報告及びリチウムイオン電池及び駆動モータに使用している重要原材料のサプライチェン解析結果を概説するとともに、重要原材料法の概要を2回に分け解説する。
<特集>乾式メタン発酵システムにおける微生物組成の解析とバイオガス発生量予測手法の開発
羽部 浩(国立研究開発法人産業技術総合研究所 環境創生研究部門 副研究部門長)
▼概要文表示2024年9月号
乾式メタン発酵は、固形廃棄物の処理が可能、また廃水処理を必要としないなどの利点がある一方で、期待したバイオガス量が得られないことも多い。
株式会社富士クリーンと香川県産業技術センター、産業技術総合研究所の研究チームは、国内最大規模の乾式メタン発酵システムを用いて、様々な廃棄物からのバイオガスの発生に関して、運転データを2年間取得した。
各種運転条件や発酵槽内の微生物組成、バイオガス量の関係を解析した結果に基づき、廃棄物の種類や投入量の因子などからバイオガス発生量を正確に予測する手法を開発した(予測精度R2=0.975)。
<特集>戦略的都市鉱山実現のための資源循環技術の研究開発
林 直人(産業技術総合研究所 環境創生研究部門 資源価値創生研究グループ 研究グループ長)
▼概要文表示2024年9月号
環境創生研究部門では、産総研発の資源循環思想であり、動脈・静脈産業の連携に基づく計画的な都市鉱山構築を図る戦略的都市鉱山思想の実現を目的として、国家プロジェクトを中心に研究開発を実施してきた。資源価値の高い廃小型家電製品を対象とし、供給から内蔵電子素子の種類別回収までを自動・自律的に行う無人選別システム(CEDESTシステム)のベンチスケール機が完成し、実証試験に移る段階にある。現在、さらに対象範囲を拡大し、かつ水平リサイクルのために回収する素材種も増やしたプロジェクトを実施中であり、近未来の高度循環型システムの構築を目指して精力的に研究開発を推進している。
<特集>ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の測定技術と標準化の現状と展望
谷保 佐知(産業技術総合研究所 環境創生研究部門 環境計測技術研究グループ 研究グループ長)
▼概要文表示2024年9月号
ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は、優れた物理的・化学的性質を有することから様々な用途に製造・使用されてきたが、一部のPFASは残留性や有害性などが指摘されるなど、適切な管理が求められている。しかし、PFASを対象とした環境課題や化学物質規制は、対象となる化学物質が多岐にわたるため、測定対象を限定した測定や対策では対応が困難である。本稿では、現行のPFASの測定技術と、今後の研究や技術開発の課題に焦点を当て紹介する。
<特別寄稿>グリーンウォッシュに関する日本の現状と展望
池田 直樹(弁護士法人あすなろ あすなろ法律事務所 弁護士/関西学院大学 教授)
▼概要文表示2024年9月号
環境に配慮する企業イメージの発信と現実の環境パフォーマンスのギャップを鋭く告発するグリーンウォッシュ。その批判は、素材・品質・機能に関する商品情報に限らず、ゼロ・カーボンなど企業のブランディング情報にも及びうる。公正競争政策の一環としてEUでは規制が強化されつつある。CO2オフセットに依拠したネットゼロの主張を違法としたKLMオランダ航空事件判決はその象徴である。国際市場に関与する日本の事業者としては、日本の立法・行政・司法の「消極性」と自主規制の「緩さ」を自覚し、国際競争力維持のための公正な対応が必要である。
<特集>地熱発電所見学記 東北自然エネルギー(株)雫石事業所を訪ねて
本誌編集部
▼概要文表示2024年8月号
2023年12月のエコプロダクツ展で、JOGMECの地熱発電のブースを見学したのを機に、地熱発電はどうなっているのか、気になっていた。今回、東北自然エネルギー(株)雫石事業所にお邪魔させていただき、同社が管理する葛根田蒸気基地を見学し、お話を伺った。
<特集>地熱発電と地域振興 岩手県八幡平市を訪ねて
本誌編集部
▼概要文表示2024年8月号
2023年12月のエコプロダクツ展におけるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)の地熱発電のブースの一角に、岩手県八幡平市、北海道森町、秋田県湯沢市が出展されていた。今回、日本で最初の商用地熱発電所である松川地熱発電所がある八幡平市にお邪魔させていただき、地熱発電に係る地域振興の取組についてお話を伺った。
<特集>地上部の環境に配慮した施設建設事例 〜品川シーズンテラス・芝浦水再生センター〜
内池 智広(大成建設株式会社 クリーンエネルギー・環境事業推進本部)
▼概要文表示2024年8月号
広大な面積を有する下水道施設は、地下に建設しその上部を有効活用することによって、都市部では稀有な広大な敷地を創出するポテンシャルを有している。芝浦水再生センターでは、雨天時貯留池の整備に併せて環境配慮型のオフィスビルと約3.5haもの広大な緑地空間がその上部に創出された。そこでは、水を扱う施設の特性を活かし、下水処理場で高度処理された再生水を含めた水の有効利用が図られている。また、創出された緑地は、都市域の冷涼な風の道の確保、生態系ネットワークへの寄与など、多面的な効果を発揮するグリーンインフラとして機能している。
<特集>地下神殿を訪ねて ― 埼玉県・首都圏外郭放水路見学レポート
本誌編集部
▼概要文表示2024年8月号
埼玉県春日部市にある洪水対策施設、首都圏外郭放水路を見学した。
本稿では施設の概要、建設背景にある土地の特徴と過去の水害状況、建設後の治水効果などについて、見学時の所感を交えつつレポートする。
<特集>地熱発電開発の地域共生に向けて
窪田 ひろみ((一財)電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 研究推進マネージャー・上席研究員)
▼概要文表示2024年8月号
地熱発電開発は、周辺の温泉や地下水など地下資源、生態系や景観といった自然環境の保全と調和、地域社会との共存・共栄など配慮すべき点が多い。持続可能な地熱発電開発の円滑な遂行には、まずは事業者側が地域状況について十分調査・理解することが重要である。その上で、開発段階や地域特性に応じ、熱利用も含めた貢献策について地域関係者と相互理解を深めながら共に考え、共生・共創できることが望ましい。そこで本稿は、地熱発電開発における地域共生の現状と今後の課題について、地下環境・地上環境・地域社会の観点から紹介する。
<追悼>編集委員・小島圭二先生を偲んで 〜環境を支える地下の展望(要約再掲)〜
本誌編集部
▼概要文表示2024年8月号
小島先生を偲び、先生が本誌2010年8月号にご寄稿いただいたご論文「環境を支える地下の展望」を要約して再掲する。今号の特集記事の総説としてお読みいただくと、小島先生の先見性が感じとれると思う。小島先生のご冥福をお祈りするとともに、何より先生の大いなる知的好奇心と開拓精神に敬意を表し、心より御礼申し上げたい
<レポート>『 公害防止管理者等国家試験』合格者 インタビュー
本誌編集部
▼概要文表示2024年8月号
「公害防止管理者等国家試験」は毎年10月初旬(今年は10月6日)に実施される。2022(令和4)年度に見事合格された日産車体(株)・河内 昌夫さんを訪ねて、合格への道のりや学習方法についてインタビューを行った。
<特集>エネルギー・温暖化をめぐる国際情勢と 原子力の役割
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 特任教授)
▼概要文表示2024年7月号
ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス戦争等を背景にエネルギー安全保障を取り巻く国際情勢は不透明度を深める一方、温暖化防止の面では1.5℃目標がデファクトスタンダード化する等、野心レベルが強化されている。
2023年12月のCOP28(ドバイ)はこのような状況下で開催された。COP28はパリ協定に基づくグローバル・ストックテイクの第1回目を完了する「節目のCOP」であった。グローバル・ストックテイクは、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達成に向けた進捗を評価する仕組みであり、その評価結果は、各国の行動および支援を更新・強化するための情報や、国際協力を促進するための情報となる。グローバル・ストックテイクにおいては今後の削減経路、エネルギー転換の考え方等が大きな争点となり、我が国の今後のエネルギー環境政策にも大きな影響を与えることが予想される。本稿ではグローバル・ストックテイクの結果とその地政学的意味合い、我が国への影響について考えてみたい。
<特集>海生研で実施されている海洋放射能調査の概要
杉原 奈央子((公財)海洋生物環境研究所)神林 翔太((公財)海洋生物環境研究所)松本 陽((公財)海洋生物環境研究所)城谷 勇陛((公財)海洋生物環境研究所)小林 創((公財)海洋生物環境研究所)
▼概要文表示2024年7月号
2023年8月にALPS処理水の放出が開始され、海洋におけるトリチウムの挙動が社会的に注目されている。(公財)海洋生物環境研究所では1984年から海洋における海洋放射能モニタリング事業を受託し、実施してきた。東電福島第一原発事故後は福島県周辺海域や東京湾における調査、水産物のモニタリングに加えてALPS処理水放出に対応したモニタリングも行っている。
本稿では海生研で実施している放射能モニタリングについてご紹介する。詳細なデータや解析結果についてはオンラインで公開されている調査報告書を御覧頂きたい。
<特集>高レベル放射性廃棄物の地層処分事業の動向
志賀 有美(原子力発電環境整備機構(NUMO)広報部 教育支援グループ 主任)
▼概要文表示2024年7月号
日本では、過去50年以上にわたって原子力発電を利用しており、それに伴い発生する「高レベル放射性廃棄物」は、人々の生活環境に影響を与えないよう、「地層処分」という、地下300メートル以上深い安定した岩盤に埋設する方法で最終処分する方針である。これは、法律(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)でも定められている。
地層処分事業の実現には、安全性をより確実なものとするための継続的な技術開発とともに、全国の皆さまに社会全体の課題として関心を持っていただくこと、さらに事業が長期にわたることから、将来世代に関心を喚起することが重要である。
本稿では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する動向や、当機構の取組みについて紹介する。
<特別寄稿>改定欧州廃車(使用済み車両:ELV)規則案について― 欧州資源循環政策の中での動き―
浅田 聡(一般社団法人産業環境管理協会 国際化学物質管理支援センター)
▼概要文表示2024年6月号
2023年10月、欧州で資源循環政策の一環として、提案された、欧州ELV指令(2000/53/EC)改正案に対する意見募集が終了した。改正案では、対象車種を拡大し、リサイクル設計の推進、解体事業の高度化及び循環性の推進、重要原材料の循環利用、中古車輸出の厳格な管理、さらには自動車製造者と解体処理業者間の連携強化を目指している。また、3R(Reduce, Reuse, Recycle)指令との統合も提案されている。自動車メーカーにとっては、再生樹脂の使用拡大、解体性を考慮した設計、資源循環性戦略の策定、循環性車両パスポートによる情報開示が、今後、さらに求められることになる。
<レポート>カルビー(株)の持続可能なビジネス ― 自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造―
本誌編集部
▼概要文表示2024年6月号
カルビー株式会社(以下、カルビーと表記)はスナック菓子などで国内市場シェアはトップの地位にある。大地から掘り出したじゃがいもなど農作物を原料に、食品を製造している。日経クロストレンドとファン総合研究所が最近実施した、「顧客幸福度」の大規模調査では、調査対象の11業界82ブランドの中で、高いスコアを記録した菓子メーカーがカルビーであった(日経2024/4/10)。
「かっぱえびせん」や「カルビーポテトチップス」、「じゃがりこ」など、多数のロングセラーブランドを保持し、食と健康に注力し持続可能な経営をする企業で、最近では海外売上が約1/4となり、グローバル化も進みつつある。今回、工場見学の機会があったので、顧客幸福度の高いカルビーの、サステナビリティ経営の一面を取材させていただいた。
<特集>CCS を巡る国際動向と我が国のCCS 政策
佐伯 徳彦(資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料環境適合利用推進課 CCS 政策室室長)
▼概要文表示2024年5月号
二酸化炭素回収・貯留(Carbon Dioxide Capture and Storage:CCS)は、産業活動に伴い排出される二酸化炭素を分離・回収し、大気中に放出されるCO2を削減する気候変動対策として注目を集める技術の一つである。
本稿では、CCSを巡る国際的な動向に加えて、我が国のCCS政策の全体像と各論点、今国会に提出されているCCS事業法案の内容、今後の課題について説明する。
<特集>CCS/CCU における技術進歩と課題
西尾 匡弘(国立研究開発法人産業技術総合研究所 ゼロエミッション研究企画室 連携オフィサー)
▼概要文表示2024年5月号
気候変動、温暖化の影響が深刻になってきていることが顕在化し始めて久しい。パリ協定などでも大気中に大量に排出されている人為起源の温室効果ガスの排出削減の必要性は、これまでの目標としてきたレベルを遥かに超え、ネガティブな排出、すなわち吸収を求められるレベルとなっている。
これらを背景に、二酸化炭素(CO2)の大量排出源から直接CO2を分離・回収し、大気以外の場所である地中あるいは海中に封じ込め、大気から隔離する技術については実証段階から、実用化そして普及を求められる段階に至った。CCS/CCUに関連する研究開発の展望について、CO2の性状を念頭に置き、考えられる様々なオプションについて、過去の検討経緯や各種のアイデアなどに触れつつ、今後の展開・普及に向けた課題について紹介する。
<特集>先進的CCS 支援事業とJOGMEC の活動 ― JOGMECインタビュー―
本誌編集部
▼概要文表示2024年5月号
日本政府は2020年に、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル目標」を掲げ、2021年には2030年度において温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを世界に宣言している。カーボンニュートラル実現のため、CCS*1はキー技術の1つと考えられている。
2030年までのCCSの本格稼働をめざし、昨年6月、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「JOGMEC」)は事業の大規模化と大幅なコスト削減を目標とするCCS事業7案件を「先進的CCS支援事業」として選定し、CO2の分離・回収から輸送、貯留までのバリューチェーン全体を一体的に支援している。
今回、JOGMECの担当者からCCS事業の現状と将来展望について詳しいお話を聞いた。
<レポート>苫小牧CCS 実証試験センター見学記
本誌編集部
▼概要文表示2024年5月号
北海道苫小牧市。製紙、非鉄金属、石油精製、化学、自動車関連などの産業が盛んな工業都市であり、陸海空の交通の要所、豊かな漁場にも恵まれている。東西5kmにもおよぶ国内初の掘り込み港湾である苫小牧港西港地区南岸の西端付近に苫小牧CCS実証試験センターは位置する。
2012〜2015年度に経済産業省の事業(二酸化炭素削減技術実証試験事業)で施設が建設され、2018年度からはNEDO事業(苫小牧におけるCCS大規模実証試験)として実施されている。2016年4月より圧入を開始し、3年半後の2019年11月22日に累計圧入量30万トンを達成した。現在は圧入は停止しており、モニタリングと海洋環境調査を行っている。
今回、国内で初めての大規模なCO2圧入試験を実施した苫小牧CCS実証試験センターを見学し、事業会社である日本CCS調査株式会社の方にお話を聞いた。
<特別寄稿>ネイチャーポジティブ経済と経済インパクト
丹羽 弘善(デロイト トーマツ グループ パートナー)中村 詩音(デロイト トーマツ グループ シニアコンサルタント)
▼概要文表示2024年5月号
2022年12月の生物多様性条約(CBD)COP15で採択されたネイチャーポジティブ、「2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させる」という概念により、自然資本・生物多様性の保全が今企業に求められている。ネイチャーポジティブの日本の市場規模をデロイトは約47〜104兆円と試算、日本の2020年時点のGDPの16.5%という膨大な経済効果である。
ネイチャーポジティブはその市場規模のうち60%以上がサーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルと強く関係しているため、同時推進が重要となる。またこの推進に向け金融との融合が鍵であり新たな「資金調達メカニズム」と「市場メカニズム」が開発されている。同時に再生可能エネルギーと自然資本・生物多様性のトレードオフという新たな課題が顕在化し、その解決には自然資本等の価値の定量化が必要であろう。
<特集2>環境法専門弁護士座談会(第3回)カーボン取引、サステナビリティ情報開示、ESG 訴訟
本誌編集部
▼概要文表示2024年3月号
本誌連載の「弁護士からみた環境問題の深層」は、日本CSR推進協会・環境法専門委員会所属の弁護士の先生方によるものである。法解釈や訴訟事例などを交えた貴重な解説記事である。1月から掲載してきた座談会記事も今回が最終回である。環境問題が地域公害から地球環境問題となり、CO2排出権取引のカーボンクレジット、TCFDなどの非財務情報開示、ESG投資など、企業の対応範囲が広がっているのに伴い、弁護士の活動範囲も広がってきている。地域の環境訴訟も、地域住民の環境権の広がりに配慮すると同時に、企業活動の持続性との両立が求められている。
<特集2>環境法専門弁護士座談会(第2回) 廃棄物と循環型社会
本誌編集部
▼概要文表示2024年2月号
本誌連載の「弁護士からみた環境問題の深層」は、日本CSR推進協会(旧・日本CSR普及協会)・環境法専門委員会所属の弁護士の先生方によるものである。法解釈や訴訟事例などを交えた貴重な解説記事である。先月号に続き、8名の弁護士の皆様による座談会記事を掲載する。第2回目のテーマは「廃棄物と循環型社会」である。廃棄物処理法は昔から「難解」と言われる法律の1つで、「有価物か廃棄物か」、は特に重要な論点である。そこに循環型社会が入ることで、「廃棄物処理か、リサイクルか」、も新たな争点になって来ている。
<報告>使用済み紙おむつの再資源化を通じて地域における廃棄物の削減と再資源化に貢献する
中野 勇(社会福祉法人 勇樹会 理事長)
▼概要文表示2024年2月号
当法人では、施設で使われた紙おむつをペレット燃料として再資源化し、給湯用ボイラーで使用している。使用済み紙おむつは水分を含んで重く、一般的な廃棄物より運搬・焼却時の労力、コスト、排出されるCO2量が多いため、再資源化は今後必要不可欠であると考える。このような中、社会貢献の一環として「勇樹会リサイクル研究所」を設立(図1)、全国で唯一の(本稿執筆時点)、再資源化から利用までの法人内循環を実現した。これまでに110トンの紙おむつを再資源化し、廃棄物を減らし環境負荷の軽減に携わってきた。さらに地域の木くずや剪定枝も受け入れ、ペレット燃料に混合することで再資源化し、廃棄物の削減や地域課題の解決に貢献している。
<特集1>統合報告書を通じて伝えるべきこと
山内 由紀夫(株式会社日経BP コンサルティング サステナビリティ本部 提携シニアコンサルタント)
▼概要文表示2024年1月号
日本企業の統合報告書は、今や多くの企業や団体が発行するようになった。ビジネスの複雑化、グローバル化が進むなかで、統合報告書を通じて、自社の「価値創造ストーリー」や「サステナビリティ経営」をわかりやすく説明することが求められている。
先進的な企業と、意識の低い企業が発行する統合報告書の間には内容面で大きな隔たりがあり、2極分化が見られる。特に後者の企業は、ポイントを押さえた改善を通じて質的改善を図り、自社の価値に対する理解を広げていくことは、自社にとっても、また資本市場にとっても重要である。
<特集1>住友金属鉱山の統合報告書
金子 清二(住友金属鉱山株式会社 広報IR 部 製作グループ長)
▼概要文表示2024年1月号
1590年から始まった銅製錬事業、1691年開坑の別子銅山に始まる資源事業という住友の源流事業を受け継ぐ住友金属鉱山グループは、刻一刻と変化する社会のニーズに応え、素材の提供を通じて産業や社会の発展に寄与してきた。
今日、当社グループは、資源・製錬・材料の「3事業連携」により非鉄金属の資源開発、製錬から高機能材料の提供までを行う、世界的に見てもユニークなビジネスモデルを有している。
本稿では日経統合報告書アワード2022でグランプリS賞を受賞した住友金属鉱山 統合報告書2022から、当社グループの長期ビジョン、2030年のありたい姿、価値創造プロセス、人権や環境への対応や主な取り組みについて紹介したい。
<特集1>レゾナック誕生―統合報告書で今を伝える
秋葉 美穂(株式会社レゾナック・ホールディングス サステナビリティ部 サステナビリティコミュニケーショングループ マネージャー)
▼概要文表示2024年1月号
2023年、旧昭和電工と旧日立化成が統合し、レゾナックが誕生した。私たちはこれを第2の創業(!)と呼んでおり、パーパス「化学の力で社会を変える」を起点とした地球環境と人々の幸福の両立に貢献する取り組みを、さまざまなステークホルダーと共創で、推進している。
新会社誕生直前の実質統合時に発行した「昭和電工レポート2022」は日経統合報告書アワードグランプリを受賞。これに続く「RESONAC REPORT 2023」では、CEOの髙橋を中心とする経営陣が長期視点で何を考えているのか、何をどこまで進めているかの道筋と試行錯誤のプロセスを掲載している。本稿では制作コンセプトと共に、経営陣のビジョン、人的資本経営、環境戦略をピックアップして概説した。レゾナックの「今」をお楽しみいただきたい。
<特集2>環境法専門弁護士座談会(第1回)土壌汚染と化学物質
本誌編集部
▼概要文表示2024年1月号
本誌に連載している「弁護士からみた環境問題の深層」は、日本CSR推進協会(旧・日本CSR普及協会)・環境法専門委員会所属の弁護士の先生方による連載記事である。法解釈や訴訟事例などを交えた解説記事は、他誌には例を見ない貴重なものであり、企業の読者にも参考になると思われる。新春にあたり、佐藤泉弁護士(佐藤泉法律事務所)にファシリテーターをおつとめいただき、弁護士の皆様による座談会を行った。第1回目のテーマは「土壌汚染と化学物質」である。
<特集>資源循環における次世代型分離技術
大和田 秀二(早稲田大学理工学術院 創造理工学部 環境資源工学科 教授)
▼概要文表示2023年12月号
人工(廃棄物)資源の有効利用を推進するための重要技術の一つに、各種成分の分離技術がある。この分離技術には大別すると物理選別と化学分離の二つがあり、それぞれに特徴があり、環境調和型(天然資源利用よりも省資源・エネルギー的)資源循環を達成するには、両者を合理的に組み合わせる必要がある。本稿では、主として今後の高度化が期待される(未だ高度化が進んでいない)前者について述べる。この物理選別には粉砕と選別という二種類の技術があり、前者の主目的は、単に小さくするのではなく、分離対象物を構成する各主成分の単体分離(一粒子が一成分で構成される状態にすること)であり、後者のそれは、より精度の高い成分分離を達成することにある。ここではその中でも最近注目度の高い電気パルス粉砕およびセンサー選別ついてその概要と適用事例を紹介し、これらの技術開発をうまく組み合わせた場合に期待される次世代型分離プロセスを提案したい。
<特集>一般社団法人産業環境管理協会 「令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)」「令和5年度リサイクル技術開発本多賞(第28回)」「令和5年度3R先進事例発表会」実施報告
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター
▼概要文表示2023年12月号
一般社団法人産業環境管理協会は、循環ビジネスの振興に貢献するとともに、資源循環の更なる普及と循環経済への移行を促進し、持続可能な循環型社会の形成に寄与することを目的として、毎年、「資源循環技術・システム表彰」、「リサイクル技術開発本多賞」を広く募集、表彰している。
本年は、「令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)表彰式」および「令和5年度リサイクル技術開発本多賞(第28回)表彰式」を開催した。また、受賞内容を広く皆様に知っていただくため「令和5年度3 R先進事例発表会」も同日に開催し、会場参加・オンライン参加を含め、200名以上の方にご視聴いただいた。
<特集>【令和5年度リサイクル技術開発本多賞(第28回)】亜臨界・超臨界流体を用いる難分解性プラスチックのケミカル/マテリアル複合リサイクル技術の開発
佐古 猛(静岡大学 創造科学技術大学院 特任教授)岡島 いづみ(静岡大学 工学部 化学バイオ工学科 准教授)
▼概要文表示2023年12月号
亜臨界・超臨界流体を用いて、現在のマテリアルリサイクルや熱分解法では処理が難しい複合プラスチック、熱硬化性プラスチック、エンジニアリングプラスチックを効率よくリサイクルする技術を開発した。具体的には、(1)炭素繊維強化プラスチックを超臨界メタノールで処理し、熱硬化性樹脂を熱可塑化してリサイクルすると共に、熱劣化なしの炭素繊維を回収する、(2)熱硬化性のシラン架橋ポリエチレンを超臨界メタノールで可塑化した後、再成形し再硬化する、(3)スーパー繊維のアラミド繊維を亜臨界水+水酸化ナトリウムで処理し、高純度のモノマーを回収する技術である。
<特集>【令和5年度リサイクル技術開発本多賞(第28回)】生コンクリートスラッジ水高度利用システムの開発
勝部 英一((株)北川鉄工所 キタガワサンテックカンパニー 開発課 課長)新 大軌(島根大学 学術研究院 環境システム学科系 准教授)塚田 雄一(東亜ディーケーケー(株)開発技術本部センサ技術部 科学機器課 課長)砂田 栄治((株)まるせ 五日市工場 工場長)城國 省二(広島地区生コンクリート協同組合 共同試験場 場長)
▼概要文表示2023年12月号
生コン工場では、製造設備やミキサー車等の洗浄、さらに、工事現場で使用されずに戻って来る残コンや戻りコンの処理に伴い、セメントを含んだ排水「生コンクリートスラッジ水(以下、スラッジ水)」が発生している。その国内発生量は乾燥固形分ベースで約115万tと推定され、多くが埋立てによって廃棄されている。
受賞した研究では、スラッジ水液相中の硫酸イオン濃度とセメント水和反応が相関することを見出し、セメント活性と凝結遅延成分のオンライン分析を特徴とするスラッジ水中のセメント活性の持続システムを開発した。さらに、活性を持続したスラッジ水中のセメントが生コン製造時のセメントとして再利用できることを実証した。
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)経済産業省産業技術環境局長賞】トンネルコンポスト方式による可燃ごみのリサイクル
斎藤 泰章(エビス紙料株式会社 コーポレート戦略室)
▼概要文表示2023年12月号
香川県三豊市にあるバイオマス資源化センターみとよにて、日本初となる、トンネルコンポスト方式(好気性発酵乾燥方式)による可燃ごみのリサイクルを行っている。一般家庭等から排出される燃やせるごみを、微生物の好気性発酵の力を用いて発酵・乾燥させ、選別することで固形燃料の原料として再資源化している。製造された固形燃料は石炭の代替燃料として製紙会社などで使用されている。
トンネルコンポスト方式導入の経緯や処理フロー、その特徴を紹介し、一般廃棄物を燃料化することによる脱炭素効果や今後の展望をまとめる。
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)経済産業省産業技術環境局長賞】産業廃棄物からリサイクルした環境にやさしい重油代替燃料の開発
浦田 雅臣(株式会社サニックス ひびき工場 燃料生産班 係長)
▼概要文表示2023年12月号
当社は、外食チェーン等の飲食店から発生する廃水や汚泥などの産業廃棄物からゴミや汚泥分を除去し、油分のみを分離回収することで、重油など化石燃料の代替燃料として利用可能な燃料である再生油Bio を製品化した。
再生油Bioは、動植物性油脂由来であることから二酸化炭素排出量の削減に貢献できるバイオマス燃料であるとともに、未利用資源の活用により、都市から発生する産業廃棄物の削減と再資源化の両方の実現に貢献できる製品である。
当社は、今後も廃棄物の削減と二酸化炭素の削減をとおして、脱炭素社会の実現に貢献していく。
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)経済産業省産業技術環境局長賞】スクリュー圧縮機 製品ユニット構成部品のリビルト事業
稲生 哲也(株式会社日立産機システム グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 リビルト・エンジニアリングセンタ 製作課 課長)
▼概要文表示2023年12月号
弊社製スクリュー圧縮機には圧縮空気を生成するエアエンドとエアエンドを駆動するDCBLモータを搭載しており、機種により異なるが6年毎または8年毎のオーバーホールを整備基準としている。弊社ではサーキュラーエコノミーの観点から、これらのオーバーホールを行う際、使用済み品を回収し、分解・清掃・検査を行い、検査で合格した部品は再使用して再度組み立て、新品同等の基準、性能を確保して顧客へ提供するリビルト事業を行っている。この結果、リビルトエアエンドを製作する環境負荷は新品エアエンドを製作する環境負荷の約36%に抑えることができている。今後も空気圧縮機の効率的な運用と環境負荷低減の両立を拡大し、省資源化に寄与し環境貢献を推進していく。
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)経済産業省産業技術環境局長賞】建設汚泥の少ないソイルセメント壁工法の開発と展開
田屋 裕司(株式会社竹中工務店 技術研究所 建設基盤技術研究部 地盤・基礎1グループ グループ長)玉木 伸二(竹本油脂株式会社 第三事業部 研究開発部 化学グループ グループリーダー)
▼概要文表示2023年12月号
建設における地下の掘削工事では、地盤にセメントミルクを注入、混合撹拌することで山留め壁を構築するソイルセメント壁工法が普及している。従来の施工では土1m3の固化過程で約0 .7 m3の建設汚泥が発生し、環境負荷低減の観点から建設汚泥削減技術が求められていた。本技術は、施工性や強度を維持しながらセメントミルクの注入量を低減できる流動化剤を開発し、39件の建設工事に適用することで建設汚泥発生量を3割~4割削減、セメント製造や汚泥運搬に伴うCO2排出量を2割削減し、環境負荷低減による持続可能社会の実現に寄与した。
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)一般社団法人産業環境管理協会会長賞】魚のアラのリサイクル有機肥料化
仁木 賢(株式会社柏崎エコクリエイティブ 代表取締役)
▼概要文表示2023年12月号
令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)一般社団法人産業環境管理協会 会長賞
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞】メーカとユーザが一体となった変圧器の使用済絶縁油リサイクル事業
橋本 洋助(株式会社キューヘン 技術開発部 部長)
▼概要文表示2023年12月号
令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞/コラボレーション賞】資源循環型農業の新たな取組み 〜『濃縮バイオ液肥』の製造と利用〜
長尾 衛(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社 排水処理事業部 O&M 部 担当部長)矢部 光保(国立大学法人九州大学 大学院農学研究院 農業資源経済学部門 教授)太田 美加(築上町 産業課 農業振興係 主任主事)
▼概要文表示2023年12月号
令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞/コラボレーション賞
<特集>【令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞/コラボレーション賞】ポストコンシューマープラスチック50%以上使用のフルカラー複合機の開発
千葉 晋(株式会社リコー CMC 事業部 キーパーツ事業センター)
▼概要文表示2023年12月号
令和5年度資源循環技術・システム表彰(第49回)奨励賞/コラボレーション賞
<特別寄稿>今企業が「環境」と共に取り組むべき「人権」
石井 麻梨(株式会社オウルズコンサルティンググループ マネジャー)
▼概要文表示2023年12月号
近年、サステナビリティの代表的なアジェンダとして掲げられることの多い「環境」と「人権」。従来、日本人の関心は「環境」に偏重し、「人権」を軽視する傾向にあったが、近年の国際情勢や日本政府の動き等を受けて、日本企業でも確実に「人権」への意識が高まりつつある。本稿ではこうした動きを概観した上で、企業が留意すべき「人権リスク」とは何か、企業にどのような人権対応が求められるのかを解説する。
<レポート>累計17万セット、廃棄野菜とお米からつくるクレヨン、ヒットの背景
mizuiro 株式会社 代表取締役 木村 尚子氏本誌編集部
▼概要文表示2023年12月号
<レポート>当協会から出た廃棄物の処理工程を追ってみた
本誌編集部
▼概要文表示2023年12月号

