環境管理バックナンバー 2016年 9月号

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2016年 9月号 特集1:「世界標準時計」となった水月湖の年縞と気候変動/特集2:日本の適応計画と各自治体の適応策への取り組み

<コラム>

鬼怒川決壊後1年を経過して「想起久遠」の思い――平成 27 年9月鬼怒川水害の常総市危機管理体制
本誌編集部
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 昨年9月10日の関東・東北豪雨により鬼怒川が氾濫し、茨城県常総市では一面が濁流で覆われた。常総市のおよそ1/3にあたる約40km2が浸水し、鬼怒川と小貝川に挟まれた南北に細長い平地が浸水した。幸いにもヘリコプターで1,339人が救助された。しかし、被害は死者2人・負傷者40人以上、さらに全半壊家屋が5,000棟以上という甚大な被害になった。
 常総市水害対策検証委員会(以下、検証委員会)が公開した報告書には重要な教訓が多数含まれていた。いくつかを抜粋要約してレポートするが、ポイントは鬼怒川の堤防が決壊する前に被災地域に対し適切な避難指示等がタイムリーに発令されていなかった点である。決壊地付近では堤防決壊時点において避難勧告もされていなかった。これらの遠因や背景を報告する。

<特集1>

「奇跡の湖」水月湖の年縞と環境問題
本誌編集部
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 福井県の三方五湖の中で最も大きな水月湖は「奇跡の湖」といわれる。湖の底に7万年の歳月をかけて積み重なった「年縞」と呼ばれる縞模様の堆積物が発見され、長年の研究により地質学上の「世界標準時計」として認められたからだ。年縞により年代測定の精度は従来の精度から飛躍的に高まり、考古学や地質学などさまざまな研究に貢献し、まさに「地質時代にとってのグリニッジ天文台」(中川 毅教授)となった。
 年縞の研究は年代測定だけでなく、連続する縞模様を分析することで過去の気候や自然環境、洪水や地震、噴火の発生年を正確に確認することもできる。こうした研究は、地球温暖化や自然災害のメカニズムなど、現在の環境問題の解明にもつながるものとして期待されている。
 本レポートでは、過去7万年分の年縞ができたメカニズムを解説し、年縞を活用した興味深い研究成果も紹介する。さらに、懸濁粒子の排水処理に係る沈降速度と固液分離(自然沈殿)など処理技術の基礎理論を水月湖・三方湖と対比して解説する。
水月湖年縞の発見と研究の進展 ── 鳥浜貝塚の発掘調査から近年の動向について
小島 秀彰(若狭三方縄文博物館主査(学芸員))
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 福井県三方五湖のうち、最大の湖である水月湖底には年縞が残されている。この水月湖年縞発見の端緒となった鳥浜貝塚は、1962 年から1986 年まで発掘調査が行われた縄文時代草創期から前期の低湿地性貝塚である。環境考古学を考える上で両者は不可分な関係にある。本稿では、鳥浜貝塚の発掘調査、水月湖年縞のボーリング調査、研究の経緯、他分野研究への活用について学史を振り返り、今後を展望する。
気候変動メカニズム解明の鍵となる 水月湖年縞堆積物の高精度な環境変動記録
北川 淳子(福井県 里山里海湖研究所 研究員)
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 水月湖の年縞堆積物は、更新世から完新世への移行期の気候復元で世界の研究者の注目を集め、また2013年には炭素14年代測定法の較正年代曲線に水月湖のデータが加わり、炭素14年代測定の精度を飛躍的に向上させた。このことにより、水月湖周辺の詳細な環境変化の研究のみならず、他湖沼の堆積物に詳細な年代を与え、地域間で正確に比較することができるようになり、古環境の研究のさらなる発展が期待できる。ここでは、水月湖の湖底堆積物の正確な年代と環境変動の指標となる花粉記録が地球規模での気候変動メカニズムの解明に一躍買っていることを紹介する。

