環境管理バックナンバー 2019年 9月号

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2019年9月号 特集:海外諸国の環境政策と日本への影響

<巻頭レポート>

原酒を燃やして河川を守る――バーボン貯蔵庫火災と水質汚染対策
本誌編集部
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 米国・ケンタッキー州にある世界有数の蒸溜酒貯蔵庫で火災が発生した。貯蔵庫にあったウイスキーの樽約4 万5,000 個が焼失。日本でも人気の高いジムビームに使用する予定の原酒であった。日本の報道では火災発生の事実のみ、もしくは「火災で近くの川の魚が死ぬ」といった簡単な記事しかなかった。そこで本稿では、火災に続く河川の環境汚染という重大な環境影響を詳しくレポートする。強烈な火災の実態や河川に与えた生々しい環境負荷に加え、州政府の対応や企業側の動きなどは企業の今後の環境管理や危機管理の参考になる。

<特集>

EU循環経済(CE)政策の進展と影響
粟生木 千佳(公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能な消費と生産領域 主任研究員)
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 EUの循環経済政策パッケージは2015年12月に発表され、EUプラスチック戦略なども合わせ、発表から約3 年の間に様々な戦略・施策が多角的に展開された。この動向が、世界の環境政策議論、産業界に大きく影響を与え、循環経済は世界の一つの大きな趨勢となっている。EUは今後、プラスチック以外の分野への循環経済政策の実施検討や循環経済に貢献する製品政策に向けた取組を進めるとしている。日本としてもEUをはじめとする国際動向を注視し、情報収集と発信、国内の経験知見の国際優位性の精査、活動の循環性評価等が求められると考えられる。また、これらを効果的に実施するため官民議論を活性化することも重要であろう。
欧州のサーキュラーエコノミーの動向――プラスチックの持続可能な循環利用に向けた取り組みを中心に
喜多川 和典(公益財団法人 日本生産性本部 エコ・マネジメント・センター長)
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 EUは海洋汚染を含むプラスチック問題への対策を、サーキュラーエコノミーの取り組みの一環と位置付けている。即ち、プラスチックの海洋汚染問題の解決は、持続可能な循環利用(材料リサイクル)とセットでなければならないとする。他方、日本は循環利用とさほど結び付けていない。しかし、グローバルレベルの廃棄物管理・リサイクルに関わる巨大な潜在市場獲得を視野に入れたEUの成長戦略を見落としてはならない。これらにどのように向き合い、どのようなショーケースが準備できるかが、今後の日本の競争力に多大な影響を及ぼす可能性がある。
EU環境法の法的枠組と措置の構造解説――EUの使い捨てプラスチック製品規制指令を例として
中西 優美子(一橋大学大学院 法学研究科 教授)
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 EUは、1987年の単一欧州議定書により環境分野の権限をEUの構成国から委譲され、世界をリードする環境政策を推進できるようになった。本稿では、そのようなEU環境法政策の枠組を概観する。その際に、2019年6月に採択された、使い捨てプラスチック製品( single-use plastic products)規制指令を例として用いていくことにする。
 2019年6月のG20環境・エネルギー関係閣僚会合では、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組が採択され、G20大阪サミットでは、2050年までに汚染をゼロにすることを目指す、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有された。拡大生産者責任の考え方を基礎とした、当該指令は、世界におけるプラスチック規制ルールを考えるうえで参考になる。
中国三大汚染分野(大気・水質・土壌)個別法の制定・改正について
章 燕麗(神鋼リサーチ株式会社 調査研究部 主席研究員)
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 改正環境保護法32 条では、「国は大気、水質、土壌等の環境保護を強化し、環境調査、モニタリング、評価・修復等の関連制度を整備・健全化させる」と明確にしている。同法が2015年1月より施行されてから、改正大気汚染防止法や改正水質汚染防止法の施行に加え、中国初の土壌汚染防止法が2019 年1 月1 日より施行された。これで、中国三大汚染分野といわれる大気・水質・土壌の汚染防止関連の個別法がすべて成立した。本稿では、改正環境保護法下の新しい環境法制度、そして新たに制定・改正された大気汚染防止法、水質汚染防止法、土壌汚染防止法における生産事業者と関わる重要な規定を抜粋して、最新の事例を交えながら紹介する。