弊協会は、2023年2月に神田から新橋へ引っ越しをした。
その際、新しい事務所へ持っていく大量の資料や備品とともに、洗剤・クリーナーやペンキの余り、機密書類を含む紙ゴミなどの廃棄物が出た。今般、処理業者の見学の機会があり、それらの廃棄物がどのように処理されているのか、工程を追ってみた。

<特集>CLOMA 澤田会長に聞く〜循環経済を見据えたプラスチックリサイクルのこれから〜
本誌編集部
▼概要文表示2023年11月号
海洋プラスチックごみの問題を契機にCLOMA(Clean Ocean Material Allience)が発足して4年半が経過した。国内ではプラ新法が施行され、国際的には2025年に向けてプラ条約の動きもある。CLOMAのこれまでの活動の総括と今後の展望について、CLOMA・澤田道隆会長(写真1)にお話を伺った。
<特集>海洋プラスチックごみ問題に挑戦する企業アライアンスCLOMA
柳田 康一(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA))
▼概要文表示2023年11月号
2019年1月、一般消費者向け商品のサプライチェーンを担う企業が中心となり、海洋プラスチックごみ問題の解決にチャレンジするクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)を設立した。
CLOMAでは、日本の産業界がこれまで培ってきた技術と知恵を持ち寄り、官民連携で3 Rと代替素材のイノベーションを加速、持続可能なプラスチックの循環利用を開発することで、消費者や社会とともに海洋に流出するプラスチックごみのゼロ化を目指す日本発のソリューションモデルを世界に向け提案していく。
<特別寄稿>ファッション産業の資源循環
鎌田 安里紗(一般社団法人unisteps 共同代表理事)
▼概要文表示2023年11月号
グローバルノースからサウスの国々へ輸出される古着による影響が問題視されている。具体的には、ポリエステル等石油由来の素材で作られた衣服が適切に処理されず、砂漠や海に投棄されることによるプラスチック汚染や、埋立地での自然発火による大気汚染及び近隣住民への健康被害が懸念されている。また、安価な古着が大量に持ち込まれることで輸入国の国内繊維・衣料産業を衰退させるという指摘もある。本稿では、筆者が最大の古着輸入国のうちの一つであるケニアを訪ね、現地の産業関係者へのヒアリングで得た情報を元に、今後求められる変化を考察する。
<特集1>都市の熱環境の予測・対策技術評価のための都市気候モデル開発と社会ビッグデータ活用
髙根 雄也(国立研究開発法人産業技術総合研究所 環境創生研究部門 主任研究員)
▼概要文表示2023年10月号
都市気候モデルは、都市部の道路や建物を簡易的にコンピューター上に配置し、都市特有の気候であるヒートアイランド現象等を再現できるツールである。このモデルを活用すれば、ヒートアイランド対策や都市部の脱炭素化に向けた都市計画や様々な対策技術の導入効果を事前に評価できる。また、リアルタイム人口データのような社会ビッグデータを合わせて活用すれば、コロナ禍の行動変容(外出自粛)のようなアクションが、環境・エネルギーへ及ぼす影響も推定できる。本稿では、都市気候モデルの概要とその活用例、そして今後の展開について解説する。
<特集1>グリーンITとGX の現在地:次世代への責任と展望
大谷 和利(テクノロジーライター)
▼概要文表示2023年10月号
現代社会におけるITは、電気や水道などのライフラインと同様に、私たちの生活に欠かせないものとなっている。日常的に行われているウェブ検索はもちろん、SNSやナビゲーション機能の利用、オンラインショッピング、リモートワークにいたるまで、ITの利便性なしには人々の暮らしが成り立たないといってよいだろう。様々な工場においても、専用端末に加えてスマートフォンやタブレットを利用した工程の管理や監視によって業務の効率化が図られているはずである。しかし、こうした便利さの背後には、見過ごされがちな環境負荷やコストが存在する。ここでは、IT 業界が抱える「不都合な真実」にスポットを当て、サステナブルな世界の構築に貢献するグリーンIT とGX の現状と未来を展望してみた。
<特集1>LCA とデジタル化
佐伯 順子(一般社団法人産業環境管理協会)
▼概要文表示2023年10月号
製品やサービスがライフサイクルを通して環境に与える負荷を定量化するライフサイクルアセスメント(LCA)の実施方法が、デジタル技術の高度化により変化しつつある。特に分散型台帳技術の登場により、事業者間でのLCAインベントリデータの授受が、信頼性と秘匿性が高められた環境で可能となる。各業界では、この実現に向けてデータ共有ネットワークの構築と実証を進めている。また、トレーサビリティの向上を求める国際的な機運により、カーボンフットプリントを含めた製品のライフサイクルの軌跡に関する情報を載せたデータの集積も加速す
ると考えられる。
<特集2>ニューノーマル化する異常気象どうなる地球 どうする人類!
立花 義裕(三重大学 大学院 生物資源学研究科 教授)
▼概要文表示2023年10月号
日本は、地球の中で気候学的には、暖かい海と寒い海に囲まれた陸、という特殊な条件下にある国である。このため、偏西風の蛇行や海水温の上昇など、周辺の環境条件の変化で異常気象が起きやすい。長期的で緩やかな変化である地球温暖化と、短期的で大きな変化である異常気象は複雑にリンクしている。地球温暖化自体は実感しにくい現象だが、これと関係が深い異常気象は人々が体感する現象である。本稿で説明する異常気象という切り口を通じ、地球温暖化問題への関心を高める一助となれば幸いである。
<特集2>異常気象・気候変動のメカニズムについて
高谷 康太郎(京都産業大学 理学部 教授)
▼概要文表示2023年10月号
本記事では気候変動や異常気象の発生のメカニズムを説明する。そのメカニズムの本質を捉えるには、赤道側の暖気と極側の寒気との境目に吹く偏西風の南北蛇行を考えることが重要である。偏西風が強く南北蛇行することにより、通常とは違う気候状況が出現する。例えば、日本付近の異常な寒冬をもたらす偏西風の蛇行の典型的なパターンは2つあり、さらに両者とも、日本付近だけでなく、北半球規模の気候変動をもたらしうる。異常気象が取り上げられる際、地球温暖化との関係がしばしば注目されるが、まずはこの偏西風の蛇行の様子を捉えることが重要である。
<特別寄稿>ファッション産業の労働環境と人権
鎌田 安里紗(一般社団法人unisteps 共同代表理事)
▼概要文表示2023年10月号
衣食住という言葉もあるように、人間の生活と切っても切れない関係にある衣服。「ファッション」という言葉は、縁遠く感じる人もいるかもしれないが、衣服と無縁であると感じる人はいないだろう。日本で流通する衣類の98%以上が国外生産であり、低価格化が進んでいる。労働集約型産業であることから、従事者は低価格化の影響を受けやすい。本稿では、2013年に発生したラナ・プラザの崩落事故の背景を整理した上で、事故から10年経った現在の状況を概観し、改善に向けて生活者・企業・行政が取りうるアクションについて考察する。
<特集>中小企業の強靭化について
長村 和樹(中小企業庁経営安定対策室 事業継続力強化計画担当)
▼概要文表示2023年8月号
近年、全国各地で大規模な自然災害が相次いでおり多くの事業者が被害にあっている。自然災害の影響は、個々の事業者の事業活動のみならず、サプライチェーン全体にも大きな影響を及ぼす。また、企業を巡る突発的なリスクはサイバー攻撃等にも拡がっており、これらを含めた防災・減災に向けた事前対策を行うことは喫緊の課題である。
多くの中小企業に事前対策に取り組んでいただくべく、中小企業庁は事業継続力強化計画認定制度を創設した。また、事前対策の1つであるリスクファイナンスについて取組を強化する必要がある。
<特集>企業におけるBCP 〜製造業での策定における自己完結機能に視点を置いた考察〜
山田 佳之(博士(工学)、技術士(化学部門)、防災士、労働安全コンサルタント(化学)笛田・山田技術士事務所 代表)
▼概要文表示2023年8月号
最近、地球温暖化による巨大台風の襲来、線状降水帯の多発等により風水害が激甚化している。また、大きな地震も頻発しており5月だけで緊急地震速報が12回発令されている。更に、決して楽観視はできない新型コロナウイルスの蔓延、ロシアによるウクライナ侵攻、中国による軍事活動の拡大、北朝鮮からの弾道ミサイル発射等。企業にとって事業継続をしていくためには、さまざまなハザードをクリアしていかなければならない。その中でBCPは有効な対策ではあるが、策定率は、2021年時点で、大企業で70.8%、中小企業に至ってはわずか40.2%である。本編では、製造業において特に中小企業がBCPを策定するための現場サイドにおけるキーポイントについて、筆者のBCP策定の経験と、災害対応に有効なシステムといわれている自衛隊の自己完結機能を交えながら解説をする。
<特集>(株)日さくが考えるBCPと災害用井戸の解説
菊池 賢一(株式会社日さく 執行役員 東日本支社 副支社長)
▼概要文表示2023年8月号
株式会社日さくは、創業以来、井戸掘削工事等のさく井工事、地質調査、特殊土木工事を手がけてきた。とくに、地域や社会に安心安全で貢献するということを基本に、BCPを策定し防災減災への取り組みを推進している。
経営目標の第一として社員幸福の実現を掲げており、災害発生時には、まず社員とその家族の安全に注力し、地域社会の復旧・復興に努めることとしている。また、BCPに対する取り組みとして、災害用井戸設置の普及を推進している。過去の諸資料から、井戸は震災時に損傷することはほとんどないことが明らかになっている。また、井戸に当社が開発した人力作動のハンドポンプを設置することにより、災害発生後の停電時でも地下水を供給することができる。加えて、当社のハンドポンプは深い深度の地下水を汲み上げることが可能という長所もある。
わが国は、阪神淡路大震災の後、東日本大震災等の大きな地震を経験しているものの、災害用井戸は、様々な問題により、進捗しているとは思われない状況にある。
当社は、今後も災害用井戸の長所を訴求し、SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」を念頭に置き、防災減災への取り組みを強化していく所存である。
<レポート>(株)食品ロスに貢献しながら「おいしさ」もアップ 「おいしさスキンパックマルシェ」レポート(住友ベークライト株式会社)
本誌編集部
▼概要文表示2023年8月号
日本で初めてプラスチックを作った会社をルーツにもつ住友ベークライト株式会社が、食品の新しい包装形態であるバリアスキンパックフィルム「おいしさスキン®」を開発した。
この技術により、食品の「おいしさ」もアップしつつ、食品ロスの削減やプラスチック使用量の削減なども目指している。
本年6月29日から7月1日までの3日間、代官山アドレス・Space でポップアップショップイベント「おいしさスキンパックマルシェ」が開催された。新時代の包装形態には様々な利点があった。その特徴と技術を紹介してみたい。
<特集1>ロシアのウクライナ侵攻とドイツの環境・エネルギー政策
熊谷 徹(在独ジャーナリスト)
▼概要文表示2023年7月号
ロシアのウクライナ侵攻にもかかわらず、ドイツは従来の環境政策を継続している。今年4月に脱原子力を完遂したショルツ政権は、5年後の脱石炭を目指して、再生可能エネルギー(以下再エネとする)とグリーン水素の拡大を加速している。今後多額の国費を投入し、製造業の脱炭素化を目指す。この背景には、費用をかけても環境保護を重視するドイツの国民性と、「経済成長と環境保護は矛盾する目標ではなく、両立可能だ」という社会的合意がある。ドイツの厳しい環境政策は欧州連合(EU)を通じて、他の欧州諸国の環境政策にも影響を及ぼしている。
<特集1>フランスのエネルギー政策―安全保障と独立主権の観点から
安部 雅延(在仏ジャーナリスト)
▼概要文表示2023年7月号
福島第1原子力発電所事故に対するフランス政府の迅速な安全対策行動を目撃し、筆者はフランス国民が原子力発電を支持する背景に原子力安全局(ASN)の長年の安全性への真摯な取り組みと丁寧な説明があることを痛感した。
フランスの原子力発電再開発という核のルネッサンスの背景には、独立主権国家としての強い自立的安全保障の考えや科学技術への信頼、中央集権的意思決定が存在し、1970年代から続く原子力発電の国家的大プロジェクトへの国民の信頼が存在する。フランスは今、2050年の脱炭素化目標達成に向けてのエネルギー転換のため、14基の原子炉増設の合理性を説明し、国民の支持やEUタクソノミーに原発が組み込まれたことを背景に、EU全体の目標に答えようとしている。
<特集>竹中工務店における「環境月間」および 環境保全活動
本誌編集部
▼概要文表示2023年6月号
株式会社竹中工務店は、近年、フラッツウッズ木場などに象徴されるように高層建築も含めて耐火性を持たせた木材活用を推進し、建設会社の中でも、ユニークな建築物を数多く手がけている企業である。今回は、同社の『環境月間』の取り組みを中心に、同社経営企画室CSR推進部長・林健太郎氏にお話を伺った。
<特集>株式会社リコーのグロ-バルSDGsアクション
本誌編集部
▼概要文表示2023年6月号
株式会社リコーは、1998年から環境経営を掲げ、近年では製造拠点を改造して、環境事業開発センター立ち上げ(2016年)、日本企業初のRE100への参加表明(2017年)など、環境経営に関しては先駆的な企業として有名である。近年、環境月間に合わせて、「リコーグローバルSDGsアクション」を展開している。同社の活動と環境経営について、2氏にお話を伺った。
阿部裕行氏:(株)リコー ESG戦略部 ESGセンター事業推進室CSVグループリーダー
岡野麻衣子氏:(株)リコー ESG戦略部 ESGセンター事業推進室CSVグループ
<特集>生物多様性条約COP15の結果概要と、生物多様性に関する情報開示の国際議論について
浜 一朗(環境省 自然環境局 生物多様性戦略推進室 室長補佐)浜島 直子(環境省 自然環境局 生物多様性主流化室長)
▼概要文表示2023年4月号

2022年12月7日~19日に生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)第二部が、カナダ・モントリオールで開催された。COP15第二部では、生物多様性に関する新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組(以下、「新枠組」という)」が採択されるという極めて重要な会議となった。同枠組みの中には、2030年に向けた生物多様性の世界目標として象徴的な目標である「30by30目標」や、ビジネスに関する目標も含まれている。本稿では、COP15第二部の主な成果や新枠組の概要、さらに企業が新枠組の採択を受けて求められている行動について、特に生物多様性に関する情報開示に焦点をあてつつ、述べる。

<特集>事業所内の緑地の保全・管理を通した 地域生態系への貢献と環境教育への活用
中野 隆弘(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 人事センター 総務部 施設環境課 環境管理係 主務/ビオトープ管理士)椙山 和紀(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 総務部 企画課 サステナビリティ推進係 係長)
▼概要文表示2023年4月号

パナソニック株式会社 草津工場では2011年より地域の生態系に貢献する工場緑地として「共存の森」の保全・管理を実施。
工場の環境施設(遊水池/調整池)としての機能を維持しつつ、地域の里山林の環境をモデルとし、当該緑地内で発芽した実生苗を利用するなどの工夫を凝らし、身近な生きものが将来にわたって生育、生息できる環境の創出を目指す。
管理に際しては人の利用による二次的環境である里山林の成り立ちに着目、草刈りと自然循環を軸としたシンプルな管理を実践。
加えて当該緑地での気付きや発見を題材に、小学生向け環境学習プログラムとして提供する取り組みも行っている。

<特集>日本製紙グループ 生物多様性保全の取り組み
渡邊 惠子(日本製紙株式会社 技術本部 環境部)
▼概要文表示2023年4月号

日本製紙グループ(以下、「当グループ」)は、長年にわたって木を育み、紙を作り、暮らしや文化を支える製品を幅広く提供している。健全な森林経営の実践とそこから産出される木材を余すことなく活用するビジネスモデル
は、地球温暖化や資源の枯渇防止などの社会的課題の解決に結びつき、持続可能な社会の構築に貢献している。
森林資源を事業基盤とする当グループにとって、生物多様性の保全は事業基盤を形作る根幹である。バリューチェーン全体に渡る生物多様性保全の取り組みの中から、本稿では森林における生物多様性保全の取り組みについて報告する。

<レポート>ロスフラワーに新たな生命を吹き込み循環経済へ フラワーサイクリスト 河島 春佳氏
本誌編集部
▼概要文表示2023年3月号
フラワーサイクリスト 河島 春佳氏のご紹介
<報告>「令和4年度リデュース・リユース・ リサイクル推進功労者等表彰」の実施報告
リデュース・リユース・リサイクル推進協議会事務局(一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター)
▼概要文表示2023年2月号

一般社団法人産業環境管理協会が事務局を務めるリデュース・リユース・リサイクル推進協議会は、循環型社会の形成に向け、長年、資源のリデュース・リユース・リサイクル(3 R)・資源循環に率先して取り組み、資源の有効利用、環境への負荷の低減に継続的な活動を通じて顕著な実績を挙げている個人・グループ・学校・事業所・地方公共団体等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」を実施している。

<報告>「いつまでも 人も 地球も 美しく」永続する楽しい日常をつくる道を美容室からお客様へ
長尾 圭子(カットショップショーン 経営企画室)
▼概要文表示2023年2月号

当店は、創業以来25年にわたり、「いつまでも 人も 地球も 美しく」というミッションのもと、スタッフ自らが考え工夫していくことで日常業務の3 R化に努め、徐々に顧客や周囲との連携、協力を進めながらゆるやかに3 R 活動や環境保全活動を拡げてきた。
本稿は、小規模な美容室がどこに原点を置いて活動を進めてきたのか、その活動をたゆまず長年続けてこられた要因、これならできると始めた具体的な活動事例、そして今後の展望について説明していく。

<報告>令和4年度(第52回)公害防止管理者等 国家試験結果について
公害防止管理者試験センター(一般社団法人産業環境管理協会)
▼概要文表示2023年2月号

令和4年度公害防止管理者等国家試験は、令和4年10月2日(日)に全13種類の試験区分につき全国9カ所(札幌市、仙台市、首都圏、名古屋市、大阪府、広島市、高松市、福岡市、那覇市)の試験地において実施した。

<特集>「 統合報告」に取り組むということ
芝坂 佳子(KPMG サステナブルバリューサービス・ジャパン パートナー)
▼概要文表示2023年1月号

統合報告書を作成する企業は、年ごとに拡大している。その背景には、企業経営を取り巻く環境の劇的な変化により、環境や社会的課題を起因するリスクの様相がますます複雑化し、その影響も大きくなってきている現実がある。
国際的なサステナビリティ報告基準の検討が本格化するなか、あらためて、統合報告に取り組む意義について検討することは、今後のさまざまな施策を、中長期的な企業価値の向上と社会的厚生実現へと結び付けていくための契機となる。
「報告」とは、情報提供を行うことではない。ダイナミックに変化を続ける企業の姿を、将来にむけた意図とともに伝え、ステークホルダー間のコミュニケーションの活性化を通じた新たな価値創造に資するために行う活動であり、統合報告の取り組みはそのための一つなのである。

<特集>東京電力HDの統合報告書
勝部 安彦(東京電力ホールディングス株式会社 経営企画ユニット ESG推進室長)
▼概要文表示2023年1月号

東京電力グループ(以下、東電グループ)は、2022年10月6 日に通算5 冊目となる「TEPCO統合報告書2022」を公表した。本報告書では、「企業価値の向上」と「社会的価値の創造」を実現するための東電グループの
中長期的な方向性を示しているが、主な利用者である株主や投資家に加え、お客さまや地域の方等のマルチステークホルダーにも理解頂けるよう配慮している。本年は、特に国際的な気候変動対策について、東電グループの基本方針である「安定供給とカーボンニュートラルの両立」を軸に構成した。

