環境管理バックナンバー 2008年 7月号

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2008年7月号 特集:ポスト京都の国際枠組み~セクター別アプローチ

<特集>

ポスト京都の国際枠組みとしてのセクター別アプローチについて
松橋隆治 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
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 本稿では、まず地球環境に関する国際交渉の中での気候変動の位置づけを説明し、京都議定書第一約束期間の遵守のための国内方策について述べた。次に、ポスト京都枠組の比較評価の構造について説明する。さらに、クロスインパクト法を用いて各々のポスト京都の枠組が実現する確率を推定した。その結果、多様なバリエーションを持つセクトラルアプローチの関連制度が実現する可能性が示され、本アプローチに関する評価を進めることの有効性が示された。

ポスト京都の国際枠組み―日本版セクター別アプローチ
澤 昭裕 東京大学先端科学技術研究センター教授
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 セクター別アプローチについて、その定義、交渉方式、国別目標との関係、排出権取引市場との関係、環境効果性などすべての論点について一貫した考え方を提示した経団連21世紀政策研究所報告書(本年3月)をもとに、ポスト京都議定書の枠組みを考える。このセクター別アプローチ提案は、実際の国際交渉に適用可能であり、将来の国内対策を検討する際の羅針盤ともなる。

日本鉄鋼業が推進するセクター別アプローチ
三宅隆夫 社団法人日本鉄鋼連盟技術・環境本部長
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 洞爺湖サミットを前に地球温暖化問題への関心が高まっている。日本鉄鋼業では、かねてより京都議定書の限界を克服し、実効性のある温暖化対策を可能とする仕組みとして、セクター別アプローチを推進し、日中連携、クリーン開発機構に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)、国際鉄鋼協会(IISI)と、それぞれの取り組みにおいて、一定の成果を上げてきた。これらの成果をここに紹介するとともに、鉄鋼業の取り組み事例が、ポスト京都において、一つの有効な解につながることを期待する。

セメント産業におけるセクター別アプローチ
和泉良人 社団法人セメント協会APPセメントタスクフォースメンバー太平洋セメント株式会社
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 持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD:World Business Council for Sustainable Development)を基盤としたセメント産業部会(CSI:Cement Sustainability Initiative)は、世界のセメント企業18社の工場別データをもとに、二酸化炭素(CO₂)排出削減に向けたシナリオ策定を検討している。一方、2006年に開始された「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)のセメントTF(タスクフォース)では、技術を基本としたベンチマーキング設定や技術移転の仕組み作りに取り組んでいる。この両者に参画しているわが国は、これらの自主的な取り組みの整合を図る役割を担うと同時に、高効率のセメント製造技術を途上国に普及促進させる「セクター別アプローチ」の実現化に向けて努力してゆく。

電力におけるセクター別アプローチの取り組み
渡邊広志 電気事業連合会立地環境部長
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 日本の火力発電所の熱効率は世界最高レベルにあり、エネルギー効率が比較的低い途上国の石炭火力に運転・保守管理技術を普及し、熱効率の改善を図ることで、世界のCO₂削減に大きく貢献できるといえる。我々は、従来より途上国の電力会社を中心に支援・協力を行っており、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)のピア・レビュー活動などを通じ日本のベストプラクティスをより多くの国で共有できた場合のCO₂削減ポテンシャルは約18.7億tとも試算される。こうした先進国と途上国が協力し合う仕組みであれば、経済成長と地球環境保全の両立が可能であり、途上国が参加するインセンティブにもつながるものと考えられる。