<シリーズ>

【エネルギーからみた地球温暖化問題/第38回】サステナブル・ファイナンスと銀行の自己資本比率規制──金融規制に対するEUタクソノミーの波及を考える
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/主席研究員)
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 これまでESG投資は、基本的に自主的な取り組みとして成長してきた。国連大で投資判断に社会的責任の要素を加味していくことを求めた「責任投資原則( PRI:Principles for Responsible Investment)」や、企業等に質問票を送付し、それによって得た非財務情報を評価・公表する活動を続けるCDP(旧Carbon Disclosure Project)などの動きは、いずれも公的年金基金や民間企業に対して自主的な取り組みとしてESGの観点を求めてきたものである。
 しかし、いわゆる「2℃目標」および今世紀後半のカーボン・ニュートラルを長期目標として掲げるパリ協定が採択・発効したことを受けて、欧州連合がサステナブル・ファイナンスの法制化に向けた議論を進めている。法制化するとなると、「何がgreenか」、「何がサステナブルか」を金融機関や投資家の自主的な判断に委ねるのではなく、サステナブルな経済活動を特定する際に役立つ統一的な分類を示すことが必要となり、現在議論が進められているのが、これまで何度もお伝えしてきている「タクソノミー(分類学)」だ。
 当初欧州委員会が想定していたタクソノミーの位置づけは、グリーンな活動を例示するポジティブ・リストであった。欧州委員会が策定した枠組規則案もその方針に沿っており、現在議論されているタクソノミーはこの考え方で落ち着く可能性が高い。しかし、ポジティブ・リスト方式では、2℃やカーボン・ニュートラルの達成に向けて十分ではないとして、環境適合性が低い活動の分類であるネガティブ・リストを求める声も出てきている。将来的には、タクソノミーはグリーンとブラウン両方を定める形になるかもしれない。
 整備されたタクソノミーは、欧州域内の金融商品の基準や、欧州の金融機関の健全性要件(prudential requirement)に反映される見込みだ。しかし、欧州域内にはとどまらず、銀行の健全性を定めるバーゼル規制に反映され、国際取引を行う金融機関全体に波及する可能性もある。
 前号「EUタクソノミーに関する議論の進展── 欧州委員会TEGのテクニカル・レポートを読む」で述べた通り、2019年末までに欧州委員会の技術専門グループ(Technical Expert Group:TEG)は、技術的スクリーニング基準を精緻化し、タクソノミーの利用に関わるガイダンスを開発することを予定している。議論に残された時間は少ない。本稿では、タクソノミーの位置づけや用途、特に銀行の健全性要件を定めるバーゼル規制との関連について、議論の動向を追う。
【産廃コンサルタントの法令判断/第42回】誌上コンプライアンスチェック⑤――法定の委託契約書、廃棄物情報は適切か?
佐藤 健(イーバリュー株式会社 環境情報ソリューショングループ マネージャー)
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日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第42回)。