<特集>企業文化に根差した統合報告書「HORIBA Report」
鈴木 美波子(株式会社堀場製作所 経営企画室 シニアマイスター(IR/ESG))
▼概要文表示2023年1月号

堀場製作所は創業以来ユニークな企業文化を育んできており、そのベースとなっているのは社是「おもしろおかしく」である。統合報告書「HORIBA Report」もこの社是を基盤として作成しており、制作・編集はHORIBA Report作成者の「おもしろおかしく」に通じている。まさに、企業文化に根差した統合報告書と言えるだろう。
本稿では、「HORIBA Report 2021-2022」編集に当たっての考え方を概説。さらに、報告書に掲載されている経営戦略や具体的な活動を要約し、堀場製作所による社会課題解決のあり方を紹介する。

<特集>王子グループが取り組む 環境・社会との共生について
田中 良正(王子ホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部 担当部長)
▼概要文表示2023年1月号

王子ホールディングスおよび王子グループは、日本における資本主義の父と称される渋沢栄一翁の尽力により1873年に創業され、150年の歩みを通じて、製紙事業を中心に価値提供の幅を拡げ、広く社会に貢献し続けてきた。
創業時には、国産洋紙の供給体制を整備し、新聞・書籍の普及を通じて日本の社会・経済の発展に貢献してきた。その後、時代のニーズに従い、1950年代には段ボール、1970年代には家庭紙、白板紙、感熱紙などの生産を開始した。また、生産品種の拡大のみでなく、特に2010年代以降はグローバル展開の拡大に注力してきている。多くのステークホルダーの皆様に支えていただき、現在では、従業員数がグループ全体で3万5,000人を超え、売上高1兆5,000億円以上、営業利益も1,000億円を超える規模の会社となっている。本稿では、「成長から進化へ」王子グループのさらなる発展に向けて、当社が掲げる経営理念、存在意義(パーパス)、近年の脱炭素化の潮流に対応した気候変動問題への対応ならびに管理・所有する王子の森について紹介する。

<特集>DOWAホールディングスの統合報告書
櫻井 康祐(DOWA ホールディングス株式会社 環境・安全部 部長)
▼概要文表示2023年1月号

DOWAグループは、社会や環境を重視した事業運営を通して、すべてのステークホルダーと誠実でオープンに向き合うとともに、サステナブルな社会の実現に資することを最重要のミッションとしている。DOWAグループ
のサステナビリティ経営の原点は、創業者藤田傳三郎の理念である“労働者や地域の方々と共生する”という長期的視野に基づく企業経営にある。当社を取り巻く様々な社会課題を踏まえ、循環型ビジネスモデルをコアとするDOWAの強みを活かした「価値創造ドライバー」による機会の獲得を目指すとともに、リスク低減の仕組みである「サステナビリティ・マネジメント」を強化することにより、中長期的に価値を創造し続け、「地球を舞台とした事業活動を通じて、豊かな社会の創造と資源循環型社会の構築に貢献する」という企業理念およびビジョン(2030年のありたい姿)の実現を目指している。

<特別寄稿>COP27の結果と評価
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 特任教授)
▼概要文表示2023年1月号

「野心のCOP」と呼ばれた2021年11月のCOP26(グラスゴー)においては産業革命以降の温度上昇を1.5℃以内に抑えるという野心的な目標を中核に据えた「グラスゴー気候合意」を採択した。しかし2021年秋からのエネルギー危機、2022年2月に勃発したウクライナ戦争によって国際政治経済情勢が困難度を増す中、あくまでグラスゴー合意の完遂にこだわるG7と新興国の間の対立が顕在化している。こうした中、「実施のCOP」とされた2022年11月のCOP27(シャルム・エル・シェイク)では、グラスゴー気候合意から更に前進しようという先進国の目論見は外れ、途上国が積年にわたって主張してきたロス&ダメージ基金の設立が合意される等、途上国の勝利ともいえる結果となった。温度目標も資金援助目標も現実から遊離して期待値ばかりが高まる中で、COPプロセスが今後どうなっていくのか注目される。

<特集>動静脈産業連携によるプラスチックリサイクルと炭素循環
吉岡 敏明(東北大学大学院 環境科学研究科 教授)
▼概要文表示2022年12月号

カーボンニュートラル化の様々な検討の中で、プラスチックのリサイクルやバイオ化など、いわゆる「3 R+Renewable」の取組が活発化してきている。とりわけ、石油および石油化学産業などの原料供給側や、プラスチックを素材として製品化しているユーザー産業などの動脈産業の動きが際立ってきている。現状のリサイクルは、主にユーザー産業と消費者間で進められているものの、結果的には炭素循環のループから外れる状況となっており、石油関連産業への炭素循環は確立していない。炭素資源を扱う基幹産業である石油関連産業界をも含めた、新しい道筋による炭素循環を構築することが必要となる。同時に、バイオマス資源からの基礎化学原料も不可欠な要素である。そのためにも、動脈側と静脈側が有する様々なプロセス・技術を活かした動静脈産業連携を構築することが、新しいプラスチック資源循環と炭素循環を実現する鍵になる。

<特集>「 令和4年度資源循環技術・システム表彰(第48回)」「 令和4年度リサイクル技術開発本多賞(第27回)」「令和4年度3 R 先進事例発表会」実施報告
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター
▼概要文表示2022年12月号

一般社団法人産業環境管理協会は、資源の効率的な利用の促進、循環ビジネスの振興を目的として、リデュース、リユース、リサイクルの先進的な取り組みを顕彰するために、毎年「資源循環技術・システム表彰」「リサイクル技術開発本多賞」を広く募集、表彰するともに、受賞内容の広報を目的として「3 R先進事例発表会」を開催している。
本年は、新型コロナウイルス感染拡大防止に留意しつつ、「令和4年度資源循環技術・システム表彰(第48回)表彰式」及び「令和4年度リサイクル技術開発本多賞(第27回)表彰式」を3年ぶりに開催した。また、「令和4年度3 R 先進事例発表会」も同日に開催し、オンラインでの参加を含め、200名以上の方にご視聴いただいた。

<特集>固体電解プロセスによる アルミニウムスクラップのアップサイクリング
盧 鑫(東北大学大学院 工学研究科 金属フロンティア工学専攻 助教)竹田 修(東北大学大学院 工学研究科 金属フロンティア工学専攻 准教授)朱 鴻民(東北大学大学院 工学研究科 金属フロンティア工学専攻 教授)長坂 徹也(東北大学大学院 工学研究科 金属フロンティア工学専攻 教授)
▼概要文表示2022年12月号

アルミニウムはリサイクルの優等生として知られているが、それはあくまで量的な観点の話である。現行の再溶解法によるリサイクルは、品質の劣化を伴うダウングレードリサイクルである。低品質な再生アルミニウムの最終用途は、大量の合金元素含有が許容される自動車用エンジンブロック等の鋳造・ダイカスト製品である。しかし、電気自動車の普及が進むと、内燃エンジンの需要は大きく減少し、低品質な再生アルミニウムの最終用途が失われ、使えないアルミニウム(デッドメタル)が大量に発生する恐れがある。
受賞論文の研究では、アルミスクラップを固体状態のまま溶融塩中で電解し、アルミニウムから典型的な合金元素を除去した。更に、鉱石からアルミニウム新地金を製造する際の半分以下のエネルギー消費で純アルミニウムに再生できることを示した。低エネルギー消費で、アルミニウムスクラップを純アルミニウムに再生することによって、真のアルミニウムサステナビリティの実現が期待される。

<特集>新規電気パルス法によるリチウムイオン電池の 高精度分離技術開発
所 千晴(早稲田大学 理工学術院 教授)浪平 隆男(熊本大学 産業ナノマテリアル研究所 准教授)菊池 康紀(東京大学 未来ビジョン研究センター 准教授)
▼概要文表示2022年12月号

リチウムイオン電池正極材の集電箔に塗布された正極活物質粒子を、化学的に変化させず高精度に分離する技術を開発した。これは、分離現象やプラズマ発生、伝熱に関する実験的可視化と電場伝熱シミュレーションや、分離前後の詳細な化学分析などを組み合わせ、これまで水中で複数回の印加を要する集合粉砕代替法として利用されてきた電気パルス法を改良し、水中のみならず空気中においても単発の印加にて高精度な分離に成功したものである。ライフサイクル評価により、当該技術は省エネルギー型の物理選別技術であり、温室効果ガス削減と資源効率向上を同時実現する可能性が高いことを確認した。

<特集>水平循環型リサイクルタイルカーペット 建築資材の循環システムにおける廃棄物削減による社会への貢献
津吉 壮児(住江織物株式会社 インテリア事業部門 コントラクト事業部 商品部 課長)
▼概要文表示2022年12月号

従来、使用済みのタイルカーペットは産業廃棄物として埋め立て処理されてきた。市場では、リサイクル品の需要はなく、再資源化事業者が回収・リサイクルを試みても事業が成り立たないという悪循環が課題であった。これらの課題を解決するため、使用済みのタイルカーペットを市場から回収し・再資源化し、新たな製品化(水平リサイクル)を実現する技術を開発することで、廃タイルカーペットの循環システムを構築した。

<特集>清涼飲料業界としてのペットボトルの ボトルtoボトル(水平リサイクル)推進
岡本 晃忠(一般社団法人 全国清涼飲料連合会 企画部 部長)
▼概要文表示2022年12月号

清涼飲料業界は、使用済ペットボトルを「地上にある資源」と位置付け、「ボトルtoボトル(水平リサイクル)」を推進している。ボトルtoボトルは何度でも同じペットボトルにリサイクルでき、資源循環とCO2排出抑制の両面で貢献できる。
業界では、2030年の「PET100%有効利用」や「ボトルtoボトル比率50%以上」の宣言を通し、業界内外の様々なステークホルダーと連携し、ライフサイクル全てを網羅した仕組み化により、「サーキュラー(循環)&エコロジカル(地球との共生)・エコノミー」の実現とボトルtoボトルにおける「社会システム」の構築に取り組んでいる。

<特集>店舗什器・自販機の循環型サプライチェーン構築
井野 大地  横井 聖一  高野 聖也  大磯 友里菜(伊藤忠メタルズ株式会社 リサイクルビジネス推進事業部)
▼概要文表示2022年12月号

従来全国展開企業の産廃処理業務は、多くの企業で本部、本社での管理体制が不十分な状態で各エリア、店舗に委ねられており、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)に違反するリスク等の問題を抱えていた。当社が各エリア、店舗の産廃処理業務の管理代行を引き受け一元管理することで、法令違反リスクを大幅に低減した。
また、各地域に分散していた産廃処理を集約することで規模の経済性を創出し、産廃処理にかかるコストを削減した。さらに、産業横断型のプラットフォームを構築し、コンビニ、店舗什器メーカー、飲料メーカー等の業界で産廃処理の利便性が向上した。

<特集>植物油系電気絶縁油による高い環境性とゼロカーボン社会の実現
西川 精一(株式会社かんでんエンジニアリング 石油・環境統括部 技術・開発グループ グループマネジャー)
▼概要文表示2022年12月号

最も身近なエネルギーである電気は発電所で作られ、そこから各企業、及び家庭に送られる間には変電所等を経由し段階的に電圧が変換されている。その役割を担う変圧器には、従来石油から作られた鉱油系の電気絶縁油の採用が主流で、そのほとんどが危険物で焼却処分時には大気中の二酸化炭素が増加することになる。本取組みは植物油から作られた電気絶縁油を普及することで、地球温暖化ガスの発生を大幅に抑制し、高い生分解性と防災性、及び機器の長寿命化を実現することで資源の有効活用を実現し、地球環境保全に貢献するものである。

<特集>木造家屋解体廃木材を活用した木質系アスファルト舗装材の製造
谷口 圭汰(田中建材株式会社 営業課)
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令和4年度資源循環技術・システム表彰(第48回) 一般社団法人産業環境管理協会 会長賞
<特集>下水汚泥のエネルギーポテンシャルを向上するオゾンを用いた可溶化反応装置
黒木 洋志(三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 主席研究員)大泉 雅伸(日鉄エンジニアリング株式会社 環境・エネルギーセクターエンジニアリング本部 マネジャー)
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令和4年度資源循環技術・システム表彰(第48回) 奨励賞/コラボレーション賞

<特集>基板剥離機 エココレクターの開発・製造
森 弘吉(株式会社エムダイヤ 代表取締役)
▼概要文表示2022年12月号

令和4年度資源循環技術・システム表彰(第48回) レアメタルリサイクル賞

<特別寄稿>ウクライナ戦争と地球温暖化
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 特任教授)
▼概要文表示2022年12月号

ウクライナ戦争によって世界的なエネルギー危機が進行中であり、エネルギー安全保障の重要性が再認識されている。エネルギー危機は化石燃料の需給ギャップによるものであり、新規投資が必要である。他方、1.5℃目標を絶対視する観点から化石燃料投資を罪悪視する傾向が強まっており、COPにおける議論とエネルギーの現実との間のギャップは大きい。欧州等が化石燃料も利用しつつエネルギー危機に対処する一方、温暖化防止を理由に途上国における化石燃料プロジェクトを制約すれば、先進国と途上国の分断を深刻化させる恐れがある。アジア唯一のG7メンバーとして2023年のサミット議長国となる日本はアジア等の途上国のエネルギーの現実を踏まえた議論を主導すべきだ。

<特別寄稿>洋上風力発電事業と漁業関係者の権利の調整
土岐 俊太(弁護士法人 大江橋法律事務所 弁護士)
▼概要文表示2022年12月号

近年、日本でも洋上風力発電事業が盛んになっているが、洋上風力発電事業特有の問題として漁業との関係がある。漁業関係者は特に重要なステークホルダーとして、洋上風力発電事業を始める企業としては適切な交渉が求められるし、洋上風力発電事業に出資したり、当該事業を買収したりする際のデューディリジェンスという観点からも留意が必要である。本稿では、まず洋上風力発電事業の概要及び漁業権等の内容について整理しつつ、洋上風力発電事業と漁業関係者の権利の調整について説明する。

<レポート>デザイン力による廃プラ素材の利用拡大 ― Recycling Meets Design 展レポート(大日本印刷)
本誌編集部
▼概要文表示2022年12月号

大日本印刷が同社DNPプラザ(東京都新宿区)で、「Recycling Meets Design展『デザインの力』で再生プラスチックを活かしたい。」を2022年7月27日(水)~10月1日(土)まで約2カ月開催した。このデザイン展は多くのデザイナーやリサイクル業者、関連企業の協力で実施された。
「再生プラスチック」によるユニークなリサイクル製品の展示であり、デザインに力点をおいた作品や解説資料などが出展され大変参考になった。さっそく展示内容をレポートする。

<レポート>電子廃棄物をアート化して社会・環境問題解決に挑む 美術家 長坂 真護氏
本誌編集部
▼概要文表示2022年12月号
<特集>協会創立60周年にあたって
助野 健児(一般社団法人産業環境管理協会 会長)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>創立60周年を祝して
畠山 陽二郎(経済産業省 産業技術環境局長)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>創立60周年を祝して
秦 康之(環境省 水・大気環境局長)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>協会への期待― 公害防止管理者制度及び環境測定分野の国際標準化の視点から
指宿 堯嗣(一般社団法人産業環境管理協会 顧問)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>協会への期待― LCA 及びその国際標準化の視点から
稲葉 敦(一般社団法人日本LCA 推進機構 理事長)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>協会への期待― 3 R・循環経済分野(プラスチックリサイクルを例として)
石川 雅紀(叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 特任教授/神戸大学 名誉教授)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>協会への期待― 化学物質管理の視点から
水野 良彦(経済産業省 製造産業局 化学物質管理課長)
▼概要文表示2022年11月号
<特集>協会への期待― 海洋プラスチックごみ問題への対応
柳田 康一(CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス) 技術統括)
▼概要文表示2022年11月号
<総括>JEMAIと環境の時代
竹内 浩士(一般社団法人産業環境管理協会 執行理事)
▼概要文表示2022年11月号
<総括>公害防止管理者制度半世紀 〜ここ15年くらいの動きを中心に〜
本誌編集部
▼概要文表示2022年11月号

当協会も創立60年、還暦ということだが、昭和46(1971)年に特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(組織整備法)制定により誕生した公害防止管理者制度も、昨年で50年を迎えた。本稿では、現在の制度に改正された平成17(2005)年政省令改正以降の、本制度に係る経緯について、簡単に整理しておきたい。
企業で環境一筋、のような方には釈迦に説法になってしまうかも知れないが、環境部署に着任して数年以内の方には、制度の理解が深まるのではないかと思う。

<特別寄稿>人新世の地球環境
杉山 大志(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
▼概要文表示2022年11月号

人間とは何か、自然とは何か。
人類は初め、母なる自然の進化の一部として、弱々しく出現した。けれども、やがて人類は逆に、自然を大幅に改変する力を持つに至った。これは、産業革命などよりはるか以前のことだった。人類こそが、今日の地球環境を創り出したのだ。
もちろん、自然も負けてはいない。人間と自然は、共に、激変する気候の洗礼を潜り抜けた。食うか食われるかのせめぎ合いは、世界のあらゆる場所で、今日も続いている。最近の1万年は、地質学で完新世Holoceneと呼ばれてきた。だが今や、これは人新世Anthoropoceneと呼ばれることになった。人類の自然環境への影響があまりに大きいからだ。何百万年も経った後の未来の人々は、この時代の地層に人為の痕跡を確実に見つけることになる。
さてそこでは、いったい何が記録されているだろうか? 「地球温暖化」の痕跡はあるのか?

<レポート>大学生100名に聞いたISO14001・SDGs・CSR ― WEBイベント報告―
新美 康成(株式会社品質保証総合研究所 セミナー事業部 参与)東 健太郎(立命館大学 経営学部 教授)中川 優(株式会社オフィスグラビティー 代表取締役社長)岸野 令(一般財団法⼈日本品質保証機構 企画部 次長)竹内 秀年(株式会社日本環境認証機構 研修事業部 参事)
▼概要文表示2022年11月号

2021年はISO14001が発行され25年の節目であった。そこで昨年は、『環境管理』7月号に「ISO14001の25年-環境マネジメントシステムの展望-」と題する論考を寄稿した。今回は、引き続きISO14001の25周年に因み、ISO14001の研修機関、認証機関、コンサルタント、大学の研究者ら有志によって実施したWEBイベントについて報告を行う。内容は、環境を学ぶ大学生100名を対象に実施したISO14001、SDGs、CSRに関するアンケートの結果について行った討議を踏まえ、今後のISO14001についての展望を述べるものである。

<特集>海洋プラスチックの動態解明に挑む―JAMSTEC・藤倉克則センター長に聞く―
本誌編集部
▼概要文表示2022年10月号

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology(JAMSTEC))では、海におけるプラスチックの動態解明などの調査・研究を精力的に進めている。現在までの取組と成果、今後の展望について、JAMSTECの情報誌1)を参照しながら、JAMSTEC地球環境部門海洋生物環境影響研究センターの藤倉克則センター長にお話を伺った。

<特集>海洋プラスチックごみ問題に挑むCLOMA―2021年度の河川や海岸等の清掃活動の紹介(会員へのアンケート調査結果から)
出石 忠彦(一般社団法人産業環境管理協会 CLOMA 事務局 技術参与)
▼概要文表示2022年10月号

 クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)は、地球規模の新たな課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、官民をはじめとする幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速化するためのプラットフォームとして、2019年1月に設立された。CLOMA では「2050年までに容器包装等のプラスチック製品100%リサイクルを目指す」という目標を掲げ、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入の推進など、多様な取り組みを積極的に展開している。
上記に加えて、CLOMA会員企業・団体の多くは、海洋プラスチックごみ問題への認識を深めたり、“クリーン・オーシャン”を実現するためのマインド醸成などを目的に、従業員をはじめとするさまざまなステークホルダーと協同で河川や海岸等の清掃活動を行っている。本稿ではその一端をご紹介する。

<特集>マルハニチロのビーチクリーン活動 "Make Sea Happy!"
岩渕 巽(マルハニチロ株式会社 経営企画部 サステナビリティ推進グループ)
▼概要文表示2022年10月号

 クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)は、地球規模の新たな課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、官民をはじめとする幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速化するためのプラットフォームとして、2019年1月に設立された。CLOMA では「2050年までに容器包装等のプラスチック製品100%リサイクルを目指す」という目標を掲げ、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入の推進など、多様な取り組みを積極的に展開している。
上記に加えて、CLOMA会員企業・団体の多くは、海洋プラスチックごみ問題への認識を深めたり、“クリーン・オーシャン”を実現するためのマインド醸成などを目的に、従業員をはじめとするさまざまなステークホルダーと協同で河川や海岸等の清掃活動を行っている。本稿ではその一端をご紹介する。

<特集>北村化学産業株式会社における海洋プラごみ問題への取り組み
渡邉 大輔(北村化学産業株式会社 QOL 事業部 マーケティング課)
▼概要文表示2022年10月号

 北村化学産業(株)では、全国各地でゴミ拾いの活動をされている団体や活動されている方々に向けて、子供も大人も一緒になって楽しめる「ゴミとたたかえ! Clean Up Monster」という活動を運営しています。当活動は、2019年よりスタートし、今年で3年目を迎え、提供するゴミ袋も第二段となり、5,000人を超える方が使用されています。

<特集>キョクヨーグループの「クリーンリバー活動」
服部 聖(株式会社 極洋 経営管理部 IR室)
▼概要文表示2022年10月号
 株式会社 極洋を中核とするキョクヨーグループは、魚を中心とした総合食品会社として昭和12年(1937年)の極洋捕鯨株式会社創立以来85年にわたり世界中の食卓へ海の恵みをお届けしてきました。しかし、近年、恵みを生み出す海洋の健康が、増え続けるプラスチックごみによって脅かされています。海洋へ流出したプラスチックごみは海洋生態系に悪影響を及ぼし、魚類をはじめとするさまざまな海洋生物に被害をもたらしたり、漁獲物への混入など漁業や水産養殖業に損害を与えています。
これからも、海の恵みである水産物を安定的に供給していくためには、健康な海洋が大前提であり、当社グループにとって海洋プラスチックごみ問題への取り組みはとても重要な課題です。
当社グループでは、現在、製品の包材に使用するプラスチック削減やグループ会社の養殖施設で使用する漁網やブイなどのプラスチック製部品の流出防止に取り組んでいるほか、海洋プラスチックごみ対策の一環として、ごみの発生源から問題を解決するというコンセプトのもと、河川域の清掃活動「クリーンリバー活動」を実施しています。
海洋プラスチックごみの多くは陸上で発生し、河川や水路を通じて海洋へ流出しており、河川域の清掃活動はごみの海洋への流出を防ぐ有効な手段と認識しています。
<レポート>太陽光発電、水素技術および脱炭素経営の最新情報 幕張メッセで開催された国際展示会レポート
本誌編集部
▼概要文表示2022年10月号
幕張メッセで開催された国際展示会レポート
<特集>脱炭素社会実現に向けたZEB(ゼロ・エネル ギー・ビル)の取り組み
吉田 三香(大成建設株式会社 クリーンエネルギー・環境事業推進本部 ZEB・スマートコミュニティ部 ZEB推進室)
▼概要文表示2022年9月号

 脱炭素社会が世界的な潮流となるなか、日本においても2021年10月の閣議決定にて「2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネ性能を確保」「2050年ストック平均でZEB基準の水準の省エネ性能を確保」とする新たな目標が掲げられ、国内におけるZEB導入の機運が高まっている。当社でも、2014年に国内初の都市型ZEBであるZEB実証棟を手掛けて以来、ZEBの普及拡大に努めてきた。2050年カーボンニュートラル実現のためには、新築建築物のZEB化に加え、既存建築物の改修工事によるZEB化の推進が、目標達成のための重要な取り組みと位置づけられている。本稿では、ZEBの定義・動向と、脱炭素社会実現に向けたZEB の取り組みについて概説する。

<特集1>VOCの排出削減によるオゾン低減を効率的に行うための諸条件
井上 和也(国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 主任研究員)
▼概要文表示2022年8月号

 地上オゾン汚染の低減を目指しVOC排出抑制の自主的取組が現在も継続されているが、対策を行う企業への負担軽減にも留意し、可能な限り効率的に対策を実施する必要がある。本研究では、VOC排出削減によるオゾン汚染低減の効率性を表す指標として「オゾン存在量低減効率」を提案するとともに、実際に、様々な条件下にて、大気化学輸送モデルによるシミュレーションを行うことによりオゾン存在量低減効率の値を試算し、VOC排出削減によるオゾン低減を効率的に行うための諸条件を検討した。

<特集1>VOC 排出源としての都市緑化樹木の影響
國分 優孝(公益財団法人 東京都環境公社 東京都環境科学研究所 主任)
▼概要文表示2022年8月号

 都市の光化学オキシダントを効果的に削減するためには、光化学オキシダントを生成しやすい原因物質(反応性VOC)を対象とした排出量削減が有効である。樹木は極めて高い反応性を持ったVOC(植物起源VOC)を放出することから、近年、街路樹などの都市緑化樹木が反応性VOCの有力な排出源の一つとして着目されるようになっている。大気中での存在時間が極めて短い植物起源VOCは、従来の大気観測等では実態把握が困難であったこともあり、あまり研究が進んでこなかった。しかし、近年の衛星画像解析技術やシミュレーション技術の発展により、新たなアプローチを通じた実態把握の研究が盛んになりつつある。
東京都環境科学研究所では、首都圏全域を対象とする重点的な調査をもとに、都市緑化樹木が及ぼす影響の実態把握を進めている。具体的には、最新の観測手法や衛星画像解析技術、大気化学シミュレーションを活用し、①都市緑化樹木からの植物起源VOC放出量推定、②植物起源VOCによる光化学オキシダント生成量評価、③その生成過程のスモッグチャンバーによる検証、といった一連のアプローチを実施してきた。現在これらの結果をもとに、光化学オキシダント生成への都市緑化樹木の影響が明らかになりつつある。