<特集2>

地域に期待される気候変動適応と取組状況、 次なる課題
白井 信雄(法政大学 教授(サステイナビリティ研究所専任研究員))
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 2015年11月に「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定され、環境省等の支援もあって、地方公共団体における気候変動適応策の検討が活発化している。一方、地方自治体においては、①行政内での適応策の位置づけと基本方針の作成、②適応策の推進基盤の整備と地域推進、③追加的適応策の具体化、といった三つの段階での取組みが期待される。全国の32都道府県において適応策に関する何らかの検討が成されているものの、適応策の位置づけの確認や既存の施策の整理に留まっている場合が多い。適応策のファーストステージが始まった今、次のセカンドステージを視野にいれた取組みが期待される。
埼玉県における適応策の推進について
石塚 智弘(埼玉県環境部 温暖化対策課長)
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 地球温暖化の影響は、人々の生活に関わる様々な分野において密接に関わっている。本県でも2010年の記録的猛暑により白未熟粒の発生が多発するなど、その影響が現れている。このため、「緩和策」だけでなく、温暖化の影響に適切に対応する「適応策」にも積極的に取り組むことが必要であるとの認識から、地球温暖化対策実行計画(区域施策編)「ストップ温暖化・埼玉ナビゲーション2050」に「適応策」に関する記述を盛り込んでいる。また庁内に横断的な検討組織を設け、地球温暖化の影響に適時的確に適応していけるよう、全庁を挙げて取り組んでいる。
長野県における気候変動適応の推進体制
浜田 崇(長野県環境保全研究所 自然環境部 温暖化対策班)
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 気候変動による影響は地域によってその現れ方が異なるため、地方自治体における気候変動への適応の取組が重要である。長野県では、2012年に策定した「長野県環境エネルギー戦略」の中に気候変動適応策を位置づけ、気候変動の影響把握と予測を行う体制の構築と、気候変動に関する情報共有と適応策の検討の場を構築することとした。これら二つの体制により気候変動適応を推進していく予定である。
気候変動適応策の推進に向けた三重県の取組
三重県環境生活部 地球温暖化対策課
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 三重県では、適応策の推進に関する規定を三重県地球温暖化対策実行計画や三重県地球温暖化対策推進条例に位置づけており、具体的な取組を、平成24 年度から開始している。
 これまで、県内の温暖化の現状や将来予測について明らかにした冊子「三重県気候変動レポート2014」の作成や気候変動に関する講演会・セミナーの開催などを行ってきた。
 平成27年度には、県内における気候変動影響の現在の状況と将来の影響予測を明らかにするため、報告書「三重県の気候変動影響と適応のあり方について」を作成した。本稿では、現在に至るまでの取組の経過と報告書「三重県の気候変動影響と適応のあり方について」のポイントを紹介したい。
滋賀県の気候変動適応策への取組
滋賀県庁 琵琶湖環境部 温暖化対策課
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 世界や国でも「適応」という考え方が新たに重要となってきている中、地方においても気候変動の影響に関する評価やその適応策について検討していくことが求められている。
 そこで本県では、2015年度にこれまでの気候情報や気候の将来予測情報について整理を行い、気候変動の影響評価や適応策の検討を開始した。本稿では本県の気候変動適応策への取組について、これまでの経緯と併せて、本県として特徴的な適応策の例の紹介や今後の適応策の展開について述べる。
福井県における水稲の気候変動適応策
小林 麻子(福井県農業試験場 ポストコシヒカリ開発部 主任研究員)
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 本稿では、福井県における水稲の気候変動適応策について述べる。福井県では、1999年以降、登熟期の高温による玄米外観品質の低下が顕著となった。そのため、福井県農業試験場では、2000年より水稲の高温登熟耐性に関する遺伝学的な基礎研究を行い、高温登熟耐性を選抜するDNAマーカーの開発に成功した。2011 年から開始した「ポストこしひかり」品種の開発では、このDNAマーカーを用いて高温登熟耐性の選抜を行った。また、栽培的対応として2010年から、「コシヒカリ」の五月半ばの適期田植えを実施し、その効果は農産物検査における一等米比率の向上として現れている。

<総説>

リサイクル特性を反映した鉄鋼材料のLCA
小野 透(新日鐵住金株式会社)/岡崎 照夫(日鉄住金総研株式会社)/田中 陽子(日鉄住金総研株式会社)/北山 未央(日鉄住金総研株式会社)
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 製品環境負荷の評価には、使用時の負荷に加えて、その製品の製造段階および製品寿命到達後の最終処分やリサイクルを含めたライフサイクル全体での資源・エネルギー消費に伴う負荷を考える「Life Cycle Thinking」が重要である。鉄鋼材料は製品寿命到達後スクラップとして回収され、新たに鉄鋼製品として生まれ変わるという優れたリサイクル特性を有しており、これは製造時の環境負荷低減、天然資源採掘量および廃棄物処理量削減への寄与の観点から適切に評価される必要がある。本報では、持続可能な材料リサイクルの条件を明らかにした上で、鉄鋼材料の特徴を記述し、それを反映したLCA手法(worldsteel LCA方法論)を解説する。