【ニュースから読み解く環境刑法/第14回】再審と刑事補償
今井 康介(法政大学 兼任講師/早稲田大学 比較法研究所 招聘研究員)
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 前回解説したとおり、有罪判決が確定すると、罰金などの刑が執行されます。また判決が確定すると、これ以上裁判で争うことは許されません。しかしながら例外的に、判決を取り消して裁判の審理をやり直す「再審」という制度があります。
 今回は、コンクリート板の不良品を無許可業者に処理委託して有罪になったものの再審で無罪となった豊商事件、木くずの処分を無許可業者に委託したとして有罪判決を受けたあとに再審請求が認められた水戸木くず事件を取り上げて、再審制度を具体的に解説します。同時に、なぜ再審が行われることになったのかという背景から、刑事実務の抱える問題も考えていきたいと思います。
【新・環境法シリーズ/第91回】二酸化炭素回収・貯留・有効利用(CCUS)のための国際標準化
 イングビルド・オムバステプト(IOM 弁護士事務所・明治大学環境法センター客員研究員)/アダ・ジンニス・ジャロー(IOM 弁護士事務所)/トレ・ハトレン(ガスノヴァ)/マイケル・カーペンター(ガスノヴァ)/柳 憲一郎(明治大学 法学部 教授)/中村 明寛(タスマニア大学 研究員)
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 本稿では、二酸化炭素回収・貯留・有効利用(CCUS)のための国際標準化に関するノルウェーの取り組みについて述べる。CCUSに係る包括的かつ具体的な法・規制の枠組みの欠如により、ステークホルダーにとって不確実性が増大し、期待感の低下等が懸念されている。本稿では、CCSおよびCO2-EORの技術規格を開発した背景と経験、およびこのプロセスにノルウェーが参加した理由について説明するとともに、CCSおよびCO2-EORの分野で規格を使用することの利点についても詳細な説明を行うものである。また、規格開発とその活用には多くの利点があるものの、それらの課題や障壁の改善なしでは実現は難しいため、その課題についても指摘する。
【いつできた?この制度 成り立ちからみる廃棄物処理法入門/第12回】排出事業者の処理責任の巻
三浦 大平/長岡 文明(廃棄物処理法愛好会)
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 みなさんこんにちは。このシリーズでは、廃棄物処理法を愛して止まない「廃棄物処理法愛好会」のメンバーが、難解な廃棄物処理法や関連法の様々な制度の生い立ちを説明していくものです。
 聞き手は、某企業の廃棄物管理部門に配属されて3年目、廃棄物処理法を鋭意勉強中のBUNさんです。
 第12回目は、「排出事業者の処理責任」を取り上げます。お相手は廃棄物処理法と天気予報をこよなく愛するM先生です。
【環境担当者のための基礎知識/第21回】生物化学的酸素要求量(BOD)と排水の測定義務――測定記録を生データ含め保存しないと罰則が適用
岡 ひろあき(環境コンサルタント)
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 工場排水や河川の水質調査ではおなじみの生物化学的酸素要求量(BOD)であるが、これは世界で最も長く測定されている分析項目である。現在のBOD測定法は1908 年にイギリス政府によって公式に採用されている。諸説あるが、下水など有機汚濁物質が川に放出されたとき、放流河川における5 日間の自然浄化の状況を予測するために考案されたといわれる。
 BODは有機物を好気的に分解するのに必要な酸素量である。有機物の定義は、一般的には「炭素を含む分子や化合物」を指し、糖類や有機酸など生分解性のものを中心に、糞便・し尿、動植物残渣、食品廃棄物、アルコール類、洗剤・石鹸、生活排水、脂肪なども含まれる。これらの有機物うち動物の排泄物などは、自然界に存在する細菌によって容易に分解され、最終的に二酸化炭素と水などになる。この生分解プロセスには酸素が不可欠である。
 河川で微生物が有機物を分解するときに水中の溶存酸素(DO)を消費するので、DO消費量が増える状態は、水がより汚れていることを示す。つまり、BOD値は少ないほうがよりきれいな水といえる。このようにBODは有機汚濁の指標となる。一方、河川などの環境に与える影響はBOD負荷量による。BOD負荷量とは、廃液や下水などの総排水量に、そのBOD濃度を乗じたものである。
【先読み! 環境法/第87回】生物多様性憲章がG7環境大臣会合で採択――生物多様性保全と地球温暖化対策の統合と生物多様性・生態系サービスの価値評価を高め、意思決定を主流化することが必要
小幡 雅男(前・神奈川大学大学院 法務研究科 講師)
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 5月にフランス北東部メッスで開かれた先進7か国(G7)環境相会合では、生物多様性の損失を止めるための取り組みを加速し、2020年以降の保全目標の策定と実施を支援するとうたった生物多様性保全に関するメッス憲章を採択した。また、ストックホルム条約、バーゼル条約及びロッテルダム条約の締約国会議が合同で行われ、「汚れたプラスチックごみ」を規制対象にすることが決められた。生物多様性に関係する二つの動きを概観する。棚田の保全を図る仕組みである棚田地域振興法の法案についても取り上げる。
 
❶生物多様性憲章がG7環境大臣会合で採択――生物多様性保全と地球温暖化対策の統合と生物多様性・生態系サービスの価値評価を高め、意思決定を主流化することが必要
❷化学物質・有害物質関連3条約締約国会議合同会合の結果(スイス・ジュネーブで4月29日から5月10日)
❸棚田地域振興法が第198国会で成立(衆議院農林水産委員長提案(衆・農水委員会提出))――過疎・高齢化が進む棚田地域の振興により棚田の保全を図る仕組み
環境法改正情報(2019年7月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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◉食品リサイクル法
◉フロン排出抑制法等
◉労働安全衛生法
◉化審法

<書評>

北村喜宣著『廃棄物法制の軌跡と課題』
本誌編集部
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