<特集2>水処理における窒素資源循環技術への取り組み
川本 徹(国立研究開発法人産業技術総合研究所 材料・化学領域 ナノ材料研究部門)
▼概要文表示2022年8月号

 地球の許容度を示すプラネタリーバウンダリーでは、窒素化合物の環境排出は最も深刻な課題の一つであり、その削減が期待されている。現在の産業活動を阻害することなく、環境排出を実現するための方法として、窒素循環技術の開発が期待されている。本稿では、既存の窒素循環技術を紹介したうえで、現在開発の進む新技術として、窒素化合物をNH4 +に変換する技術を示す。また、変換し生産したNH4+を濃縮分離し、資源として利用可能な形態にする分離濃縮技術として、膜分離技術と吸着分離技術を紹介する。

<特集2>水処理プロセスにおけるエネルギー生産技術の新展開
愛澤 秀信(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域環境創生研究部門 環境生理生態研究グループ 研究グループ長)
▼概要文表示2022年8月号

 2020年10月のカーボンニュートラルの宣言に伴い、下水処理プロセスにおいてもCO2排出量削減に向けた省エネルギーや創エネルギーとともに資源回収の取り組みを開始した。下水処理施設におけるCO2排出量の約55%が電力消費によるものであることから、施設の省エネ化、ICT、AIを導入した処理プロセスの高度化が進められている。創エネルギーでは、嫌気消化プロセスで生成したメタンガスによる発電に加えて、水素創出や微細藻類培養などの新たな技術構築を行っている。輸入総量の約10%が下水の流入しているリン回収は、下水処理場の特性やリン資源化技術、ニーズ把握とマッチングを確認しながら回収技術の高度化を進める必要がある。

<特集1>トランジション・ファイナンスのための分野別ロードマップ
経済産業省 産業技術環境局 環境経済室
▼概要文表示2022年7月号

 経済成長と着実なCO2排出削減の実現を両立させるには「グリーン」だけでなく、脱炭素化に向けた「トランジション(移行)」を適切に評価、資金供給を促すことが重要だ。経済産業省では、CO2多排出産業の2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的な移行の方向性を示す分野別の技術ロードマップをこれまでに7分野で策定している。これは、2021年5月に発表した「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」に基づきファイナンスする際の参照先となるものだ。健全なトランジション・ファイナンス市場の拡大に向けた環境整備の進捗に伴い、トランジション・ファイナンスの活用も進んでいる。

<特集2>プラスチックの環境側面におけるISO標準化動向 ─ 生分解(海洋環境中を含む)、バイオベース、マイクロプラスチック、リサイクル─
国岡 正雄(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 標準化オフィサー)
▼概要文表示2022年7月号

 海洋プラスチックゴミ問題、マイクロプラスチック問題の解決のために、プラスチックの3 R(再使用、使用量削減、リサイクル)推進が最も重要な解決策であるが、期せずして自然環境中に漏出するプラスチックには、生分解性プラスチックに関する研究開発も重要である。また、プラスチック資源循環の促進を目指すためには、再生可能原料であるバイオマスの利活用、リサイクルが必要である。生分解、バイオマス由来、リサイクルのプラスチック製品の環境に関わるISO国際規格は、専門委員会TC61(プラスチック)、分科委員会SC14(環境側面)で審議、発行されている。環境低負荷のプラスチックは、ISO規格で評価され、ISO規格の要求事項による認証システムで認証され、その貢献度が明確になり環境低負荷が担保されて市場導入を促進しなければならない。

<特集1>微細な粉じんによる環境汚染と火災爆発 新東工業株式会社 環境事業部 取材レポート
本誌編集部
▼概要文表示2022年5月号

 製造工場や作業場において、量や質の違いはあるが粉じんが必ず存在する。したがって、微粒子の粉じんは全産業に共通する環境課題ともいえる。半導体など電子産業でも粉じんによる火災が過去に数回発生し、製品へのコンタミ(異物混入)で不良品の発生も起こりえる。燃焼や発煙に関するもの以外でも、原材料の受け入れ、鋳造や鍛造、切断やプレス、研磨、仕上げ作業、清掃など様々な工程で粉じんが発生する。

<特集1>粒子状物質の基礎
遠藤 小太郎(一般社団法人産業環境管理協会 人材育成・出版センター 所長/本誌編集長)
▼概要文表示2022年5月号

 環境白書によれば、大気中の浮遊粒子状物質の濃度は近年、すべての測定地点で環境基準を達成するに至っている。より健康影響が大きいとされる微小粒子状物質(PM2 .5)についても、環境基準の達成率は98%を超えている。自動車排ガス浄化技術の高度化などきめ細かな対策が効果をもたらしたと考えられるが、大気中での二次生成や大陸からの長距離輸送など、必ずしも発生源が明らかではないものもある。
粒子状物質の特徴は他の大気汚染物質とは異なり、混合物であることである。一口に粒子状物質といっても、その発生源、サイズ、化学組成などはさまざまであり、計測や濃度表示の方法に加えて、その大気挙動や除去方法も大きく異なる。今後の更なる排出削減や規制強化に対応するために、本稿では粒子状物質の基礎としてその諸特性を概観する。

<特集2>脱炭素の潮流と日本企業にとっての脱炭素戦略策定の要諦
鵜飼 成典(KPMG FAS 執行役員 パートナー)六田 康裕(KPMG FAS シニアマネジャー)
▼概要文表示2022年5月号

 世界における脱炭素化の潮流は一過性ではなく、中長期的に継続する不可逆なものとなっている。国内に目を向けると、KPMGで調査・評価を行った、脱炭素への準備度合いを示すNet Zero Readiness Index(NZRI)では、相対的に日本は上位に位置づけられるものの、一層の脱炭素化の道は平坦ではない。今や脱炭素戦略は業界を問わず求められる重要な経営課題であるが、目標達成の難度の高さに頭を抱える企業も少なくない。本稿では、NZRIレポートのポイントを紐解きながら日本企業の置かれた位置づけを再確認するとともに、全社的な脱炭素戦略と、戦略実現のロードマップ作成のステップと、戦略を成功に導くカギについて概説する。

<特集2>パリ協定第6条の決定とその留意点
髙橋 健太郎(公益財団法人地球環境戦略研究機関 気候変動とエネルギー領域 副ディレクター)
▼概要文表示2022年5月号

 パリ協定第6条の大枠ルールをめぐる交渉は、2016年に開始し、2018年に合意されるはずであった。各国で政治的かつ技術的な議論で合意ができず、新型コロナウィルスの感染拡大によるCOP延期も重なり、合意までに3年を要する結果となった。この間、パリ協定に参加する国は、自国の温室効果ガスの排出削減目標(NDC)を新規に作成、または更新し、さらに2050年カーボンニュートラルを発表する国も大幅に増加した。これにより、民間セクターでもカーボンニュートラルを目指す動きが増え、炭素クレジットにも関係するパリ協定6条への関心が高まっている。本稿では、パリ協定第6条の決定とその留意点について解説する。

<総説>脱炭素におけるライフサイクルアセスメント
佐伯 順子(一般社団法人産業環境管理協会LCA 日本フォーラム事務局 主査)
▼概要文表示2022年5月号

 近年の脱炭素へ動きが活発になる中で、ライフサイクルアセスメント(以下、「LCA」という)が注目されている。LCAは、環境への負荷を定量的かつ総合的に評価する手法である。LCAでは、評価範囲や目的を明確にしたうえで、必要なデータ(投入材料、エネルギー量など)を収集する。二酸化炭素排出量算定の場合、得られた各データを二酸化炭素排出係数と乗じ、最終的にライフサイクル全体での二酸化炭素の総排出量へと積み上げる。評価結果は、炭素排出削減対策の分析、目標設定、コミュニケーションツールなどで活用できる。このため近年では、環境経営などへ活用範囲が拡大している。

<総説>ISO/TC207環境マネジメント規格の最新動向 ― ISO14030グリーン債の規格発行
大野 香代(一般社団法人産業環境管理協会 国際協力・技術センター 所長)
▼概要文表示2022年5月号

 近年、ISO/TC207(環境マネジメント)では、従来の組織の環境マネジメントの枠を超え、持続可能な発展にむけた気候変動対策や、環境保全への取り組みのための枠組みおよびそれを実行するためのツールとなる規格開発を行っている。その中で、環境保全に貢献するプロジェクト等に限定して融資を行うグリーンボンドおよびグリーローンの原則や手順を規定するISO14030(グリーン債)シリーズ規格が開発された。本稿では、これらの大野 香代(一般社団法人産業環境管理協会 国際協力・技術センター 所長)大野 香代(一般社団法人産業環境管理協会 国際協力・技術センター 所長)規格の開発経緯、概要、期待される活用について紹介する。

<特集1>令和4年度の環境政策
経済産業省産業技術環境局環境政策課
▼概要文表示2022年4月号

 地球温暖化への対応を次なる大きな成長につなげ、「経済と環境の好循環」を作るために、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を、関係省庁と連携してさらに具体化し、予算、税、金融、国際連携など、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画を策定した。また、昨今、海洋プラスチックごみ問題等の地球規模の環境課題が深刻化し、サーキュラー・エコノミーへの転換が世界的に進む中、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」を本年4月に施行し、プラスチック使用製品のライフサイクル全般での対策を講じるなど、循環経済への移行についても着実な取り組みを進めている。

<特集1>当面の環境省の重点政策について
環境省大臣官房総合政策課企画評価・政策プロモーション室
▼概要文表示2022年4月号

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を契機に、持続可能な経済社会の構築にむけた変革の必要性が、世界中で一層認識されてきている。持続可能な社会を構築するためには、「脱炭素」「循環経済」「分散・自然共生」という多角的な切り口で、経済社会全体を変革しなければならない。環境省は、2030年までが人類の正念場、勝負の時との決意で、この変革に取り組んでいく。

<特集2>COP26の評価と日本の課題 (COP26 and Japan's Challenges)
有馬 純(東京大学 公共政策大学院 特任教授)
▼概要文表示2022年4月号

 COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議2021年10月31日~11月12日開催)では、産業革命以降の温度上昇を1 .5℃以内に抑制、2050年全球カーボンニュートラルをめざす、石炭火力のフェーズダウンを行うなどの野心的なメッセージを盛り込んだグラスゴー気候合意が採択された。英国の外交力を示すものであるが、トップダウンの全球温度目標と、各国の実情を踏まえたボトムアップの目標設定というパリ協定のバランスを崩すことでもある。今後、限られた炭素予算をめぐる先進国と途上国の対立、大幅な途上国支援要求等が激化することになろう。主要国の中でエネルギーコストが最も高い日本にとっても、重い課題をつきつけることとなる。

<特集2>地球温暖化、公的機関の発表は正しいか?
近藤 純正(東北大学 名誉教授)
▼概要文表示2022年4月号

 いま地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出量を減らす「脱炭素化」や、温暖化が進んでも適応できるようにする「適応策」が進められている。正しい現状の理解こそが温暖化に対する政策や取り組みにいかすことができる。ところが、気象庁発表の日本の地球温暖化(長期の気温上昇率)は、筆者が求めた精確な値の1 .5倍である。簡単そうだが、気温の観測と長期間の統計方法は非常に難しい。このことを社会的背景も含めて説明する。

<巻頭インタビュー>東京理科大学理工学部 出口 浩教授にきく「活性汚泥の先端研究を語る── 酸素消費速度と汚泥滞留時間」
聞き手:本誌編集部
▼概要文表示2022年3月号

 東京理科大学理工学部土木工学科の出口浩(でぐちひろし)教授に、汚水の生物処理に関する興味深い話をお聞きした。合成洗剤の自然分解、活性汚泥のフロックに微細なガラスビーズで重しを付ける研究、酸素消費速度OURと汚泥滞留時間SRTの関係、さらに原水に最適なSRTを選択することでエアレーションに要する電力量を節約できることなど、どの話題も非常に興味深い内容であった。

<特集>特集「海洋ごみの国際規範」について
鶴田 順(明治学院大学 法学部 グローバル法学科 准教授)/瀬田 真(横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授)
▼概要文表示2022年3月号

 海洋ごみに関する国際規範は多様である。海洋ごみが国際問題化する以前から存在する国際規範もあれば、国際問題化したことを受けて定立された規範もある。国際条約のように法的拘束力を有する規範もあれば、SDGsのように法的拘束力を有さない規範もある。グローバルな規範もあれば、地域的な規範もある。本特集では、海洋ごみ問題に関する多様な国際規範の全体像を把握するために、関連の国際規範を広く調査し、規範相互の関係性に注目しながら整理する。海洋ごみに関する国際規範の日本における実施の現状とその課題についてもみていく。

<特集>SDGsによる海洋プラスチックごみ問題への対応 ──「目標ベースのガバナンス」と法の相互関係
佐俣 紀仁(武蔵野大学 法学部 法律学科 准教授)
▼概要文表示2022年3月号

 持続可能な開発目標( SDGs)は、2015 年9 月の国連総会で採択された国際社会の共通目標である。SDGs自体には法的な拘束力はない。むしろ、SDGsは、法によって規制することなしに、関連アクターの自主的な取り組みにその具体的な実現方法を委ねている。こうした自主性と柔軟な取り組みを許す点にSDGsの価値を見出せる。しかし、SDGsと法との関係は無視できない。SDGsの基礎には法があり、また、SDGsを取り込む形で新たな法が形成されている。本稿では、SDGsと法との相互補完的関係を、海洋プラスチックごみ問題を素材として示す。

<特集>国連環境総会における海洋プラスチックごみに関する新たな条約策定の動き
本田 悠介(神戸大学大学院 海事科学研究科 准教授)
▼概要文表示2022年3月号

 2017年に開催された国連環境計画の第3回国連環境総会(UNEA3)において、マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみ対策の現状把握や、新たな法的拘束力ある文書の採択を含む今後の対策オプションの検討を目的とする専門家会合の設置が決定された。2020 年の専門家会合による既存の取り組みにおける様々なギャップ・障壁に関する報告を受け、現状に不満を持つ複数の国は法的拘束力のある文書の交渉開始を支持している状況にある。本稿では、専門家会合を含むUNEAにおける議論経緯を中心に、海洋プラスチックごみをめぐる新たな条約策定の動きについて紹介する。

<特集>EU・ASEAN・UNEP地域海プログラムにおける海洋ごみ対策 ── 地域的アクターによる規範形成
瀬田 真(横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授)
▼概要文表示2022年3月号

 海洋環境保護対策には、国際社会・国とは別に、地域的なものも存在する。その最も有名な例としては、欧州連合(EU)による措置が挙げられる。いわば、海洋ごみのホットスポットである東南アジア諸国連合(ASEAN)においても、独自の取り組みが始まっている。また、海洋については、国連環境計画(UNEP)が1974 年より地域海プログラムという枠組みを設けている。このプログラムの中では、北西太平洋行動計画(NOWPAP)のようにUNEPが設立して運営するものもあれば、バルト海のヘルシンキ条約のように、地域主導で独自に締結されたものもある。
 本稿では、このように多様な地域的アクターが、海洋ごみに対しどのような対策を行い、それがどのような意味を有するかについて検討する。

<特集>日本の海ごみ関連法と国際規範動向── 改正海岸漂着物処理推進法を中心に
樋口 恵佳(東北公益文科大学 公益学部 准教授)
▼概要文表示2022年3月号

 日本における海ごみ関連の国内法は、a.条約規定を遵守するための担保法として国内で制定・改正された法律及びb.条約担保法ではないが、日本独自に制定・改正された法律の2 種類に分類できる。本稿では、日本の海ごみ関連法を上記の観点から整理し、それぞれについて国際法との関連性を示す。そのうえで、担保法の制定を求めるほど明確な法規範がない、かつ海洋ごみの主要因となっている陸上起因汚染の国際規範と、それに対する日本の対応を概観する。今後の新た
な規範の発展の可能性を見据えた議論をする場面では、法的拘束力ある条約の実施か否かを問わず、日本の国内における実行に関する情報が広く参考にされうる。

<特集>ロンドン条約・議定書による海洋ごみ問題への対応 ── 遵守グループの役割を中心に
岡松 暁子(法政大学 人間環境学部 教授)
▼概要文表示2022年3月号

 船舶等からの海洋投棄による海洋汚染を防止することを目的とするロンドン議定書*1(以下、「議定書」という)は、海洋投棄を原則禁止とし、附属書に揚げられている廃棄物等のみ、投棄することが「検討可能」なものとしている。しかし、その条約上の義務の履行状況は良好とはいえず、議定書の遵守グループでは履行確保措置の検討がなされている。本稿では、これらの条約の内容と適用範囲を確認したうえで、締約国の履行状況を紹介しつつ、当該条約による海洋ごみ規制の課題を考察する。

<特集>MARPOL73/78 による海洋ごみ問題への対応 ── 附属書Ⅴの概要と最近の動向
中村 秀之(公益財団法人日本海事センター 主任研究員)
▼概要文表示2022年3月号

 MARPOL条約は、1967 年に英仏海峡において起きたタンカー「トリー・キャニオン号」の油濁事故を契機として、1973 年に採択されたものである。1973 年条約はすぐには発効せず、1978 年の議定書による改正を受けて初めて発効に至った。船舶からのプラスチックごみの排出は、1973 年の条約時点でその附属書Ⅴにおいてすでに禁止されている( 附属書Ⅴ第3 規則及び第5 規則)。
 現行のMARPOL73/78 条約附属書Ⅴは、原則として、すべてのプラスチック、調理油を含めて、すべての廃物の海洋への排出を禁止しており、排出が許されるのは明示された例外的な場合に限られる。

<報告>令和2 年度の公害苦情件数は、昨年度に比べ1.1 万件、16%増加 ──「令和2 年度公害苦情調査結果」より
公害等調整委員会事務局 総務課
▼概要文表示2022年3月号

 公害等調整委員会では、都道府県・市町村の公害苦情相談窓口へ寄せられた公害苦情について、その受付状況及び処理状況を把握するため、毎年度、公害苦情調査を実施し、結果を公表している。
 令和2 年度の受付件数は、前年度に比べ1.1 万件、16%増加しており、公害苦情相談窓口による公害苦情の迅速な解決にむけた取組状況を調査データから紹介するとともに、増加した背景として、新型コロナウイルス感染症( 以下、「感染症」という)の感染拡大の影響についても考察した。

<特集1>地盤沈下の現況── 千葉県を例に
香川 淳(千葉県 環境研究センター 地質環境研究室)
▼概要文表示2022年2月号

 地面が低下する現象が「地盤沈下」である。かつて総沈下量が1mを超える地点が関東平野南部で続出していた。地盤沈下が進行すると、基礎構造物の抜け上がりによる配管の破損や通行障害、さらに浸水リスクといった問題にも発展する。
 地盤沈下の主たる原因は地下水や天然ガスの過剰採取であるため、揚水規制や天然ガス生産の停止といった対策がなされ、地盤沈下の監視態勢も強化された。最近では、地下水の利用量の減少によって地下水位の上昇傾向も続いている。
 そこで、地下水を持続的利用可能な資源ととらえ、新たに「地下資源の有効活用」という観点での前向きな取り組みも望まれている。本稿では、地盤沈下の現在の状況や課題などについて千葉県の事例を中心に紹介する。

<特集1>地盤沈下対策で海面上昇へのレジリエンスを高める
堅田 元喜(キヤノングローバル戦略研究所)
▼概要文表示2022年2月号

 沿岸地域の海面上昇というと地球温暖化ばかりが注目されるが、地盤沈下による「相対的海面上昇」もある*1、2。地盤沈下は、主に地下水・天然ガスかん水の採取などの人為的要因と地震動・時間経過による圧密などの自然的要因、そしてこれらの複合要因によって引き起こされる。我が国でも、地下水への過度の依存により大都市で深刻な浸水被害が発生し、2011 年3 月の東北地方太平洋沖地震時には、地方でも被害が顕在化した。
 最近の国内における研究により、ここ数十年の相対的海面上昇の速度は地球温暖化による海面上昇速度と同等もしくは上回っていたこともわかってきた。地盤沈下が進行している地域では、地
球温暖化による影響以上の海面上昇が想定されることから、水利用管理などの「海面上昇への緩和策」と堤防増築をはじめとした「海面上昇への適応策」を優先的に進めるべきである。

<特集2>環境影響評価(EIA)に関する国際義務の国内実施── 日本の現状と課題
児矢野 マリ(北海道大学 大学院 法学研究科 教授 国際法)
▼概要文表示2022年2月号

 今日、持続可能な発展を推進するための手段として、国内外で環境影響評価(EIA )が重視されている。そして条約を含む多くの国際文書は、個別の活動・事業に関するEIAの実施や、EIAの実施確保のため措置をとることを、活動・事業の管轄国に求めている。すべての国に適用される国際慣習法も、国境を越えて重大な環境リスクをともなう活動・事業につき、EIAの実施を管轄国に要求する。しかし、現在の日本の国内法制は、必ずしもこのような国際義務の遵守確保を導くことができるようなものとはなっていない。

<特集2>絶滅が危惧される野生動植物の種の国際取引に関する ワシントン条約の国内実施── 野生生物の保全と動物福祉の統合という観点から
遠井 朗子(酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 国際法)
▼概要文表示2022年2月号

 環境条約の国内実施とは、締約国が自国において、立法その他の措置をとることにより環境条約を作動させることである。しかし、条約にもとづく規制とグローバルな政策領域との連携が進展することにより、当初の規制範囲を超えて、複合的なガバナンスの実装を求められる場合がある。
 本稿は、「野生生物の保全と動物福祉の統合」という潮流が、絶滅が危惧される野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の実施に与えている影響に焦点を絞り、とくに野生動物の福祉の考慮という観点から、日本の国内実施における課題を検討する。

<巻頭レポート>本格化する洋上風力発電 脱炭素社会は電力需要が増加 再生可能エネルギーの切り札になるか
本誌編集部
▼概要文表示2022年1月号

 ドイツ駐日大使が昨年11 月30 日に視察した洋上風力の予定地がある。それは千葉県の銚子市沖である。洋上風力発電の先進国も注目する銚子沖が洋上風力の「促進区域」として2020 年に選ばれている。
 銚子市は漁業や醤油などで有名だが、地形が太平洋に突き出ているため年間を通して強い風が吹き、風力発電の立地場所として恵まれている。現在、市内には陸上に34 基(うち稼働中33 基)、洋上に1基の大型風力発電設備が設置されている。
 銚子市では現在、「銚子市沖促進区域の公募占用指針」に基づき、発電事業者の選考手続きが進んでいる。そこで銚子市役所に洋上風力発電についてお聞きした。

<巻頭レポート>「銚子ジオパーク」
本誌編集部
▼概要文表示2022年1月号

 約1. 2 ~ 1. 5 億年前の地層などを間近に観察できる銚子ジオパークを紹介する。

<巻頭レポート>八ッ場ダムと中和処理 世界初の中和事業を現地レポート
本誌編集部
▼概要文表示2022年1月号

 八ッ場ダムと中和処理 世界初の中和事業を現地レポート

<特集>資源循環に関する国内外の動き
細田 衛士(中部大学副学長)
▼概要文表示2022年1月号

 消費者の関心は「ものの豊かさ」から「心の豊かさ」へ移り、「もの離れの生活、断捨離」といった生活スタイルの変化もみられる。しかし、日本企業の生産スタイルは、大量生産―大量消費―大量廃棄というワンウェイ型経済からの脱却がかなり遅れていた。
 その変化に乗り遅れて生じたのが、プラスチック廃棄物の問題である。プラスチック資源循環促進法は法的拘束力がさほど強くないが、それだけにSDGsのような非法規範であるソフトローの役割が一層重要になる。さらに、生産物連鎖を通じたカーボンニュートラルへの道筋を策定しつつ、循環経済の構築に対応する必要もある。
 本稿では、資源循環に関する内外の循環経済の動きを概観するとともに、環境・資源と経済のウィンウィンを目指した新たな経済の構築の状況を踏まえつつ、今後の循環経済のトレンドを展望する。

<特集>プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律について ──「プラスチック」に着目した資源循環の促進
羽田 由美子(経済産業省 産業技術環境局 資源循環経済課課長)
▼概要文表示2022年1月号

 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」は、多様な物品に利用されているプラスチックについて、個別物品ではなく、「素材」に着目して制定されたはじめての法律であり、プラスチックの資源循環の促進等を図るため、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化ならびに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等、プラスチック使用製品の設計・製造から、販売・提供、そして排出・回収・リサイクルにいたるまで、プラスチック使用製品のライフサイクル全般での対策を講じる内容となっている。具体的なプラスチック資源循環促進法で講じる措置等について紹介する。

<特集>海洋プラスチックごみ問題への企業の挑戦
柳田 康一(CLOMA 事務局技術統括)
▼概要文表示2022年1月号

 地球規模で広がる海洋プラスチック問題の解決には、一企業や特定の業種業界に限らない多様な知恵の結集が求められる。原材料や素材、製品製造、小売、リサイクルといったプラスチック資源循環に携わる450 以上の企業が参加するCLOMAは、企業がもつ多様な技術や経験を活かし、消費者や自治体、国とともに未来志向のソリューションを生み出し、ジャパンモデルとして世界へ発信することを目指している。本稿では、CLOMAの設立背景や特徴、中長期計画、加えて過去2年間の具体的な活動を紹介する。