<シリーズ>

【エネルギーからみた地球温暖化問題/第6回】 電力の低炭素化をどう図るか――自主的枠組みへの期待と課題
竹内 純子(NPO法人 国際環境経済研究所 理事/主席研究員)
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 電力の低炭素化は、わが国がパリ協定の下に掲げた目標「2030 年には2013 年比マイナス26%」達成の重要なカギである。電力の排出係数はすべての需要部門の排出量に影響を与えるため、電力事業者は「電気事業低炭素社会協議会」を設立して排出係数目標を共有し、その実現に向けて自主的に取り組んでいくこととしている。政府は「長期エネルギー需給見通し」( 以下、エネルギーミックス)の達成をより確実にするため、発電段階では「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」( 以下、省エネ法)を、小売り段階では「供給構造高度化法」( 以下、高度化法)を適用し、電力事業者の自主的取り組みを支えていく。しかし現状の実績をみれば、省エネ法及び高度化法で求められる基準を達成することは相当にハードルが高い。電力の低炭素化に向けた取り組みへの期待と政策の課題を整理したい。
【新・環境法シリーズ/第55回】 「廃棄物」ではなく「資源」に~天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用のために~
循環資源法制研究会
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 循環型社会形成元年から早16年が経過した。この16年の間に国内では、新たな個別リサイクル法等の制定・改正等や、企業や家庭での意識の高まり等、循環型社会形成への取り組みが一歩ずつ進んできた。一方、海外に目を向けると、人口の増加や新興国の成長等、資源問題は以前にも増して重要な問題となり、その解決に向けて大きく世界の動向は変わりつつある。経済・社会のグローバル化が進む中で、資源問題もよりグローバルに考えていく必要もある。本稿は、「むだなく資源を利用していく」という観点から検討し、公表したブックレット「「廃棄物」ではなく「資源」に~天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用のために~Turning “Waste” into “Resource”~Towards the sustainable managementand effi cient use of natural resources~」(2015 年10月1日、「循環資源法制研究会」編著、みずほ情報総研(株)発行)を一部編集した上で、転載したものである。
【産廃コンサルタントの法令判断/第6回】 「専ら物」に委託契約書は必要か?――特例制度を正しく認識する
佐藤 健(株式会社 ミズノ 環境コンサルティング事業部 環境情報ソリューショングループマネージャー)
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 日々廃棄物管理の実務現場を歩く産廃コンサルタントの違反事例紹介シリーズ(第6回)。
【まるごとわかる環境法/第13回】フロン排出抑制法(前編)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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環境担当者のための環境法入門。環境部門の新任担当者向けに重要な法律をセレクトしてわかりやすく解説。
 第13回は「フロン排出抑制法」(前編)
 
1.なぜフロン類が問題になるのでしょうか?
2.今後、フロン類の使用はどうなるのでしょうか?
3.いままではどのような対策をしてきのでしょうか?
4.今後、どのような対策が必要なのでしょうか?
5.フロン排出抑制法とはどんな法律ですか?
6.フロン類製造業者・輸入業者による取り組みの方向
7.フロン類指定製品の製造業者等による取り組みの方向
【先読み! 環境法/第51回】環境省の長期低炭素ビジョン小委員会(第1回)の開催
小幡 雅男(神奈川大学大学院法務研究科 講師)
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 先月号では経済産業省の長期地球温暖化対策プラットフォームの動きを紹介したが、本号では環境省の動きを紹介する。ほか、POPs条約の新たな対象物質ヘキサブロモシクロドデカンの発効に基づく国内実施計画の改定案等、三つの動きについて解説する。
 
❶ 環境省の長期低炭素ビジョン小委員会(第1回)の開催
❷ 先行的・集中的に取り組む八つの国立公園の決定――第3回国立公園満喫プロジェクト有識者会議の結果発表
❸「 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)に基づく国内実施計画(改定案)等」のパブリックコメントが7月14日から8月12日まで実施
環境法改正情報 (2016年7月改正分)
見目 善弘(見目エコ・サポート代表)
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◉ 地球温暖化対策推進法
◉ 毒劇法
◉ PCB 特措法
◉ オゾン層保護法
◉ 化審法
◉ 再生エネルギー特措法
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