電機(電子)のセクター別アプローチ
斎藤 潔 電機・電子温暖化対策連絡会社団法人日本電機工業会環境部
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 電機・電子産業は、原子力発電の推進や火力発電の高効率化、新エネルギー機器の普及拡大による発電部門での低炭素電力供給、トップランナーの省エネ機器開発などによる民生や業務部門などでの省エネルギーなど、エネルギー需給の両面にかかわる様々な技術・機器のイノベーションで省エネ・低炭素社会の実現に大きく貢献できることが特徴である。それら技術・機器のグローバルな事業展開に伴い、各国及び途上国を含めた世界市場で、低炭素・省エネ機器が普及することで地球規模でのCO₂排出削減が具現化できる。我々は、「グローバルなグリーン市場の形成・拡大とCO₂排出削減に向けて、技術・機器のイノベーションで貢献する」との方針の下、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)などの活動を通じて、主として省エネ製品の国際的な普及促進の観点から、電気機器セクターの取り組みを進めている。今後、セクター間の協力で、エネルギー需要が急増する途上国においても省エネ機器普及促進の政策・制度、市場形成などが推進されることで、地球規模での持続可能な発展につながる。同時に、途上国が、温暖化防止の国際枠組みに参加するインセンティブにもなりうると考えている。

<総説>

平成20年版環境・循環型社会白書の概要
環境省総合環境政策局環境計画課企画調査室
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 総説1のテーマを「低炭素社会の構築に向け転換期を迎えた世界と我が国の取組」、総説2のテーマを「循環型社会の構築に向け転換期を迎えた世界と我が国の取組」とした、「平成20年版環境・循環型社会白書」の概要について紹介する。

<シリーズ>

【エコイノベーション④】我が国の環境協力の現状と課題
中村吉明 経済産業省環境指導室長
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 現在、我が国の環境協力は、政府開発援助(ODA)による国際機関への出資や二国間援助を通じて、また、地方自治体、民間企業、大学等のボトムアップ型の環境協力を通じて、多方面、多分野にわたって行われている。まずはじめに、その実態について紹介する。次に、我が国の環境協力は、ハード整備中心の支援のほか、近年では、公害防止管理者制度の構築支援のようなソフト面の協力支援もみられる。そこで、経済産業省のソフト面を中心とした支援策の一つであるグリーンエイドプラン(Green Aid Plan: GAP)と公害防止管理者制度の構築支援について紹介する。さらに、我が国の環境協力の留意点を整理するとともに、環境協力の一環として行われている環境計測機器企業の海外進出、特に中国への進出事例を紹介する。最後に、以上を踏まえ、アジアの環境汚染を克服するため、今後の我が国の環境協力は、環境法令の執行の徹底を支援することが最も必要であるとの結論を得た。

【環境法の新潮流53】海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部改正
水田周平 明治大学法学部専任講師
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 我が国は、海洋投棄を規制する「ロンドン条約1996年議定書」締結にあたり、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)を改正し、関連法令とあわせて同議定書を国内実施することとなった。もっとも今回の法改正は議定書の内容をそのまま実施するわけではなく、一部については条約の定める基準よりも厳格化されている。条約規定と国内法に相違が生ずる場合には、国連海洋法条約との整合性が問題となる。国連海洋法条約は、各汚染源に関する規制についていかなるなる内容の基準を定めるべきかを規制しているからである。海洋投棄の場合には、条約を上回る基準を定めることに問題はない。むしろ我が国の国内法の場合、罰則規定が条約の趣旨目的の実現において十分かどうかが問題となりうる。他方、外国船舶の通航利益とのバランスの上で規制をするべき船舶起因汚染規制の場合には、条約を上回る基準を定めることが国連海洋法条約に抵触する可能性があり、十分な検討が必要となる。近年欧州連合(EU)などを中心に刑事罰による環境規制の強化が議論されているが、海洋環境保護規制の場合はこの点に留意すべきである。

【実践マテリアルフローコスト会計34】中小企業におけるマテリアルフローコスト会計の活用方法
喜多川和典 財団法人社会経済生産性本部コンサルティング部エコ・マネジメント・センター長
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 中小企業におけるマテリアルフローコスト会計(MFCA)の実施は、要領さえつかめば、通常の原価計算と比較しても難しいものではない。環境面の改善が直ちにコストダウンにつながるMFCAは、中小企業にとって有益な業務改善ツールである。MFCAはロスを「見える化」するまでのもので、改善は自分たちで行わなければならないが、問題発見の様々なヒントを示し、改善のための最適資料となる。取引先への協力交渉の強い見方にもなり、得られたデータはライフサイクルアセスメント(LCA)とのリンクも図りやすくする。

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