<特集>プラスチック問題を解決する関西の中小・ベンチャー企業
経済産業省 近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・リサイクル課
▼概要文表示2022年1月号

 海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050 年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」がG20 大阪サミットで共有されたが、プラスチック製品出荷額の全国3 位は大阪府、5位は滋賀県と、近畿はプラスチック製品製造業が盛んである。そこで近畿経済産業局では、「プラスチック資源循環」をテーマに、プラスチックのリサイクルや生分解性素材の開発等に取り組む関西企業の事例を収集した。
 今回紹介する事例が、環境配慮型製品や資源循環を前提とした製品の設計製造など、さらに「企業よし、消費者よし、環境よし」の「三方よし」となるビジネスが進む一助となることを期待している。

<総説>製品含有化学物質規制情報提供に関して
矢口 等(一般社団法人 産業環境管理協会 国際化学物質管理支援センター 化学物質管理情報室)
▼概要文表示2022年1月号

 製品含有化学物質規制は、2000 年に使用済み自動車に対してEU ELV指令が施行され、その後、電子電気機器における特定有害物質の使用制限として、EU RoHS指令が2006 年に施行された。
 その後、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ、SAICM( Strategic Approach to International Chemicals Management)が採択され、欧州REACH規則をはじめ、各国で化学物質に関する規制が制定・施行されている。
 このような背景から、化学物質管理は企業にとって必要不可欠である。しかし、各国の規制情報を逐次把握するのには、多大な工数が掛かるため、企業支援の一環として情報提供サービス『CATCHER 』を開始した。

<特集>サーキュラー・エコノミーに向けた ビジネスを展開するために
梅田 靖(東京大学 教授)
▼概要文表示2021年12月号

 「サーキュラー・エコノミー」という言葉が従来の廃棄物処理、リサイクルの延長線上でとらえられていることも多いように思われるが、それはカーボンニュートラルとともに、EUが描く持続可能な社会の実現に向けた新しい経済社会システムの目標を示している。
 そこでは、資源が循環することを前提に、ものの大量生産、大量販売によらない様々な価値提供を基本としたビジネスへの転換が求められている。そのために、循環する製品ライフサイクルの設計、マネジメントとそのビジネス化を主導する「循環プロバイダー」が多く現れることが期待される。
 本稿では、サーキュラー・エコノミーの意味、欧州の製造業の対応例を整理し、日本の従来型3Rと比較する。そしてCE 型のビジネスを展開する「循環プロバイダー」の考え方を紹介する。

<特集>一般社団法人産業環境管理協会 「資源循環技術・システム表彰」「リサイクル技術開発本多賞」「3R 先進事例発表会」実施報告
一般社団法人産業環境管理協会資源・リサイクル促進センター
▼概要文表示2021年12月号

 一般社団法人産業環境管理協会は、資源の効率的な利用の促進、循環ビジネスの振興を目的として、廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルの先進的な取組を顕彰するために毎年、「資源循環技術・システム表彰」「リサイクル技術開発本多賞」を広く募集、表彰するとともに、受賞内容の広報を目的として「3R先進事例発表会」を開催している。
 本年は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、2021 年10 月15 日にオンラインにて、「令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47 回)表彰総評」「令和3年度リサイクル技術開発本多賞(第26 回)表彰総評」及び「令和3年度3R先進事例発表会」を開催し、約220 名の参加を得た。

<特集>【令和3 年度リサイクル技術開発本多賞(第26 回)】希土類元素を利用したチタンスクラップのアップグレードリサイクル技術の開発
大内 隆成(東京大学生産技術研究所 講師)/岡部 徹(東京大学生産技術研究所 教授)
▼概要文表示2021年12月号

 チタンは抜群の耐腐食性並びにチタン合金として高い比強度を示し、無尽蔵の資源量を有する魅力的な金属材料である。しかし、鉱石から高純度の金属チタン(スポンジチタン)を製造するプロセスコストが高いため、現状ではチタンは高付加価値材料としてきわめて限定的な用途にのみ使用されている。チタン製品の製造過程では、酸素に汚染された多量のスクラップが発生する。スクラップをリサイクルするには、スクラップから酸素を除去するプロセスが必要である。
 受賞論文では、希土類元素を用いて、チタンスクラップ中の酸素濃度をスポンジチタンと同程度かそれ以下の濃度まで低減する、新しいプロセスの開発研究について報告した。本プロセスが実用化すれば、チタンスクラップのリサイクルが促進され、チタン製品の価格が低減し、将来的にチタン製品の爆発的な普及につながると期待される。

<特集>【令和3 年度リサイクル技術開発本多賞(第26 回)】固体高分子形燃料電池からの貴金属回収にかかる新プロセスの開発
金村 祥平(東芝エネルギーシステム株式会社 エネルギーシステム技術開発センター)/柳生 基茂(東芝エネルギーシステム株式会社 エネルギーシステム技術開発センター)/岡村 雅人(東芝エネルギーシステム株式会社 エネルギーシステム技術開発センター)
▼概要文表示2021年12月号

 固体高分子形燃料電池(PEFC)において電極触媒として用いられている白金族元素(PGM)を溶解回収する技術を開発した。通常、PEFC内部に存在するPGMを回収するためにはPEFC 筐体を分解する必要がある。
 本技術ではPEFCが製品として備える物理的特徴を活用し、燃料ガス、空気を導入するラインを通じてPEFC内に塩酸を注入し、極性を経時的に反転させながら電解を行うことでPEFCを解体することなくPGMを溶解する。実機家庭用燃料電池で用いられる700Wセルスタックを用いたPGM溶解試験を行い、セルを解体することなく70 ~ 80wt%のPGMが溶解可能であることを実証した。

<特集>【令和3 年度資源循環技術・システム表彰(第47 回)経済産業大臣賞受賞】家電リサイクル樹脂の循環型サプライチェーン構築
田島 章男(パナソニックETソリューションズ株式会社 総括部長)/西尾 考司(パナソニックETソリューションズ株式会社 総括部長)/筒井 裕二(パナソニック株式会社 加東樹脂循環工場 主幹)/竹内 慎(パナソニック株式会社 キッチン空間事業部 主任技師)/三宅 岳(パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部 主任技師)
▼概要文表示2021年12月号

 パナソニックでは従来から家電リサイクル由来の再生樹脂を再び家電に再利用する取り組みに注力してきたが、家電に利用できない、あるいは再利用できず廃棄されるものも多く、課題であった。そこで、パナソニック関連部門とリサイクル工場、再生樹脂会社など多くの会社が連携し、適材適所で役割を担うことで再生樹脂の資源循環を大幅に拡大する、全国規模の循環型サプライチェーンを構築した。
 構築したネットワークは家電リサイクル樹脂だけでなく、様々な樹脂や業界にも適用可能な動静脈連携のプラットフォームとなり得るもので、この拡大によりさらに循環経済(Circular Economy)の実現に貢献していく。

<特集>【令和3 年度資源循環技術・システム表彰(第47 回)経済産業大臣賞受賞】溶剤循環洗浄法による微量PCB汚染廃電気機器の処理及び金属リサイクルの実現
藤本 浩之(株式会社かんでんエンジニアリング 電力事業部 変電工事部 PCB技術グループマネジャー)
▼概要文表示2021年12月号

 微量のPCBが意図せず変圧器の絶縁油に含まれていた微量PCB 汚染廃電気機器( 以下、汚染機器)は、全国で160 万台にも及び喫緊の課題である。汚染機器の処理は主として焼却施設で無害化されるが、焼却炉に大型の汚染機器は入れることができず、また環境対策や化石燃料の消費によるCO2 排出など環境面での課題もある。当社は、現地に洗浄装置を持ち込み、環境に優しい洗浄溶剤を用いて機器内部を循環洗浄することで、PCBを除去する技術を開発した。金属はすべてリサイクルされ、その量は2 万tあまりにもなる。本技術で環境負荷削減と資源循環を推進し、持続可能な社会の実現の一助になればと考える。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)経済産業省産業技術環境局長賞受賞】電気炉による鉄スクラップ等鉄屑の高付加価値特殊鋼製品へのリサイクル
江良康司(山陽特殊製鋼株式会社 環境管理部 環境管理グループ長)
▼概要文表示2021年12月号

 電炉メーカーは、鉄スクラップを原料に新たな鉄鋼製品を生み出すことにより、鉄資源の循環に貢献している。特殊鋼電炉メーカーの山陽特殊製鋼では、一般的な鉄スクラップを主な原料としつつも、独自の超高清浄度鋼の製造技術をベースに、合金バランスの設計技術と素材製造プロセス条件の最適設計技術を駆使して、「部品の長寿命化」「部品の小型・軽量化」等の需要家の要望に応える高付加価値特殊鋼製品を供給することで、製品製造による資源循環のみならず、製品使用後の廃棄物削減や使用時の二酸化炭素排出量削減にも寄与するなど、ライフサイクルを通じた環境負荷低減活動を推進している。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)経済産業省産業技術環境局長賞受賞】循環型社会を実現する高効率ファインバブル式液清浄化装置の開発
田中 良(中部電力ミライズ株式会社 法人営業本部エンジニアリング部 主任)/神原 惠一(関西オートメ機器株式会社 環境制御部2 課 課長)
▼概要文表示2021年12月号

 輸送用機器をはじめとする工場では、生産の過程で様々な廃液が発生する。洗浄工程から発生する洗浄液や加工工程から発生するクーラント液は、継続利用により不純物の混入量が増加するため、一定期間使用したら廃棄する。中部電力ミライズと関西オートメ機器は、今後これら廃液の最小化を目指す必要があると考え、循環型社会を意識した企業向けに高効率ファインバブル式液清浄化装置( RaFloM-HE)を開発した。本開発装置は、清浄化により洗浄液やクーラント液の液寿命を大幅に延ばすことができ、廃棄物低減につながり、循環型社会に貢献できる。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)経済産業省産業技術環境局長賞受賞】使用後耐火物クローズドループリサイクル技術の確立
中村 善幸(JFEスチール株式会社 スチール研究所 スラグ・耐火物研究部主任研究員)
▼概要文表示2021年12月号

 製鉄所で溶銑運搬に用いられる溶銑鍋の耐火物は、使用後の有効利用がなされていなかった。JFEスチールは溶銑接触部位の全量リサイクル技術の開発に取り組んだ。課題となる異材質、不純物の混入経路と状態に加え、耐火物中での不純物の影響原理を詳細に
調査した結果、分別解体と分別管理および粒度分別による不純物混入量の大幅抑制に成功した。さらに、新開発した原料の管理方法により低コストで安定した耐火物原料を得ることを可能にした。リサイクル原料の配合率は70%と世界最高レベルを達成し、クローズドリサイクル可能な技術を確立した。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)一般社団法人産業環境管理協会会長賞受賞】廃溶剤等を原料とした 再生燃料のリサイクル事業
山本 哲也(株式会社ダイセキ事業統括本部長取締役副社長執行役員)
▼概要文表示2021年12月号

 当社は産業廃棄物の中間処理とリサイクルを行う「環境創造企業」として様々な産業廃棄物の再資源化に取り組んでおり、循環型社会の構築、温室効果ガスの削減、脱化石燃料に向けた事業を展開している。
 廃溶剤は従来、再生業者にて蒸留によって溶剤に再資源化できる溶剤成分と再資源化できない不純物に分離され、不純物は単純焼却処分されている。ただし、蒸留により溶剤に再資源化されている廃溶剤は
少なく、多くは蒸留が困難であるため単純焼却処分されている。
 当社では、上述の不純物や、蒸留ができず単純焼却処分されている廃溶剤を、再生燃料にリサイクルしてセメント企業に出荷することで、新たな価値を生み出している。再生燃料はセメント企業にて石炭の代替燃料として利用されており、石炭の使用量の削減に貢献している。また、廃溶剤の再生燃料へのリサイクル処理は単純焼却処分と比較してCO2 の排出量が少ないため、温室効果ガスの削減にも貢献している。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)一般社団法人産業環境管理協会会長賞受賞】災害備蓄食品のリデュースとリサイクルによる食品ロス削減事業
山田 英夫(一般社団法人 食品ロス・リボーンセンター 代表理事)
▼概要文表示2021年12月号

 食品ロスは現在、日本で600 万t以上出ている。災害備蓄食品は年間売上200 億円のマーケットサイズで、購入者の7 割は自治体、大手民間企業である。グリーン購入法の影響力が届く範囲であるため、リデュース・リサイクルの仕組みが整えば、一挙に廃棄から有効活用の道、すなわち食品ロスゼロを目指せるに違いないと考えた。
 全国を見回すと、排出事業者が安心して任せることができる食品のリデュース( 発生抑制)やリサイクルの仕組みがない。リデュース、リサイクルどちらも信頼性を担保できる仕組み、つまり透明性が高くエビデンスが揃い排出事業者に説明できる仕組みが食品ロスを減らすための第一歩になるのではないかと、その仕組みを東京で構築することにした。
 事業スキームを東京都のモデル事業に提案、採択され、2 年間実施したものが現在の事業の骨格である。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)一般社団法人産業環境管理協会会長賞受賞】オイルリユースサービス
柳内 剛(株式会社サーテック 代表取締役社長)
▼概要文表示2021年12月号

 従来、工場から出る使用済み潤滑油等は、再使用されずに産業廃棄物処分業者に引き取られ、主に焼却処分されていた。そのため、廃棄分を補うためには新油を購入するしかなく、焼却処分によりCO2も発生させていた。
 当社は、ユーザーの工場で出る使用済み潤滑油等を専用処理装置で処理し、再使用可能な状態にしてユーザーに再納入する、潤滑油等のリユース事業を構築した。
 本技術は、専用処理装置を連携企業と共同開発し、使用済み潤滑油等を再使用可能な状態に処理する。また、対象とする使用済み潤滑油をユーザーの工場まで回収にいき、当社で再使用可能な状態に処理してからユーザー工場に再納品するというサービスの仕組みを構築した。これにより、廃棄していた使用済み油を再使用することで、産業廃棄物を削減し、CO2 の発生を抑制、新油購入コストを半減させることに成功した。
 廃棄物処理業としてではなくオイルリユースを循環サービスとして事業化した。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)一般社団法人産業環境管理協会会長賞受賞】促進酸化技術を用いた水性廃シンナーの処理方法の確立
黒沢 裕貴(トヨタ自動車 プラント・環境生技部 環境技術G 主任)
▼概要文表示2021年12月号

 自動車製造プロセスの塗装工程において使用される塗料は、2000 年頃からPRTR法・VOC規制対応のため溶剤から水性化が進められてきた。塗料色替時の配管洗浄等に用いているシンナーについても同様に水性化されているが、90%以上が水でありながらも、有機分の指標であるCOD( Chemical Oxygen Demand)の値が高く、使用済み廃液は従来、全量を社外で処理しており、塗装工程から発生する廃棄物として大きな割合を占めていた。また、社外処理の方法としては、蒸留を行い廃液中の溶剤分を回収し、残りを焼却処理するという形をとっているため、移送や焼却費用がかかり、コスト面やCO2 発生量も課題であった。
 一方、水性廃シンナーの発生源対策として、製造工程側での塗料ロボットの色替範囲の最小化や、シンナー使用量低減・清掃作業方法の見直しなどを行っており、一定の低減効果があったが、さらに対策を進める上で後処理側の抜本的な対策が必要となっていた。
 そこで、社内で排水処理技術を用いた処理プロセスの開発を行い、薬品による凝集処理で塗料分を沈降分離・除去し、残った廃液に対し促進酸化技術(フェントン反応)を用いて有機成分を分解するシステムを構築、実設備として導入し、廃シンナー処理にともなう総合的な環境負荷低減を達成した。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)奨励賞受賞】産業廃棄物である架橋ポリエチレンの資源循環の事業化
塩野 武男( 株式会社オオハシ 代表取締役)
▼概要文表示2021年12月号

 弊社は再生ポリエチレンを用いた樹脂製敷板「リピーボード」を製造・販売しているが、近年良質な再生ポリエチレンの安定的な入手が難しくなりつつあるため、架橋ポリエチレンのマテリアルリサイクル化を検討
した。

<特集>【令和3年度資源循環技術・システム表彰(第47回)奨励賞受賞】使用済み自動車部品の適正なリビルトプロセスの確立と普及を図るためのJSA 規格の開発
望月 康政(株式会社アーネスト 元常務取締役・製造本部長)
▼概要文表示2021年12月号

 アーネストは、平成5 年( 1993 年)に中古自動車部品の販売を目的に創業し、以来、RAPブランドで自動車用リビルト部品の製造・販売を開始し、さらにはリビルトが困難なセンサー類をNAPブランドで優良部品として製造・販売するなど、業容を拡大して順調な発展を遂げてきた。
 リビルト部品は、使用済み自動車から取り外した部品や、修理交換した部品をリビルトするもので、主要構成部品を再利用するため、新品の部品に比べてCO2 の発生が少なく、環境に貢献する部品として循環型社会のニーズに即している。
 このリビルト部品が市場・利害関係者から信頼され、販売量を増大させるには、製品の品質確保と入手しやすい価格設定が重要であり、それがCO2 の削減という、社会的なニーズに大きく応えることになる。
 アーネストは、リビルト部品の品質と価格が市場に受け入れられ、環境への貢献度の増大とリビルト業界のさらなる発展を目指して、JSA規格JSA-S1005:2020「自動車用リビルト部品―リビルトプロセスに関する要求事項―」の規格化を提唱し、実践してきた。

<特集>【令和3 年度資源循環技術・システム表彰(第47 回)レアメタルリサイクル賞受賞】ガラス研削スラッジからのタンタル再利用技術の開発
中畑 耕治(株式会社住田光学ガラス 光学ガラス製造部 専任部長)
▼概要文表示2021年12月号

 光学ガラスの検査過程において、ガラスの外周部に発生する不均質な不良と判断された層状の部分は、従来は研削で除去され、回収された研削スラッジは産業廃棄物として廃棄されていた。
 硝種によってはレアメタルであるTa(タンタル)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Bi(ビスマス)、Ge(ゲルマニウム)等の化合物原料が多く使用されており、製造現場ではかねてから分離・回収・再利用が課題目標となっていた。
 このたび、比較的熔解頻度の高い硝種に関して不純物金属除去の工程を追加導入することで、レアメタルを含んだ研削スラッジの再利用が可能となる技術を開発した。

<特集>【覆面座談会】 環境ISOをより活用するため専門家に生の声をきく ─ ISO 14001 の25 周年を振り返る覆面座談会
聞き手:「環境管理」編集委員長、産業環境管理協会専務理事 黒岩進
▼概要文表示2021年11月号

クマさん:大手メーカーでISO事務局を長年担当し現在はEMS 講師などに従事
ヒツジさん: 印刷会社の企画部勤務を経てコンサル会社でISO審査や研修などに従事し事務局担当も経験、現在もEMSを企業に指導
ウサギさん: 大手スーパーマーケット環境部長を経て有名飲食チェーン、給食弁当などの環境責任者として幅広い経験を持つ。リサイクル目標を達成すると金利が下がるサステナブルファイナンスを初めて受けた大手企業の執行役員

<特集>【インタビュー】 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 奥野麻衣子氏 にきく「2015 改訂に込めた思いと今後の期待」
聞き手:弊誌編集委員 竹内 秀年
▼概要文表示2021年11月号

奥野麻衣子氏は、国際標準化機構 ISO/TC207/SC1 において環境ISOの日本代表エキスパートとして2015 年改訂版の策定に参加され、日本規格協会の環境管理規格審議委員会委員としてJIS策定でもご活躍されています。今回は、リスクと機会など改訂の狙いやポイントをお聞きし、カーボンニュートラルやSDGsなどとの関係、さらにEMSの運用など幅広いテーマについてお聞きしました。

<特集>【インタビュー】 株式会社テクノファ 平林良人会長 にきく「イギリスからスタートしたISOとの25 年間を振り返る」
聞き手:弊誌編集委員 竹内 秀年
▼概要文表示2021年11月号

イギリス現地でISO認証をご経験された平林会長からISO 14001 規格成立前後の貴重なご経験をお聞きし、カーボンニュートラルやSDGインパクトなどとの関連、さらに最近の企業の動向についてもお聞きする。環境ISO 25 年の振り返りとEMSのあり方についても興味深いお話を伺った。

<特集>【インタビュー】 JACO 小野寺浩幸社長 にきく 「認証組織と、認証機関からみたISO 14001 の過去・現在・未来」
聞き手:弊誌編集部
▼概要文表示2021年11月号

日本環境認証機構( JACO)は製造業をはじめあらゆる産業分野の顧客に対して総合認証機関として環境、品質、情報セキュリティ、労働安全衛生、食品安全、エネルギーなど、さまざまなマネジメントシステムの認証事業を提供している。豊富な知見をお持ちのJACO代表取締役社長 小野寺浩幸氏に貴重なご経験とISO 14001の過去・現在・未来についてお聞きする。

<特集>環境ISOを道具として使い倒すために─ 課題解決型ISO活用法の提案
水上 浩(株式会社日本環境認証機構 技師長)
▼概要文表示2021年11月号

事業プロセスへの統合が鮮明に謳われたISO 14001 改訂版が発行されてから、早くも6 年間が経過する。多くの組織では審査を重ねながら、少しずつ事業プロセスと環境とのかかわりを考慮する中で、環境側面や目標達成に向けた施策を展開しており、折角のISO認証を経営に活かすようになってきている。特に最近ではSDGsの浸透や働き方改革の加速度的進展といった大きな潮流が、事業経営の変化と相俟ってISOの運用に大きな影響を及ぼしている。
 本稿では、これらの変化を環境ISOではどのように捉えればよいのか、さらに、事業プロセスで顕在化した環境上の課題に対して、環境ISOをいかに道具として使うべきかを解説する。

<特集>ISO14001 の認証組織数の減少傾向について思うこと
井口 忠男(一般社団法人産業環境管理協会人材育成・出版センター)
▼概要文表示2021年11月号

日本で認証された組織数は、2009 年をピークに減少傾向に歯止めがかからない状況が続いている。認証を返上した組織は第三者機関による「認証」を返上しただけで、EMS活動そのものを放棄したわけではない。多くの組織は「自己宣言」によりEMS運用を継続している。第三者認証の返上が続く背景として、当初はPDCAに基づく「プロセス重視」の認証で、広く自主性が認められていたが、2度の改訂を経て、「パフォーマンス重視」や「対象範囲の拡大」が強く求められるようになり「組織を縛る」ように変わってきたことで、ついていけないと考える組織が増えたことが一因として考えられる。

<特集>環境ISOの有効活用に必要な理解 ─ ISO 14001 は「道具」である。内部監査員教育の視点から。
子安 伸幸(株式会社ユニバース主任コンサルタント)
▼概要文表示2021年11月号

ISO 14001 を有効に活用するためには、「ISO 14001 は道具である」と認識していくことが必要である。道具であるという意味には二つの側面がある。一つは、それ自体は本質的ではないということ、もう一つは、正しく理解することで有効に活用できるということだ。
 昨年執筆した、『図解と実践トレーニングでわかるISO 14001 内部監査』、第一法規( 以後:『図解でわかる内部監査』と記載)の内容をもとに、トレーニングの事例も挙げながら、内部監査員教育の視点から、ISO 14001 の正しい理解を解説する。それは、環境ISOを導入する組織が、有効に環境マネジメントを行うために、すべての要員に必要な知識である。

<特集>環境都市の拠点としての川崎エコタウンの展開
藤田 壮(東京大学 大学院 工学系研究科 都市工学専攻 教授)
▼概要文表示2021年10月号

川崎エコタウンは、日本発信の「産業共生」の先導例として国内外で高く評価されている。本稿ではエコタウンをめぐる産業共生、環境都市等の理念の体系を紹介して川崎エコタウンの先進性を
解説するとともに、産業共生から脱炭素社会への先導イノベーション事業に展開するための方策を提案する。
 川崎エコタウンは、1997 年からはじまった26 のエコタウン事業の中でも、大都市型の資源循環拠点として整備が進み、動脈産業と静脈産業のネットワークの構築とともに産業共生から都市産業共生に展開する等の先進的な循環経済を実現してきた。本稿では今後の脱炭素社会の実現に向けて、第一に、地産地消型の地域エネルギーの効率的な運用等を通じて、産業エネルギーと再生エネルギーを組み合わせる地域エネルギーネットワークの整備によって脱炭素社会の都市と地域の拠点となることを提案する。さらに、再生エネルギー資源活用と廃棄物焼却を含む複合的な地域エネルギー拠点の形成を、情報ネットワークによる効率的運用を進めて、資源循環からエネルギーマネジメント、都市生活サポート等に展開する次世代情報インフラ整備を提案する。都市の商業・業務主体、住民との連携で発展する拠点が、脱炭素のグリーン成長の核となるための地域情報ネットワークと循環、エネルギー技術を組み合わせることで、日本発信の都市産業共生のソリューションとして、アジア諸国に対する環境イノベーションの技術・政策パッケージとしての市場展開する可能性を期待する。

<特集>川崎エコタウン事業の変遷とグリーンイノベーションの推進
川崎市 経済労働局 国際経済推進室/環境局 環境総合研究所
▼概要文表示2021年10月号

川崎市では、1997 年に第1 号のエコタウン地域として承認を受けて以来、川崎臨海部に先進的なリサイクル関連施設の導入が進められてきた。エコタウン事業については、深刻な廃棄物問題に直面する海外都市の関心も高く、国連環境計画( UNEP)連携により海外に情報発信している。また近年では、かわさきグリーンイノベーションクラスターや川崎国際環境技術展等を通じた、より幅広い環境分野を対象としたグリーンイノベーションの推進にも取り組んでいる。
 本稿では、川崎エコタウンの特徴を三つのC( Cooperation:連携、Convenient:利便、Costeffectiveness:費用対効果)に要約した上で、川崎エコタウンの将来展望における二つのC(Carbon-zero:脱炭素、Connectedness:つながり)の重要性についても述べている。

<特集>川崎エコタウンとJ&T環境
露口 哲男(J&T環境株式会社 代表取締役社長)
▼概要文表示2021年10月号

川崎臨海部にて使用済プラスチックの製鉄原料化・燃料化を革新的事業としてきたJ&T環境㈱は、ペットボトルリサイクル事業、家電リサイクル事業においても、紆余曲折を経て事業を継続し、川崎エコタウンを代表する企業としての存在感を示してきた。
 そして現在、企業連携やIoT・ロボットなど先端技術の導入による、処理能力向上に向けたさまざまな取り組みが始まっている。本稿では当社の現在の状況や、新たな取り組みについて解説する。

<特集>花王といっしょに、みんなでエコ
花王株式会社 川崎工場
▼概要文表示2021年10月号

花王㈱川崎工場の工場見学についての紹介

<特集>富士通グループの環境教育(川崎市の小学生にむけて)
富士通株式会社 川崎工場
▼概要文表示2021年10月号

富士通㈱川崎工場の環境教育活動についての紹介

<レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年10月号
⦿静岡県伊東市のメガソーラー訴訟
⦿太陽光発電所の偽装
⦿経済産業省による太陽光発電のチェック体制強化の動き
⦿盛り土規制条例
⦿日立製作所CO2 排出量2050 年度まで実質ゼロを目標
⦿絶縁ガスの六ふっ化硫黄SF6
⦿豪雨災害が世界中で発生
⦿中国で続く石炭火力発電所の増設
⦿マグロがロシア極東に移動
⦿紙容器や紙カップの再資源化
<巻頭レポート>突然現れたごみの壁 ―千葉県はゴミの排出者に撤去指導
本誌編集部
▼概要文表示2021年9月号

突然現れたごみの壁(千葉県)をレポートした。

<特集1>環境創造企業として進化する ― 新たなステージへの変革
壺内 良太( 大栄環境株式会社 社長室)
▼概要文表示2021年9月号

少子高齢化による「人口減少社会の到来」やデジタルトランスフォーメーション「DX」導入の停滞で生じる経済損失「2025 年の壁」が従来からいわれていた。これらに加えて、「新型コロナウイルス」や「カーボンニュートラル」などの新たな外部環境の変化は多くの企業にとって極めて重要な経営課題となっている。
廃棄物処理事業を主軸とする大栄環境にとっても外部環境の変化は、新たなビジネスモデル創出の千載一遇のチャンスである一方、対応を誤れば脅威にもなる。
そこで本稿では、社会や経済の変化に対応すべく当社が置かれた状況と取り組み事例を紹介しつつ、環境創造リーディングカンパニーとしての展望を述べる。

<特集1>中小企業が地球規模の課題に対して向き合う奮闘記と未来への道しるべ
加山 順一郎(加山興業株式会社 代表取締役)
▼概要文表示2021年9月号

持続可能な開発目標「SDGs」が掲げられて早6 年が経つ。この国際目標は2030 年を期限としており、現在は折り返し地点の直前である。かかる状況の中で企業規模を問わず、組織が地球規模の課題について深く向き合っていき、解決に向けた取り組みとしてSDGsを経営に実装していくことが社会全体から期待されている。
本稿では、企業がSDGsに取り組む意義である「ビジネスチャンスを見いだす」、「企業価値を高める」、「生存戦略」の三つの観点を通じて、持続可能な社会構築を推進していくために企業として何が必要かについて論じる。後半では、当社プロジェクトのうち、「ラオスでの奮闘記」および「環境教育での奮闘記」、そして生存戦略の取り組み実例として「脱炭素に向けた奮闘記」について具体的に述べる。

<特集2>各事例にみる残土規制をめぐる問題と法規制の方向性 ─ 残土処分場のリスクと法的対応の今後の展望
池田 直樹(弁護士・関西学院大学 教授)/杉田 峻介(弁護士)
▼概要文表示2021年9月号

熱海の土石流事案を契機に、全国で土砂崩落リスクへの関心が高まっている。本稿では、弁護士として実際に担当した奈良県や大阪府での残土関連事件について解説する。また熱海の土石流事案についても執筆段階の情報をベースに触れ、各事案に共通する「規制の空白」の問題や、違法な盛土行為への行政の消極的な対応が重大な事故を招き得ることを述べる。その上で、残土の堆積に関する統一的な規制法、排出者責任の強化や情報開示など、今後の法規制の方向性についても言及する。

<特集2>建設残土の崩落から人命を守る法制度について─ 熱海土石流事件の教訓
村田 正人(三重弁護士会所属)
▼概要文表示2021年9月号

熱海土石流事件は131 棟の家屋が被害に遭い、死者22 名、行方不明者5 名の痛ましい被害となった。違法な盛り土をしたA社の責任とともに違法な盛り土を除去することができなかった熱海市と静岡県の行政対応の適否が問題になると思われる。熱海土石流事件で得られた知見は、記録された最大降水量を上回る強い雨があれば、それが引き金になって傾斜地の盛り土が崩壊する危険箇所が全国に多数あり、早急な対策が必要であるという厳しい事実である。尊い人命を守るために建設残土の不法盛土をどう規制すべきか、産業廃棄物の不法投棄に関する弁護士活動の経験をもとに提言する。

<特集2>技術紹介 斜面・盛土内の水分挙動および変形挙動を把握・監視する技術
応用地質株式会社
▼概要文表示2021年9月号

近年、記録的な大雨や局所的な集中豪雨による斜面表層崩壊や盛土崩壊が発生し、土石流災害による甚大な被害が各地で発生している。今年の7 月3 日には、静岡県熱海市の伊豆山地区において、逢初川上流で大規模な崩壊が発生し、下流の民家周辺まで土石流災害が拡大した。この土石流発生の要因として盛土の崩壊が引き金になっているとの指摘もあり、今後、このような災害を減らしていくためには、危険な斜面や盛土を抽出し、砂防堰堤や盛土堰堤の設置、および排水対策などの適切な対策を講じる必要がある。
 一方、大規模なハード対策は相当の時間を要することから、まずは抽出された危険な斜面や盛土の調査(水分挙動の把握など)を行い、必要な対策を検討すること、また、変形挙動を監視するモニタリング機器を多点配置し、斜面の動態を常時監視することで崩壊に至る前兆現象をとらえ、有効性の高いハード・ソフト対策を講じる必要がある。本稿では、斜面や盛土内の水分挙動および変形挙動を把握・監視する技術について概要を紹介する。これらの技術は豪雨による斜面表層崩壊や盛土崩壊による土砂災害の予防に役立つと考える。

<総説>環境から始めるSDGs 埼玉県環境部の企業等の取組支援
埼玉県環境部環境政策課
▼概要文表示2021年9月号

パリ協定やSDGsの採択、ESG投資の拡大など、あらゆる企業に環境配慮の取組がより一層求められている。SDGsの17 ゴールの多くが環境分野に深く関連していることから、企業等がSDGsに取り組む第一歩を環境から踏み出せるよう、取組を促進する事業を令和2
年度に開始した。
 環境分野のSDGsに取り組む企業を「環境SDGs取組宣言企業」として情報発信する取組や、環境関連団体と連携した会員企業への取組の浸透を進めている。令和2 年度は環境関連団体3 団体と連携し、取組の手引き・事例集を作成した。

<総説>「エコメッセ2021inちば」第26 回の概要とこれまでのあゆみ
桑波田 和子(エコメッセちば実行委員会委員長)
▼概要文表示2021年9月号

「エコメッセ2021inちば」は、市民・学校・企業・行政とのパートナーシップで実行委員会を組織・運営し、今年で26 回目の開催となる。1996 年から開催し、時事に合うテーマを設定し、広く県民への旗振り役を担ってきた。子どもから大人まで、楽しく学びながら体験する「環境活動見本市」で、毎回約1 万人の来場者がある。2018 年度からは、今話題のSDGsの普及・啓発をテーマにして開催している。
 2021 年度は、「Prosperity:笑顔あふれる未来を創ろう」をテーマに開催を準備している。新型コロナウイルス感染症に対応して、出展形態は会場出展とオンライン出展の二つの形態を用意している。

<レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年9月号
⦿九州で1mを超える異常な雨量
⦿早めに対策
⦿栃木の山火事はタバコが原因
⦿熱海土石流
⦿熱波で史上最高の気温
⦿IPCC 報告書
⦿ジョニー・デップが「水俣」に出演
⦿環境産業、廃棄物リサイクル市場規模
⦿廃プラスチックの輸出
⦿オリンピック・パラリンピックのメダル
⦿EUが気候変動対策計画を発表
⦿大阪市発注工事における電子マニフェストの義務化
⦿作業服を洗った水を流して水濁法違反の疑いで書類送検
⦿不法投棄が急増 岐阜県警
⦿米軍の廃棄物に抗議の女性が書類送検
⦿PCB 保管事業者に改善命令や書類送検
⦿PCB 特別措置法違反の疑いで書類送検
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年8月号
⦿ドイツやベルギーで大洪水
⦿カナダで49. 6℃を記録
⦿ヒートドーム現象
⦿発電コストは太陽光が最安に、2030 年時点の試算
⦿太陽光発電所アセスの合理化
⦿廃棄太陽光パネルの回収システム開発2021年7月6日
⦿飲酒運転で児童5 人が死傷した八街で飲酒検問
⦿欠陥階段の施工業者が不法投棄で措置命令
<特集>北九州エコタウン事業にみる環境産業振興政策の歴史と今後の展望
垣迫 裕俊(九州産業大学 地域共創学部 地域づくり学科 教授)
▼概要文表示2021年8月号

エコタウン事業が始まって約四半世紀が経過し、各地で循環型社会を目指す取組みが推進されてきた。中でも「北九州エコタウン」は、その事業集積度で群を抜いているが、一方で、これまでに
中止した事業も少なくなく、事業環境の変化への対応も問われている。
 本稿では、北九州エコタウン事業の歴史を振り返り、事業進捗の原動力となった地域政策の特徴や、隘あいろ路や課題を克服するための実践の足跡、特に記録に残されにくい経験知に焦点を当てて報
告する。最後にサーキュラーエコノミー時代における今後の事業を展望する。

<特集>PET樹脂循環社会構築へ向けて─日本のPETボトルリサイクルに学ぶ
千々木 亨(西日本ペットボトルリサイクル株式会社 代表取締役社長)
▼概要文表示2021年8月号

PET樹脂は日用品( 繊維、ボトル、食品容器等)の主要素材として不可欠であり、多様で豊かな衣食生活と脱炭素社会の実現を両立する上でPET樹脂循環社会構築が必要である。そこで本稿では、容リ法の下で展開され回収率93%を達成した日本のPETボトルリサイクルの歩みを振り返り、しくみが定着するまでの過程の中で学んだ教訓をまとめた。その中で法の下で消費者、自治体、特定事業者の責任とコスト分担を明確化したことの効果等を説明し、ボトル以外のPET 製品の循環利用のしくみを構築する上でPETボトルの教訓をどう活かすかについても言及した。

<特集>国内資源循環を目指した環境にやさしい自動車リサイクルへの取組
髙野 博範( 西日本オートリサイクル株式会社 代表取締役社長)
▼概要文表示2021年8月号

近年、数十年に一度の異常気象が頻発するに至り、世界は地球温暖化対策として2050 年カーボンニュートラルに向けた取組を加速している。車づくりにおいては、素材生産、組立、使用、廃棄のライフサイクルでの環境負荷( LCA)を低減するサプライチェーンの構築が求められている。西日本オートリサイクル㈱は、車の資源を車に戻す地域資源循環を目指す環境にやさしい自動車リサイクルをミッションとして北九州エコタウンと共に発展して来たが、再度その特徴を活かし、車づくり一貫での資源循環圏の早期実現に向けた取組を推進する。

<特集>いまから始める「捨てない未来」─ ケミカルリサイクル技術を用いた循環型社会の構築
岩元 美智彦(日本環境設計株式会社 取締役会長)
▼概要文表示2021年8月号

環境汚染産業と呼ばれて久しいファッション業界だが、ファッションは私たちが日々を過ごすうえで華を添えてくれる存在であることはいうまでもない。お宮参りに始まり七五三、卒業式や成人式など、人生その時々に彩りを添える衣服の存在はなくてはならない。もちろん、特別な時に限らず、毎日衣服を身にまとうことは欠かすことができず、それを楽しみたいと人が求めることはいささかも不思議ではない。
 そこで、ファッションを心から楽しむためにも、これまでは、いつかは廃棄せざるを得なかった服を循環させることで、ファッション産業が資源循環を代表する産業へと変えていくことを目指した取り組みについて報告する。

<特集>循環経済を見据えDXを推進した都市鉱山リサイクル
高橋 宏幸(株式会社アステック入江 FM事業部 技術グループ マネジャー)/水江 太一(株式会社アステック入江 FM事業部 総務グループ)
▼概要文表示2021年8月号

当社では、廃電子基板から電子部品を剥離し、選別をするという特異な都市鉱山リサイクルを行っている。さらには、AI(人工知能)を用いた電子部品の選別による貴金属の高濃度化やDXの推進により、高効率な都市鉱山リサイクルを目指している。

<特集>北九州エコタウンにおける環境産業振興に向けた環境技術研究の変遷
樋口 壯太郎(福岡大学 名誉教授)
▼概要文表示2021年8月号

北九州エコタウン事業の特色の一つに、環境産業育成・振興のための「実証研究エリア」の存在がある。ここでの大学の特長は、環境技術シーズを提供し、産業界とともに事業化を前提とした実証研究を行うことにより、イノベーションの創出や事業化の推進につなげる仕組みである。
 北九州エコタウンの創設時よりその中心的役割を果たしてきた福岡大学は実証研究エリアに資源循環・環境制御システム研究所を、市内の学術研究都市に大学院を設置し、産業界とともに循環型社会の実現に向け廃棄物の適正処理及び資源の有効利用の技術開発を重ね、それらは様々な自治体等で事業化されている。約四半世紀が経過した今、時代のニーズの変遷に合わせ、どのように環境技術シーズを育成してきたかを本稿で振り返る。

<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年7月号
⦿プラスチック資源循環法が成立
⦿プラスチックごみ削減へ 容器回収し再利用
⦿マイクロプラスチック削減取組みを紹介
⦿廃プラを一切排出しないゼロ・エミッションを実現
⦿メタン化処理の利用促進
⦿改正瀬戸内海環境保全特措法が成立
⦿中国が古紙の輸入を禁止
⦿ゲンゴロウ増加、温暖化が影響か 長崎大分析
⦿2030 年までのCO2削減目標 各社が発表
⦿「SDGs自動販売機」を設置
⦿レーザー洗浄 東成エレクトロビーム株式会社(2020洗浄総合展)
<特集>IoT、インターネットを活用した排水処理技術
育野 望(栗田工業株式会社 ソリューション推進本部 技術部門 ウォーターソリューション推進部)
▼概要文表示2021年7月号

 製造工程並びに工場の運営において水を使用する企業や事業所が抱えているニーズとして排水処理設備における安定運転化の実現、運転管理の省人化、運転コストの削減が挙げられる。事業所が抱えるこれらニーズに応えるべく、排水処理設備において特に中心的設備である凝集沈殿設備に対し、凝集剤注入量を最適にかつ迅速に制御でき、運転管理状態をリアルタイムで監視可能なサービスの展開を開始した。本稿においてはIoT、インターネットを活用した排水処理の安定化、効率化に貢献できるソリューションとしてS.sensing® CS並びにS.sensing® CSのほか様々なソリューションをパッケージ化したサービスである排水処理サポートについて紹介する。

<特集>冷却水処理剤「オルブレイド」シリーズによる省エネソリューション
西山 毅(オルガノ株式会社 機能商品事業部 薬品部)
▼概要文表示2021年7月号

 多くの工場や施設で使用されている冷凍機の冷却水ラインは、水質や運転状況によってスライムやスケールが発生し、冷凍機の熱交換効率に悪影響を及ぼす。定期的な水の入れ替えや定常的な薬剤処理により、これらの冷却水障害を抑え、冷凍機の熱交換効率を高い状態で維持することが運転管理上重要となる。ここで紹介するのは冷却水障害に対して効果の高い冷却水処理剤「オルブレイド」シリーズと、このオルブレイドを現場ごとに選定・組み合わせ、冷凍機運転の省エネ化を提供するソリューションである。この省エネソリューション提案は2020年度の省エネ大賞において、省エネルギーセンター会長賞を受賞した。

<特集>ドイツの汚水処理実態――凝集沈殿法
本誌編集部
▼概要文表示2021年7月号
 ドイツでは凝集補助剤と呼ばれる高分子系凝集剤が主役になっている。汚水処理技術は多種類の水処理薬剤を効果的に使用した凝集沈殿法などが一般的であり、処理時間や余剰汚泥の削減など技術革新を進めている。
 ドイツの工場や事業所は適用される法的基準を順守するために廃水を厳格に処理するが、中小事業所のほとんどは公共下水道網に処理水を放流する「間接放出者」であり、下水処理施設で最終的な処理をしてから公共用水域に放流している。一方の「直接放出者」は廃水処理に関して最善の技術水準を採用する法的義務もある。
 本稿の後半で紹介するドイツの部品メーカーPA社の具体的な凝集剤の利用法、納入業者の選び方などは非常に具体的で興味深い。
 ドイツの工場廃水に関する処理技術と規制の情報は貴重であり参考になる。本稿は公開されている「ドイツの工場廃水処理に関する環境規制および凝集剤市場の動向調査」(ジェトロ、2010年3月)を「」内に引用および参考にさせていただいた。なお、日本に関する事項や解説などは弊誌が独自に追加したものである。
<総説>ISO 14001の25年――環境マネジメントシステムの展望
竹内 秀年(株式会社日本環境認証機構(JACO)審査本部 参事)
▼概要文表示2021年7月号
 2021年はISO 14001が発行して25年目にあたる。1990年代にそれまで公害問題中心だった企業の環境対策が地球環境問題対応へと軸足移していく中で、ISO 14001が果たした役割が少なくなったことは、ことさらに述べるまでもない。しかしながら、残念なことに25年たった現在、企業の環境対策にしっかりと定着しているISO 14001への関心が、些か薄くなっている印象がある。
 本稿ではISO 14001の25年を振り返りつつ、2050年のカーボンニュートラルを見据え、これまで以上に真剣に取組みが求められる環境の諸課題に対して「ISO 14001がどのような役割を果すべきなのか」、その展望について企業の環境担当者の視点から考察する。
<巻頭レポート>地球温暖化による流氷への影響
中村 圭三(筑波大学 理学博士)
▼概要文表示2021年6月号
地球温暖化による流氷への影響
 遠いシベリアから流れくる流氷は北海道に接岸し、時には高さ15m、長さ数100mの巨大な氷丘、流氷山脈を形成する。
 流氷は波や風で絶えず砕かれるが、波の少ない海で形成された流氷は長さが数10kmに及ぶこともある。厳冬期にはロシアと北海道が巨大な海氷で陸続きになる状態もみられるが最近は気候変動の影響も出ている。
 世界でも珍しい流氷が観察できる紋別での12年に及ぶ調査研究の一端を紹介させていただく。
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング――環境コンプライアンス、脱炭素・温暖化関係、その他
本誌編集部
▼概要文表示2021年6月号
⦿逮捕が相次ぐ廃棄物処理法
⦿株主の実刑で投資する会社の許可が取り消し
⦿産業廃棄物処理業・処理施設許可取消処分情報を更新
⦿土壌汚染対策法
⦿北越コーポレーション
⦿USスチール2050年までにカーボンニュートラル目指す
⦿ボルボ製造に水素を利用したスチールでトラック製造
⦿米政府が代替フロン削減策を導入
⦿ふるさと納税で再生可能エネルギー
⦿企業の脱炭素移行に資金調達する基本指針を策定
⦿「トップが語る脱炭素」の動画公開
⦿CO2の濃縮と回収等に関する共同研究開始
⦿北極評議会の8か国閣僚会合が宣言
⦿2050年までに温室効果ガス実質ゼロへIEAが工程表を公表
⦿電気自動車用充電スタンドの住宅以外への設置数が初めて減少
⦿菅首相が森林保護を強調
⦿福島県いわき市の化学工場で爆発事故
⦿膀胱がんで会社に1,155万円の支払い命令
⦿植物由来のプラスチック食器約9万6,000個を自主回収
⦿ロシアのダークサイドがサイバー攻撃
⦿2020年下半期の不正アクセス被害
⦿河川システムにコンピューターウイルス
⦿スマート工場も被害
⦿脱炭素社会に進む改正地球温暖化対策推進法が成立
<総説>地球温暖化対策推進法改正、及び環境影響評価法下の風力発電のアセス規模要件引き上げについて
大塚 直(早稲田大学 法学部 教授)
▼概要文表示2021年6月号

 菅総理は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すと宣言した。また、米国主催の気候変動サミットでは2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減し、さらに50%削減に向けて挑戦、という方針を表明した。こういった中で注目される地球温暖化対策進法の改正案、及び環境影響評価法下の風力発電のアセス規模要件緩和について本稿で解説する。

<レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年5月号
⦿土壌汚染対策法違反:熊本県発注工事8割届出怠る
⦿水質事故:西宮市で魚大量死
⦿栃木の山火事はタバコが原因
⦿石綿情報:アスベスト携帯測定器を導入
⦿天然ガスの火力発電所建設中止
⦿金融機関などが石炭火力に融資せず
⦿温暖化問題:米証券取引委員会グリーンウォッシングに対処
⦿気候変動リスクの開示
⦿二酸化炭素過去最大の減少幅
⦿二酸化炭素濃度最高を更新
⦿地球温暖化対策推進法改正案を閣議決定、環境アセスの緩和策
⦿瀬戸内海環境保全特別措置法改正案の閣議決定
⦿世界有数の災害国は日本
⦿台風19号の被害住民が2億6,900万円の損害賠償
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年4月号
⦿液体バイオマス発電所の反対運動
⦿宮城県石巻市のバイオマス発電
⦿凝集剤が生態系破壊か
⦿日立造船が容量7倍の電池開発
⦿電池のリコール
⦿フォルクスワーゲン・パワーデー
⦿工業用水確保は重要
⦿業者が6 件の違反で行政処分/営業停止
⦿石綿含有珪藻製品に追加規制の動き
⦿真空プロセスで全固体電池を試作
 
<巻頭レポート>製造業に科せられる巨額の罰金や改善命令――アメリカ政府による罰則適用の実例
本誌編集部
▼概要文表示2021年3月号
  米政府から約3億円の罰金と約300億円を要する施設改善を命じられた化学会社や40億円相当の施設改善命令を受けた非鉄メーカーなど、最近の米国事例をレポートする。大手企業では、他社の違反例を教訓にして環境保全策や内部監査などを見直して法令順守を徹底する。そのため、従業員の環境教育にも力を入れている。
 全米の製造工場や事業所では、毎日のように連邦環境保護庁(以下、EPA)から大気浄化法や水質浄化法などの違反通知(違反罰)を受け取っている。スーパーファンド法など有害廃棄物や汚染土地の規制も、連邦と州政府の両方から高頻度で発動される。当然ながら日系の会社や事業所も含まれる。違反通知を放置もしくは理由なく拒否するとEPAから訴訟を提起され、代表者や責任者が裁判所に召喚される。
 トランプ政権下では、連邦レベルの環境規制を廃止もしくは緩和させ、EPAの予算や職員も大きく削減させ機能を弱体化させた。しかしEPAは、環境法令の違反に対して工場や事業場などに改善命令や罰金を課している。そこで日本企業にとっても参考になる最近の事例をいくつか報告する。なお、違反者名など詳細はプライバシー保護のため省略する。
<巻頭レポート>2020年度米政府の環境施策報告
本誌編集部
▼概要文表示2021年3月号
  米国環境保護庁(以下、「EPA」)が実施した昨年度の環境コンプライアンス施策を特報する。EPAは昨年度も引き続き、大気質や水環境の改善、清潔で安全な飲用水の提供、化学物質の安全性確保などに焦点を当てた。鉛塗料、VOC対策、さらにエンジンの排ガス試験を欺きすり抜けるデバイスの摘発など、特に、昨年前半においてEPAは法令順守の監視を過去10年で最も強化し、多数の罰則や制裁を科している。2019年度よりも差し止め制裁や裁判の和解件数も増えている。具体例を本稿で抜粋してレポートするが、最初にEPA所管の新型コロナに
ついて少し触れる。
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年3月号
⦿地震でタンクから灯油が流出
⦿ボイラー制御盤トラブルで油の漏洩
⦿新潟県で油流出事故が193 件
⦿浄水場システムがハッカー被害
⦿家庭ごみ置き場に産廃は出せない
⦿伝票や領収書などの不法投棄
⦿PFOS、PFOA
⦿米司法省が日本企業を起訴 海軍艦の汚染水を不法投棄
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年2月号
 脱炭素社会の切り札である太陽光発電所に関して導入支援する自治体は多い。しかしメガソーラー新設などに歯止めをかける条例は全国100以上の自治体で導入され、改正も含め関連する条例は増加傾向にある。しかも、その規制内容や改正は厳格化しつつある。国が進める再エネ促進などの環境政策に対し、地元は近隣住民の強い反対に対応するため、条例で事前手続きを強化する動きもある。脱炭素政策が自然破壊・災害リスク増加の免罪符とはならないはずだが、今回、宮城県と山梨県の紛争事例をレポートし、関係するアセス条例と太陽光条例について解説する。
 
<巻頭レポート>東日本大震災から10年 奇跡の復活を遂げた酔仙酒造
本誌編集部
▼概要文表示2021年1月号
 今年は東日本大震災から10年の節目を迎える。広範囲にわたる地震・津波被害と福島第一原子力発電所の事故による未曾有の災害は決して忘れられない。東北ではインフラが整備され、かなりの復興が進んでいる。しかし災害による爪痕は深く残っており、再建を断念した企業や移転先から故郷に戻れない方も数多い。そういった中で、スピーディーな経営判断と懸命な努力によって被災地で事業を復興した酒造会社・酔仙酒造㈱を取材した。秋篠宮ご夫婦や安部晋三元総理、トヨタの豊田章男社長なども酔仙の復興を視察している。
<巻頭レポート>国内初の本格的な内陸型「真岡発電所」順調に操業
本誌編集部
▼概要文表示2021年1月号
 (株)神戸製鋼所の100%子会社である(株)コベルコパワー真岡は、2020年3月2日に栃木県真岡市(もおかし)において大型火力発電所の運転を全面開始した。2019年10月に1号機の営業運転を開始しており、昨年の2号機営業運転開始により発電規模124. 8万kW(62. 4万kW×2基)となる発電所の本格的な操業を順調に継続している。高さ85mの2本の煙突が大きな存在感を放っているが黒煙など基準を超える排ガスはない。燃料が都市ガスなので有害が硫黄酸化物やばいじん、焼却灰の発生は皆無に等しい。
<巻頭レポート>最近の気になるニュース・クリッピング
本誌編集部
▼概要文表示2021年1月号
 昨年のヒット商品、売れ筋のトップはマスクである。前年400億円の規模が2020年は売上が10倍以上5,000億円を軽くこえる勢いである。家電のシャープ、アイリスオーヤマ、電子機器部品メーカーミネベアミツミ、三井化学の3Dマスク、さらにブラザーグループ内の事業活動に必要な不織布マスクの自社生産など、品不足を補うため多くの日本企業が製造や輸入に参入している。大量に購入するのであれば一定の基準を満たす「全国マスク工業会の会員マーク付き」が望ましい。
 売れ筋ランキングの2位以下で目立つのが除菌や殺菌関係である。アルコール類や塩素系溶剤、石けんなど多くの製品が出回っているが、今回は、室内環境に関して話題になっている紫外線関連ニュースをランダムに抜粋してみた。最後に次亜塩素酸水と感染経路の解説を掲載する。
<レポート>新型コロナなど細胞を持たないウイルスの不思議
本誌編集部
▼概要文表示2020年6月号
 人間社会から隔絶された山奥ではコウモリやサルを含む野生動植物に感染しているウイルスが無数にある。海水中にも数えきれない大量のウイルスが存在する。その中でウイルスが変異してヒトに感染することが最近多くなった。新型のウイルスは、従来、およそ10年から40年の周期で発生していた。ヒトは新型ウイルスに対する免疫がないため、世界的な大流行(パンデミック)になりやすい。
 エボラ出血熱(1976)やエイズ(後天性免疫不全症候群、1983)が出現したあとでも、最近30 年の間に30 以上の感染症が新たに確認されている。新型コロナウイルスを筆頭に、インフルエンザやノロウイルスなど我々の身近でも感染症が猛威をふるっている。そこで、ウイルスと感染症について基本的知見をリサーチしてみた。
 2003年に命名されたSARSと同年10月の感染症法改正より届出義務の対象となった天然痘について最初に触れ、ROなど膜フィルターやマスク(網目サイズ)を例にウイルスの大きさについて説明する。さらに細菌のように単独で増殖することができないウイルスの非生命性について議論する。
<巻頭レポート>新型コロナウイルス、石炭火力発電所の差し止め訴訟など
本誌編集部
▼概要文表示2020年5月号
 感染予防のため製造業が操業を停止し、人々の移動が規制され航空機なども減便されている。この影響で中国やインドなどで大気汚染が改善されている。一方、中国都市部から排出される汚染物質は2月までに約3割減少した……。
 
 新型コロナウイルス、札幌アパマン爆発、石炭火力発電所の差し止めほか、最近の話題を紹介する。
<巻頭レポート>功労賞表彰
加藤征太郎/石田二郎
▼概要文表示2020年3月号
 このたび、(一社)産業環境管理協会の事業への多大なる功績又は貢献をいただきました方に対し、功労賞を贈呈いたしました。
 受賞された加藤征太郎様、石田二郎様におかれましては、公害調査事業へのご参画、公害防止管理者関連講習会の講師、当協会発行書籍のご執筆など、当協会が発足して間もない頃よりご指導をいただいておりました。それらの功績・貢献を称え功労賞を贈呈するものです。
<巻頭レポート>日本初のBOD上乗せ基準の撤廃
本誌編集部
▼概要文表示2020年3月号
  豪雨による甚大な被害、廃プラスチックの不適正処理、瀬戸内海におけるBODの上乗せ排水基準撤廃の話題など、最近ニュースになった三つの事例をレポートする。
<巻頭レポート>工場火災と森林火災
本誌編集部
▼概要文表示2020年2月号
 アメリカにある日系大手化学会社の工場で、2018年5月に火災が発生した。この工場火災で火傷など身体的または精神的傷害を受けた外部委託の作業員など160名超が、損害賠償を求め会社を提訴した。テキサス州の巡回裁判所に提起されていた訴訟に関し、日本にある本社は一部の原告と約289億円(2億6,500万米ドル)で和解した(2020/1/6 発表)。
 当記事では、上記を含めた最近の火災関係の事件を紹介する。
 
<巻頭レポート>環境データの改ざん、災害による汚染漏洩事故
本誌編集部
▼概要文表示2020年1月号
 徳島県と三重県のごみ処理施設で、焼却炉の排ガスに含まれる有害な大気汚染物質の濃度データが実際より
低い基準内の数値を示すよう改ざんされていた事件が発生した。ごみ焼却炉の報告用の排ガス測定値が一定値
以下に自動表示される「ピークカット制御」のプログラムを竣工時から導入していた問題で、その経緯を公開情報からレポートする。続いて、昨年の台風や豪雨によってシアン化ナトリウムなど毒物が漏洩した事故をまとめた。
<巻頭レポート>平成30年度「環境管理」優秀論文表彰
▼概要文表示2019年12月号
 このたび、平成30年度「環境管理」優秀論文が決定しましたのでお知らせいたします。
 優秀論文表彰では、平成30年度に「環境管理」に掲載された100以上の論文から、会員・企業・社会にとっての有益性等の「効果・貢献度」、独創的な知見、先導的な内容等の「独創性」、大局的な視野・将来展望等の「大局観」、それらの「論旨明快さ」という選考基準に基づいて選定された 2 点の論文が受賞しました。
 
<巻頭レポート>変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書の概要
本誌編集部
▼概要文表示2019年11月号
 9月20日(金)から24日(火)にかけてモナコ公国において「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第51回総会」が開催され、IPCC海洋・雪氷圏特別報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、報告書本編が受諾された。この特別報告書から、いくつかのトピックについて報告する。
<特集>環境影響評価法の概要
柳 憲一郎(明治大学 法学部 教授)
▼概要文表示2019年11月号
 1997年に制定された環境影響評価法は、1999年に全面施行され、その後、2015年の法改正を経て、現在に至っている。本年は法の全面施行後20 年の節目を迎えている。そこで、環境影響評価制度の現状と課題について、諸外国の現状も踏まえて、各論者からの報告を特集することにした。ここでは、法の概要の現状について一瞥することにしたい。
<特集>太陽光発電や風力発電など民間アセスの現状
尾上 健治(環境アセスメント学会 事務局長/明治大学 環境法センター 特任研究員)
▼概要文表示2019年11月号
 太陽光発電や風力発電が各地で環境上の課題となっており、環境省や主務官庁の経済産業省では、種々の取り組みがなされている。ここでは、これらの動向を整理するとともに、課題についても検討した。
<特集>国内における近年の発電所建設の環境アセスメント――千葉県事例から
本間 勝(明海大学 不動産学部 准教授)
▼概要文表示2019年11月号
 東日本大震災(2011年)以降、電源構成の見直しと再生可能エネルギーの有用性認識が加速度的に進んだ。しかし、原子力が減った分の約20%程度を火力への依存に頼っている状況である。温室効果ガスを多量に排出する石炭火力発電は、世界で進める地球温暖化防止策と逆行することから、日本は従来の電源構成からの転換を積極的に図る時期を既に迎えており、その過渡期の真っ只中にある。
 一方で、再生可能エネルギーの発電所設置計画がFIT(固定価格買取制度)の開始以降、多くなっている。特に太陽光発電所の設置は著しく、今後の展開が注目される。また、風力発電所の設置も増加しており、陸域のみならず海域における洋上風力発電の実用化に向けた動きも活発化している。
 本稿では、千葉県の事例を交えながら、電源構成の過渡期に突入した日本の発電所建設における環境アセスメント動向を概観する。
<特集>川崎市における廃棄物処理施設建設とアセスメント
加藤 之房(川崎市 環境局 環境評価室 担当課長)/岡村 毅(川崎市 環境局 施設部 施設建設課 担当係長)
▼概要文表示2019年11月号
 全国に先駆けてアセス条例の運用を開始した当市は、長年にわたりアセス手続きのノウハウを蓄積してきた。また、住宅地に隣接して廃棄物処理施設を設置しなければならない地域特性の中で廃棄物処理施設設置を行ってきた施設建設部局では、円滑な施設設置に向けてノウハウを蓄積してきた。当市の橘処理センター整備事業において、それぞれのノウハウを最大限に活かし、住民の理解を得ながら行ってきた施設設置の取組の紹介と内容の考察をした。その結果、丁寧な説明と住民意見を聴く姿勢、そして住民に配慮された総合的な事業計画の立案が重要との結論が得られた。
<特集>EUにおける環境アセスメントの動向
朝賀 広伸(創価大学 法学部 教授)
▼概要文表示2019年11月号
 欧州の環境アセスメント制度の基本となった1985 年EIA指令(85/337/EEC)は、これまで1997 年EIA指令(97/11/EC)、2003 年EIA指令(2003/35/EC)、2009 年EIA指令(2009/31/EC)、2011 年EIA指令(2011/92/EU)と改正が加えられてきたが、直近の改正である2014年EIA指令について、2017年1月19日の欧州委員会コミュニケーション「EU法:より良い適用によるより良い結果」において、欧州委員会による完全かつタイムリーな導入が求められている状況にある。また、もう一つの動きとして、戦略的環境アセスメントを定める2001年SEA指令についても2017年7 月から外部調査機関によるREFIT評価が始まっており、有効性、効率性、一貫性、関連性、EU付加価値に関する評価基準に基づく評価がなされ、SEA指令はEUに多大な利益をもたらし、環境問題を適切な計画とプログラムに統合することで持続可能な開発と環境保護に関する広範な目標に貢献すると評価している。これを受けて、2019年12月末に、欧州委員会スタッフ作業文書が発行される運びとなっている。
<特集>大気汚染のリスク評価に関するカリフォルニア州の動向
辻 雄一郎(明治大学 法学部 准教授)
▼概要文表示2019年11月号
 2017 年に就任して以来、トランプ政権は、オバマ政権の様々な政策を撤回するために様々な手立てを講じてきた。本稿はトランプ政権下の大気汚染規制を法律学の立場から分析する。トランプ政権はまずオバマ政権時代の気候変動対策を撤回するためパリ協定から離脱し、次に、大気汚染対策の規制を緩和しようとしている。連邦議会は大気汚染を規律する大気汚染法を改正していないため、大統領は大統領命令を通じて、行政機関の制定、改廃する行政規則を通じて政権の意向を反映させようとしている。政権の試みは、現在、最終局面にはいっている。
<総説>フェーズⅠ環境サイトアセスメントの基礎と工場における活用
広瀬 彰一(株式会社 イー・アール・エス エンジニアリング部 チーフエンジニア)
▼概要文表示2019年11月号
 フェーズⅠ環境サイトアセスメント(以下、「フェーズⅠ評価」という)は、既存の資料や関係者へのヒアリング、現地調査などから得られた情報に基づいて、土壌汚染のおそれを評価するものである。もともとは米国スーパーファンド法が広範囲に求めている浄化責任への回避策としてできたものであり、1993年に米国試験材料協会(ASTM)によって規格化されている。
 日本でも2000年頃から不動産証券化その他の不動産取引時を中心に行われるようになり、今日ではすっかり一般化している。一方、土壌汚染対策法や地方自治体の条例では土壌試料の採取・分析に先立って地歴調査を行う。地歴調査も収集した情報に基づいて評価をしている点でフェーズⅠ評価と類似しているが、収集する情報の網羅性や評価基準が異なっている。
 本稿では、フェーズⅠ評価の調査方法及び評価方法を紹介し、フェーズⅠ評価と地歴調査の相違点について整理した。また、2019年4月に全面施行された改正土壌汚染対策法では、操業中の工場では従来よりも小規模な土地改変が法の対象となったことを受け、操業中の工場におけるフェーズⅠ評価・地歴調査の効率的な進め方や活用方法についても述べる。
<巻頭レポート>日本の紅葉は大雪山から始まる!――日本で一番早い紅葉がスタート
本誌編集部
▼概要文表示2019年10月号
 大雪山は元々アイヌ語で「神々の遊ぶ庭」と呼ばれていた。確かに、非常に美しい自然の庭園が多数みられる。北海道中央部に位置する大雪山は、南北63km、東西59kmという日本最大の国立公園である。9 月上旬に現地に向かったが、黒岳の山小屋では早朝の気温が摂氏1℃以下という寒さで、山頂では早くも初雪の季節になっていた。大雪山の山頂付近では、9月18日深夜に初雪が観測された。これは、平年並みの早さで、観測史上最も早かった昨年より32 日遅いという。
 森林限界を超えた大雪山の縦走コースでは、数えきれない数の原生花園やお花畑、雪渓、噴火口(御鉢平)の絶景なども楽しめ、片道約7 時間の登山もあまり苦にならない。寄り道も含め、累積の標高差は上り下りでそれぞれが1,200m程である。
 層雲峡温泉に近い黒岳山頂付近で、読売新聞や北海道新聞の撮影クルーと遭遇した(写真1、2)。読売新聞9 月14 日付夕刊一面には紅葉の写真が掲載された。本レポートでは、日本で一番早い紅葉の写真を掲載し、大雪山の温暖化影響や硫化水素ガスの話題などにも少し触れる。
<巻頭レポート>原酒を燃やして河川を守る――バーボン貯蔵庫火災と水質汚染対策
本誌編集部
▼概要文表示2019年9月号
 米国・ケンタッキー州にある世界有数の蒸溜酒貯蔵庫で火災が発生した。貯蔵庫にあったウイスキーの樽約4 万5,000 個が焼失。日本でも人気の高いジムビームに使用する予定の原酒であった。日本の報道では火災発生の事実のみ、もしくは「火災で近くの川の魚が死ぬ」といった簡単な記事しかなかった。そこで本稿では、火災に続く河川の環境汚染という重大な環境影響を詳しくレポートする。強烈な火災の実態や河川に与えた生々しい環境負荷に加え、州政府の対応や企業側の動きなどは企業の今後の環境管理や危機管理の参考になる。
<総説>熱中症と職場環境
平野 利勝(日産自動車株式会社 産業医)
▼概要文表示2019年8月号
 熱中症で救急搬送となった労働者は1,178人、そのうち28人が死亡した(2018 年)。職場でも死に至ることがある熱中症は予防や発症時の対応が非常に重要であり、そのため国は積極的に啓発活動を行っている。しかし依然として救急搬送件数や死亡件数は高止まりのままである。
 地球温暖化やヒートアイランド現象により夏季の平均気温が上昇しており、熱中症は今までよりも高頻度で発症しやすい環境になっている。現場では暑熱環境下での作業が余儀なくされることもあり、より一層の注意が必要である。
 労働災害としての熱中症に関して、犠牲者を少しでも低減するためにその病態や環境要因を含めた発症リスク、予防対策、並びに発症時の対応について解説していく。
<レポート>「チバニアン」って何?――約77万年前に地磁気のS極とN極が逆転
本誌編集部
▼概要文表示2019年6月号
 昔から船乗りは磁石(コンパス)で方位を確認して航海していた。これは地球が北極と南極付近を両極とするいわば大きな棒磁石になっているためである。地球固有の磁場を地磁気というが、過去360 万年で地磁気のS極とN極は15回以上も逆転している。
 すでに全国で報道されている通り、最後に起きた地磁気逆転が千葉県養老川沿いの地層(千葉県市原市田淵)に記録されていた。約77万年前の地磁気逆転の前後の痕跡が国内の地層に残っている、という学術的な価値は極めて高い。
<特別寄稿>「チバニアン」と地質学
岡田 誠(茨城大学 理学部 教授)
▼概要文表示2019年6月号
 市原市田渕の養老川河岸の崖「千葉セクション」(写真1)は、日本初のGSSP(Global boundary Stratotype Section and Point: 国際境界模式層断面とポイント)の候補地である。いまだ無名の「中期更新世」(77万年前〜12万6,000年前の間)に対する地質時代名称として「千葉の時代」を意味する「チバニアン」が提案されている。国際会議で承認されれば、地球誕生以降117に分かれている地質時代の名称として日本の地名が用いられる最初のケースとなる。このため、自然災害の多い我が国において、重要であるがマイナーな「地質学」の認知度を大いに高めるチャンスといえよう。
<巻頭特集2>グリーンイメージ国際環境映像祭
本誌編集部
▼概要文表示2019年4月号
 グリーンイメージ国際環境映像祭とは、環境をキーワードに、アニメーションからドキュメンタリーまで、ジャンルを超えた世界の優れた映像作品を上映する年に1 度のフェスティバル。会場は東京の日比谷公園内にある日比谷図書文化館コンベンションホールで、毎年3 日間にわたり開催されている。映画評論家の佐藤忠男氏が実行委員長を務める映像祭には、厳正な審査によって大賞が決まるコンペティションとしての重要な役割もあり、優れた環境映像が世界へ向けて紹介される場を担っている。本稿では参加作品をランダムに選んで紹介する。
<巻頭特集2>フォード自動車によるブラジル開発事業の破綻――タイヤ用ゴムを自社生産するために建設した巨大ゴム農園
本誌編集部
▼概要文表示2019年4月号
 東京で毎年開催されるグリーンイメージ国際環境映像祭で上映されたフォードのブラジル開発事業の失敗が大変興味深いので、その顚末をレポートする。事業の破綻に向かう当時の意外な事実が明らかになった。
 ジャングルの森林伐採問題は、企業の環境経営のみならずSDGsやESGにも関係する重要なテーマである。フォードの事業が失敗した背景や原因は、目先の利益追求を目指し将来の科学技術の発展を予見しなかったこと、環境専門家などの知見やノウハウを最初に活用しなかったこと、地域住民とその文化を軽視しアメリカ文化を押しつけたこと、そして自然を大規模に破壊したことである。
<特別寄稿>福島第一原子力発電所 廃炉事業の現状とこれから
木元 崇宏(東京電力ホールディングス株式会社 原子力・立地本部長代理 兼 福島第一廃炉推進カンパニー リスクコミュニケーター)
▼概要文表示2019年3月号
 福島第一原子力発電所の事故から8 年が経過した。現在は原子炉の安定した冷却状態が保たれ、廃炉へ向けた作業を着実に進めている。
 事故当時、大量の放射性物質が海洋へ流出したが、その後、流出を抑制する様々な対策を講じた結果、港湾内外の海水の放射能濃度は事故直後と比べ100 万分の1 程度まで低下している。
 その一方で、福島県では事故の影響で今なお4 万人以上の方々が避難生活をされており、ご迷惑ご心配をおかけしている状況にある。当社は廃炉作業を安全かつ着実に進め、地域に戻られる方々の安心に繋げていきたい。
 今回、その廃炉作業の状況や進捗についてご報告させていただく。
<総説>環境汚染対策の進展と今後の課題――35年間を回顧して 第2 回 化学物質対策(国際編)
早水 輝好(環境省参与/国連大学サステイナビリティ高等研究所・客員シニアリサーチフェロー)
▼概要文表示2019年2月号
 私の化学物質に関する国際的な業務は、1993 年末からのOECD事務局(環境保健安全課)での勤務から始まり、帰国後、残留性有機汚染物質(POPs)に関する条約交渉に途中から参加した(2001 年にストックホルム条約として採択)。2009 年からは、SAICM(国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ)のアジア太平洋地域代表のビューローに加え、水銀に関する条約交渉についてもアジア太平洋地域コーディネーターとして政府間交渉委員会(INC)に参加し、製品・プロセスに関する論点の整理などを進めた(2013年に水俣条約として採択)。日本人も国際交渉に長く参加して貢献することが望ましく、若い人たちに期待する。
<総説>平成が終わる新年の幕開け──環境はどう変わるか? 今年も見逃せない環境政策と法令遵守
本誌編集部
▼概要文表示2019年1月号
 プラスチックごみがクジラや大衆魚などの胃袋から次々と発見され、ウミガメに突き刺さったストローの痛々しい映像も全世界で報道された。このように各国世論が世界の環境政策を変えようとしている。廃プラに関して、現状のままでは2050 年までに魚の重量を上回るプラスチックが海に流出することが予測されている。しかもリサイクルの優等生であった日本が、ワンウェイの容器包装廃棄量(一人当たり)が世界で2 番目に多いと厳しく指摘されている。
 さらに中国はじめ、アジア各国による資源ごみ(廃プラ等)の輸入規制が拡大しており、これまで以上に国内資源循環が求められている。日本政府はプラスチック資源循環体制を構築するため新たな戦略を世界に発信する。本稿では昨年末に開催されたCOP24 の状況を最初に報告し、次にプラスチック資源循環戦略案を紹介する。最後に、神社や宮司でさえ書類送検されるという非常に興味深い環境犯罪についてレポートする。
<巻頭レポート>御射鹿池 その生い立ちと水質を調べる!
NPO環境・地理探訪クラブ
▼概要文表示2018年11月号
 多くの観光客を魅了する御射鹿池(みしゃかいけ)を環境面で調査した。池は自然にできた湖沼ではなく、農業用のため池である。この温水ため池は、池に水を一時的に貯留することによって冷たい谷川の水を5℃も高める機能がある。湖面を美しく妖艶な姿にしたのは低温かつ酸性の水質が一つの理由である。鉄イオンの沈殿作用なども含め興味深い御射鹿池の実態を探ってみる。
<特集>工業用水道事業を巡る最近の動向
佐々木 忠則(経済産業省 工業用水道計画官)
▼概要文表示2018年10月号
 産業構造の変化、水の使用合理化等から工業用水需要は減少を背景に事業経営の改善が必要となっている。一方、高度経済成長期に整備され、老朽化した工業用水道施設の更新の必要性は年々増加している。このため、経済産業省は、施設更新・耐震化計画を策定した事業体に対して補助金により支援している。加えて、工業用水道分野において、事業経営の改善や施設更新の促進するため、コンセッション方式の導入促進等を推進している。
<特集>上下水道料金が急激に上昇!
本誌編集部
▼概要文表示2018年10月号
 地方を中心として、全国の自治体で上下水道の料金改定が検討されている。値上げ幅は非常に大きい。施設を新設した当時の経済予測と現在の状況が大きく異なっており、大口事業者の減少や少子高齢化などによって使用量や上下水道の料金収入が大きく減少しているためだ。地方自治体が新たに企業会計制度を導入することで、ユーザー使用料で回収すべき経費が賄われていない状況も明らかになっている。半世紀ぶりに顕在化する上下水道事業の財政危機と料金改定をレポートする。
<特集>上下水道事業の現状と最新動向――人口減少時代の水道料金と官民連携の推移
福田 健一郎(EY新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー)
▼概要文表示2018年10月号
 社会基盤(インフラストラクチャー)の中でも、特に人々の生活に不可欠といえる上下水道事業が、人口減少時代における収益の減少と、老朽化した水道管等施設の更新事業費の増大という経営面での厳しい局面を迎える。今後ほぼすべての水道事業で水道料金の値上げは不可避であり、都市部と地方部での料金格差も拡大していくことが予想されている。経営の持続性確保が不可欠だ。本稿では、我が国上下水道事業が抱える課題は何かを整理するとともに、官民連携の新たな取組(コンセッション方式)を中心に、持続性確保に向けた取組の現状や課題について詳説する。
<トピック>2018年に注目すべき環境テーマ
本誌編集部
▼概要文表示2018年1月号

 年初にあたり、企業経営で注目せざるを得ない今年の環境テーマを予測してみる。
 ① 廃棄物管理の強化(法改正)
 ② 再生可能エネルギーなどエネルギー問題(電気自動車の動向など)
 ③ 温暖化問題
  そして忘れてはならない、
 ④ 不正行為の撲滅・法令順守、環境管理……
 一昨年末に2017年はどのような環境問題が企業・事業所に注目されるか、という予想で同様な意見を読者からいただいた。企業からはダントツで廃棄物問題と温暖化の問題が出た。さらに再生可能エネルギー、省エネ、3R・資源循環、化学物質管理が上位に予測されていた。これらは本年も引き続き重要テーマになる。過去の振り返りを含め重要ポイントを整理してみる。

<巻頭レポート>アラル海の悲劇、その環境破壊とは
本誌編集部
▼概要文表示2017年10月号

 アラル海の悲劇は「20世紀最大の環境破壊」もしくは「地球における最悪の環境破壊の一つ」と呼ばれている。1960年代から水位が極端に低下し、湖水の塩分濃度も驚く程上昇した。緑豊かだった当初の湖岸は、今では乾燥した内陸に位置しており、湖の水辺まで150~170kmも離れてしまっている。かつての漁村の港に係留されていた船の一部が干上がった砂漠の中に取り残され、赤サビに染まった姿は数多く撮影され記録されている。その現況をレポートする。

<巻頭特集>JVCケンウッドの環境技術環境素材にこだわったウッドコーンスピーカー開発物語――ブレークスルーの契機は日本酒とスルメ
本誌編集部
▼概要文表示2017年9月号

 木でつくられた楽器のような美しい響きをスピーカーで再現したい―― ある開発者の着想から、ウッドコーンスピー
カー開発の歴史がスタートした。着想から30 数年、試行錯誤の連続を経て2003 年、世界初の「天然木の振動板」
を採用したウッドコーンオーディオシステムが完成した。
 その後も現在にいたるまで絶え間ないイノベーションが進められている。開発者である株式会社JVCケンウッドの
今村 智氏に話を聞いた。

<総説>東京2020オリンピック・パラリンピック大会の持続可能性に配慮した取組
田中 丈夫(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 大会準備運営第一局 持続可能性部長)
▼概要文表示2017年7月号

 持続可能性への配慮は、国際的な潮流であるとともに、国際オリンピック委員会(IOC)もオリンピック大会の準備・運営のすべてに渡り、この持続可能性への配慮を求めている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、環境や社会、経済に関する目標や施策を盛り込んだ「持続可能性に配慮した運営計画」を策定する。東京2020大会のすべての関係者はこの運営計画をもとにそれぞれの施策を実施する。さらに東京2020組織委員会では、この運営計画の実現に向けて、東京2020大会で調達する物品やサービス等に適応するための「持続可能性に配慮した調達コード」を策定した。東京2020大会をきっかけに持続可能性への配慮が行き届いた社会になることを期待している。

<報告>大型連休に発生した赤潮の原因
本誌編集部
▼概要文表示2017年6月号

 神奈川県茅ヶ崎市や藤沢市、鎌倉市の海水浴場では本年5月の連休に規模が大きい赤潮が発生した。茅ケ崎市沖から鎌倉市沖の約12kmを巡回した海上保安庁の巡視艇が、赤く染まっている海域が点在しているのを確認している。赤潮の発生は、従来、生活排水や工場排水などが海に流れていくことによって、海水中のCODや栄養塩類等が多くなることが原因であると考えられていた。赤潮発生の原因をレポートする。

<特集1>実話に基づく奇跡の汚水処理と避難判断――東日本大震災被災地を歩く
本誌編集部
▼概要文表示2017年3月号

 東日本大震災で被害を受けた宮城県名取市の一般市民が熊本県益城町を訪問して被災者と交流したが、熊
本では過去の震災教訓がほとんど生かされていない現実に大変驚いたという。熊本県など自治体が公開していた地震予測や活断層マップ、ハザードマップは周知されず十分機能していなかったようだ。
 災害時に行政は一般市民の命を守ることを最大の目的にして活動する。一方、企業の事業場に対する支援などは優先度が相当低い傾向にある。そのため工場長など管理職が事前のBCP策定(事業継続計画)や危機管理のリーダーとして意思決定する必要がある。事業所スタッフの命を守り環境を可能な限り保全するのは現場トップや管理部門の責務である。このレポートで取り上げた事例は企業や事業場にも関係し、事前事後の体制作りや避難計画がいかに重要かを示唆している。

<特集1>環境創生につながる復興まちづくりに向けて
戸川 卓哉(国立研究開発法人 国立環境研究所・福島支部・研究員)/中村 省吾(国立研究開発法人 国立環境研究所・福島支部・研究員)/大場 真(国立研究開発法人 国立環境研究所・福島支部・主任研究員)
▼概要文表示2017年3月号

 東日本大震災の被災地域では、人口減少・少子高齢化や産業衰退等の地方都市が直面する諸課題に対応した地域社会の創生が求められている。国立環境研究所・福島支部は、福島県新地町において復興まちづくり支援の研究を進めており、産業との共生を実現する地域エネルギーシステムのデザインや情報通信技術を活用したエネルギーマネジメントシステムの社会実装の支援等に取り組んできた。本稿ではこれらの取り組みの概況について紹介する。

<特集1>福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の研究開発
中岩 勝(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 所長代理)
▼概要文表示2017年3月号

 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は、政府の「東日本大震災からの復興の基本方針」(2011年7月)を受けて、産業技術総合研究所(産総研)の新たな研究開発拠点として2014年4月に福島県郡山市に開所した。FREAは、「世界に開かれた再生可能エネルギー研究開発の推進」と「新しい産業の集積を通した復興への貢献」を使命とし、様々な人々の集う拠点を目指している。ここではFREAの研究開発の現状と、我が国が直面するエネルギー状況を視野に入れた今後の方向性を概説する。

<コラム>「雲上の楽園」松尾鉱山――大気汚染防止対策で閉山
本誌編集部
▼概要文表示2017年1月号
 岩手県・北上川の支流の一つである赤川の上流、八幡平の中腹に位置している旧松尾鉱山は、硫黄の生産により一時は「雲上の楽園」と呼ばれ、隆盛を極めた。その後、回収硫黄の流通により経営が悪化し昭和47(1972)年に事実上閉山したが、鉱山からの大量の強酸性水は北上川を汚濁し、大きな社会問題となった。数奇な運命をもつ松尾鉱山をレポートする。
<総説>旧松尾鉱山坑廃水の中和処理業務について
佐藤 直樹(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 松尾管理事務所)
▼概要文表示2017年1月号
 全長249kmと東北随一の大河である北上川は、岩手県の豊かな自然環境の象徴であり、秋になると鮭が遠く太平洋から遡上し、盛岡の秋の風物詩として親しまれる清流を誇っている。しかしながら、この北上川がかつて旧松尾鉱山から流出した強酸性水によって濁り、魚が住めない時代があった。当時、大きな社会問題となり、この問題に対処するため、岩手県は国の支援を得て旧松尾鉱山に新中和処理施設を建設し、強酸性水を中和処理することで北上川は清らかな流れを取り戻した。本稿では、当時から現在まで休むことなく続いている北上川の清流を守る取組を紹介する。
<巻頭特集>Hondaの環境経営 つくる、つかう、つながる ── 未来社会へ向けたHonda のエネルギーマネジメント技術
インタビュー:加藤 久( 本田技研工業株式会社 経営企画部 環境安全企画室 開発技師)取材/文:本誌編集部
▼概要文表示2016年12月号
 「地域から愛される工場を目指せ」「地域住民に迷惑をかけるな」── Hondaの創業者・本田宗一郎が創業当初から掲げている理念は、Hondaの環境経営の大きな流れをつくっている。一つは工場と地域住民のあり方としての「グリーンファクトリー」の取り組み、さらに「製品以外のものを工場の外に出してはならない」、つまりは企業活動による環境負荷を限りなく低くする取り組みである。
 そしてもう一つは製品自体の環境負荷低減の取り組みである。製品のライフサイクル全体のCO2排出量は「製品使用時」が全体の8割を占める。そこでできることは、製品そのもの環境性能の追求と、新製品開発による新しい価値の創造である。
 本インタビューでは、Hondaがいま「次世代の価値創造」として進める環境戦略にフォーカスして、経営企画部 環境安全企画室 開発技師 加藤久氏に話を聞いた。
<レポート>江戸時代から現在までの水管理の知恵を展示する「水の歴史資料館」
本誌編集部
▼概要文表示2016年10月号
 今から90年程前に活性汚泥法による汚水処理を日本で初めて導入したのは名古屋市である。「水の歴史資料館」は、名古屋市上下水道事業100周年を記念して建設された施設であり、上下水道事業の歴史や役割、そして地震や豪雨など防災についてもわかりやすく学べる入場無料の施設である。
 近くには赤い屋根の東山給水塔がそびえている。この給水塔は昭和5年につくられ、昭和48年まで地盤が比較的高い地域へ配水する役割を担い、当時は東山配水塔と呼ばれていた。浄水場から送られた木曽川の水を高低差を利用し、自然流下で配水していた。短時間の停電でポンプが動かないような場合でも重力を利用して給水ができた。
 本稿では、江戸時代から今日に至る水に係る先人の英知を探ってみる。
<特集1>「奇跡の湖」水月湖の年縞と環境問題
本誌編集部
▼概要文表示2016年9月号
 福井県の三方五湖の中で最も大きな水月湖は「奇跡の湖」といわれる。湖の底に7万年の歳月をかけて積み重なった「年縞」と呼ばれる縞模様の堆積物が発見され、長年の研究により地質学上の「世界標準時計」として認められたからだ。年縞により年代測定の精度は従来の精度から飛躍的に高まり、考古学や地質学などさまざまな研究に貢献し、まさに「地質時代にとってのグリニッジ天文台」(中川 毅教授)となった。
 年縞の研究は年代測定だけでなく、連続する縞模様を分析することで過去の気候や自然環境、洪水や地震、噴火の発生年を正確に確認することもできる。こうした研究は、地球温暖化や自然災害のメカニズムなど、現在の環境問題の解明にもつながるものとして期待されている。
 本レポートでは、過去7万年分の年縞ができたメカニズムを解説し、年縞を活用した興味深い研究成果も紹介する。さらに、懸濁粒子の排水処理に係る沈降速度と固液分離(自然沈殿)など処理技術の基礎理論を水月湖・三方湖と対比して解説する。
<特集1>水月湖年縞の発見と研究の進展 ── 鳥浜貝塚の発掘調査から近年の動向について
小島 秀彰(若狭三方縄文博物館主査(学芸員))
▼概要文表示2016年9月号
 福井県三方五湖のうち、最大の湖である水月湖底には年縞が残されている。この水月湖年縞発見の端緒となった鳥浜貝塚は、1962 年から1986 年まで発掘調査が行われた縄文時代草創期から前期の低湿地性貝塚である。環境考古学を考える上で両者は不可分な関係にある。本稿では、鳥浜貝塚の発掘調査、水月湖年縞のボーリング調査、研究の経緯、他分野研究への活用について学史を振り返り、今後を展望する。
<特集1>気候変動メカニズム解明の鍵となる 水月湖年縞堆積物の高精度な環境変動記録
北川 淳子(福井県 里山里海湖研究所 研究員)
▼概要文表示2016年9月号
 水月湖の年縞堆積物は、更新世から完新世への移行期の気候復元で世界の研究者の注目を集め、また2013年には炭素14年代測定法の較正年代曲線に水月湖のデータが加わり、炭素14年代測定の精度を飛躍的に向上させた。このことにより、水月湖周辺の詳細な環境変化の研究のみならず、他湖沼の堆積物に詳細な年代を与え、地域間で正確に比較することができるようになり、古環境の研究のさらなる発展が期待できる。ここでは、水月湖の湖底堆積物の正確な年代と環境変動の指標となる花粉記録が地球規模での気候変動メカニズムの解明に一躍買っていることを紹介する。
<巻頭コラム>四日市公害の歴史と教訓
本誌編集部
▼概要文表示2016年4月号
 昭和30年代に発生した四日市公害。その歴史と教訓を次世代に伝えるために2015年3月21日に開館した「四日市公害と環境未来館」は1周年を迎えた。展示エリアは六つに分かれており、小学校高学年から大人まで、わかりやすいようにいろいろな工夫がされている。情報検索コーナーでは、公害健康被害者、司法関係者、企業担当者など、さまざまな立場から四日市公害に関わった人々の40人を超える証言映像により目や耳で体感することができる。特に四日市公害裁判シアターでの映像などは必見である。「四日市公害の経験を通して、もう一度四日市市の環境を見つめなおし、自分達の身の回りから、環境に配慮した行動をとるにはどうしたらいいか」。展示物はそう訴えているようだ。
 1967年、広がる公害問題をなんとかしようと磯津地区の公害認定患者がコンビナート企業を相手に裁判を起こす。当時の映像や、新たに撮影した関係者の証言を交えた映像からは四日市公害裁判とその判決がもたらした影響を知ることができる(約20分)。
<巻頭特集>日頃の備えと命がけの誘導で全員避難 ── 日本製紙の危機管理
本誌編集部
▼概要文表示2016年3月号
 本誌1 月号に掲載した仙台市役所の「震災復興」取材記事に続き、宮城県石巻市にある日本製紙(株)石巻工場の事例を紹介する。工場は津波の直撃を受け壊滅したが直前に避難することができ、1,306 人全員が無事であった。この事例は今後の貴重な教訓となるだろう。
<巻頭特集>あの日、大川小学校で 何が起きたのか? ── 危機管理の徹底と「三次避難」の重要性
本誌編集部
▼概要文表示2016年3月号
 2011 年3月11日、東北地方太平洋沖にマグニチュード9.0という未曽有の大地震が起こった。それに伴い発生した巨大な津波は多くの犠牲者を生み、沿岸の地域に壊滅的な被害を与えた。
 中でも宮城県石巻市の大川小学校では、校庭にいた児童76名のうち72名、教職員11名のうち10名死亡という多くの犠牲者を出した。多くの学校が被害に遭う中、ここまで大きな犠牲が出たのは大川小学校だけである。この悲劇が「なぜ起きたのか」という原因究明
と再発防止のために検証委員会が開かれ、「大川小学校事故検証報告書」( 以下、「報告書」)がまとめられた。報告書の冒頭で「この事故は決して大川小のみの特殊なものではなく、また起こり得る事故である。だからこそ、そこからの教訓を最大限に引き出して今後の防災対策につなげていくことが、失われた命に報いることとなる」と述べている。
 本稿では報告書を主に抜粋引用し、新聞・書籍、各種資料などの公開情報を参考にして事件の経緯とポイントを報告する。
<巻頭特集>除染推進活動の状況 ――東京電力福島復興本社除染推進室における取り組み
高野 隆彦 東京電力株式会社 福島復興本社 除染推進室 除染企画グループ伊藤 圭  東京電力株式会社 福島復興本社 除染推進室 除染企画グループグループマネージャー瀧澤 孝一 東京電力株式会社 福島復興本社 除染推進室 除染技術開発担当
▼概要文表示2016年3月号
 東京電力(株)は、国・市町村が実施する放射性物質に汚染された土壌等の除染に、事故の当事者として人的・技術的協力を実施している。モニタリングや除染事業への協力に加え、適切な除染実現のための各種技術を網羅的に集積、検討、開発し、除染現場に適用している(放射線理解促進ツールの開発、個人線量計測技術の開発、除染効果解析プログラムの開発と活用、移動型モニタリングの開発、指向性モニタリングの開発等)。累計活動人数は2015年末現在で14万人を超えるが、いまだ取り組むべき課題も多く残されており、引き続き協力を実施していく。
<新特別春対談>「産業技術総合研究所中鉢良治理事長にきく」 社会的価値を生み出すイノベーションと日本の競争力
中鉢良治 産業技術総合研究所理事長×冨澤龍一 一般社団法人産業環境管理協会会長
▼概要文表示2015年1月号
 産業技術の向上で持続可能な社会を実現し、社会的・経済的な価値を創造する── この方針の下、産業技術総合研究所は、長年日本のテクノロジーの進化を牽引してきた。そしていま、革新的なイノベーション創出に向けて新たな展開を進めている。本記事では、産業技術総合研究所・中鉢良治理事長に当協会・冨澤龍一会長とご対談いただき、企業が抱える環境経営の課題、環境技術が持つ国際競争力のポテンシャル、そして産業技術総合研究所と当協会がこれから果たすべき役割まで、多岐にわたり語っていただいた。
<総説>再生可能エネルギーの固定価格買取制度に関する最近の動向
小林 寛 長崎大学大学院准教授
▼概要文表示2014年8月号
 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が2012年7月1日に施行されてから、2年が経過した。同法に基づく再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行後、太陽光を中心として再生可能エネルギーに係る発電設備の導入は進んでいる一方で、認定取り消し事例などいくつかの課題も浮かび上がってきた。
 そこで本稿は、導入状況など固定価格買取制度の最近の動向を検討するものである。筆者は、再生可能エネルギーの利用促進が一層図られるために、固定価格買取制度を安定的に維持する必要があると考える。
<特集1>ひ素の基礎知識
大脇正人 一般社団法人産業環境管理協会環境技術・人材育成センター研修室室長
▼概要文表示2013年11月号
 ひ素は、古くから人とのかかわりが深い元素である。ひ素というと「暗殺に使われる薬物」のイメージだが、薬品に使われた時代もあり、有用な元素のひとつである。ここでは、ひ素の基礎的な情報を提供し、人とのかかわりから生じた事件事故なども取りまとめた。なお、本稿は、ひ素に関連する情報をまとめた形になるため、他の文献を引用することが多くなることをご容赦願いたい。
<特集1>アジアにおける地下水ひ素汚染の実態とひ素除去技術の現状
横田漠 特定非営利活動法人「アジア砒素ネットワーク」代表宮崎大学名誉教授同大学国際連携センター客員教授
▼概要文表示2013年11月号
 ヒマラヤ山脈にその源を発する大河川の各流域におけるひ素汚染の状況に関して、ガンジス川下流域のインド・西ベンガルとバングラデシュが最も広域かつ高濃度に汚染されており、ほかのインダスやメコンの流域ではスポット的に高濃度汚染が見られるが、汚染レベルは比較的低いなどが述べられている。代替水源としてのひ素除去技術に関しては、鉄による吸着・沈殿、活性アルミナやセリウムによる吸着について紹介されており、安全な飲料水の持続的な確保のために、利用者組合によるひ素除去装置の管理運営や技術の現地企業化などの必要性が述べられている。
<特集1>光触媒のひ素除去技術への応用
猪野大輔 パナソニック株式会社R&D 本部先端技術研究所
▼概要文表示2013年11月号
 インドのような発展途上国では、共沈法と化学吸着法が地下水のひ素除去技術として広く用いられている。これら除去技術の持つ能力を最大限に発揮させるには、除去工程の前に地下水を酸化処理し、亜ひ酸(As(Ⅲ))をひ酸(As(Ⅴ))へ変換する必要がある。二酸化チタン光触媒は、汚染物質を分解するための消費薬剤が不要で太陽光のような自然エネルギーを利用可能な新しい水浄化技術である。本稿では光触媒の最新の実験結果をもとに、光触媒のひ素酸化技術への応用を検討した。
<特集>微小粒子状物質に関する問題の背景と現状
坂本和彦 埼玉県環境科学国際センター 総長
▼概要文表示2013年6月号
 物質の燃焼により直接粒子として排出される一次生成粒子や種々の大気汚染物質の光化学反応や中和反応などにより生成される二生成次粒子の多くは2μm以下の微小粒子である。微小粒子は呼吸器系の奥深くまで吸入されて人の健康に影響を与えるため、我が国では微小粒子状物質(PM2.5:空気動力学的粒径2.5μmで50%がカットされた2.5μm以下の微小粒子)に係る環境基準が2009年9月に設定され、その濃度低減が求められている。ここでは大気粒子状物質(PM)の生成・消滅や健康影響を概説するとともに、浮遊粒子状物質(SPM)汚染とPM組成の変化、PM2.5環境基準の設定と大気環境監視体制の整備、PM2.5問題の現状並びに今後の低減対策に必要とされる課題について述べる。
<特集>2013年中国激甚大気汚染事件の顛末
小柳秀明 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長
▼概要文表示2013年6月号
 2013年初、中国大陸で観測史上最悪といわれる大気汚染が発生した。主要汚染物質はPM2.5で、2月末からは黄砂も飛来してPM10濃度も上がり、複合汚染の様相を呈した。北京市政府等は大規模工場の一時操業停止など緊急対策を講じたが、不利な気象条件が続いてなかなか改善されなかった。事態を重くみた中央政府はモニタリング体制の整備等を加速するとともに、大気汚染対策特別行動計画の策定に着手した。日本でも越境汚染の不安が広がり、2月末環境省は注意喚起の暫定指針を策定した。また、4月には日中共同で北京にて大気汚染対策セミナーを開催し、新たな環境協力の道を模索し始めた。
<特集>PM2.5をめぐる海外の報道
大岡 健三 一般社団法人 産業環境管理協会 出版・広報センター所長
▼概要文表示2013年6月号
 日本の広い範囲で微小粒子状物質PM2.5が観測されたというニュースが本年1月に全国で報道された。九州のみならず本州でも観測され、1月31日には全国155か所の測定局のうち31%で、環境基準値である1㎥あたり35μg(1日平均)を超過した。これらは中国の大気汚染による影響だとされている。さらに黄砂の飛来も加わり、都道府県はモニタリングを強化し監視している。
 本号では二人の専門家からPM2.5に関して的確な情報を提供いただいている。そこで、英米ではどのような情報が一般向けに提供されていたのかを英文情報をベースに概観してみる。
<総説>科学と社会とのギャップ―リスコミがなぜすすまないか
西澤 真理子 リテラジャパン(株式会社リテラシー)代表取締役
▼概要文表示2012年12月号
 科学技術が発展するにつれ、その社会での応用化、実用化には、安全性や倫理面での科学技術の専門家と一般とのギャップが顕著になってくる。その要因の一つには、二者間のコミュニケーションがうまく機能していないことが挙げられる。本論文では、リスクコミュニケーションがなぜ進まないかということを切り口に、この問題を分析する。そして人々が安心して生活するための信頼の確保にリスクコミュニケーションがどう活きるか。その改善についての提言を行っていく。
<特別寄稿>環境問題、これからの50年と産業環境管理協会
▼概要文表示2012年10月号
 産業公害から地球環境まで、環境問題の変遷とそれに伴う社会のニーズに対応して当協会は50年間、活動を続けてきた。本特集ではその歴史をひも解くとともに、現在、そして未来の環境問題に対してどのように取り組んでいくべきかを考えていく。そこでまず環境関係の各界の識者の方々に、「これから50年の環境問題」をテーマとしていま日本に必要な戦略と、当協会に課された使命について執筆いただいた。
 
 ◉今後の環境管理は何が求められているのか? 石谷 久 東京大学 名誉教授
 ◉グリーンからエシカルへ 山本良一  東京都市大学 環境情報学部 教授/国際グリーン購入ネットワーク会長
 ◉製造業に求められる化学物質管理 北野 大 明治大学大学院 理工学研究科新領域創造専攻 安全学系 教授
 ◉環境エネルギー戦略と地球的危機 安井 至 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長
 ◉環境からサステイナビリテイへ 稲葉 敦 工学院大学工学部 教授
 ◉新しい3Rの展開を目指して—市場と制度の間で 細田 衛士 慶應義塾大学 経済学部 教授
<部門歴史①>環境問題の変遷と産業環境管理協会の50年そして今後
指宿堯嗣 一般社団法人産業環境管理協会常務理事
▼概要文表示2012年10月号
 産業環境管理協会は1962年にその前身である大気汚染防止工業協会が設立されており、今年は50周年という大きな節目を迎えている。ここでは産業公害から製品環境、地球レベルの環境へと展開する当協会のこれまでの歩みを環境問題の変遷とあわせて振り返るとともに、当協会の活動状況を紹介しながら今後の展開についても考えてみたい。
<会員・関係者寄稿>産業環境管理協会 創立50周年によせて
▼概要文表示2012年10月号
 協会設立以来50年のあいだにお世話になった方々は数知れず、また現在も会員企業、団体、各界の諸先生方より多大なご援助、ご協力をいただいている。そんな方々の声を通して50年を振り返るとともに、いままさに協会に求められている期待と策励の言葉をお届けしたい。
 
 新井直樹 元・帝人株式会社常務理事(環境・エネルギー分野担当)
 石井俊昭 JX日鉱日石エネルギー株式会社環境・品質本部社会環境安全部長
 岡崎照夫 新日本製鐵株式会社環境部部長
 小島圭二 東京大学名誉教授/地圏空間研究所
 田尾博明 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門長
 高橋庸一 株式会社日立製作所地球環境戦略室副室長
 竹ケ原啓介 株式会社日本政策投資銀行環境・CSR部長
 並木 裕 大成建設株式会社環境本部環境開発部資源循環開発室主事
 柳憲一郎 明治大学法科大学院教授
 松村弓彦 弁護士
 横山隆壽 財団法人電力中央研究所環境科学研究所特別嘱託
 井深成仁 東京エレクトロン株式会社環境推進室部長
 岩間芳仁 社団法人日本経済団体連合会環境本部長
 影山嘉宏 東京電力株式会社執行役員環境部長
 齋田正之 NECファシリティ─ズ株式会社取締役執行役員
 則武祐二 株式会社リコー審議役
 向阪 浩 一般社団法人産業環境管理協会名誉顧問 
 須田 茂 一般社団法人産業環境管理協会名誉参与
 中山哲男 一般社団法人産業環境管理協会名誉参与 
 山田和彦 公益財団法人日伊協会専務理事
<部門歴史②>産業と環境の会の活動と小史
中村健太郎 一般社団法人産業環境管理協会産業と環境の会センター主幹
▼概要文表示2012年10月号
 産業と環境の会センターは、2012 年(平成24 年)4月1日に発足した。50周年を迎える一般社団法人産業環境管理協会の中にあってまだ1年生のセンターだが、前身である社団法人産業と環境の会は、環境政策の意見交流の場として長年活動を続けてきた歴史がある。本稿では、その歴史を振り返るとともに、産業と環境の会の活動について紹介する。
 
産業と環境の会センターによせて【特別寄稿】
◉「産業と環境の会センター」の魅力 西崎 宏 JFEスチール株式会社専務執行役員
◉「産業と環境の会」のスピリッツを活かしてください 西尾哲茂 明治大学法学部教授
<付録>環境年表─環境史と産業環境管理協会50年の歩み
▼概要文表示2012年10月号
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